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願い事一つだけ
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(1)
「うーん、ちょっと足りないね」
「だーめ、ごまかされないわよ。ちゃんと膝を伸ばしなさい」
「あら、ぎりぎり足りてるじゃない」
「うぅ……」
悔しがる私をジェットコースター乗り場に引きずる愛莉とママ。
「そんな顔するなよ、俺も雪と乗ってみたかったんだ」
「怖がる私の写真とか撮ったら絶交だからね!」
ガタン!
突然動き出すジェットコースター。
ここのジェットコースターはベルがなったあと突然スピードがでる。
木製の構造物の中を駆け巡り最初のスタート地点へと向かう。
その高さを見て、私は逃げ出したいとすら思った。
「後ろなら景色が見えないから平気でしょ?」
それが愛莉の罠だった。
最前列が降下する時はまだ最高速に達してない。
後ろの車両が残っているから。
だけど最後尾の車両は最高速に達している。
景色なんてどこ列に居ようと関係ない。
「いやああああああ!」
どうして誠司郎が両手を上げて喜んでいるのか理解できない。
天井に当たって手がもげても知らないよ!
上下左右に揺れながら私はみっともなく叫び続けて、終点に着いた時は精魂尽きかけていた。
「楽しかった?」
「愛莉騙したね!」
「あら?そうなの?でもここをクリア出来たら他のアトラクションも乗れるから」
愛莉を悪魔だとさえ思った。
私はいろんなアトラクションに引きずられていた。
「いやだ。もうジンギスカン食べたい!」
「お腹空かせておいた方が美味しく食べれるから我慢しなさい」
ママまで共謀してる。
「もう二度と遊園地なんていかない!」
「そういうなよ、もっとすごいアトラクションのある遊園地もあるんだ」
誠司郎が言う。
死んでも行くか!
「本当に天音の姪なのか?」
「こういう時に怖がる女の子って意外とポイント高いんだよ」
水奈となずなが茉菜を宥めている。
「知らない!こんな目に合うならもう誠司郎も諦める!」
「ご、ごめん。あまりにも雪が怖がるからつい悪乗りしちゃって」
とりあえずジンギスカンでも食べて元気出せよ。
「いっぱい食べてもいい?」
「俺に付き合ってくれたんだから、雪にも付き合うよ」
「……じゃあ、許す」
そんな私のやり取りを見ていた水奈となずなが言った。
「あの辺のやり取りが天音なのかな」
「……だろうね」
「本当にそうなの?」
「え?」
私が聞くと2人が聞き返した。
天音と水奈は桜子が頭を抱える程に暴れていたらしい。
その血は結莉や茉莉、優奈と愛菜にしっかりと受け継がれて学校で同じように暴れたと聞いた。
「片桐先輩、もういい加減許してください」
「そ、そんなに悩むと禿げるぞ桜子」
問題の張本人の天音は桜子にそう言って慰めたらしい。
そして今年私と誠司郎が入学した。
小学校にとって最大の難関だと恐れられていたらしい。
だけど暴れる必要が無いから大人しくしていた。
「待て……ってことはひょっとして?」
「雪と誠司郎は授業ちゃんと受けてんのか!?」
水奈と天音が驚いていた。
空や翼も驚いてるみたいだ。
「だって勉強しに行ってるんだから当たり前だと思ったんだけど?」
私がそう言うと愛莉や神奈も驚いているようだ。
「愛莉……どうなってんだ?」
「私に聞かないでよ……」
「そんなに難しいことじゃないよね。誠司郎」
じいじは理由を知っているようだ。
「どういうことだよ冬夜」
誠が聞くとじいじは一言言った。
「雪は成績は良いみたいなんだ。だからせめて雪の次くらいの順位じゃないと雪に馬鹿にされると思ってたんだろ?」
「……そうなの?誠司郎」
パオラが誠司郎に聞くと、誠司郎は無言でうなずいて私を見ていた。
「あ、天音。これはどう解釈したらいいんだ?」
「完全に愛莉の血が出てるって事じゃないか?」
水奈と天音が相談している。
そして神奈が誠司郎の肩を掴んでいた。
「喜べ!お前の相手は間違いなく愛莉の孫だ!将来有望だぞ!」
何のことを言ってるのかは小1の私でも理解してしまった。
だけど神奈がいるから敢えて何も言わなかった。
空達も何も言わないでいた。
そんな努力を無駄にするのが誠らしい。
「ふざけんな。完全に愛莉さん似じゃないか!きっと胸も……いてぇ!」
「孫娘を使って何を企んでるつもりだお前は!」
「確かにそうだな……。瞳子、俺の子供を産む気はないか?……だから痛いって!」
「神奈ちゃん。お望みなら誠君を湖に沈めて帰っても構わないわよ」
「……しかし、そうなるとあれだな」
まだ誠は何か言いたい事があるらしい。
「まだ何かあるのか?」
「冬吾と瞳子の娘を俺達は嫁にもらえるんだよな?」
「お前がもらえるわけじゃないけどな」
「片桐家の最高傑作を多田家がもらえるのか?」
「そうですね。しっかり誠司郎も教育しておいてください」
誠司みたいな行動したらきっとパパも許さないと愛莉が言った。
「ふざけんな愛莉!私達が問題児みたいないい方するな!」
「天音は現在進行形で問題起こしてるでしょ!」
茜や冬莉も現座進行形で手を焼いているらしい。
その上結莉や茉莉、冬華や椿という問題を抱えて孫娘と聞いた時愛莉は絶望したそうだ。
それ蓋を開けてみたら私で安心していたらしい。
遊園地で遊び終えるとキャンプ場に移動する。
テントを設置している間に私達はBBQの準備をする。
私もママ達を手伝っていた。
「雪ももう料理出来るんだ?」
茉奈が驚いていた。
野菜切ってるだけなんだけど。
水奈はテントの側で天音達とビール飲んでる。
「瞳子も雪が娘なら楽しいだろ?」
神奈がそう言うと愛莉が言った。
「ええ、毎日いろんな話をしてるの」
誠司郎と何してたとか髪型弄ったりとか、服装の相談したりとか。
瞳子の小さい時の服がちょうど趣味に合うからもらったりしてると伝えた。
お勉強も観てもらったりしてる。
「普段は何してるの?」
「雑誌読んだりしてる」
だから冬華や椿の行動が理解できない。
彼氏いるのに平気なのかなって聞いたことがある。
「そのくらい一々気にするような器の小さい彼氏なんて長続きしないよ」
そう聞いて不安になった。
「私、誠司郎にうるさい女って思われてないかな?」
「ああ、そういう話なら私に任せて」
亜衣さんが言っていた。
女の子と言うのは男の子より精神年齢が高い。
だから同い年の子でも精神的にはお姉さんになる。
だから色々世話をしてあげたりしたくなるのが普通なの。
「私も可愛いからって理由で今の馬鹿旦那を捕まえた口だしね」
「……しかし本当にこんな話で盛り上がれる時が来るなんて思わなかったな」
神奈が言う。
「いいか、誠司郎が雪を泣かせるような真似をしたらすぐに言いなさい」
神奈が絶対に許さないという。
「茉奈もそうだよ。結が何か悪さしたらすぐに言いなさい」
愛莉が言うと茉奈は「それはない」と言った。
あんな態度だけど茉奈の事を大事にしてくれるんだそうだ。
少しだけ羨ましかった。
誠司郎も優しいけど、まだ子供だ。
早く大人になりたいとさえ思った。
「おーい、こっちの準備は出来たぞ」
渡辺さんが言うと私達は食材を持ってテントに向かった。
(2)
BBQの後花火をしている間一人で寝そべって星を見ていた。
「まーたこんなところで一人でいる。楽しむときは思いっきり楽しんだ方がいいぞ」
茉奈は俺を探していたようだ。
茉奈は俺の隣に座ると俺に聞いていた。
「今年は何を悩んでいるんだ?」
「将来」
「え?」
茉菜は呆れているようだ。
「そっか、もう高校生だもんね。で、警察官になりたいんだっけ?」
心配しないでも結なら何にだってなれるよ。
「で、結の夢って他にあるのか?」
「夢って言うか希望っていうか……」
茉奈に相談してみるのも手かもしれない。
どんな反応でもそれですっきりできるならそうしたい。
半分自棄になっていた。
「なあ、茉奈」
「どうした?」
「願い事って一つだけ叶えてくれるんだよな?」
「……つまり結はいくつか願いがあるの?」
「うん」
「……教えて。私で力になれるなら。まだ結に比べたら頼りないかもしれないけど」
茉奈の事だから大丈夫だ。
「俺が願う事は茉奈が幸せになれる事」
「だったら私は……」
「だけどもう一つあるんだ」
「……それは何?」
茉奈の表情が真剣になっていた。
俺は伝えた。
「俺は……茉奈と一緒にいたいんだ」
「え?」
だけど茉奈が幸せになるという事はいつか茉奈に彼氏が出来て結婚して子供をつくるって事だろ?
その時俺は一人だ。
それが怖いんだ。
俺が今考えていることを全て伝えた。
突然言い出したから茉奈も驚いて何も言わなかった。
これでよかったんだな。
「ありがとう。すっきりしたよ。そろそろ夜食待ってるだろうから戻ろうか」
そう言って立ち上がろうとした時茉奈が腕を掴んだ。
「どうしてそんなに臆病になるの?結は皇帝だって皆言ってるよ!?」
俺が望めばなんで叶う。
願い事が一つだけ?
俺は願いを叶えてもらう立場じゃない。
皆の願いを背負う立場だ。
俺が皆の希望なんだ。
「そんなに大した人間じゃないよ」
現に俺は自分の事は何も出来ない。
ただ茉奈の幸せを願うだけのちっぽけな存在。
「なるほどね。結が何を勘違いしているのか私が教えてあげる……目を閉じて」
そう言って茉奈も立ち上がった。
殴られるのかな。
歯を食いしばった方がいいだろうか?
逆だった。
茉菜は俺の唇にキスをしていた。
離れようにも茉奈がしっかりと抱きついてそれを許してくれない。
キスを終えると俺の胸の上に顔を置く。
「私を幸せに出来るのは結だけだ」
「……それはずっとそうだって誓えるのか?」
「そうじゃない相手に体を預けたりしないよ」
茉奈と一緒にいたい?
俺がそれを望むならずっと叶えてあげる。
ただし私からも一つ条件を言わせてもらう。
「絶対に私のそばから離れないで」
今はこれで私は十分幸せだよ。
これで俺の願いの一つは叶ったでしょ?
後の一つもちゃんと叶えてあげる。
「そろそろ戻ろう」
そう言って茉奈が歩こうとするとすぐに止まった。
何かを見つけたみたいだ。
茉菜の視線の先には神奈や水奈がいた。
「お熱いんだな」
水奈がそう言うと、キスをしてきた茉奈は恥ずかしそうに俯いている。
「ほら、みんな待ってるんだ。茉奈のキスの感想を話題にラーメン食うぞ」
神奈がそう言って俺達を呼ぶ。
俺の心が茉奈に聞こえているとしたら伝えたい。
どうか苦しまないで欲しい。
俺の心が小さな優しさで目を覚ました気がした。
「うーん、ちょっと足りないね」
「だーめ、ごまかされないわよ。ちゃんと膝を伸ばしなさい」
「あら、ぎりぎり足りてるじゃない」
「うぅ……」
悔しがる私をジェットコースター乗り場に引きずる愛莉とママ。
「そんな顔するなよ、俺も雪と乗ってみたかったんだ」
「怖がる私の写真とか撮ったら絶交だからね!」
ガタン!
突然動き出すジェットコースター。
ここのジェットコースターはベルがなったあと突然スピードがでる。
木製の構造物の中を駆け巡り最初のスタート地点へと向かう。
その高さを見て、私は逃げ出したいとすら思った。
「後ろなら景色が見えないから平気でしょ?」
それが愛莉の罠だった。
最前列が降下する時はまだ最高速に達してない。
後ろの車両が残っているから。
だけど最後尾の車両は最高速に達している。
景色なんてどこ列に居ようと関係ない。
「いやああああああ!」
どうして誠司郎が両手を上げて喜んでいるのか理解できない。
天井に当たって手がもげても知らないよ!
上下左右に揺れながら私はみっともなく叫び続けて、終点に着いた時は精魂尽きかけていた。
「楽しかった?」
「愛莉騙したね!」
「あら?そうなの?でもここをクリア出来たら他のアトラクションも乗れるから」
愛莉を悪魔だとさえ思った。
私はいろんなアトラクションに引きずられていた。
「いやだ。もうジンギスカン食べたい!」
「お腹空かせておいた方が美味しく食べれるから我慢しなさい」
ママまで共謀してる。
「もう二度と遊園地なんていかない!」
「そういうなよ、もっとすごいアトラクションのある遊園地もあるんだ」
誠司郎が言う。
死んでも行くか!
「本当に天音の姪なのか?」
「こういう時に怖がる女の子って意外とポイント高いんだよ」
水奈となずなが茉菜を宥めている。
「知らない!こんな目に合うならもう誠司郎も諦める!」
「ご、ごめん。あまりにも雪が怖がるからつい悪乗りしちゃって」
とりあえずジンギスカンでも食べて元気出せよ。
「いっぱい食べてもいい?」
「俺に付き合ってくれたんだから、雪にも付き合うよ」
「……じゃあ、許す」
そんな私のやり取りを見ていた水奈となずなが言った。
「あの辺のやり取りが天音なのかな」
「……だろうね」
「本当にそうなの?」
「え?」
私が聞くと2人が聞き返した。
天音と水奈は桜子が頭を抱える程に暴れていたらしい。
その血は結莉や茉莉、優奈と愛菜にしっかりと受け継がれて学校で同じように暴れたと聞いた。
「片桐先輩、もういい加減許してください」
「そ、そんなに悩むと禿げるぞ桜子」
問題の張本人の天音は桜子にそう言って慰めたらしい。
そして今年私と誠司郎が入学した。
小学校にとって最大の難関だと恐れられていたらしい。
だけど暴れる必要が無いから大人しくしていた。
「待て……ってことはひょっとして?」
「雪と誠司郎は授業ちゃんと受けてんのか!?」
水奈と天音が驚いていた。
空や翼も驚いてるみたいだ。
「だって勉強しに行ってるんだから当たり前だと思ったんだけど?」
私がそう言うと愛莉や神奈も驚いているようだ。
「愛莉……どうなってんだ?」
「私に聞かないでよ……」
「そんなに難しいことじゃないよね。誠司郎」
じいじは理由を知っているようだ。
「どういうことだよ冬夜」
誠が聞くとじいじは一言言った。
「雪は成績は良いみたいなんだ。だからせめて雪の次くらいの順位じゃないと雪に馬鹿にされると思ってたんだろ?」
「……そうなの?誠司郎」
パオラが誠司郎に聞くと、誠司郎は無言でうなずいて私を見ていた。
「あ、天音。これはどう解釈したらいいんだ?」
「完全に愛莉の血が出てるって事じゃないか?」
水奈と天音が相談している。
そして神奈が誠司郎の肩を掴んでいた。
「喜べ!お前の相手は間違いなく愛莉の孫だ!将来有望だぞ!」
何のことを言ってるのかは小1の私でも理解してしまった。
だけど神奈がいるから敢えて何も言わなかった。
空達も何も言わないでいた。
そんな努力を無駄にするのが誠らしい。
「ふざけんな。完全に愛莉さん似じゃないか!きっと胸も……いてぇ!」
「孫娘を使って何を企んでるつもりだお前は!」
「確かにそうだな……。瞳子、俺の子供を産む気はないか?……だから痛いって!」
「神奈ちゃん。お望みなら誠君を湖に沈めて帰っても構わないわよ」
「……しかし、そうなるとあれだな」
まだ誠は何か言いたい事があるらしい。
「まだ何かあるのか?」
「冬吾と瞳子の娘を俺達は嫁にもらえるんだよな?」
「お前がもらえるわけじゃないけどな」
「片桐家の最高傑作を多田家がもらえるのか?」
「そうですね。しっかり誠司郎も教育しておいてください」
誠司みたいな行動したらきっとパパも許さないと愛莉が言った。
「ふざけんな愛莉!私達が問題児みたいないい方するな!」
「天音は現在進行形で問題起こしてるでしょ!」
茜や冬莉も現座進行形で手を焼いているらしい。
その上結莉や茉莉、冬華や椿という問題を抱えて孫娘と聞いた時愛莉は絶望したそうだ。
それ蓋を開けてみたら私で安心していたらしい。
遊園地で遊び終えるとキャンプ場に移動する。
テントを設置している間に私達はBBQの準備をする。
私もママ達を手伝っていた。
「雪ももう料理出来るんだ?」
茉奈が驚いていた。
野菜切ってるだけなんだけど。
水奈はテントの側で天音達とビール飲んでる。
「瞳子も雪が娘なら楽しいだろ?」
神奈がそう言うと愛莉が言った。
「ええ、毎日いろんな話をしてるの」
誠司郎と何してたとか髪型弄ったりとか、服装の相談したりとか。
瞳子の小さい時の服がちょうど趣味に合うからもらったりしてると伝えた。
お勉強も観てもらったりしてる。
「普段は何してるの?」
「雑誌読んだりしてる」
だから冬華や椿の行動が理解できない。
彼氏いるのに平気なのかなって聞いたことがある。
「そのくらい一々気にするような器の小さい彼氏なんて長続きしないよ」
そう聞いて不安になった。
「私、誠司郎にうるさい女って思われてないかな?」
「ああ、そういう話なら私に任せて」
亜衣さんが言っていた。
女の子と言うのは男の子より精神年齢が高い。
だから同い年の子でも精神的にはお姉さんになる。
だから色々世話をしてあげたりしたくなるのが普通なの。
「私も可愛いからって理由で今の馬鹿旦那を捕まえた口だしね」
「……しかし本当にこんな話で盛り上がれる時が来るなんて思わなかったな」
神奈が言う。
「いいか、誠司郎が雪を泣かせるような真似をしたらすぐに言いなさい」
神奈が絶対に許さないという。
「茉奈もそうだよ。結が何か悪さしたらすぐに言いなさい」
愛莉が言うと茉奈は「それはない」と言った。
あんな態度だけど茉奈の事を大事にしてくれるんだそうだ。
少しだけ羨ましかった。
誠司郎も優しいけど、まだ子供だ。
早く大人になりたいとさえ思った。
「おーい、こっちの準備は出来たぞ」
渡辺さんが言うと私達は食材を持ってテントに向かった。
(2)
BBQの後花火をしている間一人で寝そべって星を見ていた。
「まーたこんなところで一人でいる。楽しむときは思いっきり楽しんだ方がいいぞ」
茉奈は俺を探していたようだ。
茉奈は俺の隣に座ると俺に聞いていた。
「今年は何を悩んでいるんだ?」
「将来」
「え?」
茉菜は呆れているようだ。
「そっか、もう高校生だもんね。で、警察官になりたいんだっけ?」
心配しないでも結なら何にだってなれるよ。
「で、結の夢って他にあるのか?」
「夢って言うか希望っていうか……」
茉奈に相談してみるのも手かもしれない。
どんな反応でもそれですっきりできるならそうしたい。
半分自棄になっていた。
「なあ、茉奈」
「どうした?」
「願い事って一つだけ叶えてくれるんだよな?」
「……つまり結はいくつか願いがあるの?」
「うん」
「……教えて。私で力になれるなら。まだ結に比べたら頼りないかもしれないけど」
茉奈の事だから大丈夫だ。
「俺が願う事は茉奈が幸せになれる事」
「だったら私は……」
「だけどもう一つあるんだ」
「……それは何?」
茉奈の表情が真剣になっていた。
俺は伝えた。
「俺は……茉奈と一緒にいたいんだ」
「え?」
だけど茉奈が幸せになるという事はいつか茉奈に彼氏が出来て結婚して子供をつくるって事だろ?
その時俺は一人だ。
それが怖いんだ。
俺が今考えていることを全て伝えた。
突然言い出したから茉奈も驚いて何も言わなかった。
これでよかったんだな。
「ありがとう。すっきりしたよ。そろそろ夜食待ってるだろうから戻ろうか」
そう言って立ち上がろうとした時茉奈が腕を掴んだ。
「どうしてそんなに臆病になるの?結は皇帝だって皆言ってるよ!?」
俺が望めばなんで叶う。
願い事が一つだけ?
俺は願いを叶えてもらう立場じゃない。
皆の願いを背負う立場だ。
俺が皆の希望なんだ。
「そんなに大した人間じゃないよ」
現に俺は自分の事は何も出来ない。
ただ茉奈の幸せを願うだけのちっぽけな存在。
「なるほどね。結が何を勘違いしているのか私が教えてあげる……目を閉じて」
そう言って茉奈も立ち上がった。
殴られるのかな。
歯を食いしばった方がいいだろうか?
逆だった。
茉菜は俺の唇にキスをしていた。
離れようにも茉奈がしっかりと抱きついてそれを許してくれない。
キスを終えると俺の胸の上に顔を置く。
「私を幸せに出来るのは結だけだ」
「……それはずっとそうだって誓えるのか?」
「そうじゃない相手に体を預けたりしないよ」
茉奈と一緒にいたい?
俺がそれを望むならずっと叶えてあげる。
ただし私からも一つ条件を言わせてもらう。
「絶対に私のそばから離れないで」
今はこれで私は十分幸せだよ。
これで俺の願いの一つは叶ったでしょ?
後の一つもちゃんと叶えてあげる。
「そろそろ戻ろう」
そう言って茉奈が歩こうとするとすぐに止まった。
何かを見つけたみたいだ。
茉菜の視線の先には神奈や水奈がいた。
「お熱いんだな」
水奈がそう言うと、キスをしてきた茉奈は恥ずかしそうに俯いている。
「ほら、みんな待ってるんだ。茉奈のキスの感想を話題にラーメン食うぞ」
神奈がそう言って俺達を呼ぶ。
俺の心が茉奈に聞こえているとしたら伝えたい。
どうか苦しまないで欲しい。
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