513 / 535
survivor
しおりを挟む
(1)
「なんだお前?」
練習を終えて帰ろうとしていると、片目の男が待ち伏せをしていた。
多分片目に眼帯をしているのは中二病とかそういう奴じゃないだろう。
そしてその男の正体を里紗は知っているようだった。
「し、士度……」
「お前の知り合いか?……あれ?士度、どっかで聞いたな」
亜咲にも心当たりがあるようだ。
しかし、亜咲の説明を聞いている場合ではなさそうだった。
男がポケットからナイフを取り出す。
「里紗……まさかお前が俺達を裏切っていたとはな。三流ヤクザの映画でも見てるみたいだぜ」
「士度……もう洋介から聞いたんじゃないの?」
「何の話だ?」
亜咲が聞くと里紗は淡々と言った。
「私はサイクロックスを抜けると伝えた」
「ああ、聞いてるぜ。その理由がまさか増渕のバンドに入ったからって聞いた時にはさすがにイラついたけどな」
士度という男はぶち切れて大塚洋介を含むメンバー全員を血祭りにあげたらしい。
洋介の事は天音を通じて聞いていた。
今も入院しているらしい。
ああ、あの時言ってたのはこの士度という男の事か。
「気をつけろ、お前達を狙っているのは能力者だ」
天音がそう言っていた。
「一番許せないのは増渕だが次に許せないのはお前だ里紗」
「士度の気持ちは分かってる。でもこんなやり方間違ってる」
サイクロックスは里紗たちが入って半年もたたずに士度が逮捕されて休止していた。
その間も洋介と里紗を覗くメンバーは女性にちやほやされて音合わせすらろくにしなかったらしい。
そしてそんなバンドに嫌気がさしていた頃に俺達を見つけた。
まあ、片目を失って荒れる気持ちも分かるが復讐をしたところで未来が変わるわけでもない。
精々不幸な人間を新たに作り出すのが関の山だ。
そんな負の連鎖を断たなければ未来はない。
「士度。お前の気持ちはある程度は理解する。でもこんな事しても無駄だ。諦めろ」
「なんだお前?部外者が口挟むんじゃねーよ」
「里紗は同じバンドの仲間だ。それに……俺達に手を出したら文字通りお前の将来はないぞ?」
「なんだと?……ああ、そういう事か」
そう言って士度は笑いだした。
何がおかしいのか分からないがとりあえず里紗と樹理の前に立っていた。
「お前達SHって事か……ことあるごとに俺のやることを邪魔する目障りな連中。……ちょうどいい、全員まとめて始末してやる!」
「だめ!やめて!以前の士度はそんな奴じゃなかった!」
「うるせえ!こんな俺に変わり果てたのも全部増渕やSHのせいだろうが!」
そう言って突進してくる士度。
何か盾になりそうなものを探す暇すらなかった。
俺の能力は一定の範囲にある物を自由に動かす能力。
しかし士度の能力は光。
奴が今一番憧れている物が能力の正体だった。
これは体で防ぐしかないか。
「樹理は里紗を連れて事務所に逃げろ!」
「悠翔!ダメ!!」
「心配しないでいいよ」
聞いたことのない声が聞こえた時、目の前に少年の姿をした何かが現れた。
そいつは軽々と士度の腕を掴んで攻撃を防いだ。
「なんだこのガキ!?」
「悠翔。あまり無茶するのはよくない。お前には樹理がいるんだろ?」
士度の話など完全に無視して俺に忠告していた。
「君はなぜここにいるの?」
「ああ、それはそんなに難しい事じゃないよ」
士度がリベリオンの人間だから機会をうかがっていた。
少年はそう言った。
「お前もSHの仲間か?」
「ああ、違うよ。俺はもっと違う人の意思で動いている」
「誰だそいつ」
「ごちゃごちゃ五月蠅いよお前。これから死ぬんだから少し黙っててくれない?」
「ガキに何が出来る……!?」
士度が最後まで話す前に少年は士度を思い切り殴り飛ばした。
士度はかなり吹き飛ばされていた。
「まず一つ。お前と会話が出来る。二つ目、お前を殴ることが出来る。そして最後の三つ目……」
少年はそう言うと左手に炎の球を発生させる。
「これからお前を焼却する」
「俺はリベリオンだぞ!SHが手を出したらどうなるかわかってるのか?」
「だから俺はSHじゃないと言っただろ?そうやって人のいう事を無視するからこんな最後を迎えるんだ」
それにリベリオンにはすでに警告を送った。
それは脅しじゃない。
少年の主はその為にすでに行動を始めた。
だから少年がこの場所にいる。
「ちょ、ちょっと待って。ここで焼死体なんて見つかったらシャレにならない」
樹理がそう言って少年を止めようとする。
だけど少年は気にもかけなかった。
「大丈夫。痕跡を一切残さない。それにこいつに関する情報は明日の朝には世界中から消えている」
「じゃあね」と言って士度に向かって放り投げた炎の球を右手で叩きつけた。
士度の体に命中すると炎がじわじわと蝕んでいく。
不思議な事に士度は悲鳴を上げなかった。
痛覚を止めたらしい。
「どうせ誰もお前の事なんて覚えてないから最後の一言もいらないよね?じゃあね」
そう言って士度の最後を見ずに少年は消えた。
「士度!」
近づいては危ないと樹理が抑えている里紗が叫んでいた。
「気にするな。……どうせ俺の事なんて明日には忘れてるんだろ」
「でも……」
「俺は糞みたいな人生だったけど……里紗は頑張れよ」
そう言い残して士度は消滅した。
「士度……」
その場に崩れ落ちる里紗。
「里紗……まさかお前……」
「あいつを最初に知ったのは小学生の時だった」
当時から親の影響を受けて里紗はロックが好きだったそうだ。
そしてサイクロックスの曲を聞いて感動したらしい。
しかし突然の父親が働く会社の父さん。
両親は里紗を残して失踪。
途方に暮れていた士度が引き取った。
亜咲が起こした事件はその後の話。
それから士度は荒れ、そして警察に逮捕される。
その後洋介の家に引き取られるけど洋介との関係を親が知り、家を追い出す。
それからは一人で暮らしていた。
「洋介はベースを士度から教えてもらっていた」
その洋介も士度のベースには敵わないと思っているらしい。
里紗はギターを選んだ。
だけど亜咲のベースを聞いて士度を思い出したらしい。
あの事件が起こらなかったら今頃脚光を浴びていたはずの士度。
人生はどこで躓くかわからない。
だけど悲しんでいる里紗に当時の士度は言ったらしい。
「下を向くんじゃない。しっかりと空を見て歩け」
そうじゃないと未来に光がさすことは無い。
どんな状況でも未来という希望はある。
諦めるな。
そう里紗に士度は言ったらしい。
しかしその士度が今いなくなった。
「お前もSHを恨むのか?」
亜咲が聞いたけど里紗は首を振った。
「そんな事をしても無駄だって知ってるから。士度も言っていたの」
どんなに腕を伸ばしても空には届かない。
士度もそう諦めていたはずだったのに……。
「そこから先は僕が説明するよ」
そう言ってさっきとは別の少年が現れた。
「僕の名は刹那。主のエイリアス」
主の名前は明かさなかったけどエイリアスと言った時点で一人しかいないだろう。
「監獄にいるあいだにリベリオンのメンバーと接触したそうだよ」
空に届くか届かないかなんてやって見ないと分からない。
俺達と一緒に組もう。
奴らの空を絶望に染めてやろうじゃないか。
そう言って士度に近づいた。
士度の思想を捻じ曲げて来た。
そして出所後十郎に会った。
単に能力者の確保が十郎の狙い。
士度は巻き込まれただけ。
刹那がそう説明すると亜咲が怒りを露わにする。
「許せねぇ……そいつをぶん殴らねえと気が済まない」
「諦めた方がいい。バルバトスも言ってたろ?主が動き出した」
主はリベリオンを完全に消滅させるまで止める気はない。
うかつに飛び込むと巻き込まれることになる。
だから後始末は僕達に任せて。
「やっぱりリベリオンが動いていたんだな?」
振り返ると天音が立っていた。
「今の話が本当なら許して置けませんね」
隣に立っている大地が言った。
「SHが何をしようと邪魔するつもりはない。だからSHも邪魔しないで。エデンからの伝達はそれだけ。じゃあね」
そう言って刹那が消えた。
「……そういうわけだ。お前らはデビューする事だけを考えろ」
樹理の両親も決してSHの闇の部分には触れなかった。
それが自分たちの人生を変えてしまうから。
決して臆病だからじゃない。
仲間がそう言って守ってくれるから。
素人が下手に首突っ込んでも他の皆の足手まといだ。
後は私達に任せろ。
天音がそう言うと俺達は家に帰った。
「護衛とかなくても平気なんでしょうか?」
樹理が聞くと天音は笑って返した。
「あいつはSH全員を守る気でいるらしい」
常にエデンと呼ばれるエイリアスの監視下にいる。
何か仕掛けて来たところでバルバトスとやらの餌になるだけだ。
家に帰ると母さん達が待っていた。
「話は天音から聞いた。気をつけろよ」
「俺よりも優奈達の方が危険なんじゃ?」
「逆だよ。優奈達に限って言えば相手が死なない事を祈るよ」
「水奈はどうして優奈達から取り上げようとしないんだ?」
父さんが母さんに叱っていた。
「今悠翔が言った通りリベリオンとかいう奴らがうろついてるなら防犯グッズくらい必要だろ?」
母さんがそう返すと父さんはため息を吐いていた。
優奈に危害を加えたらまず海翔が黙ってないだろう。
SHのメンバーに危害を加えたら必ず潰しにかかるはず。
そうならないように祈るしかなかった。
(2)
「なんだお前ら?」
俺達を取り囲む大人たち。
こんな時間に仕事は無いのだろうか?
その疑問を律義にも答えてくれた。
「悪いがこれがおじさん達の仕事なんだ……恨むなら親を恨め」
にやにや笑いながらおじさん達は懐から何かを取り出そうとした時、菫が先に行動した。
パスッ
乾いた音を立てた銃声とともに眉間を撃ちぬかれて倒れるおじさん。
恨むなら自分のリーダーを恨め。
「菫、いくらなんでもそれじゃ正当防衛にならねーんじゃねーのか?」
「何馬鹿な事言ってんだ茉莉?チャカ持ってる時点でそんな言い訳通らねえだろ?」
菫の言う通りだな。
「てめーら何の真似だ!?」
おじさんの仲間たちが銃を構える。
ここは廃墟でも戦場でもない。
おじさん達につけられてるのを悟ってなるべく被害が無いようにと秋久が橋の下に誘導した。
おじさんの質問に秋久が答えた。
「いや、某国では懐に手を入れた時点で発砲していいそうですから」
だから正当防衛だと秋久は主張する。
射殺した時点で過剰防衛だと考える仲間はいなかった。
「お前らだろ?最近この辺で勝手にウロチョロして挑発してくる馬鹿共ってのは」
「リブロースだかなんだかしらねーが、見つけたら殺しとけって天音が言ってたから死ね」
「秋久と朔は私達の事はいいから心音たちを任せる」
そう言うと2人が暴れ出す。
「このガキまじか!?」
そんな声も聞こえるけど結莉が代弁してくれた。
「多分結莉は思うんだよね。結はこう考えてる」
銃を人に向けていいのは自分が撃ち殺されてもいい覚悟を持った奴だけだ。
だから死ね。
「でしょ?結」
結莉が振り向くと俺は違う事を考えていた。
「そういうわけだからエデンは他の連中を見ていて」
そういうと何も起きなかった。
エデンが手を出すのが一番手っ取り早いけどそうすると受験勉強で鬱憤が溜まってる茉莉達が怒り出す。
「私の獲物を横取りするな!」
多分そう俺に抗議するだろう。
さすがに二人とも馬鹿じゃない。
俺を殺せるなんて事は考えていないようだ。
しかしきっと天音が黙ってない。
「結は茉奈の相手もしないで何一人で遊んでるんだ!?」
「天音も何を馬鹿な事を言ってるんですか!?いい加減に茉莉達から武器を取り上げなさい」
「愛莉ちゃん。今は物騒な時期。丸腰なんて危険すぎるわ」
「その為に朔達がいるんじゃないの?」
「朔がチャカ持つのは許して私達はダメなんて筋が通って無いぞ!」
「そもそも日本で拳銃を所持していることがダメだってどうしてわからないのですか!?」
「まあまあ、愛莉。ここはものの考え様だよ」
「冬夜さん?」
愛莉がじいじの顔を見るとじいじは言った。
「この子達にとって拳銃は安全弁だよ」
「どうしてですか?」
「もし持ってなかったらいよいよ結莉や結が暴れ出す」
2人が暴れ出して被る被害に比べたら何人か死んだところでどうせ使い捨てのキャラだから問題ないよ。
「うぅ……」
愛莉がそうやって唸る時は反論できない時。
じいじはにこりと笑っていた。
「あまり人が密集してるところではだめだよ。誤射したらシャレにならない」
今も純也が色々手引きして「映画の撮影」と言う事で片づけてるらしい。
でもその純也も今は俺が動いてるから後始末が楽だと言っていた。
俺の能力”永遠の不在証明”は世界中の人間から特定の人間に関する記憶を抹消する能力。
誰も知らない人だから捜査する必要もない。
存在は影が飲み込んでしまう。
そうこうしているうちに最後の一人になった。
「ま、待て。助けてくれ」
命乞いを始めるおっさん。
だけど希美は取り付く島もない。
「だめだ。諦めろ。お前は一番怒らせてはいけない人間を怒らせた」
「どういうことだ?」
おじさんが言うと菫は俺を見る。
「お前ら仕掛けてくるのは歓迎するが、少しは情報戦というのを覚えて来い」
下校中を狙ってくるなんて昼休みに襲撃してきた馬鹿とそんなに変わらないぞ。
分からないのか?
お前は俺の最大の楽しみの買い食いの時間を潰したんだ。
父さん達は許してくれるけど天音は最近五月蠅いらしい。
「夕飯に間に合わなくなっても知らないぞ」じゃない。
「夕飯一緒に食ったならどうして彼氏と一晩過ごさないんだ?」と言われるらしい。
茉奈は週末家に泊りに来る。
「まあ、そういうわけだからとりあえず死ね」
茉莉がそう言って容赦なく引き金を引く。
後は俺が影の中に引きずり込んで証拠を隠蔽する。
多分エデンも能力を使っているだろう。
「しかし今まで大人しかったのにどうしてこの時期なんだろうね」
結莉が言うと秋久が答えた。
「今だからだよ」
「どういうこと?」
「俺達はもうじき入試だ。そんな時期に問題を起こしたら大変だ」
その時点で相手が自分は馬鹿ですと自爆しているんだけど。
恵美や晶が放っておくわけがない。
全力でもみ消しにかかる。
始末を済ませると茉莉は結莉と相談する。
「大人しくうどんにしておくか?」
「それがいいかもね」
「しかし、なんか毎日麺類も飽きがくるよな」
「この辺牛丼屋ないもんね」
どうしてこう麺類ばかり増えるんだろう?
女子高生らしいような響きのパスタを売ってるドーナツ屋さんは潰れた。
餃子の美味しい店もなくなった。
代わりにラーメン屋が増えた。
この辺もラーメン屋の激戦区と化していた。
ドーナツ屋が無くなったのは女子高生はうどんを食べるから。
なぜかパスタじゃなくてうどんを好むそうだ。
どうして同じ麺類なのにうどんを選ぶんだろう?
そんな疑問を結莉に聞いてみると結莉は笑顔で答えた。
「結だってうどんよりラーメンが好きでしょ?」
確かに結莉の言う通りだな。
うどんを食べて茉奈を送って家に買えると母さんが出迎えてくれた。
「まーた、買い食いしたでしょ?」
しかもいつもより遅い。
まさかとんかつ食べたなんて言わないでしょうね。
母さんに襲撃があったことを伝えた。
すると母さんの表情が変わる。
「その事で父さんから話があるらしいから夕食の後にしようね」
母さんが言う通りに夕食を済ませるとリビングのソファに座った。
「回りくどい事は言わない。今のSHのリーダーは結だ」
「うん」
「だから結に父さんからお願いする。襲撃してきた馬鹿は勝手に始末したらいい」
どうせ後始末はエデンとやらがするだろうから。
俺も相手に直接危害を加えるような事はするなとエイリアスに伝えてる。
そんな事をしたら茉莉達が怒り出す。
俺達は受験を控えている。
内申点なんて恵美達が圧力をかけるだろう。
「結一人で大丈夫なの?」
母さんは俺を心配していた。
だけど父さんは違うみたいだ。
「結は何も言わないけど、何かしら手がかりをつかんだんだろう。だから結一人で始末すると決めた」
リーダーの十郎も大した強さを持っていないのは父さんが知ってる。
話が終わると部屋に戻って茉奈と話をする。
茉奈も同じ話を学や水奈から聞いたそうだ。
善明は言ったらしい。
「相手のご冥福を祈るしかないね」
俺は一人残さず殺すつもりでいた。
理由は簡単だ。
手心を加えて見逃したりしたとしよう。
しかし相手は逆恨みをする。
そしてまた襲い掛かってくるだろう。
どれだけ始末しても湯水のように湧いてくる能力者。
だから俺が一人で始末する。
そんな話ばかりで嫌ったのか茉奈が話を変えていた。
「来月楽しみだね」
「なんで?」
「そろそろ部屋探さないと」
へ?
「私はワンルームで良いと思うけど結はどう思う?」
「茉奈は着替えとか気にしないのか?」
「そんなの気にする人と同棲しないよ。それにそんな事の為に家賃上がるのって馬鹿馬鹿しいじゃない」
「なるほどな」
「それにとーやも車の免許考えないとね」
どんな車が好きなの?
「うーん、走ればどんなのでもいいよ」
「じゃあ、前に言った案でいこっか?」
俺は乗り心地重視、茉奈はスポーツ車だっけ?
「でもまだ教習も受けてないのに飛ばせるか分からないぞ」
「結なら大丈夫って水奈も言ってた」
そんなものなのだろうか?
「毎日いちゃいちゃできるね」
結莉はまだ合格してない大学生活を夢見てるらしい。
「結は経済学部なんでしょ?結莉もそうするから」
「大丈夫なの?」
「一緒の単位履修しようね」
じゃあ、問題ないな。
俺はいよいよ大学生になる。
そしてSHという大きな組織を任せられるのだろう。
父さんも同じだ。
すでに渡辺班のブレインとして動いている。
だから心配だった。
リベリオンの始末。
最初で最後になるであろう大仕事。
俺の代で片付けるつもりでいた。
「なんだお前?」
練習を終えて帰ろうとしていると、片目の男が待ち伏せをしていた。
多分片目に眼帯をしているのは中二病とかそういう奴じゃないだろう。
そしてその男の正体を里紗は知っているようだった。
「し、士度……」
「お前の知り合いか?……あれ?士度、どっかで聞いたな」
亜咲にも心当たりがあるようだ。
しかし、亜咲の説明を聞いている場合ではなさそうだった。
男がポケットからナイフを取り出す。
「里紗……まさかお前が俺達を裏切っていたとはな。三流ヤクザの映画でも見てるみたいだぜ」
「士度……もう洋介から聞いたんじゃないの?」
「何の話だ?」
亜咲が聞くと里紗は淡々と言った。
「私はサイクロックスを抜けると伝えた」
「ああ、聞いてるぜ。その理由がまさか増渕のバンドに入ったからって聞いた時にはさすがにイラついたけどな」
士度という男はぶち切れて大塚洋介を含むメンバー全員を血祭りにあげたらしい。
洋介の事は天音を通じて聞いていた。
今も入院しているらしい。
ああ、あの時言ってたのはこの士度という男の事か。
「気をつけろ、お前達を狙っているのは能力者だ」
天音がそう言っていた。
「一番許せないのは増渕だが次に許せないのはお前だ里紗」
「士度の気持ちは分かってる。でもこんなやり方間違ってる」
サイクロックスは里紗たちが入って半年もたたずに士度が逮捕されて休止していた。
その間も洋介と里紗を覗くメンバーは女性にちやほやされて音合わせすらろくにしなかったらしい。
そしてそんなバンドに嫌気がさしていた頃に俺達を見つけた。
まあ、片目を失って荒れる気持ちも分かるが復讐をしたところで未来が変わるわけでもない。
精々不幸な人間を新たに作り出すのが関の山だ。
そんな負の連鎖を断たなければ未来はない。
「士度。お前の気持ちはある程度は理解する。でもこんな事しても無駄だ。諦めろ」
「なんだお前?部外者が口挟むんじゃねーよ」
「里紗は同じバンドの仲間だ。それに……俺達に手を出したら文字通りお前の将来はないぞ?」
「なんだと?……ああ、そういう事か」
そう言って士度は笑いだした。
何がおかしいのか分からないがとりあえず里紗と樹理の前に立っていた。
「お前達SHって事か……ことあるごとに俺のやることを邪魔する目障りな連中。……ちょうどいい、全員まとめて始末してやる!」
「だめ!やめて!以前の士度はそんな奴じゃなかった!」
「うるせえ!こんな俺に変わり果てたのも全部増渕やSHのせいだろうが!」
そう言って突進してくる士度。
何か盾になりそうなものを探す暇すらなかった。
俺の能力は一定の範囲にある物を自由に動かす能力。
しかし士度の能力は光。
奴が今一番憧れている物が能力の正体だった。
これは体で防ぐしかないか。
「樹理は里紗を連れて事務所に逃げろ!」
「悠翔!ダメ!!」
「心配しないでいいよ」
聞いたことのない声が聞こえた時、目の前に少年の姿をした何かが現れた。
そいつは軽々と士度の腕を掴んで攻撃を防いだ。
「なんだこのガキ!?」
「悠翔。あまり無茶するのはよくない。お前には樹理がいるんだろ?」
士度の話など完全に無視して俺に忠告していた。
「君はなぜここにいるの?」
「ああ、それはそんなに難しい事じゃないよ」
士度がリベリオンの人間だから機会をうかがっていた。
少年はそう言った。
「お前もSHの仲間か?」
「ああ、違うよ。俺はもっと違う人の意思で動いている」
「誰だそいつ」
「ごちゃごちゃ五月蠅いよお前。これから死ぬんだから少し黙っててくれない?」
「ガキに何が出来る……!?」
士度が最後まで話す前に少年は士度を思い切り殴り飛ばした。
士度はかなり吹き飛ばされていた。
「まず一つ。お前と会話が出来る。二つ目、お前を殴ることが出来る。そして最後の三つ目……」
少年はそう言うと左手に炎の球を発生させる。
「これからお前を焼却する」
「俺はリベリオンだぞ!SHが手を出したらどうなるかわかってるのか?」
「だから俺はSHじゃないと言っただろ?そうやって人のいう事を無視するからこんな最後を迎えるんだ」
それにリベリオンにはすでに警告を送った。
それは脅しじゃない。
少年の主はその為にすでに行動を始めた。
だから少年がこの場所にいる。
「ちょ、ちょっと待って。ここで焼死体なんて見つかったらシャレにならない」
樹理がそう言って少年を止めようとする。
だけど少年は気にもかけなかった。
「大丈夫。痕跡を一切残さない。それにこいつに関する情報は明日の朝には世界中から消えている」
「じゃあね」と言って士度に向かって放り投げた炎の球を右手で叩きつけた。
士度の体に命中すると炎がじわじわと蝕んでいく。
不思議な事に士度は悲鳴を上げなかった。
痛覚を止めたらしい。
「どうせ誰もお前の事なんて覚えてないから最後の一言もいらないよね?じゃあね」
そう言って士度の最後を見ずに少年は消えた。
「士度!」
近づいては危ないと樹理が抑えている里紗が叫んでいた。
「気にするな。……どうせ俺の事なんて明日には忘れてるんだろ」
「でも……」
「俺は糞みたいな人生だったけど……里紗は頑張れよ」
そう言い残して士度は消滅した。
「士度……」
その場に崩れ落ちる里紗。
「里紗……まさかお前……」
「あいつを最初に知ったのは小学生の時だった」
当時から親の影響を受けて里紗はロックが好きだったそうだ。
そしてサイクロックスの曲を聞いて感動したらしい。
しかし突然の父親が働く会社の父さん。
両親は里紗を残して失踪。
途方に暮れていた士度が引き取った。
亜咲が起こした事件はその後の話。
それから士度は荒れ、そして警察に逮捕される。
その後洋介の家に引き取られるけど洋介との関係を親が知り、家を追い出す。
それからは一人で暮らしていた。
「洋介はベースを士度から教えてもらっていた」
その洋介も士度のベースには敵わないと思っているらしい。
里紗はギターを選んだ。
だけど亜咲のベースを聞いて士度を思い出したらしい。
あの事件が起こらなかったら今頃脚光を浴びていたはずの士度。
人生はどこで躓くかわからない。
だけど悲しんでいる里紗に当時の士度は言ったらしい。
「下を向くんじゃない。しっかりと空を見て歩け」
そうじゃないと未来に光がさすことは無い。
どんな状況でも未来という希望はある。
諦めるな。
そう里紗に士度は言ったらしい。
しかしその士度が今いなくなった。
「お前もSHを恨むのか?」
亜咲が聞いたけど里紗は首を振った。
「そんな事をしても無駄だって知ってるから。士度も言っていたの」
どんなに腕を伸ばしても空には届かない。
士度もそう諦めていたはずだったのに……。
「そこから先は僕が説明するよ」
そう言ってさっきとは別の少年が現れた。
「僕の名は刹那。主のエイリアス」
主の名前は明かさなかったけどエイリアスと言った時点で一人しかいないだろう。
「監獄にいるあいだにリベリオンのメンバーと接触したそうだよ」
空に届くか届かないかなんてやって見ないと分からない。
俺達と一緒に組もう。
奴らの空を絶望に染めてやろうじゃないか。
そう言って士度に近づいた。
士度の思想を捻じ曲げて来た。
そして出所後十郎に会った。
単に能力者の確保が十郎の狙い。
士度は巻き込まれただけ。
刹那がそう説明すると亜咲が怒りを露わにする。
「許せねぇ……そいつをぶん殴らねえと気が済まない」
「諦めた方がいい。バルバトスも言ってたろ?主が動き出した」
主はリベリオンを完全に消滅させるまで止める気はない。
うかつに飛び込むと巻き込まれることになる。
だから後始末は僕達に任せて。
「やっぱりリベリオンが動いていたんだな?」
振り返ると天音が立っていた。
「今の話が本当なら許して置けませんね」
隣に立っている大地が言った。
「SHが何をしようと邪魔するつもりはない。だからSHも邪魔しないで。エデンからの伝達はそれだけ。じゃあね」
そう言って刹那が消えた。
「……そういうわけだ。お前らはデビューする事だけを考えろ」
樹理の両親も決してSHの闇の部分には触れなかった。
それが自分たちの人生を変えてしまうから。
決して臆病だからじゃない。
仲間がそう言って守ってくれるから。
素人が下手に首突っ込んでも他の皆の足手まといだ。
後は私達に任せろ。
天音がそう言うと俺達は家に帰った。
「護衛とかなくても平気なんでしょうか?」
樹理が聞くと天音は笑って返した。
「あいつはSH全員を守る気でいるらしい」
常にエデンと呼ばれるエイリアスの監視下にいる。
何か仕掛けて来たところでバルバトスとやらの餌になるだけだ。
家に帰ると母さん達が待っていた。
「話は天音から聞いた。気をつけろよ」
「俺よりも優奈達の方が危険なんじゃ?」
「逆だよ。優奈達に限って言えば相手が死なない事を祈るよ」
「水奈はどうして優奈達から取り上げようとしないんだ?」
父さんが母さんに叱っていた。
「今悠翔が言った通りリベリオンとかいう奴らがうろついてるなら防犯グッズくらい必要だろ?」
母さんがそう返すと父さんはため息を吐いていた。
優奈に危害を加えたらまず海翔が黙ってないだろう。
SHのメンバーに危害を加えたら必ず潰しにかかるはず。
そうならないように祈るしかなかった。
(2)
「なんだお前ら?」
俺達を取り囲む大人たち。
こんな時間に仕事は無いのだろうか?
その疑問を律義にも答えてくれた。
「悪いがこれがおじさん達の仕事なんだ……恨むなら親を恨め」
にやにや笑いながらおじさん達は懐から何かを取り出そうとした時、菫が先に行動した。
パスッ
乾いた音を立てた銃声とともに眉間を撃ちぬかれて倒れるおじさん。
恨むなら自分のリーダーを恨め。
「菫、いくらなんでもそれじゃ正当防衛にならねーんじゃねーのか?」
「何馬鹿な事言ってんだ茉莉?チャカ持ってる時点でそんな言い訳通らねえだろ?」
菫の言う通りだな。
「てめーら何の真似だ!?」
おじさんの仲間たちが銃を構える。
ここは廃墟でも戦場でもない。
おじさん達につけられてるのを悟ってなるべく被害が無いようにと秋久が橋の下に誘導した。
おじさんの質問に秋久が答えた。
「いや、某国では懐に手を入れた時点で発砲していいそうですから」
だから正当防衛だと秋久は主張する。
射殺した時点で過剰防衛だと考える仲間はいなかった。
「お前らだろ?最近この辺で勝手にウロチョロして挑発してくる馬鹿共ってのは」
「リブロースだかなんだかしらねーが、見つけたら殺しとけって天音が言ってたから死ね」
「秋久と朔は私達の事はいいから心音たちを任せる」
そう言うと2人が暴れ出す。
「このガキまじか!?」
そんな声も聞こえるけど結莉が代弁してくれた。
「多分結莉は思うんだよね。結はこう考えてる」
銃を人に向けていいのは自分が撃ち殺されてもいい覚悟を持った奴だけだ。
だから死ね。
「でしょ?結」
結莉が振り向くと俺は違う事を考えていた。
「そういうわけだからエデンは他の連中を見ていて」
そういうと何も起きなかった。
エデンが手を出すのが一番手っ取り早いけどそうすると受験勉強で鬱憤が溜まってる茉莉達が怒り出す。
「私の獲物を横取りするな!」
多分そう俺に抗議するだろう。
さすがに二人とも馬鹿じゃない。
俺を殺せるなんて事は考えていないようだ。
しかしきっと天音が黙ってない。
「結は茉奈の相手もしないで何一人で遊んでるんだ!?」
「天音も何を馬鹿な事を言ってるんですか!?いい加減に茉莉達から武器を取り上げなさい」
「愛莉ちゃん。今は物騒な時期。丸腰なんて危険すぎるわ」
「その為に朔達がいるんじゃないの?」
「朔がチャカ持つのは許して私達はダメなんて筋が通って無いぞ!」
「そもそも日本で拳銃を所持していることがダメだってどうしてわからないのですか!?」
「まあまあ、愛莉。ここはものの考え様だよ」
「冬夜さん?」
愛莉がじいじの顔を見るとじいじは言った。
「この子達にとって拳銃は安全弁だよ」
「どうしてですか?」
「もし持ってなかったらいよいよ結莉や結が暴れ出す」
2人が暴れ出して被る被害に比べたら何人か死んだところでどうせ使い捨てのキャラだから問題ないよ。
「うぅ……」
愛莉がそうやって唸る時は反論できない時。
じいじはにこりと笑っていた。
「あまり人が密集してるところではだめだよ。誤射したらシャレにならない」
今も純也が色々手引きして「映画の撮影」と言う事で片づけてるらしい。
でもその純也も今は俺が動いてるから後始末が楽だと言っていた。
俺の能力”永遠の不在証明”は世界中の人間から特定の人間に関する記憶を抹消する能力。
誰も知らない人だから捜査する必要もない。
存在は影が飲み込んでしまう。
そうこうしているうちに最後の一人になった。
「ま、待て。助けてくれ」
命乞いを始めるおっさん。
だけど希美は取り付く島もない。
「だめだ。諦めろ。お前は一番怒らせてはいけない人間を怒らせた」
「どういうことだ?」
おじさんが言うと菫は俺を見る。
「お前ら仕掛けてくるのは歓迎するが、少しは情報戦というのを覚えて来い」
下校中を狙ってくるなんて昼休みに襲撃してきた馬鹿とそんなに変わらないぞ。
分からないのか?
お前は俺の最大の楽しみの買い食いの時間を潰したんだ。
父さん達は許してくれるけど天音は最近五月蠅いらしい。
「夕飯に間に合わなくなっても知らないぞ」じゃない。
「夕飯一緒に食ったならどうして彼氏と一晩過ごさないんだ?」と言われるらしい。
茉奈は週末家に泊りに来る。
「まあ、そういうわけだからとりあえず死ね」
茉莉がそう言って容赦なく引き金を引く。
後は俺が影の中に引きずり込んで証拠を隠蔽する。
多分エデンも能力を使っているだろう。
「しかし今まで大人しかったのにどうしてこの時期なんだろうね」
結莉が言うと秋久が答えた。
「今だからだよ」
「どういうこと?」
「俺達はもうじき入試だ。そんな時期に問題を起こしたら大変だ」
その時点で相手が自分は馬鹿ですと自爆しているんだけど。
恵美や晶が放っておくわけがない。
全力でもみ消しにかかる。
始末を済ませると茉莉は結莉と相談する。
「大人しくうどんにしておくか?」
「それがいいかもね」
「しかし、なんか毎日麺類も飽きがくるよな」
「この辺牛丼屋ないもんね」
どうしてこう麺類ばかり増えるんだろう?
女子高生らしいような響きのパスタを売ってるドーナツ屋さんは潰れた。
餃子の美味しい店もなくなった。
代わりにラーメン屋が増えた。
この辺もラーメン屋の激戦区と化していた。
ドーナツ屋が無くなったのは女子高生はうどんを食べるから。
なぜかパスタじゃなくてうどんを好むそうだ。
どうして同じ麺類なのにうどんを選ぶんだろう?
そんな疑問を結莉に聞いてみると結莉は笑顔で答えた。
「結だってうどんよりラーメンが好きでしょ?」
確かに結莉の言う通りだな。
うどんを食べて茉奈を送って家に買えると母さんが出迎えてくれた。
「まーた、買い食いしたでしょ?」
しかもいつもより遅い。
まさかとんかつ食べたなんて言わないでしょうね。
母さんに襲撃があったことを伝えた。
すると母さんの表情が変わる。
「その事で父さんから話があるらしいから夕食の後にしようね」
母さんが言う通りに夕食を済ませるとリビングのソファに座った。
「回りくどい事は言わない。今のSHのリーダーは結だ」
「うん」
「だから結に父さんからお願いする。襲撃してきた馬鹿は勝手に始末したらいい」
どうせ後始末はエデンとやらがするだろうから。
俺も相手に直接危害を加えるような事はするなとエイリアスに伝えてる。
そんな事をしたら茉莉達が怒り出す。
俺達は受験を控えている。
内申点なんて恵美達が圧力をかけるだろう。
「結一人で大丈夫なの?」
母さんは俺を心配していた。
だけど父さんは違うみたいだ。
「結は何も言わないけど、何かしら手がかりをつかんだんだろう。だから結一人で始末すると決めた」
リーダーの十郎も大した強さを持っていないのは父さんが知ってる。
話が終わると部屋に戻って茉奈と話をする。
茉奈も同じ話を学や水奈から聞いたそうだ。
善明は言ったらしい。
「相手のご冥福を祈るしかないね」
俺は一人残さず殺すつもりでいた。
理由は簡単だ。
手心を加えて見逃したりしたとしよう。
しかし相手は逆恨みをする。
そしてまた襲い掛かってくるだろう。
どれだけ始末しても湯水のように湧いてくる能力者。
だから俺が一人で始末する。
そんな話ばかりで嫌ったのか茉奈が話を変えていた。
「来月楽しみだね」
「なんで?」
「そろそろ部屋探さないと」
へ?
「私はワンルームで良いと思うけど結はどう思う?」
「茉奈は着替えとか気にしないのか?」
「そんなの気にする人と同棲しないよ。それにそんな事の為に家賃上がるのって馬鹿馬鹿しいじゃない」
「なるほどな」
「それにとーやも車の免許考えないとね」
どんな車が好きなの?
「うーん、走ればどんなのでもいいよ」
「じゃあ、前に言った案でいこっか?」
俺は乗り心地重視、茉奈はスポーツ車だっけ?
「でもまだ教習も受けてないのに飛ばせるか分からないぞ」
「結なら大丈夫って水奈も言ってた」
そんなものなのだろうか?
「毎日いちゃいちゃできるね」
結莉はまだ合格してない大学生活を夢見てるらしい。
「結は経済学部なんでしょ?結莉もそうするから」
「大丈夫なの?」
「一緒の単位履修しようね」
じゃあ、問題ないな。
俺はいよいよ大学生になる。
そしてSHという大きな組織を任せられるのだろう。
父さんも同じだ。
すでに渡辺班のブレインとして動いている。
だから心配だった。
リベリオンの始末。
最初で最後になるであろう大仕事。
俺の代で片付けるつもりでいた。
0
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる