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ファイアスターター
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(1)
「向山ってのはどいつだ!!」
俺が隣の教室のドアを開けてそう叫んだ。
如月大和も一緒に来ている。
向山ってやつがすぐに反応した。
「俺だけど何の用だ?」
あくまでもとぼけるつもりらしい。
一発入れないと気が済まないからとりあえず殴り飛ばした。
殴り飛ばされた向山が起き上がりながら俺達を睨みつけていた。
何で殴り飛ばされたのが分かってないらしい。
そんな奴に大和が説明した。
「お前先週金曜日の夜何をしたか覚えてるよな?」
「あ、ああ……その事か。SHを名乗ったから怒ってるのか?」
「……そのせいでSHに被害が出たんだよ」
大和も怒りをこらえながら平静を保とうとしていた。
被害にあったのは同じクラスの江口務。
江口家の人間に暴行を加えるなんて無茶したらどうなるか分かってない馬鹿がいたらしい。
で、ご丁寧にその暴行を加えた奴らは「bolz」と名乗った。
いつもなら天音が激怒して消滅させるところだが、今回は少し事情が違った。
連中には理由があった。
それが向山のせいだった。
向山は夜の町で調子に乗ってbolzのメンバーの彼女に手を出した。
しかしSHを名乗られたらさすがに手が出せない。
だけどbolzの頭はそう考えなかった。
戦争に追い込まれる時の感情だ。
やられっぱなしでいられるわけにいかない。
例え負けるとしても意地を通すべきだと判断した。
そしてたまたまデートをしていた務を襲撃した。
彼女の大原彩夏も暴行を受けた。
当然天音の耳に入って一触即発の状態になる。
しかしそこで結が妙な事を言った。
「中学生の問題だからまずは中学生に任せるべき」
その結の意見を父親の空も賛成していた。
で、俺達がこうして教室に乗り込んでいた。
「お前が調子こいてSHの名前を使った結果だ!」
SHのプライドは結や茉莉達……その親の空や天音達が作り上げた頑強な物。
それを傷つけたんだ。
どうやって責任取るつもりだ?
こいつを袋叩きにしようが放っておこうがbolzの末路は確定している……と思ったけどやはり結の奴がどうもおかしい。
「その向山ってやつに詫びさせるのが筋でしょ」
言ってる事は結が正しいけどそれでいいのか?
「ああ、悪かったよ。すまん」
全く反省の色が見えない向山に大和もむっとしたみたいだ。
「謝る相手が違うだろ」
謝るならbolzの連中と彩夏に対してだ。
向山の態度次第では西中と全面戦争になる。
その時にお前もbolz同様等しく死刑してやる。
SHの誇りを傷つけた代償はデカいぞ。
そう言うと向山の態度が変わった。
「地元最強ってのもたいしたことねーな。あの程度のガキにビビりやがって。いいよ、俺が詫びて納めりゃいいんだろ?」
「お前にそんな真似が出来るのかよ!?」
「なめんな!所詮群れてないと何もできない腰抜けSHと一緒にすんなよ」
キレる寸前の大和を抑えて「じゃあ、ちゃんとけじめつけて来い」と言って教室を後にする。
廊下には妹の椿と大和の姉の綺羅が待っていた。
「どうだった?」
綺羅が大和に聞くと大和は親指を立てて見せた。
「予定通りだ」
「それならおっけぇ~。んじゃ私達も作戦通りに動こうか?」
「尾行か?」
「馬鹿ね、気配を消すとかそんな芸当無いのに無理でしょ」
奴らの殆どは西中の生徒。
そんなやつらの根城くらい分かり切っている。
大体のSHの中学生がついて行くと言っていた。
「大勢で行ったら感づかれる」
椿はそう言って下級生たちを説得していた。
「それに下手に奴らに手を出したら茉莉達の制裁を受けるのはあんた達だよ」
綺羅もそう言って3年生だけで動くことにした。
先回りして潜伏も考えたけどそれじゃ向山の償いができない。
あくまでもその後でと考えた俺達は奴らの根城の側にあるコンビニで時間を潰して根城に向かった。
倒れている向山とvolzのメンバーがいた。
「椿達はここにいてくれ」
「分かった」
そう言って山本太一は俺達と暴行を止めるように言う。
連中は太一を見ると動きを止めた。
「やっぱり若いと無茶するよな」
お前がいうかと言いたいけどこらえて向山の側にむかって座った。
「まあ、随分やられたみたいだな。これがSHのリスクだ。理解できたか?」
SHのブランド力は最強だけどそれに歯向かう連中がいたとしたらそいつらも十分過激派だ。
それに襲撃されるリスクを俺達は常に背負っている。
事情も理解できない奴が軽々しく名乗ったらいけない。
そんだけ痛めつけたらわかっただろうしもういいよ。
「ほら、立て。帰ろうぜ」
しかし向山は動かない。
「どうした?」
軽く肩に触れるとうめき声をあげる。
意識はあるみたいだけど何も言わないのはなぜだ。
その疑問に答えたのはvolzの連中だった。
「そいつ喋れないと思うよ?歯、全部砕いたから」
指の骨どころか全身の骨を砕いた。
意識があるのが不思議なくらいだ。
俺が触ったから痛みで気が付いたか?
ここまでやる必要があったのか?
俺は立ち上がると奴らの顔を睨みつける。
「あんた達SHの連中なんだろ?」
連中は俺達を見てにやにやしている。
「あんた達も詫びるべきなんじゃない?」
「なんでだ?」
「だってこいつが偽物だろうとSHが俺達に喧嘩を売ってきたのは事実だろ?」
それならSHのリーダーが菓子折りでも持って土下座するべきじゃないかとかふざけた事を言いだした。
天音がいなくてよかった。
間違いなくまた行方不明者が増える。
しかし太一も大和も静かにしていたけど俺と同じ気持ちだったようだ。
そんな事も分かっていない連中は調子に乗って馬鹿な話を続けた。
「どうした?早く土下座しろよ?」
馬鹿がそう言った時どこからともなく2発の銃声がした。
それと同時に男が膝を崩して倒れこむ。
膝から血が流れていた。
「ほら、早く土下座しろよ。手伝ってやったんだから」
その声で振り返ると茉莉と菫がいた。
2人の手には拳銃がある。
サプレッサーを外したのはおそらく威嚇だろう。
威嚇で膝を撃ちぬいた。
次は連中の心臓でも射貫くつもりだろう。
「なんだお前ら!?」
そんな事も知らないでSHに喧嘩を売るつもりだったのか?
正当性があるとかそんなのゴミ箱に捨ててくるような2人だぞ。
「お前らが呼んだんだろうが?まあ、夏休みでちょうど暇だったからいいけど」
「暇つぶしに殺処分ってのは大学生としてどうなんだ?」
「まあ、履歴書に〇〇人殺害なんて書いたらまずいよな?」
まずいというか会社じゃなくて違う所に放り込まれるぞ。
と、思うのが普通だけどこの2人に限ってはそれは絶対ない。
上級国民とかほざいてるジジイがいたけどそんな物があるとすればこの2人は超級国民だ。
日本国憲法にすら縛られないであろう二人を相手にやけに強気な馬鹿達。
そんなものを気にも止めず栗林快に向山を治療してやるように指示する。
快の能力は蘇生。
命があるものなら何でも治癒する結莉や菫とは対照的な能力。
意識をとりもどした向山を茉莉は笑って言った。
「これで懲りたらもう二度とやるんじゃねーぞ」
あとはSHの問題だからさっさと家に帰れ。
そう言って向山を家に帰らせる。
「勝手な真似してんじゃねえ……」
パン。
馬鹿その1の眉間を希美が撃った銃弾が貫いた。
「誰が勝手にしゃべっていいと言った?」
「それがSHさんの誠意なのか?」
「ああ、そうだよ」
逆らう奴は皆殺しにしてやれ。
天音が常日頃に娘に教えている事。
「先に仕掛けてきたのはお前らだろうが!」
「だからなんだよ?」
気に入らない事があったら片っ端から叩き潰す。
別に間違ったことをしているわけじゃない。
菫と茉莉はまったく気にしていないようだ。
「お前らが俺の連れをおそったからだろ!」
「ああ、それはあの向山ってやつの仕業だろ?」
「SHを名乗ったのだからお前らの責任だろうが!?」
「んなもんいちいち気にするほど暇じゃねーんだよ」
中坊相手に武装して登場した菫がそう言っていた。
茉莉の方はいいかげんこのやりとりにうんざりしたんだろう。
いや、ただ単に晩御飯が気になっただけかもしれない。
「おい、椿。いい加減この馬鹿共の失態を教えてやれ」
「いいよ~。じゃ、これ見てよ」
茉莉が椿を呼ぶと椿は写真を彼らに見せた。
それを見て馬鹿達は動揺していた。
「最初からそういう作戦だったんでしょ?」
椿がそう言って説明した。
こいつらは最初から向山じゃなくSHが狙いだった。
つまり向山が襲ったわけじゃなくて女が向山を誘っただけの話。
それはこいつら馬鹿共が依頼したもの。
連れと言うのは本当らしい。
中学生でもセフレとかいるんだな。
で、端した金で向山を誘惑したらしい。
それを写真に撮って「子供が出来た」と騒ぎ立てた。
学校や親にバレたらまずいと思った向山はSHの名前を使ってもみ消そうとした。
全てvolzの計画通り。
で、写真はその連れと馬鹿のやりとりをしっかり押さえていた。
どうしてそんな写真があるのかは想像に任せる。
「以上だ。何か反論があるなら聞いてやるぞ?」
菫が言うと馬鹿達はもはや戦意を失っていた。
そんな馬鹿達を見て茉莉が2丁拳銃を持って言う。
「じゃあ、そういうわけだ。SHに歯向かったツケはでかすぎたな……」
「茉莉、そこまでだ」
そう言って朔が茉莉の肩を叩いた。
「天音や母さんはともかく愛莉さんに知れたら大ごとだ。これ以上死人を増やすな」
「……ちっ。運がよかったなお前ら」
そう言って茉莉達が銃を降ろした時だった。
「そうでもないみたいだな」
その声を聞いた時は赤い髪の毛の体格のいい男が鈍器を振りまして馬鹿の頭を吹き飛ばした。
それを見た他の馬鹿が怯えている。
「SHに敵対する奴は例外なく同じ最後を迎える。俺もちょっと機嫌が悪い。残念だったな」
茉奈の警護に徹するノルンとうずめに対してバルバトスは超攻撃型エイリアス。
結が敵とみなしたものは誰だろうと処分する役割。
亡骸はいつもの様に処分される。
機嫌が悪いのはただでさえリベリオン狩りで忙しいバルバトスに余計な仕事を作った事。
たったそれだけでこいつらの人生は終わった。
「そうなるなら先に私達に言え!暇つぶしすらできなかったじゃねーか!」
「文句があるなら結に言ってくれ。絶対に茉莉達に手出しさせるな。純也が面倒な事になると言われたんだ」
バルバトスならこいつらの存在した事実を抹消できる。
だから問題にならない。
「お前ら自転車か?」
菫が聞くと俺が「下校途中だから徒歩」だと言うと「送ってやるから乗ってけ」と言ってくれた。
どうして結と結莉が来なかったか?
単に面倒だから勝手にやれという事だったらしい。
いちいちこんなしょうもない事で頭が出てくる必要もないと茉莉達も判断したそうだ。
今年もいつものように物騒な事が多いけどなんとか半年を迎えようとしていた。
(2)
「私に?」
突然女子達から呼び出しを受けた。
何の用かはさっぱり分からない。
今日は運動会。
休み時間になると誠司郎に伝えた。
「ひょっとして告白か?」
本気で心配してるらしい。
ぽかっ
愛莉がこれでいいと言っていた。
「女子からって言ったでしょ。私にそんな趣味ないよ」
「でも……」
「私だって自分で断るくらい出来る。少しは信用してよ」
それでもついて行こうかと言う誠司郎
「それって誠司郎が告白する立場になった時考えてよ」
独りで来て欲しいと言ったのに連れを連れて来てるなんて晒し者以外の何物でもないでしょ?
「信じて……いいんだよな?」
誠司郎でも不安な時があるんだな。
「大丈夫」
「うん。じゃあ、先に弁当食ってる」
誠司郎と別れると教室に向かった。
するとクラスの大多数の女子が私を囲んでいた。
「喧嘩でもするの?」
そういうのは苦手だけど能力があるから大丈夫。
「一つ忠告したい事があるから呼んだだけ」
リーダー格の女子がそう言った。
忠告?
「あんた随分多田君と仲がいいみたいね?」
「それが何か関係あるの?」
「分からないの?多田君絶対嫌がってるの気づかない?」
そんなことない。
それにどうしてこの子に注意されないといけないんだ?
「あなたに関係ない」
「関係あるわよ。皆迷惑してるの!あなたが多田君を独り占めしてるから」
つまり私と誠司郎が仲良くしているのが気に入らない誠司郎が好きな女子が集まってるわけか。
「……で、私に抜け駆けするなって言いたいわけ?」
「抜け駆けにすらなってない。多田君はあなたを煙たがっている。それなのにあなたは遠慮しない。そのくらい気づくでしょ」
私は誠司郎にとって迷惑なのだろうか。
「分かった?これからは少し自重して。多田君は皆で愛でるものなの」
「馬鹿じゃないの?単に誰もが誠司郎にアタックする度胸がない情けない集団ってだけじゃない」
そう言って現れたのは黄島亜優だった。
私が呼び出された時から様子をうかがっていたらしい。
「黄島さんには関係ないでしょ。どっか他所に行っててよ!」
「あるよ。だって私も誠司郎が好き。これなら加わる権利あるでしょ?」
平然と告白してみせる亜優。
ぽかっ
「雪も気づいてないの。誠司郎が誰が好きなのか一目瞭然じゃない」
「かってに多田君の気持ちを決めつけないで」
「決めつけてるわけじゃない。それにあなた達が気づいてないならあなた達こそ誠司郎の気持ち全然分かってないんじゃないの?」
「証拠でもあるの?」
「もう3年半にもなるのに本気で分からない?」
亜優たちと私に対する誠司郎の反応。
結は亜優たちには普通に接している。
しかし私に対しては何かためらいを見せている。
「それってやっぱり片桐さんを避けてるんじゃないの?」
「あなたの恋心ってその程度なの?私が言いたいのは一つだけ。誠司郎はいつだって雪を見てる」
しっかり異性として意識している。
だから色々と気になって上手く対応できない。
私と一緒にずっと誠司郎を見て来たから分かる。
そんな事も分からない女子達に私と誠司郎の事でとやかく言う権限はない。
抜け駆けするな?
皆怖くて誠司郎との距離を縮めることが出来ないだけでしょ?
亜優がそう言うと皆何も言えなくなってしまった。
そんな女子達を見て亜優は鼻で笑う。
「悔しかったらせめて誠司郎と手をつなぐくらいしてみせるのね」
絶対誠司郎はそんな真似しない。
なぜなら私にそんな姿見られたくないから。
誠司郎だってまだ子供だ。
でも、本当に誠司郎を見てきたのなら私と誠司郎の距離感を感じるくらいするはずだ。
「まだ納得できないならはっきり証拠を見せてあげてもいいよ」
「証拠?」
女子のリーダーが言うと亜優は説明した。
プールの授業で誠司郎がおぼれた時真っ先に私が助けに駆け付けた。
あなた達に同じことできる?と、亜優がいうと女子達が悔し気に出て行った。
「ありがとう、助かった」
「別に大したことしてない、ちょっと気になったからつけたら案の定だっただけ……それより」
そう言って亜優が私のおでこを小突く。
「あれくらいで勝手に揺らぐな」
「ごめん……」
「それでいい、誰が見たって誠司郎は雪の事を大事にしてる」
もっと自信を持て。
そう言って教室を出て行った。
私もその後を追って親のいる観覧席へと向かう。
いつもの様に皆が宴会をしていた。
「遅かったな。何かあったのか?」
誠司郎が私に違和感を覚えたのか聞いてきた。
「大丈夫」
そう言って私も弁当を食べる。
午後の部も終わって片付けてから家に帰る途中でも誠司郎が私の事を気遣っていた。
……本当に私の事を想ってくれてるんだな。
なんとなく誠司郎の腕にしがみつく。
「どうしたんだ!?」
「私の事迷惑だったりする?」
「……それが昼間の呼び出しの要件か?」
「うん」
すると誠司郎は笑い出した。
何がおかしいんだろう。
誠司郎は周りを確認すると急に私を抱きしめる。
腕のあたりが胸に当たっている。
「やっぱりこの触り心地いいわ」
ぽかっ
「そういうことをどうして路上でやるの?」
「家だったらしてもいいのか?」
「……私真面目に悩んでるんだけど」
「だからこれが答えだよ」
「え?」
誠司郎の顔を見ると笑顔だった。
「その気になったら胸を揉ませてくれる彼女が迷惑なわけないだろ」
男にしてみたら棚ぼただぞ。
言ってることは嬉しいけど普通に考えたらただの変態だぞ。
「私に”体目当てだったの?”って言わせたいの?」
「そんな小学生だったら”ありえない”って矯正されるんだろ?」
本当は嬉しいんだろ?とか言い出したら存在を削除してやるけど。
「俺の相手は雪以外にありえないよ。心配するだけ無駄だ」
「うん、それはいいんだけどさ」
「まだ何かあるのか?」
「そういう割には誠司郎誘ってくれないじゃん」
「今体目当てなのッて言ったの雪だろ?」
「明日休みだよね」
「そうだけど?」
「部屋、綺麗にして待ってる」
「分かった」
じゃ、帰ろうか?と言って誠司郎と家に帰る。
抱きつかれるだけじゃ正直不満だった。
ただキスするだけじゃ物足りなくなっていた。
でもただするだけじゃだめだ。
特別な日にしてあげたかった。
今すぐ教えてあげたいけどまだ秘密にしておこう。
誠司郎の普段の視線や仕種を見てたら自分でも色々情報を入手してるのは分かった。
私を大事にしてるとかよく分からない理屈で手を出してこないのだろう。
どうやったら誠司郎をその気にさせられるか女子グルで相談したかった。
だけど女子グルはママも見てるから無理。
その日を待ち遠しく思っていた。
「向山ってのはどいつだ!!」
俺が隣の教室のドアを開けてそう叫んだ。
如月大和も一緒に来ている。
向山ってやつがすぐに反応した。
「俺だけど何の用だ?」
あくまでもとぼけるつもりらしい。
一発入れないと気が済まないからとりあえず殴り飛ばした。
殴り飛ばされた向山が起き上がりながら俺達を睨みつけていた。
何で殴り飛ばされたのが分かってないらしい。
そんな奴に大和が説明した。
「お前先週金曜日の夜何をしたか覚えてるよな?」
「あ、ああ……その事か。SHを名乗ったから怒ってるのか?」
「……そのせいでSHに被害が出たんだよ」
大和も怒りをこらえながら平静を保とうとしていた。
被害にあったのは同じクラスの江口務。
江口家の人間に暴行を加えるなんて無茶したらどうなるか分かってない馬鹿がいたらしい。
で、ご丁寧にその暴行を加えた奴らは「bolz」と名乗った。
いつもなら天音が激怒して消滅させるところだが、今回は少し事情が違った。
連中には理由があった。
それが向山のせいだった。
向山は夜の町で調子に乗ってbolzのメンバーの彼女に手を出した。
しかしSHを名乗られたらさすがに手が出せない。
だけどbolzの頭はそう考えなかった。
戦争に追い込まれる時の感情だ。
やられっぱなしでいられるわけにいかない。
例え負けるとしても意地を通すべきだと判断した。
そしてたまたまデートをしていた務を襲撃した。
彼女の大原彩夏も暴行を受けた。
当然天音の耳に入って一触即発の状態になる。
しかしそこで結が妙な事を言った。
「中学生の問題だからまずは中学生に任せるべき」
その結の意見を父親の空も賛成していた。
で、俺達がこうして教室に乗り込んでいた。
「お前が調子こいてSHの名前を使った結果だ!」
SHのプライドは結や茉莉達……その親の空や天音達が作り上げた頑強な物。
それを傷つけたんだ。
どうやって責任取るつもりだ?
こいつを袋叩きにしようが放っておこうがbolzの末路は確定している……と思ったけどやはり結の奴がどうもおかしい。
「その向山ってやつに詫びさせるのが筋でしょ」
言ってる事は結が正しいけどそれでいいのか?
「ああ、悪かったよ。すまん」
全く反省の色が見えない向山に大和もむっとしたみたいだ。
「謝る相手が違うだろ」
謝るならbolzの連中と彩夏に対してだ。
向山の態度次第では西中と全面戦争になる。
その時にお前もbolz同様等しく死刑してやる。
SHの誇りを傷つけた代償はデカいぞ。
そう言うと向山の態度が変わった。
「地元最強ってのもたいしたことねーな。あの程度のガキにビビりやがって。いいよ、俺が詫びて納めりゃいいんだろ?」
「お前にそんな真似が出来るのかよ!?」
「なめんな!所詮群れてないと何もできない腰抜けSHと一緒にすんなよ」
キレる寸前の大和を抑えて「じゃあ、ちゃんとけじめつけて来い」と言って教室を後にする。
廊下には妹の椿と大和の姉の綺羅が待っていた。
「どうだった?」
綺羅が大和に聞くと大和は親指を立てて見せた。
「予定通りだ」
「それならおっけぇ~。んじゃ私達も作戦通りに動こうか?」
「尾行か?」
「馬鹿ね、気配を消すとかそんな芸当無いのに無理でしょ」
奴らの殆どは西中の生徒。
そんなやつらの根城くらい分かり切っている。
大体のSHの中学生がついて行くと言っていた。
「大勢で行ったら感づかれる」
椿はそう言って下級生たちを説得していた。
「それに下手に奴らに手を出したら茉莉達の制裁を受けるのはあんた達だよ」
綺羅もそう言って3年生だけで動くことにした。
先回りして潜伏も考えたけどそれじゃ向山の償いができない。
あくまでもその後でと考えた俺達は奴らの根城の側にあるコンビニで時間を潰して根城に向かった。
倒れている向山とvolzのメンバーがいた。
「椿達はここにいてくれ」
「分かった」
そう言って山本太一は俺達と暴行を止めるように言う。
連中は太一を見ると動きを止めた。
「やっぱり若いと無茶するよな」
お前がいうかと言いたいけどこらえて向山の側にむかって座った。
「まあ、随分やられたみたいだな。これがSHのリスクだ。理解できたか?」
SHのブランド力は最強だけどそれに歯向かう連中がいたとしたらそいつらも十分過激派だ。
それに襲撃されるリスクを俺達は常に背負っている。
事情も理解できない奴が軽々しく名乗ったらいけない。
そんだけ痛めつけたらわかっただろうしもういいよ。
「ほら、立て。帰ろうぜ」
しかし向山は動かない。
「どうした?」
軽く肩に触れるとうめき声をあげる。
意識はあるみたいだけど何も言わないのはなぜだ。
その疑問に答えたのはvolzの連中だった。
「そいつ喋れないと思うよ?歯、全部砕いたから」
指の骨どころか全身の骨を砕いた。
意識があるのが不思議なくらいだ。
俺が触ったから痛みで気が付いたか?
ここまでやる必要があったのか?
俺は立ち上がると奴らの顔を睨みつける。
「あんた達SHの連中なんだろ?」
連中は俺達を見てにやにやしている。
「あんた達も詫びるべきなんじゃない?」
「なんでだ?」
「だってこいつが偽物だろうとSHが俺達に喧嘩を売ってきたのは事実だろ?」
それならSHのリーダーが菓子折りでも持って土下座するべきじゃないかとかふざけた事を言いだした。
天音がいなくてよかった。
間違いなくまた行方不明者が増える。
しかし太一も大和も静かにしていたけど俺と同じ気持ちだったようだ。
そんな事も分かっていない連中は調子に乗って馬鹿な話を続けた。
「どうした?早く土下座しろよ?」
馬鹿がそう言った時どこからともなく2発の銃声がした。
それと同時に男が膝を崩して倒れこむ。
膝から血が流れていた。
「ほら、早く土下座しろよ。手伝ってやったんだから」
その声で振り返ると茉莉と菫がいた。
2人の手には拳銃がある。
サプレッサーを外したのはおそらく威嚇だろう。
威嚇で膝を撃ちぬいた。
次は連中の心臓でも射貫くつもりだろう。
「なんだお前ら!?」
そんな事も知らないでSHに喧嘩を売るつもりだったのか?
正当性があるとかそんなのゴミ箱に捨ててくるような2人だぞ。
「お前らが呼んだんだろうが?まあ、夏休みでちょうど暇だったからいいけど」
「暇つぶしに殺処分ってのは大学生としてどうなんだ?」
「まあ、履歴書に〇〇人殺害なんて書いたらまずいよな?」
まずいというか会社じゃなくて違う所に放り込まれるぞ。
と、思うのが普通だけどこの2人に限ってはそれは絶対ない。
上級国民とかほざいてるジジイがいたけどそんな物があるとすればこの2人は超級国民だ。
日本国憲法にすら縛られないであろう二人を相手にやけに強気な馬鹿達。
そんなものを気にも止めず栗林快に向山を治療してやるように指示する。
快の能力は蘇生。
命があるものなら何でも治癒する結莉や菫とは対照的な能力。
意識をとりもどした向山を茉莉は笑って言った。
「これで懲りたらもう二度とやるんじゃねーぞ」
あとはSHの問題だからさっさと家に帰れ。
そう言って向山を家に帰らせる。
「勝手な真似してんじゃねえ……」
パン。
馬鹿その1の眉間を希美が撃った銃弾が貫いた。
「誰が勝手にしゃべっていいと言った?」
「それがSHさんの誠意なのか?」
「ああ、そうだよ」
逆らう奴は皆殺しにしてやれ。
天音が常日頃に娘に教えている事。
「先に仕掛けてきたのはお前らだろうが!」
「だからなんだよ?」
気に入らない事があったら片っ端から叩き潰す。
別に間違ったことをしているわけじゃない。
菫と茉莉はまったく気にしていないようだ。
「お前らが俺の連れをおそったからだろ!」
「ああ、それはあの向山ってやつの仕業だろ?」
「SHを名乗ったのだからお前らの責任だろうが!?」
「んなもんいちいち気にするほど暇じゃねーんだよ」
中坊相手に武装して登場した菫がそう言っていた。
茉莉の方はいいかげんこのやりとりにうんざりしたんだろう。
いや、ただ単に晩御飯が気になっただけかもしれない。
「おい、椿。いい加減この馬鹿共の失態を教えてやれ」
「いいよ~。じゃ、これ見てよ」
茉莉が椿を呼ぶと椿は写真を彼らに見せた。
それを見て馬鹿達は動揺していた。
「最初からそういう作戦だったんでしょ?」
椿がそう言って説明した。
こいつらは最初から向山じゃなくSHが狙いだった。
つまり向山が襲ったわけじゃなくて女が向山を誘っただけの話。
それはこいつら馬鹿共が依頼したもの。
連れと言うのは本当らしい。
中学生でもセフレとかいるんだな。
で、端した金で向山を誘惑したらしい。
それを写真に撮って「子供が出来た」と騒ぎ立てた。
学校や親にバレたらまずいと思った向山はSHの名前を使ってもみ消そうとした。
全てvolzの計画通り。
で、写真はその連れと馬鹿のやりとりをしっかり押さえていた。
どうしてそんな写真があるのかは想像に任せる。
「以上だ。何か反論があるなら聞いてやるぞ?」
菫が言うと馬鹿達はもはや戦意を失っていた。
そんな馬鹿達を見て茉莉が2丁拳銃を持って言う。
「じゃあ、そういうわけだ。SHに歯向かったツケはでかすぎたな……」
「茉莉、そこまでだ」
そう言って朔が茉莉の肩を叩いた。
「天音や母さんはともかく愛莉さんに知れたら大ごとだ。これ以上死人を増やすな」
「……ちっ。運がよかったなお前ら」
そう言って茉莉達が銃を降ろした時だった。
「そうでもないみたいだな」
その声を聞いた時は赤い髪の毛の体格のいい男が鈍器を振りまして馬鹿の頭を吹き飛ばした。
それを見た他の馬鹿が怯えている。
「SHに敵対する奴は例外なく同じ最後を迎える。俺もちょっと機嫌が悪い。残念だったな」
茉奈の警護に徹するノルンとうずめに対してバルバトスは超攻撃型エイリアス。
結が敵とみなしたものは誰だろうと処分する役割。
亡骸はいつもの様に処分される。
機嫌が悪いのはただでさえリベリオン狩りで忙しいバルバトスに余計な仕事を作った事。
たったそれだけでこいつらの人生は終わった。
「そうなるなら先に私達に言え!暇つぶしすらできなかったじゃねーか!」
「文句があるなら結に言ってくれ。絶対に茉莉達に手出しさせるな。純也が面倒な事になると言われたんだ」
バルバトスならこいつらの存在した事実を抹消できる。
だから問題にならない。
「お前ら自転車か?」
菫が聞くと俺が「下校途中だから徒歩」だと言うと「送ってやるから乗ってけ」と言ってくれた。
どうして結と結莉が来なかったか?
単に面倒だから勝手にやれという事だったらしい。
いちいちこんなしょうもない事で頭が出てくる必要もないと茉莉達も判断したそうだ。
今年もいつものように物騒な事が多いけどなんとか半年を迎えようとしていた。
(2)
「私に?」
突然女子達から呼び出しを受けた。
何の用かはさっぱり分からない。
今日は運動会。
休み時間になると誠司郎に伝えた。
「ひょっとして告白か?」
本気で心配してるらしい。
ぽかっ
愛莉がこれでいいと言っていた。
「女子からって言ったでしょ。私にそんな趣味ないよ」
「でも……」
「私だって自分で断るくらい出来る。少しは信用してよ」
それでもついて行こうかと言う誠司郎
「それって誠司郎が告白する立場になった時考えてよ」
独りで来て欲しいと言ったのに連れを連れて来てるなんて晒し者以外の何物でもないでしょ?
「信じて……いいんだよな?」
誠司郎でも不安な時があるんだな。
「大丈夫」
「うん。じゃあ、先に弁当食ってる」
誠司郎と別れると教室に向かった。
するとクラスの大多数の女子が私を囲んでいた。
「喧嘩でもするの?」
そういうのは苦手だけど能力があるから大丈夫。
「一つ忠告したい事があるから呼んだだけ」
リーダー格の女子がそう言った。
忠告?
「あんた随分多田君と仲がいいみたいね?」
「それが何か関係あるの?」
「分からないの?多田君絶対嫌がってるの気づかない?」
そんなことない。
それにどうしてこの子に注意されないといけないんだ?
「あなたに関係ない」
「関係あるわよ。皆迷惑してるの!あなたが多田君を独り占めしてるから」
つまり私と誠司郎が仲良くしているのが気に入らない誠司郎が好きな女子が集まってるわけか。
「……で、私に抜け駆けするなって言いたいわけ?」
「抜け駆けにすらなってない。多田君はあなたを煙たがっている。それなのにあなたは遠慮しない。そのくらい気づくでしょ」
私は誠司郎にとって迷惑なのだろうか。
「分かった?これからは少し自重して。多田君は皆で愛でるものなの」
「馬鹿じゃないの?単に誰もが誠司郎にアタックする度胸がない情けない集団ってだけじゃない」
そう言って現れたのは黄島亜優だった。
私が呼び出された時から様子をうかがっていたらしい。
「黄島さんには関係ないでしょ。どっか他所に行っててよ!」
「あるよ。だって私も誠司郎が好き。これなら加わる権利あるでしょ?」
平然と告白してみせる亜優。
ぽかっ
「雪も気づいてないの。誠司郎が誰が好きなのか一目瞭然じゃない」
「かってに多田君の気持ちを決めつけないで」
「決めつけてるわけじゃない。それにあなた達が気づいてないならあなた達こそ誠司郎の気持ち全然分かってないんじゃないの?」
「証拠でもあるの?」
「もう3年半にもなるのに本気で分からない?」
亜優たちと私に対する誠司郎の反応。
結は亜優たちには普通に接している。
しかし私に対しては何かためらいを見せている。
「それってやっぱり片桐さんを避けてるんじゃないの?」
「あなたの恋心ってその程度なの?私が言いたいのは一つだけ。誠司郎はいつだって雪を見てる」
しっかり異性として意識している。
だから色々と気になって上手く対応できない。
私と一緒にずっと誠司郎を見て来たから分かる。
そんな事も分からない女子達に私と誠司郎の事でとやかく言う権限はない。
抜け駆けするな?
皆怖くて誠司郎との距離を縮めることが出来ないだけでしょ?
亜優がそう言うと皆何も言えなくなってしまった。
そんな女子達を見て亜優は鼻で笑う。
「悔しかったらせめて誠司郎と手をつなぐくらいしてみせるのね」
絶対誠司郎はそんな真似しない。
なぜなら私にそんな姿見られたくないから。
誠司郎だってまだ子供だ。
でも、本当に誠司郎を見てきたのなら私と誠司郎の距離感を感じるくらいするはずだ。
「まだ納得できないならはっきり証拠を見せてあげてもいいよ」
「証拠?」
女子のリーダーが言うと亜優は説明した。
プールの授業で誠司郎がおぼれた時真っ先に私が助けに駆け付けた。
あなた達に同じことできる?と、亜優がいうと女子達が悔し気に出て行った。
「ありがとう、助かった」
「別に大したことしてない、ちょっと気になったからつけたら案の定だっただけ……それより」
そう言って亜優が私のおでこを小突く。
「あれくらいで勝手に揺らぐな」
「ごめん……」
「それでいい、誰が見たって誠司郎は雪の事を大事にしてる」
もっと自信を持て。
そう言って教室を出て行った。
私もその後を追って親のいる観覧席へと向かう。
いつもの様に皆が宴会をしていた。
「遅かったな。何かあったのか?」
誠司郎が私に違和感を覚えたのか聞いてきた。
「大丈夫」
そう言って私も弁当を食べる。
午後の部も終わって片付けてから家に帰る途中でも誠司郎が私の事を気遣っていた。
……本当に私の事を想ってくれてるんだな。
なんとなく誠司郎の腕にしがみつく。
「どうしたんだ!?」
「私の事迷惑だったりする?」
「……それが昼間の呼び出しの要件か?」
「うん」
すると誠司郎は笑い出した。
何がおかしいんだろう。
誠司郎は周りを確認すると急に私を抱きしめる。
腕のあたりが胸に当たっている。
「やっぱりこの触り心地いいわ」
ぽかっ
「そういうことをどうして路上でやるの?」
「家だったらしてもいいのか?」
「……私真面目に悩んでるんだけど」
「だからこれが答えだよ」
「え?」
誠司郎の顔を見ると笑顔だった。
「その気になったら胸を揉ませてくれる彼女が迷惑なわけないだろ」
男にしてみたら棚ぼただぞ。
言ってることは嬉しいけど普通に考えたらただの変態だぞ。
「私に”体目当てだったの?”って言わせたいの?」
「そんな小学生だったら”ありえない”って矯正されるんだろ?」
本当は嬉しいんだろ?とか言い出したら存在を削除してやるけど。
「俺の相手は雪以外にありえないよ。心配するだけ無駄だ」
「うん、それはいいんだけどさ」
「まだ何かあるのか?」
「そういう割には誠司郎誘ってくれないじゃん」
「今体目当てなのッて言ったの雪だろ?」
「明日休みだよね」
「そうだけど?」
「部屋、綺麗にして待ってる」
「分かった」
じゃ、帰ろうか?と言って誠司郎と家に帰る。
抱きつかれるだけじゃ正直不満だった。
ただキスするだけじゃ物足りなくなっていた。
でもただするだけじゃだめだ。
特別な日にしてあげたかった。
今すぐ教えてあげたいけどまだ秘密にしておこう。
誠司郎の普段の視線や仕種を見てたら自分でも色々情報を入手してるのは分かった。
私を大事にしてるとかよく分からない理屈で手を出してこないのだろう。
どうやったら誠司郎をその気にさせられるか女子グルで相談したかった。
だけど女子グルはママも見てるから無理。
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