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Under Your Sky
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(1)
「じゃ、メリークリスマス」
そう言って僕達は乾杯する。
今年のクリスマスイブは僕の家ですることにした。
秋久も菫も陽葵達も大学に進学して家を出たので2人で住むには広すぎるから来客を泊めるくらいは出来る。
翼が「もう一人作ろうか?」と笑いながら言っていたけどきっと本気で作りかねないから「勘弁しておくれ」と答えた。
それが母さんの耳に入ったらしく「善明は嫁の相手も出来ないの!?」と怒り出す。
放っておいたらまた失業率が上がりそうだから父さんと全力で宥めた。
その秋久達も今日は集まってパーティをしているらしい。
で、空達に聞いたら同じようだったので招待した。
女性が3人以上集まると持ち寄った料理だけで随分なものになる。
空達は簡単に平らげてしまうけど。
「天音、あんたこんなに甘党だっけ?」
「このくらい甘くしねーと大地が食わないんだよ!」
酒は飲むのになんで甘党なんだと天音が悩んでいた。
この子でも悩む事あるんだな。
だけどもっと反応を示したのは美希だった。
「あなたいつまでその子供みたいな味覚でいるつもりなの!?」
「父さんだって同じだったろ?」
「父さんだってステーキに甘いソースなんてかけないわよ!」
大地と美希が言い合ってる間、翼は違う心配をしたようだ。
「まさか海翔もそうなの?」
「海翔は大丈夫だ。完全に片桐家の人間だ」
翼が聞くと天音が答えた。
むしろ少しは反応を示せと言わんばかりに何でも食べる。
空も翼もA5のブランド牛のステーキより期間限定のハンバーガーを好むくらいは嗜好がある。
その基準が恐ろしいくらいにずれてるのが怖い所だけど。
空の父親も「やっぱりラーメンが一番だね」と言って愛莉さんを困らせているらしい。
「結はどうなんだよ?」
天音が聞いていた。
結は水奈の娘の茉奈と同棲している。
何か不満があればすぐに伝わりそうだけど今の所何もないらしい。
すると美希がにこりと笑った。
「あの子は色々悩んでるみたいです」
「どういうことだ?」
天音が聞くと美希が説明した。
前にデートの食べ物の事で茉奈に指摘されたらしい。
それで時と場合に応じて食べる物を考えるようになったらしい。
「結、今日は夕飯何にしようか?」
「うーん……」
「ラーメンでもいいよ?」
「……結莉のお味噌汁飲みたいな」
「あとは?」
「和食で何かある物を使ってくれたらいいよ」
確か豆腐とかあったよね?
そんな風に茉奈と献立を考えているんだそうだ。
「そういや結莉も”夕飯とか芳樹と一緒に考えてるの”って言ってたな」
しかしそうなると海翔と優奈が気になる。
天音も水奈に聞いていた。
すると水奈はただ笑っていた。
そして水奈の夫の学が答えた。
「優奈はこんな朝から何してるんだ?」
「海翔に弁当作ってあげてるの」
優奈がそう答えたらしい。
しかし優奈が用意していたのはサランラップの上に大量にのせたご飯
一応海苔は敷いてあった。
そして昨夜のおかずの肉じゃがを乗せていく……
さすがに学も慌てたらしい。
だが、意にも介さず優奈はサランラップを丸めて巨大なおにぎりを作っていく。
学は朝まで天音と遊んでいた水奈を叩き起こす。
「朝の準備くらい自分でする年頃だろ?」
「優奈の弁当を見てから言え!」
水奈もその巨大な黒い物体を見て驚いた。
今まで料理を教えてこなかったわけじゃない。
なんでこんなもの作ってるんだと水奈が聞いた。
「だって朝忙しいからおにぎりの方が簡単でしょ」
「どう考えても女子高生の作る弁当じゃないだろ!?」
丼物だと持っていくのに不便だからこうした。
そう言ってそれを布で包んで鞄に入れる。
「海翔は何でも食べてくれるから大丈夫だよ」
優奈は笑ってそう言ったらしい。
「じゃあ、愛菜は?」
「……あいつの彼氏の家ってレストランやってるだろ?」
だから家業を継ぐつもりで彼氏が料理を練習している。
そうなると愛菜は当然の様に「じゃあ、私が味見する」と言って彼氏に弁当を作らせているらしい。
さすがに皆言葉を失った。
「つ、翼や。菫はだいじょうぶなのかい?」
「え、えーと……」
「ああ、あの話なら茉莉から聞いた」
天音が言うとみんなその話に興味を持った。
そしてすぐに後悔した。
「何やってるの!?それ生だろ!」
「昔は普通に食ってたんだろ!?」
「食中毒になるからだめだよ!」
「昔は人間の肝臓だって食ってたんだから牛のレバーくらいどうってことねーよ!」
弁当に生レバーが入ってたらさすがに彼氏の芳樹も焦ったらしい。
それから自分が作るからいいよと菫の手料理を避けているそうだ。
「……茉莉はどうなの?」
美希が一番聞いてはいけない事を聞いた気がする。
「あいつは作る気がそもそもないらしい」
石原家の仕送りで生活している。
だから毎日弁当でもいいだろ?
そう言って毎日同じ唐揚げ弁当を買ってくるそうだ。
唐揚げ弁当ならまだ可愛い。
「これじゃ足りない」
そう言ってご飯だけ炊いてチキンバスケットを頼んで食べるそうだ。
こっちもすぐに朔が作るようになったみたいだ。
拳銃を持たせる前に包丁を持たせるべきだったと翼と天音が悩んでいる。
「まあ、彼氏が弁当作れるならいいんじゃないのか?」
水奈はそう言って気にも止めてないが、神奈さんに知れて説教をくらったらしい。
「このままだとお前以上の嫁が出来上がるぞ!」
「いい事じゃないか!」
「そういう意味じゃない!」
下手すると玄米を漂白剤で洗うくらいの事はしかねないと神奈さんは危惧したらしい。
だけど水奈は言う。
「だから料理の基礎は教えたって。食える食材くらい知ってるよ」
その結果が菫の話なんだけど。
母さんには口止めするように翼に言ったけど遅かった。
すでに母さんに相談したらしい。
年末が恐ろしい。
「父さん達もそうだったのかな?」
空が話題を変えようとした。
自分たちの子供が、自分たちの手を離れて自立していく。
今は最後の段階だ。
大学を出たら就職して結婚して子供を育んでいく。
世界が終わるまで続く物語。
「ま、大地にはお疲れさんって言ってやりたいけどまだ海翔がいるからな」
「分かってる。海翔が大人になったら一緒に酒を飲もうと思ってるんだ」
大地も望さんがそれを楽しみにしていたと聞いたらしい。
その僕達の親も引退してのんびり過ごしている。
相変わらず事件は続くけど純也や天音達が処理していく。
問題そのものは結の作り出したエイリアスという存在が始末していく。
「SHに歯向かう連中なんて相手するだけ面倒だから適当に片付けろ」
結はエイリアスにそう命じているそうだ。
空よりも圧倒的な力を持つ結。
そんな結でも扱いに困っているのが茉奈。
「でも本当に良いのか?結の邪魔をしたらいけないって話は前に聞いたけど」
天音が空に聞いていた。
「最後だけは僕が出ようと思うけどあまり出ない方がいいと思う」
空の父親も「もう自分たちで知恵を絞りなさい」と言って関与するつもりは全くないらしい。
「いい加減親に甘える歳じゃないよ」
僕の父さんもそう言っていた。
僕達も父さん達の様な立場になったって事なのだろうか。
「なんかしんみりしちゃったな。折角だし盛り上がろうぜ」
「天音の言う通りだな。なんかテレビやってないか?」
「ちょっとまってね。テレビつけるから」
美希がそう言ってテレビをつけようとすると僕と空は嫌な予感しかしなかった。
テレビ・クリスマスイブ。
それはこの物語では死亡フラグでしかない。
そして今年も裏切らなかった。
無駄にでかいテレビに映るのは可愛いマスコットのぬいぐるみの様なキャラ。
それを見ていた空の表情が引きつった。
僕もまずいと思った。
それを察した大地と学がチャンネルを変えようと提案するけど美希と翼が却下した。
「こんなかわいい生き物の映画なんて珍しいじゃない」
「い、いや。それはね……翼」
「ダメだよ空。映画のネタバレは厳禁でしょ」
翼は一冊読んだだけですぐにオチを当てる能力があったはず。
なのにこういう時は全く発揮しない。
大地も「音楽番組とかもっといいのあるんじゃないかな」と天音に言うけど「こんな時にそんなしょうもない賛美歌なんてきいてられるか!」と相手にしない。
そして空の嫌な予感が的中した。
この可愛い生き物を買うには3つの約束があった。
主人公もそれを守っていたけど度重なる不慮の事故で3つとも破ってしまう。
そしてそれがきっかけで街中がパニックになる。
「きゃあ!止めて!」
空の予想通りなんだろう、翼が悲鳴を上げて目を背ける。
「え?翼、これ可愛くない?」
これを可愛いと表現する美希を見てると翼の方が普通の女性の反応なんじゃないかと思ってしまう。
それを見ていた水奈と天音が笑っていた。
「翼。お前まだその癖直ってなかったのか!?」
「五月蠅い天音!怖いものは怖いんだからしょうがないでしょ!」
「どこが怖いんだよ。美希も可愛いって言ってるじゃないか!」
軽快なBGMと化け物になったぬいぐるみの分身が暴れ回るドタバタ劇。
さすがに放っておけなかったのか僕が翼の肩を支える。
「僕達は先に休むよ」
「ああ、おやすみ」
「もう寝るのかよ。つまんねーな」
「私らはもう少しこの映画見ようぜ……。に、してもこんなの怖がる女性が善明の好みだったんだな」
「そうは言うけど水奈。翼はあれでも人の体に風穴開けるんだぞ」
「可愛いと思うんだけどなぁ~」
そんな3人の意見を聞きながら翼を部屋に連れていく。
「ごめん、どうしてもホラーが苦手で……」
「気にしないでいいよ。だから止めたんだけどね」
「じゃ、おやすみ」
部屋に入る翼を見るとリビングに戻ると別の悲鳴が聞こえた。
「水奈!人の家に来て何を馬鹿な事やってるんだ……ぶっ!」
「いいじゃん、一度やって見たかったんだよケーキ投げ!」
「お前食い物を粗末にするな!」
「とかいいながらお前も大地に投げつけてるじゃねーか天音!」
「大地の野郎は避けるんだよ。嫁のプレゼントをうけとれねーのか!」
「こういうプレゼントはなるべくなら遠慮したいんだけど」
部屋中が生クリームだらけになるまでケーキ投げを続けていた。
やはりどう転んでもクリスマスは惨劇になるのか。
そんなにクリスマスに嫌な思い出があるのだろうか?
(2)
「2人っきりなんて何年ぶりでしょうか?」
「そうだね」
大晦日の日。
僕は愛莉と二人で家でそばを食べながら定番の番組を見ていた。
年を越す儀式にお笑い芸人がビンタを食らうなんてのは日本だけだろう。
歳を取ると流行りの歌やお笑いコントに興味が無くなってしまい定番の番組を見るようになる。
それに大人気のフレーズやF・SEASONは年末年始に仕事を入れず他の皆とパーティを楽しんでいる。
今年も渡辺班の年越しパーティは行われていた。
誠や渡辺君達はそっちに行ったけど僕達は敢えて断った。
今でも渡辺班やSHに問題が無いわけではない事は知っている。
だからこそ僕は行くのを避けた。
行けばきっと空達は僕に頼ろうとするだろう。
もう僕達は引退した身。
いい加減自立するようにするためにも愛莉と相談して欠席しておいた。
冬吾や雪達は当然出席している。
だからこの家にいるのは僕と愛莉の二人だけ。
こうやって二人で年を越すのは何年ぶりだろうか。
愛莉が空と翼を産んでからはそんな余裕はなかった。
さらに天音が産まれてがむしゃらに突っ走ってきた。
冬吾と瞳子も無事子供を作りやっと僕達は休むことが出来た。
「ここまで長かったですね。お疲れさまでした。冬夜さん」
「愛莉もお疲れ様。天音には手を焼いていたみたいだから」
「天音だけじゃありません。茜に冬莉に……」
片桐家の娘は母親を悩ませるという特性を持っているらしい。
そしてそれは孫にまで継がれているそうだ。
もちろん翼だって例外じゃない。
「でも不思議ですね」
愛莉が何か思う事があるようだ。
「どうしたの?」
「結莉と茉莉です。小さい時はそんなに区別なかったのに」
確かに愛莉の言う通りだ。
でもその理由もなんとなくわかる。
「あの子は愛莉に似ただけだろ?」
「……やっぱりそうなりますよね」
愛莉も薄々気づいていたらしい。
あの子は天音の娘だけどそれ以前に愛莉の孫娘なんだから。
片桐家の男子は彼女を大切にする。
それと共に彼女に逆らう事は出来ない。
それは父さんも言っていたからそうなんだろう。
「その割には冬夜さんは私を困らせてばかりじゃないですか」
愛莉がそう言って笑っていた。
「雪と誠司郎はどうなるんでしょうか?」
予測していた質問だった。
「まだ小学生だよ」
「でも神奈は小学生で冬夜さんに惚れていたみたいだし……」
自分だって小学生で僕に一目ぼれしたと愛莉が言う。
でも、今の雪なら大丈夫だろう。
今は必死に誠司郎の事でいっぱいいっぱいみたいだ。
愛莉だって雪の相談とか受けてるんだろ?
「それが瞳子も言ってたんですけど……」
「どうしたの?」
「やっぱり普通の女の子なんでしょうね」
母親にすら恥ずかしがって相談するのを躊躇っている様だ。
どうしてもの時だけ愛莉や瞳子に相談しているらしい。
冬吾や僕がいない時にこっそりと。
他はSHの女子グルを利用しているらしい。
それでも瞳子も見てるから必要最小限の事しか言わないみたいだ。
「孫娘の事は母親にまかせるべきなんだろうね」
「でも冬夜さんは雪が気になるから実家で暮らすことを勧めたのでしょ?」
愛莉も愛莉なりに考えているようだ。
ちゃんと答えてやることにしよう。
「最初は心配だったよ。僕の様に自分に自信をもてないでいたし、恋人を探すなんて無理だと思ってた」
「でも誠司郎との関係は予想してたじゃないですか?」
「計算外だった。一度転がり出したらどこまでも転がり出していた」
あれが片桐家と遠坂家が合わさった成果なんだろう。
多分愛莉たちに相談出来ないというのはそういう事だと思う。
これ以上進んだら親に止められる。
そんな不安とギリギリの綱渡りをしているのだろう。
「そんなに親って信用ないですか?」
「愛莉には無かったの?好きな人とキスをしたりする事を親に知られたくないとか」
忘れてない?
あの子はまだ小学生。
この世界では当たり前の行為は普通の親だと「まだ早い」と止めるだろう。
僕達だって中学の時に躊躇ったじゃないか。
「そういう話なら瞳子の方が分かるかもしれませんね。私はりえちゃんだったし冬夜さんも摩那さんだったから」
そう言えばそうか。
「でも私は雪がそういう相談あるならちゃんと説明してあげたいですけどね」
雪は成長が少し早い。
SHの情報は当たり前だけど過激すぎる。
それを鵜呑みにするくらいなら親から説明したほうがいい。
「愛莉がそう言うなら瞳子にアドバイスしてあげたらいい」
「そうしてみます」
そうこうしているうちに除夜の鐘が聞こえてくる。
時間が新しい1年を刻むと愛莉と「今年もよろしくお願いします」とあいさつをする。
「じゃ、そろそろ寝ようか」
「うぅ……」
ただ寝るだけじゃ愛莉は不満みたいだ。
もう若くもないのに。
ぽかっ
「そういう意味じゃありません」
「じゃあ、どういう意味なの?」
「久しぶりに西寒田にでも2人で初詣に行きませんか?」
それもいいな。
「わかった。じゃあ、防寒着持ってくるよ」
「先に言っておきますけどラーメンはいけませんよ」
もう歳だし、仕事もしていない、あまり運動しなくなったのにこんな時間に脂っこいものはダメだと愛莉が言う。
「じゃあ、焼きイカならいい?」
「本当に困った旦那様ですね」
そうして愛莉と二人で西寒田に言ってお参りをする。
今年は何もなければいい。
そんなことを考えていた。
「じゃ、メリークリスマス」
そう言って僕達は乾杯する。
今年のクリスマスイブは僕の家ですることにした。
秋久も菫も陽葵達も大学に進学して家を出たので2人で住むには広すぎるから来客を泊めるくらいは出来る。
翼が「もう一人作ろうか?」と笑いながら言っていたけどきっと本気で作りかねないから「勘弁しておくれ」と答えた。
それが母さんの耳に入ったらしく「善明は嫁の相手も出来ないの!?」と怒り出す。
放っておいたらまた失業率が上がりそうだから父さんと全力で宥めた。
その秋久達も今日は集まってパーティをしているらしい。
で、空達に聞いたら同じようだったので招待した。
女性が3人以上集まると持ち寄った料理だけで随分なものになる。
空達は簡単に平らげてしまうけど。
「天音、あんたこんなに甘党だっけ?」
「このくらい甘くしねーと大地が食わないんだよ!」
酒は飲むのになんで甘党なんだと天音が悩んでいた。
この子でも悩む事あるんだな。
だけどもっと反応を示したのは美希だった。
「あなたいつまでその子供みたいな味覚でいるつもりなの!?」
「父さんだって同じだったろ?」
「父さんだってステーキに甘いソースなんてかけないわよ!」
大地と美希が言い合ってる間、翼は違う心配をしたようだ。
「まさか海翔もそうなの?」
「海翔は大丈夫だ。完全に片桐家の人間だ」
翼が聞くと天音が答えた。
むしろ少しは反応を示せと言わんばかりに何でも食べる。
空も翼もA5のブランド牛のステーキより期間限定のハンバーガーを好むくらいは嗜好がある。
その基準が恐ろしいくらいにずれてるのが怖い所だけど。
空の父親も「やっぱりラーメンが一番だね」と言って愛莉さんを困らせているらしい。
「結はどうなんだよ?」
天音が聞いていた。
結は水奈の娘の茉奈と同棲している。
何か不満があればすぐに伝わりそうだけど今の所何もないらしい。
すると美希がにこりと笑った。
「あの子は色々悩んでるみたいです」
「どういうことだ?」
天音が聞くと美希が説明した。
前にデートの食べ物の事で茉奈に指摘されたらしい。
それで時と場合に応じて食べる物を考えるようになったらしい。
「結、今日は夕飯何にしようか?」
「うーん……」
「ラーメンでもいいよ?」
「……結莉のお味噌汁飲みたいな」
「あとは?」
「和食で何かある物を使ってくれたらいいよ」
確か豆腐とかあったよね?
そんな風に茉奈と献立を考えているんだそうだ。
「そういや結莉も”夕飯とか芳樹と一緒に考えてるの”って言ってたな」
しかしそうなると海翔と優奈が気になる。
天音も水奈に聞いていた。
すると水奈はただ笑っていた。
そして水奈の夫の学が答えた。
「優奈はこんな朝から何してるんだ?」
「海翔に弁当作ってあげてるの」
優奈がそう答えたらしい。
しかし優奈が用意していたのはサランラップの上に大量にのせたご飯
一応海苔は敷いてあった。
そして昨夜のおかずの肉じゃがを乗せていく……
さすがに学も慌てたらしい。
だが、意にも介さず優奈はサランラップを丸めて巨大なおにぎりを作っていく。
学は朝まで天音と遊んでいた水奈を叩き起こす。
「朝の準備くらい自分でする年頃だろ?」
「優奈の弁当を見てから言え!」
水奈もその巨大な黒い物体を見て驚いた。
今まで料理を教えてこなかったわけじゃない。
なんでこんなもの作ってるんだと水奈が聞いた。
「だって朝忙しいからおにぎりの方が簡単でしょ」
「どう考えても女子高生の作る弁当じゃないだろ!?」
丼物だと持っていくのに不便だからこうした。
そう言ってそれを布で包んで鞄に入れる。
「海翔は何でも食べてくれるから大丈夫だよ」
優奈は笑ってそう言ったらしい。
「じゃあ、愛菜は?」
「……あいつの彼氏の家ってレストランやってるだろ?」
だから家業を継ぐつもりで彼氏が料理を練習している。
そうなると愛菜は当然の様に「じゃあ、私が味見する」と言って彼氏に弁当を作らせているらしい。
さすがに皆言葉を失った。
「つ、翼や。菫はだいじょうぶなのかい?」
「え、えーと……」
「ああ、あの話なら茉莉から聞いた」
天音が言うとみんなその話に興味を持った。
そしてすぐに後悔した。
「何やってるの!?それ生だろ!」
「昔は普通に食ってたんだろ!?」
「食中毒になるからだめだよ!」
「昔は人間の肝臓だって食ってたんだから牛のレバーくらいどうってことねーよ!」
弁当に生レバーが入ってたらさすがに彼氏の芳樹も焦ったらしい。
それから自分が作るからいいよと菫の手料理を避けているそうだ。
「……茉莉はどうなの?」
美希が一番聞いてはいけない事を聞いた気がする。
「あいつは作る気がそもそもないらしい」
石原家の仕送りで生活している。
だから毎日弁当でもいいだろ?
そう言って毎日同じ唐揚げ弁当を買ってくるそうだ。
唐揚げ弁当ならまだ可愛い。
「これじゃ足りない」
そう言ってご飯だけ炊いてチキンバスケットを頼んで食べるそうだ。
こっちもすぐに朔が作るようになったみたいだ。
拳銃を持たせる前に包丁を持たせるべきだったと翼と天音が悩んでいる。
「まあ、彼氏が弁当作れるならいいんじゃないのか?」
水奈はそう言って気にも止めてないが、神奈さんに知れて説教をくらったらしい。
「このままだとお前以上の嫁が出来上がるぞ!」
「いい事じゃないか!」
「そういう意味じゃない!」
下手すると玄米を漂白剤で洗うくらいの事はしかねないと神奈さんは危惧したらしい。
だけど水奈は言う。
「だから料理の基礎は教えたって。食える食材くらい知ってるよ」
その結果が菫の話なんだけど。
母さんには口止めするように翼に言ったけど遅かった。
すでに母さんに相談したらしい。
年末が恐ろしい。
「父さん達もそうだったのかな?」
空が話題を変えようとした。
自分たちの子供が、自分たちの手を離れて自立していく。
今は最後の段階だ。
大学を出たら就職して結婚して子供を育んでいく。
世界が終わるまで続く物語。
「ま、大地にはお疲れさんって言ってやりたいけどまだ海翔がいるからな」
「分かってる。海翔が大人になったら一緒に酒を飲もうと思ってるんだ」
大地も望さんがそれを楽しみにしていたと聞いたらしい。
その僕達の親も引退してのんびり過ごしている。
相変わらず事件は続くけど純也や天音達が処理していく。
問題そのものは結の作り出したエイリアスという存在が始末していく。
「SHに歯向かう連中なんて相手するだけ面倒だから適当に片付けろ」
結はエイリアスにそう命じているそうだ。
空よりも圧倒的な力を持つ結。
そんな結でも扱いに困っているのが茉奈。
「でも本当に良いのか?結の邪魔をしたらいけないって話は前に聞いたけど」
天音が空に聞いていた。
「最後だけは僕が出ようと思うけどあまり出ない方がいいと思う」
空の父親も「もう自分たちで知恵を絞りなさい」と言って関与するつもりは全くないらしい。
「いい加減親に甘える歳じゃないよ」
僕の父さんもそう言っていた。
僕達も父さん達の様な立場になったって事なのだろうか。
「なんかしんみりしちゃったな。折角だし盛り上がろうぜ」
「天音の言う通りだな。なんかテレビやってないか?」
「ちょっとまってね。テレビつけるから」
美希がそう言ってテレビをつけようとすると僕と空は嫌な予感しかしなかった。
テレビ・クリスマスイブ。
それはこの物語では死亡フラグでしかない。
そして今年も裏切らなかった。
無駄にでかいテレビに映るのは可愛いマスコットのぬいぐるみの様なキャラ。
それを見ていた空の表情が引きつった。
僕もまずいと思った。
それを察した大地と学がチャンネルを変えようと提案するけど美希と翼が却下した。
「こんなかわいい生き物の映画なんて珍しいじゃない」
「い、いや。それはね……翼」
「ダメだよ空。映画のネタバレは厳禁でしょ」
翼は一冊読んだだけですぐにオチを当てる能力があったはず。
なのにこういう時は全く発揮しない。
大地も「音楽番組とかもっといいのあるんじゃないかな」と天音に言うけど「こんな時にそんなしょうもない賛美歌なんてきいてられるか!」と相手にしない。
そして空の嫌な予感が的中した。
この可愛い生き物を買うには3つの約束があった。
主人公もそれを守っていたけど度重なる不慮の事故で3つとも破ってしまう。
そしてそれがきっかけで街中がパニックになる。
「きゃあ!止めて!」
空の予想通りなんだろう、翼が悲鳴を上げて目を背ける。
「え?翼、これ可愛くない?」
これを可愛いと表現する美希を見てると翼の方が普通の女性の反応なんじゃないかと思ってしまう。
それを見ていた水奈と天音が笑っていた。
「翼。お前まだその癖直ってなかったのか!?」
「五月蠅い天音!怖いものは怖いんだからしょうがないでしょ!」
「どこが怖いんだよ。美希も可愛いって言ってるじゃないか!」
軽快なBGMと化け物になったぬいぐるみの分身が暴れ回るドタバタ劇。
さすがに放っておけなかったのか僕が翼の肩を支える。
「僕達は先に休むよ」
「ああ、おやすみ」
「もう寝るのかよ。つまんねーな」
「私らはもう少しこの映画見ようぜ……。に、してもこんなの怖がる女性が善明の好みだったんだな」
「そうは言うけど水奈。翼はあれでも人の体に風穴開けるんだぞ」
「可愛いと思うんだけどなぁ~」
そんな3人の意見を聞きながら翼を部屋に連れていく。
「ごめん、どうしてもホラーが苦手で……」
「気にしないでいいよ。だから止めたんだけどね」
「じゃ、おやすみ」
部屋に入る翼を見るとリビングに戻ると別の悲鳴が聞こえた。
「水奈!人の家に来て何を馬鹿な事やってるんだ……ぶっ!」
「いいじゃん、一度やって見たかったんだよケーキ投げ!」
「お前食い物を粗末にするな!」
「とかいいながらお前も大地に投げつけてるじゃねーか天音!」
「大地の野郎は避けるんだよ。嫁のプレゼントをうけとれねーのか!」
「こういうプレゼントはなるべくなら遠慮したいんだけど」
部屋中が生クリームだらけになるまでケーキ投げを続けていた。
やはりどう転んでもクリスマスは惨劇になるのか。
そんなにクリスマスに嫌な思い出があるのだろうか?
(2)
「2人っきりなんて何年ぶりでしょうか?」
「そうだね」
大晦日の日。
僕は愛莉と二人で家でそばを食べながら定番の番組を見ていた。
年を越す儀式にお笑い芸人がビンタを食らうなんてのは日本だけだろう。
歳を取ると流行りの歌やお笑いコントに興味が無くなってしまい定番の番組を見るようになる。
それに大人気のフレーズやF・SEASONは年末年始に仕事を入れず他の皆とパーティを楽しんでいる。
今年も渡辺班の年越しパーティは行われていた。
誠や渡辺君達はそっちに行ったけど僕達は敢えて断った。
今でも渡辺班やSHに問題が無いわけではない事は知っている。
だからこそ僕は行くのを避けた。
行けばきっと空達は僕に頼ろうとするだろう。
もう僕達は引退した身。
いい加減自立するようにするためにも愛莉と相談して欠席しておいた。
冬吾や雪達は当然出席している。
だからこの家にいるのは僕と愛莉の二人だけ。
こうやって二人で年を越すのは何年ぶりだろうか。
愛莉が空と翼を産んでからはそんな余裕はなかった。
さらに天音が産まれてがむしゃらに突っ走ってきた。
冬吾と瞳子も無事子供を作りやっと僕達は休むことが出来た。
「ここまで長かったですね。お疲れさまでした。冬夜さん」
「愛莉もお疲れ様。天音には手を焼いていたみたいだから」
「天音だけじゃありません。茜に冬莉に……」
片桐家の娘は母親を悩ませるという特性を持っているらしい。
そしてそれは孫にまで継がれているそうだ。
もちろん翼だって例外じゃない。
「でも不思議ですね」
愛莉が何か思う事があるようだ。
「どうしたの?」
「結莉と茉莉です。小さい時はそんなに区別なかったのに」
確かに愛莉の言う通りだ。
でもその理由もなんとなくわかる。
「あの子は愛莉に似ただけだろ?」
「……やっぱりそうなりますよね」
愛莉も薄々気づいていたらしい。
あの子は天音の娘だけどそれ以前に愛莉の孫娘なんだから。
片桐家の男子は彼女を大切にする。
それと共に彼女に逆らう事は出来ない。
それは父さんも言っていたからそうなんだろう。
「その割には冬夜さんは私を困らせてばかりじゃないですか」
愛莉がそう言って笑っていた。
「雪と誠司郎はどうなるんでしょうか?」
予測していた質問だった。
「まだ小学生だよ」
「でも神奈は小学生で冬夜さんに惚れていたみたいだし……」
自分だって小学生で僕に一目ぼれしたと愛莉が言う。
でも、今の雪なら大丈夫だろう。
今は必死に誠司郎の事でいっぱいいっぱいみたいだ。
愛莉だって雪の相談とか受けてるんだろ?
「それが瞳子も言ってたんですけど……」
「どうしたの?」
「やっぱり普通の女の子なんでしょうね」
母親にすら恥ずかしがって相談するのを躊躇っている様だ。
どうしてもの時だけ愛莉や瞳子に相談しているらしい。
冬吾や僕がいない時にこっそりと。
他はSHの女子グルを利用しているらしい。
それでも瞳子も見てるから必要最小限の事しか言わないみたいだ。
「孫娘の事は母親にまかせるべきなんだろうね」
「でも冬夜さんは雪が気になるから実家で暮らすことを勧めたのでしょ?」
愛莉も愛莉なりに考えているようだ。
ちゃんと答えてやることにしよう。
「最初は心配だったよ。僕の様に自分に自信をもてないでいたし、恋人を探すなんて無理だと思ってた」
「でも誠司郎との関係は予想してたじゃないですか?」
「計算外だった。一度転がり出したらどこまでも転がり出していた」
あれが片桐家と遠坂家が合わさった成果なんだろう。
多分愛莉たちに相談出来ないというのはそういう事だと思う。
これ以上進んだら親に止められる。
そんな不安とギリギリの綱渡りをしているのだろう。
「そんなに親って信用ないですか?」
「愛莉には無かったの?好きな人とキスをしたりする事を親に知られたくないとか」
忘れてない?
あの子はまだ小学生。
この世界では当たり前の行為は普通の親だと「まだ早い」と止めるだろう。
僕達だって中学の時に躊躇ったじゃないか。
「そういう話なら瞳子の方が分かるかもしれませんね。私はりえちゃんだったし冬夜さんも摩那さんだったから」
そう言えばそうか。
「でも私は雪がそういう相談あるならちゃんと説明してあげたいですけどね」
雪は成長が少し早い。
SHの情報は当たり前だけど過激すぎる。
それを鵜呑みにするくらいなら親から説明したほうがいい。
「愛莉がそう言うなら瞳子にアドバイスしてあげたらいい」
「そうしてみます」
そうこうしているうちに除夜の鐘が聞こえてくる。
時間が新しい1年を刻むと愛莉と「今年もよろしくお願いします」とあいさつをする。
「じゃ、そろそろ寝ようか」
「うぅ……」
ただ寝るだけじゃ愛莉は不満みたいだ。
もう若くもないのに。
ぽかっ
「そういう意味じゃありません」
「じゃあ、どういう意味なの?」
「久しぶりに西寒田にでも2人で初詣に行きませんか?」
それもいいな。
「わかった。じゃあ、防寒着持ってくるよ」
「先に言っておきますけどラーメンはいけませんよ」
もう歳だし、仕事もしていない、あまり運動しなくなったのにこんな時間に脂っこいものはダメだと愛莉が言う。
「じゃあ、焼きイカならいい?」
「本当に困った旦那様ですね」
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