姉妹チート

和希

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Climax Jump

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(1)

「い、いや。注意はしておいたんだけどな……ハハハ」
「ハハハじゃないだろ!このバカ娘!」

 水奈が神奈さんに怒られていた。
 理由は凄く単純な事だ。
 案の定、海翔達は入学式前日に前夜祭と称して騒いでいた。
 優奈達を中心に朝まで騒いでそのまま入学式に向かったそうだ。
 粛々とした入学式の中、異臭を放つ優奈達。
 さすがに海翔はこれが続くとまずいと思ったから母親の天音に相談したらしい。
 天音と優奈の母親の水奈は友達だから。
 しかしその判断が致命傷だった。
 当然石原家のグルチャや多田家のグルチャに送ったら神奈さん達にばれる。
 そしてその日のうちに母さんの耳にも入り大騒ぎになった。
 さすがにそれを美希から聞いた時は僕は呆れていた。
 そして今夜の花見の時も天音と水奈は怒られていた。

「だいたい大学って飲み会行くところなんだろ!?水奈から聞いたぞ!」

 だから天音は優奈達は当然の行動だと主張する。
 しかしその主張自体が間違っていると気付いてないみたいだ。

「水奈は何を娘に教えてるんだこの馬鹿」
「天音は余計な事喋って私を巻き込むな!」
「お前の娘が海翔を巻き込んでるんだと気づけ!」
「私は大学の事なんか大地の行動しか見てないから知らないんだよ!」

 その大地もそんなに飲み会には参加しなかったらしいけど。
 だけど僕達SHはだいたい月1で遊んでいた。
 だから天音にとって大学=勉強にはならないんだろう。

「俺はお前の娘が心配だよ」
「お前の娘でもあるんだぞ。他人事のように言うな」
「だから心配なんだ!入学式で二日酔いなんて聞いたことないぞ!」
「そういえばそうだったね。瑛大も大学違ったけど普通に後で合流してたし」

 神奈さんでも卒業の打ち上げで美嘉さんと泥酔した程度だったそうだ。

「ちょ、ちょっとハメ外しただけだから問題ないって」

 ちゃんとバイトには行ったそうだから心配するなと水奈が言う。

「でも優奈は海翔でも手に負えないくらい成績酷いらしいぞ」

 天音が心配している。
 それでよく大学に合格したな。
 優奈達の事だから期末考査まで二日酔いとか言い出しかねないという。

「水奈が言ってた。難しく考えないでビール飲みながら勉強した方が捗るって」

 さすがにそれはダメと海翔が止めたそうだけど。
 海翔は彼女の扱い方を結に相談しているそうだ。
 もちろん結に分かるわけがなく美希に聞く。
 それは当然母さんに届く。
 
「だからいつも片桐家には余計な事言うなって言ってるだろ!」
「お前は自分で何を言ってるのか分かってるのかこのバカ娘!」

 相変わらず絶え間ない水奈と神奈さんの母娘喧嘩。
 さすがに誠さん達にも止められないらしい。
 しかし父さんは違う何かを見ていた。
 その視線の先には雪と誠司郎がいた。

「今日のお前の弁当私が作ったんだ」
「雪が?」
「うん。口に合うかな?」
「悪くないと思う」
「ありがとう」

 はた目から見たら仲のいい二人。
 しかし雪の父親の冬吾達は気づいていた。
 それは母さんも同じだ。

「誠司郎。ばあばとゲームしましょうか?」
「ゲーム?」
「ええ……」

 そう言って母さんは雪の玉子焼きと自分の作った卵焼きを並べて何回か入れ替えた。
 そして結に言う。

「誠司郎はどっちが雪の玉子焼きか分かるかな?」
「は、はい……」

 そう言って二つを食べて見事に正解した。
 雪は喜んでいる。
 だけど問題はその後だった。

「どうしてわかったの?」
「雪の味付けって少し薄いんです」

 瞳子が教えた雪の作る卵焼きは瞳子の家の味を継承している。
 だけど母さんの作ったのは父さんに合わせた少し濃いめの味。
 だから分かったのだという。

「もうそんな事まで分かるのか、誠司郎は」

 神奈さんも驚いていた。

「本当に誠君の孫なの?」

 恵美さんが言っている。
 雪は嬉しそうだ。
 
(2)

「誠司郎、またちょっと味を変えてみたの」
「へえ」

 今日は歓迎遠足の日。
 いつものように誠司郎のお弁当は用意していた。
 誠司郎の味の好みが分からないから試行錯誤している。
 薄口は嫌なのかな?と愛莉に教わって濃いめに作ってみた。

「美味しいよ」
「前回とどっちが好きだった?」
「うーん、こっちの方が好きかな」

 ご飯にちょうど合うらしい。

「雪は卵料理は玉子焼きだけなの?」
「いや、オムレツとかも作れるよ」
「それ食べてみたいかも」
「うーん、じゃあ連休にでも家においでよ」
 
 昼食作ってあげる。

「じゃあ、お邪魔しようかな」
「片桐さん達はいつも仲がいいね」
 
 そう言ったのはクラスメートの喜田川蓮。
 クラスの仲でも地味で大人しい目の男子。

「蓮も彼女作ればいいじゃないか」

 それが難しい年頃だとは誠司郎は思わなかったのだろう。

「僕には無理だよ」
「決めつけるなよ。気になる子くらいいないの?」

 黄島亜優も乗って来た。
 すると意外な反応を見せた。

「ごめん、言えない」

 当然私は見逃さない。

「て、ことはいるんだ?」

 自分の失言に気づいた蓮は慌てて口をふさぐ。

「え、だれだれ!」

 亜優も気になったらしい。
 執拗に問いただそうとするけど全く口を割ろうとしない。
 私はなんとなく気づいてしまった。
 亜優もなんとなく気づいたのだろう。

「……あのさ。こういう言い方するのも悪いと思うけど。相手からの告白を待っていようとかギャルゲー的発想してない?」

 その方が楽だ。
 失敗しても傷つくことはない。
 ダメだったで片付く。
 でも本当に片付くの?
 言っておけば良かったって後悔しない?
 同じ後悔するならやることやって後悔しなさい。

「あんたみたいな考え方だと一生彼女なんて出来ない!」

 そう言ってお菓子を食べ始める亜優。

「本当にそう思いますか?」
  
 え?
 小学生残り3年間気まずい空気になるかもしれないのにそれでも当たって砕けるべきだと思いますか?

「その考え方が間違ってるよ」

 私が説明した。
 確かに失敗したら気まずい空気になるかもしれない。
 でも3年も引きずる事なんてありえない。
 それにそう思ってる時点で蓮は3年間悩み続ける羽目になってるじゃない。
 だったらスッキリさせた方がいい。
 卒業式の時にとかクリスマスにとかいろいろタイミングがあるかもしれないけど、踏み出すなら今だ。
 心配するな。
 もし失敗したら私の胸を貸してやる。
 誠司郎もそのくらいで怒ったりしないから。
 どういう意味かわかるよね?
 私が言うと亜優も連を見ている。
 蓮は立ち上がって亜優を見た。

「僕はずっと黄島さんが好きでした。よかったら付き合ってください」

 その突然の告白に誠司郎は驚いていた。
 亜優は動じなかった。
 動揺していたのかもしれないけど。
 そうでもなかった。
 冷静に蓮に聞いていた。

「どうして私なの?」
「去年の運動会の時だった」

 私が呼び出されえて、亜優がその様子を伺っていた時、蓮も居合わせていたらしい。
 そして私が教室を去った後寂しそうにしている亜優に声をかけたらしい。

「黄島さんは強いんだね」
「本当にそう思う?」
「え?」
「私だってあいつらと一緒だよ」
 
 本当は私に嫉妬してた。
 でもずっと誠司郎を見ていたから分かるんだ。
 誠司郎の目には私しか映っていない。
 端から勝ち目のないゲームから逃げているだけ。
 やってることは変わりないと亜優は言った。

「それでもなお立ち向かおうとする黄島さんは凄いよ」
「もう諦めてるけどね」
「他の人を探したりはしないの?」
「無理だからって簡単に諦めることが出来ないのが恋なのよ」

 蓮も恋をすれば分かるよ。
 そう言って亜優は立ち去ったらしい。
 恋をすれば分かる。
 そして興味を持った。
 当然その興味の対象は……
 それから亜優と蓮はよく話すようになった。
 だけど一緒によくいるからと付き合うというのは意味が違う。
 男の子の勘違い。
 そんな話を聞けば蓮も臆病になる。
 だけど、賽は投げられた。
 じっと聞いていた亜優は少し考えて私に言う。

「雪、ごめん」
「どうしたの?」
「あんたの胸に蓮を預けるのは無理」

 え?

「私も素直じゃない上に卑怯だからさ……ずっと待ってた」
 
 蓮の勘違いじゃなかった。 
 蓮の思いやりと優しさが亜優の心に滲んでいた。

「本当に私でいいのね?後悔しない?」
「そんなの分からないって黄島さんも言ってたじゃないか」
「そうだね。じゃあ、返事を言うね。私も蓮の事が気になってた」

 きっと新しい恋を探していたんだと思う。

「さすがにこの場で抱き合うのは無理だから今度家に誘ってよ」
「いいの?」
「雪には負けてられないし」
「……分かった。よろしく黄島さん」
「亜優でいいよ」
「よろしく、亜優」
「うん」

 そうして新しいカップルが誕生した。
 
「修学旅行に間に合ってよかったね」
「そうね、私だけハブられるという心配はなくなったよ」

 亜優は新しい彼に浮かれていた。
 いいなぁ。
 家に帰る途中誠司郎に聞く。

「誠司郎今日は練習あるんだよね?」
「うん、悪い」
「それはいいよ」

 たださ……
 私は家の前で誠司郎に抱き着いてキスをした。

「ど、どうしたの!?」
「2人を見ていたらしたくなったの」

 じゃ、またね。
 家に帰ってグルチャで亜優のその後の話を聞いていた。
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