姉妹チート

和希

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限りない夢

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(1)

「結。釣った魚は生で食べたらいけないらしいからお刺身は我慢しようね」
「わかった」

 今日は大学生だけで無人島にキャンプに来ていた。
 コテージはあるしトイレやシャワーもある時点で無人島じゃない気がするけど細かい事は気にしたらいけないと母さんが言っていた。
 夏だから当然の様に結莉や茉莉達は水着を着ている。
 茉奈の水着姿を見ていると下着でもいいんじゃないか?と思えてくる。
 しかし素材が違うと茉奈が教えてくれた。
 下着姿の茉奈は毎日見てるから今更恥ずかしいとかそう言うのは無かった。
 でもそれは思ってるだけにしておけと秋久が言っていたので内緒にしてあった。
 案の定茉莉が「茉奈より私の方が良くないか?」と余計な事を言っている。
 だけど正直茉奈も茉莉もそんなに大差ないくらい茉奈も発達していた。
 こういう時は一言で結莉の機嫌を直す方法を父さんから教えてくれた。

「ごめん。茉奈以外に興味ないんだ」
「結は困った人だね」

 茉奈は嬉しそうに人前で抱き着いてくる。
 それを見た菫と茉莉は馬鹿馬鹿しくなって茉奈を挑発しなくなる。
 機嫌の悪い茉莉の相手は朔に任せておけばいいと聞いていた。
 正行も「菫も似合っているよ」と上にTシャツを着ているけど水着姿の希美を褒めていた。
 恥ずかしいからと秋久が言っていた。
 あまり触れてやるなとも言っていたので言わなかった。
 
「ロリコンかお前は?」

 菫は正行にそう言っていたけど笑顔だった。
 ロリコンの意味はちゃんと調べた。
 調べて検索結果の画像を見ていたら茉奈に怒られたけど。

「結はそういうのに興味持ったらダメ!」

 茉奈が機嫌を悪くするからあまり考えないようにしておこう。
 夜になると女性陣が夕飯の準備を始める。
 もちろん俺達はその間酒を飲んでいるだけじゃない。
 釣った鯵をさばいておく。
 それを茉奈達が用意していた油で揚げてフライにしていく。
 もちろん肉も大量に用意していた。
 それを食べながら酒も飲んで盛り上がる茉莉と菫達。
 俺は秋久や心音に茉奈と一緒に話をしていた。
 朔は茉莉達が暴れ出してコテージを破壊しないように見張っていた。
 朔は茉莉の扱い方をよく分かっているらしい。
 祈から聞いたそうだ。

「今年は無事に過ごせそうだね」

 秋久が安心している。
 でもそうやって油断したところを狙ってくるのがリベリオンだ。
 しかし今回はリベリオンも手の出しようがないらしい。
 SHの全員を警護するだけじゃ飽き足らずバルバトスが悉く駆逐していく。
 それを分かっているから毎度同じパターンじゃつまらないから何事も起きていないようにしているだけだそうだ。
 SHの王の称号は父さんから継いだ。
 父さんが残した最後の仕事、リベリオンの掃討をやっている最中だ。
 自分から手を出すのも面倒だからバルバトスとエデンに一任している。
 すると連中は手札を使い切ったのか、何もしてこない。
 それとも新しい手札を用意しているのだろうか?
 どっちにしろ今のままだと奥の手を使えない。
 リベリオンの息の根を止める一撃が使えない。
 その切り札は茉奈達にも内緒にしておいた。 
 
「それは置いておいて結は進路決めてるのかい?」

 秋久が話題を変えて来た。
 秋久は卒業したら父親の善明の仕事を継ぐらしい。

「秋久の恋人が心音なら安心だね」

 善明が口を滑らせてそれが美希の耳に届いたらしい。

「どういう意味かな?善明」
「そうね、翼だと何か不満があるの?」

 翼と晶から問い詰められて困ったそうだ。
 俺も相手が茉奈だから安心だと愛莉が言っていた。
 若い頃の愛莉にそっくりだとじいじが笑っていた。

「そ、その話は孫にしてはいけません」

 愛莉がそう言って慌てているのをじいじは笑ってみていた。
 そんなじいじと愛莉みたいになれるといいなと思っている。

「多分父さんの事務所に就職すると思う」

 その為に資格を取らなければいけない。

「茉奈はいいね。私はちょっと不安なんだ」

 心音がそう言っていた。

「どうして?」

 茉奈が聞くと心音が不安を打ち明けた。
 秋久は善明の後を継ぐ。
 将来を約束された社長夫人だ。
 そんな未知の世界に飛び込むのが怖いらしい。
 そんな世界にいるにもかかわらず暴れ回っているのが菫と茉莉なんだけど。
 秋久も色々考えているようだ。

「お願いだからそれを母さんに言わないでおくれ」
「どうして?」
「僕が戦場を駆け回ることになる」

 彼女の不安くらい吹き飛ばしてあげなさい。
 それができないならどうなるかわかってるでしょうね。
 晶にそう言われたらしい。

「そんなに難しく考えないでいいよ。結莉も同じだよ」

 そう、結莉もパーティでローストビーフの前に群がっている人間だった。

「そ、それもちょっと無理かも」
「でも秋久がきっと支えてくれる。そういう時は夫に任せておいたらいいって天音も言ってたよ」

 自分に恥をかかせるような人間がいたらそいつは間違いなく消される。
 だから好きなようにしていたらいいと結莉がアドバイスしていた。
 俺も同じだ。
 片桐家に歯向かう人間はあらゆる方向から制裁を受ける。
 地元における最重要人物がじいじだって言ってた。
 もっとも「いい加減僕に楽をさせてくれ」と父さんに言ってたけど。

「でも、もうそんな事を考えてたって事は……?」

 茉奈が何かに気づいたらしい。
 すると心音は嬉しそうに左手を見せた。
 薬指にある綺麗な指輪。
 秋久は去年のクリスマスに言ったそうだ。

「多分大学を卒業した後の事は保証されている。だから僕は心音の為に人生を尽くしたい」

 そうしないと地元の経済が崩壊すると思ったそうだけど。
 とりあえずそんな感じで婚約を済ませたらしい。
 いいな~と羨ましそうに結莉が指輪を見ていた。

「結はいつ私を攫ってくれるの?」

 言い方ってあると思った。
 とりあえずそろそろそんな話になるかなと思っていたので茉奈に説明した。

「父さんはともかくじいじが言ってたんだ」

 彼女を支える事が出来る基盤が出来てからにしなさい。
 そんな将来の事はもう決まっているけどそれでも確かな自信をもってからでも遅くはない。
 逆をいえば彼女の幸せを守ることが出来ないうちにそんな約束するべきじゃない。
 愛莉から聞いたそうだ。
 嫁に来るってことは夫に人生を預ける事。
 その重みを知ってそれを支える事が出来ると自信をもったらちゃんと伝えてあげなさい。
 それはきっと茉奈が一番楽しみにしていることだろうから。

「じゃあ、私は待ってるだけでいいんだね」
 
 もうすでに茉奈は幸せそうにしていた。

(2)

「そうか、今年は亜優たちが来たのか」
「お世話になります」
「あ、あの。初めまして」
「ああ、君が亜優の彼氏さんだな」

 亜優と蓮が誠司やパパに挨拶をしていた。
 やけに緊張している。
 今日はSHの海キャンプの日。
 夜のBBQを楽しんでいた。
 私も肉を食べながら二人を見ていた。

「まあ、固くならずに食え」

 天音がそう言って肉を二人に差し出す。
 愛莉やじいじは来ていない。
 
「もう僕達はのんびりしているよ」

 そう言って家に残っていた。
 神奈や誠も来ていない。
 瑛大達もだ。
 皆のんびりしていたいみたいだった。
 誠と瑛大は私達に余計なことを言うから。
 正直私も不安だった。
 誠司郎に何か良からぬことを言ってるんじゃないかと。
 普段の誠司郎を見てるとそんな事全くないみたいだけど。
 相変わらず休みの日に家に来てはいちゃついていた。
 いちゃつき方も変わった。
 テレビを見ながら寄り添っていたり、キスをしたり。
 たまに過激ないちゃつき方をするけど。
 誠司郎の体にも変化が出てきた。
 
「触ってもいい?」
「ああ、いいけど」

 誠司郎がそう言うと人差し指でつんとつついたりしてみた。
 びくんとなって面白い。

「あんまり刺激しないで欲しい」
「するとどうなるの?」

 知っていたけどあえて聞いてみた。

「雪に迷惑がかかるから」
「どうして?」
「洗濯とか大変だろうから」

 実際夜に試して大変だったらしい。
 私は耳打ちして返事をしてあげた。
 誠司郎は驚いていた。

「い、いや。さすがにそんな真似させられないよ」
「私だって誠司郎以外に練習相手いないんだよ?」

 歯を立てたらいけないとかいろいろ難しいみたいだから。

「雪を性欲のはけ口にしているみたいでいやだからまだいい」
「一人で処理してる誠司郎を想像したら可哀そうだよ」

 それにどうやってしてるの?
 想像つくけど聞いてみた。
 想像通りの答えが返ってきた。

「家で一人でそんな物観ている彼氏を知った時の彼女の気持ちも考えてよ」
「雪はそういうのないの?」
「……そういうのを女の子に聞いたらダメ」
「ごめん」

 誠司郎が謝ると私は笑って誠司郎に耳打ちした。

「そんなものなの?」
「気づく子はもっと小さい時に気づくらしいよ」

 無意識にそうなってしまうらしい。

「……へえ、誠司郎とはそこまで進んでるんだ」
 
 いつの間にか亜優が隣にいた。

「蓮とはどうなの?」

 すると亜優が恥ずかしそうにいった。

「この前蓮の家に行ったときにやっとキスを済ませた」
「へえ、どんなキス?」

 次々と年上のSHの子達が集まって来た。
 天音達も混ざっていた。

「雪の押しが強いと聞いていたけどそこまでとはな……」

 強引さは愛莉ゆずりじゃないかと笑っていた。

「私も空にそのくらい強気でいけばよかったのかな」

 水奈が後悔しているようだ。

「そういう話を夫の前でしないでくれといつも言ってるだろ」
 
 それにまだ小学生に何を教えてるんだと学が注意している。

「馬鹿だな学は。小学生にでもなればそれなりの知識を手に入れるぞ」

 よく考えろ。
 女はそうでなくても色々始まったりするんだ。
 知識が全くない方が危険だろうがと水奈が反論していた。

「恋の時はどうだったんだ?」

 天音が学に聞いていた。

「天音の時と一緒じゃないのか?」

 急に自分の着替えをさっさとしまう様になったらしい。
 さすがに「学の下着と一緒に洗わないで」とかは言わなかった。
 天音と翼は違ったみたいだ。

「パパ!どっちが魅力的!?」

 そう言ってじいじに見せつけて勝負していたそうだ。
 じいじもただ笑ってごまかすしかなかった。
 愛莉は激怒していたみたいだ。
 うん、私には無理。
 パパにみられるのも恥ずかしい。

「それが片桐家の娘にしてはめずらしいんだよね」

 茜や冬莉が言う。
 2人は愛莉からじいじを寝取ろうと企んでいたらしい。
 この2人の行動は私には理解不能だった。
 お風呂に入らなかったり、裸で部屋中歩き回ったり。

「それで、思い出した」
 
 誠司郎が突然言い出した。

「どうしたんだ?誠司郎」

 すると誠司郎は私を見ていった。
 誠司郎の悩みだったらしい。
 いつもは甘えてくる私なのにある時にいつものように触ろうとすると極端に嫌がることがあるのが気になったらしい。
 機嫌が悪い時ってあるのか?
 それが誠司郎の悩みだった。
 私はため息をついていた。
 亜優は笑っている。

「そんな付き合いをしてるのに、何も知らない誠司郎が悪い」

 亜優はそう言っていた。
 常に気遣う彼氏も嫌だけど少しは気づいて欲しい。

「誠司郎、それが女性の辛いところなんだ」

 天音が説明していた。
 女性は周期的にそういう状態になる。
 眠い時とかもむやみに触られるのが嫌だったり。
 私が嫌だと言ってるならそっとしておいてやれ。
 別に機嫌が悪いわけじゃない。
 その証拠にそんな状態でも誠司郎に会いたいと思ってる。

「そんなものなんですね」
「間違っても父さんに聞くなよ。あの馬鹿ろくでもない事いいだすから」
 
 水奈が言う。
 そろそろ寝ようかと興味の無さそうな空が言うとテントに入る。
 テントに入ると私が言う。

「そんなに常日頃から私に触っていたいの?」
「休みの時しか会えなくなってきたからな」
「……今日は大丈夫だよ」
「それってなんか目印ないのか?」
「パオラから何も聞いてないの?」

 聞いてないなら聞いてみたらいい。
 ただし誠司たちのいないところで。

「わかった」
「あとね……女の子も同じだよ?」

 焦らされるの嫌いなの。
 
「分かってる」

 そう言って蒸し暑いテントの中で誠司郎に包まれていた。
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