姉妹チート

和希

文字の大きさ
525 / 535

マイ・ガール

しおりを挟む
(1)

「すごいね、誠司郎」

 私は写真を撮りながら誠司郎と腕を組んで歩いていた。
 亜優も蓮と同じように歩いている。
 毎年大吊橋だとつまらないからと、青の洞門に来ていた。
 例年と違う紅葉の景色に息をのんでいる。
 空達はいつも通り大吊橋に行っている。
 目的はハンバーガー。
 じいじ達もそっちに行きたかったみたいだけどついてきていた。

「普段見てない雪達を偶には見てあげてください!」

 どうせじいじの目的もハンバーガーだと愛莉が見抜いていた。

「なあ、雪」
「どうしたの?」
「そんなに枯葉みて楽しいか?」

 俺は退屈だ……
 途中で蓮が誠司郎の口を塞いでいた。

「それは絶対に言ったらダメだよ」
「なんでだ?」
「誠司郎は片桐さんと一緒にいるのが退屈だって自爆する気?」

 蓮の方が慣れてるんじゃないのか?

「お前さ、雪の何を知って言ってるの?」
「え?」

 へ?

「毎年ハンバーガーをたらふく食べて喜んでる雪が名物もなさっそうなこんなところで満足するはず……」

 ぽかっ

「誠司郎は私の事そういう風に見てたんだ?」
「やっぱり誠の孫には間違いなさそうだな」
「今のうちに教育してあげてもいいわよ?神奈」

 私が言うと神奈と恵美も言う。

「ま、待て神奈。要するにありのままの雪が好きだってことだろ?」

 今さらこんなところで「綺麗」なんて女の子ぶらなくても十分惹かれてるって意味じゃないか?と誠が誠司郎を庇う。
 だけどじいじが口をはさんだ。

「それは違うだろ?誠」

 確かに私は食いしん坊。
 だけど怖がりだったり女の子らしい部分だって十分ある。
 そういう所を無視した結果がさっきの発言だろ?
 全然雪を見てないじゃないか。

「す、すいません」

 謝る誠司郎。
 だけどじいじは容赦がない。

「だめだ。許せないね」

 私は許してあげたいんだけど。

「愛莉、こういう時はあれだね」
「そうですね……罰ゲームですね」

 え?

「誠司郎は今日帰ったら家に一泊していきなさい」

 愛莉の発言に誰もが驚いた。

「あ、愛莉さんそれはあまりにも危険なのでは」

 ママが言う。

「私もそう思います。今の二人を一緒に寝させるのは……」
 
 パオラも反対していた。
 だけど愛莉は首を振る。

「そんな事二人とも分かっていますよ」

 今自分たちがどういう立場なのか?
 どこまでを許容されるのか?
 それはいつも一緒に家にいた愛莉だから分かる。
 馬鹿な真似は絶対にしない。
 だったら偶には一緒に居させてあげてもいいでしょ。

「まあ、一緒にお風呂入るくらいなら構わないでしょ?瞳子」
「困りましたね。母親としては構わないのですが、教育者としては……」
「だったらいい案があります。どうせ冬吾は今夜飲むのですから一緒に飲みに行きましょう」

 パオラたちも同席したらいい。
 どうせ誠君達も一緒なのだろうから。

「そうだね。そろそろ言ってみたかったんだよね。”俺の娘に手を出しやがって”って」
「待て冬吾。誘ったのは雪だって聞いたぞ」
「そういうのを女の子のせいにするのは男としてどうなの?誠司」
「いいなあ。最近そういう話が無かったからな。冬夜も来るんだろ?」
「偶には誠の愚痴にも付き合ってやるよ」

 大人だけで盛り上がる間に誠司郎が謝って来た。

「ごめん、ちゃんと見てなかったのは俺の方だったんだな」
「本当にちゃんと見てないね」
「え?」

 驚く誠司郎にキスをした。

「そんな誠司郎を世界で一番大好きなのが私なんだよ」

 私の頬も紅葉してるかもしれない。

「あんたやること大胆ね」

 亜優があきれていた。

「蓮にもこのくらいしてもらえばいいのに」
「だ、そうだよ。もっと迫ってきてよ」

 蓮は笑ってごまかしていた。

(2)

「ほら、花道。そんな疲れた顔しないの!」

 初めてのデートなんだから!
 そう言って俺をあちこちに連れまわす遠坂香澄。
 せっかくの中学の修学旅行。
 これを逃したら思い出なんてほとんど残らないしチャンスだって残っていない。
 高校になったら離れ離れになる可能性だってあるんだから。
 そう思って親友の遠坂純に頼んでいた。

「まあ、呼び出すくらいはするけどちゃんと自分の口で伝えろよ」

 そう言ってその日の放課後、純の姉の香澄を呼び出してもらった。

「前から元気な香澄さんが好きでした。付き合ってください」

 玉砕するつもりだったけど、ある意味予想外の返事が返ってきた。

「で、今持ってるの?」

 そう答える香澄を不思議そうな顔で見ていた。

「ごめん、お金はそんなにもってない」
「香澄、お前円でもするつもりか?」
「彼氏相手にそんな真似するわけないでしょ!」

 ってことは告白は成功したのだろうか?
 でも何を出せばいいんだ?

「梨々香だから彼氏相手なら許してくれるはずだからもってないならコンビニで買おうよ」

 ま、まさか……。

「お前告白されてその日に寝る気か!?」
「澤野君だって早い方がいいでしょ!」

 無茶すぎるだろ。

「あのさ、いくら私でも修学旅行の日に部屋に忍び込んでなんて無理だよ」
「そうじゃなくてキスもしてないのにハードル高いだろ」

 香澄と純の口論を聞きながら純が言っていたことを思い出していた。
 片桐家の娘は何かしら爆弾を抱えて生まれる。
 香澄の場合は男子も腰が引ける程の肉食系の猛獣だった。

「さすがに初体験が担任じゃパパの仕事にも影響あるだろうしさ」
「そうじゃなくてちゃんと彼氏を見つけなさい!」

 香澄と香澄達の母親の梨々香がそんな口論をしていたらしい。
 父親の純也は自分の父親と飲みに行ったそうだ。
 この果てしなく続く口論を止める為に話題を変える事にした。
 
「それで結局俺の告白は成功したのかな?」

 そう言うと香澄は俺を睨みつける。

「私が誰にでも股を開くような尻軽みたいに言わないで!」
 
 誰もそこまで言ってないんだけど……。
 返答に困っている俺を見て香澄は笑った。

「私を選んで後悔しても知らないからね。私焦らされるの嫌いなの」
「ああ、よく分かったよ。お手柔らかにね」
「修学旅行楽しみだね」

 そうして今日は修学旅行最終日。
 別に地元の水族館でもいいじゃないかと思えるくらいただ大きいだけの水族館。
 外で他人が群がっている大道芸人を見ながらベンチでくたびれていると香澄に怒られた。

「どう?」
「悪くはないかな。修学旅行前に告ってよかった」

 高校生の初めてのデートが水族館なんて誰も考えないだろ。
 しかし失言だったようだ。

「これが初デートなんて許さない。ちゃんと私の為に特別なプランを考えて」

 それが必死に考えた物だって分かればきっと私は嬉しいからと香澄は微笑んでいた。

「言っとくけどいきなりラブホはないからな」
「分かってるよ。パパ達には言っておいたから部屋使えるよ」

 分かってないみたいだ。
 彼女の部屋で父親がいる中にするなんてどんだけ猛者だよ。
 だけど香澄の母親は父親に「いつか来ることくらい純也だって分かってるでしょ」と言ったそうだ。
 初めて家に泊まるだけでも緊張するのにハードルを上げてくれたらしい。

「心配しないでも優しいパパだから」

 優しいけど県警本部長だぞ?
 一体どんな無茶をしたのか分からないけど東京都で言うなら警視総監だぞ。
 かなりの切れ者なんだろう。
 そんな父親相手に俺は何が出来るんだろうか?
 集合時間になると皆集まる。
 バスに乗って駅に行き、新幹線で九州へ戻る。
 帰りはさすがに疲れたのか香澄は俺の肩にもたれかかって眠っていた。

「どうだった?彼女との自由行動」

 純からメッセージが届いた。

「予想してたのとはかなり違った」
「理想と現実のギャップってやつだな。心配するな。SHのカップルは大体そんなもんだ」

 そうやって彼女に振り回されながらそれでもいざという時は頼りにしてくれる彼女。
 俺も香澄に頼られる時が来るのかな。

「あとデートするなら香澄の飯代を奢るなんて無茶は止めておけ」

 小遣いいくらあっても足りないぞ。
 店も選んでおいた方がいい。
 そんな純のアドバイスを聞きながら地元に帰るまでの間香澄とのデートプランを考えていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

処理中です...