姉妹チート

和希

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ZERO

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(1)

「あなたがゼロ?」
「お嬢さんが呼び出したのかい?」
「ええ、私が呼び出したの。ゼロ……いや、瀬田悠一さん」
「お前何者だ?」

 俺が呼び出したゼロというコードネームの男。
 7の苦悩というリベリオンの特殊部隊のリーダー。
 7の苦悩というくらいだから人数は察しがついた。
 その中でもこいつを選んだのは理由がある。
 まず、こいつがリーダー格でうってつけだったから。
 そして……

「どこまで私の事を知っている?何の対策もしていないようだが」

 男が構える。
 しかし私はズボンのポケットに手を突っ込んで帽子を深くかぶってにやりと笑っていた。
 ゼロは少し不信感を出したけどすぐに行動する。
 及第点だ。
 こういう時は先手の方が優位。
 ゼロの能力ならなおのことだ。
 もちろん俺も分かっていたから先に手を打っておいた。
 いつもの様に既存概念を発動する。
 能力は発動しないから焦るゼロ。

「……お前まさか!」

 その瞬間奴の存在はスマホだけを残して消えた。

「悪いな。説明したいけど私もまだ門限があるの」

 中学生になって早々門限破って外出禁止とかになったら面倒だ。
 廃工場の中で俺はゼロのスマホを回収すると、陰で様子を見ていた結に渡した。
 それ以外の痕跡は全て消し去ると私は結に聞く。

「ここからどうするの?」

 独りずつ始末していく?
 だけど結は首を振った。

「記憶の改ざんを使って雪がゼロということにしてある」

 それでも用心深い十郎の事だから感づくだろう。
 問題はその感づいた時にどう行動するか?
 きっと嬉々として私を罠にはめるだろう。
 その時が最初で最後のチャンス。
 失敗したらまた別の手段を考えないといけない。
 それが面倒なら強引な手を使う。

「私は何をすればいいの?」
「ゼロに成りすまして行動していてくれたらいい」

 既存概念の上書きを使えばSHのメンバーにも気づかれることはない。

「分かった」
「じゃあ、送るよ。瞳子も心配してるだろうから」

 結はそう言って私を家に送ってくれた。

「あら?雪。今日は遅かったわね。どこ行ってたの?」
「結がドライブに誘ってくれた」
「あら、あの子茉奈を誘わずに雪を誘ったの?」

 愛莉の機嫌が悪そうだ。

「誠司郎も心配していたから連絡してあげて」
「わかった」

 誠司郎にだけは説明しておきたいと思った。
 世界でたった一人のパートナーだから。
 嘘や隠し事はしたくなかった。
 たとえどんなことでも。

(3)

「お前がゼロか?」

 左手が義手の大男、ホアキンが俺に聞いてきた。

「そうだけど何か問題があるの?」
「俺達は素性を知られている。なのにゼロだけ素性が謎なのは問題じゃないか?」
「知ったところで変わらない。私もあなたの事をウノとしか呼ばない」

 それ以上のデータはあったけど興味がない。
 あなた達は私の手ごまにしか過ぎない。
 そんな手駒にいちいち情報を教える必要があるのか?

「いちいち勘に触るお嬢ちゃんだな」

 男が筒の様なものに換装した左腕を向ける。

「やめとけウノ。お前だけならともかく私達にまで巻き込むな」

 そう言う女性はドゥリー。
 2番目の7の苦悩。
 7の苦悩はお互いの能力は把握している。
 とはいえ奥の手は隠し持っている。
 それを知っているのは本人と俺だけ。
 どんなに誤魔化そうと私には関係ない。
 だけど敢えて知らないふりをしていた。
 その方が私もゼロに成りすますのにやりやすいから。
 ゼロの能力は致死性の毒を任意の範囲内にばら撒く能力。
 それ以外の能力は見せていない。
 そもそもどうやって私がゼロになりすましているか?
 簡単だ。
 結の記憶の改ざんという能力を使っている。
 対象の記憶を全て私の都合のいいように上書きする。
 分かりやすく言うとゼロに関する情報を全て結が私に書き換えた。
 私にあったリベリオンの人間すべてに同じ事をした。
 だから私はリベリオンの中では片桐雪ではなくゼロだ。

「で、俺達を集めた理由は?」
「ルールの確認」

 俺達の間のルール。
 十郎の許可なしにSHに接触するな。
 接触する時は常に二人以上で行動しろ。
 勝手な真似は絶対に許さない。

「……たかがガキだと侮った奴から片桐結に始末されることを絶対に忘れるないで」
「分かってる。その事に関するデータは何度も確認した」

 トゥレスがそう答える。
 そのガキに操られているとも知らずによく言う。

「じゃ、以上だ。絶対に目立つ行動はするな」
「言われなくても分かってるって。十郎も言ってたけどなんでそんなガキに……」
「その名前軽々しく口にしないで。SHにはまだあなた達が何者かすら知られていないんだ」

 せっかくの優位性を台無しにする気?
 茜や菫に椿といくらでも有能なハッカーがいる。
 情報なんていくら抜き取られてもおかしくないんだ。
 リベリオンの中でも極秘の存在だと忘れるな。
 十郎の名前を出しただけで奴らの標的になるぞ。
 その間抜けだけじゃなくて私たち全員まとめてだ。

「やけにゼロはSHを過大評価してますね」

 トゥレスは何か不審に思ったようだ。
 もちろんこの程度の事で動揺しない。

「過小評価した結果消滅したFGを忘れていないか?」
「……それもそうですね」

 時計を見るとそろそろ門限だ。
 私は先に帰るといって立ち去った。
 しかし奴らも間抜けじゃない。
 尾行をつけたらしい。
 私の能力を使えば尾行くらいどうにでもなる。
 適当に巻いて家に帰る。
 夕食を食べた後風呂に入って誠司郎にメールする。

「明日放課後コンビニに行かないか?」
「明日は暇なのか?」
「ああ、たまには唐揚げ食いたいし誠司郎に話しておきたい事がある」
「分かった。本当に食べるの好きだな」

 誠司郎の笑顔が脳裏に浮かぶ。
 だけど明日も笑ってくれるかな?
 私のやってることを許してくれるかな?
 気がついたら私は泣いていた。
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