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卒業証書
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(1)
「起立」
私が教室に入ると学級委員の声で皆が起立する。
今日はいよいよこの子達の卒業式。
私の教師生活最後の締めくくり。
いつもよりも力が入る。
娘の片桐雪は退屈そうにしているけど。
小学生にして異常なまでに堂々としてそして落ち着いていた。
式の進行について説明すると入場の時間まで待つ。
みんなこの日の為に用意した服装を互いに見て笑っている。
そんな時期も私にもあったなと眺めていた。
「ねえ、誠司郎この服どうかな?」
「お前はいつも適当に”似合ってる”の一言しか言わないじゃないか!」
「そういや今日はスカートの丈長いんだな」
「長いの嫌い?」
「似合ってるよ」
「ありがとう」
親ばか目線からも知れないけど雪はいい子に育ってくれた。
そして誠司郎という良いパートナーを手に入れることが出来たと思う。
時間になると体育館に入場する。
1人ずつ名前を呼んで壇上で校長から卒業証書を授与される。
在校生とお別れのエールを交わして卒業式が終わる。
不思議な事にこの学年に式の間爆睡する子は一人としていなかった。
長年やってきたけど奇跡に近い。
最後の仕上げが待っていた。
式の後に教室に戻って最後の挨拶をする。
「みんな6年間頑張りました。中学生になっても頑張って行けると信じています」
その時に気づいた。
女子は当然の様に泣いている子もいるのは分かるけど、男子が何か企んでいる様に見える。
何より黄島亜優や娘の雪がニコニコしている。
当たり前の様だけど何か違和感を持ちながら挨拶を終え児童と一緒に校庭に出ようとした時だった。
「ちょっとまったぁ!」
赤井蒼生が突然叫んだ。
何事かと後ろで見ていた父兄もざわついている。
「えっとこれ……受け取って欲しいんだ」
蒼生がそう言って画用紙を持って前に出て来た。
ラブレターではないらしい。
なんだろう?
蒼生は画用紙を広げると読み上げる。
「卒業証書!」
え?
さすがにそれを聞いた時は耳を疑った。
「片桐瞳子先生は……6年間俺達の担任として頑張ってきました……」
彼らなりの私に対するサプライズを用意していたのだろう。
元気に読み上げる蒼生。
だめだ、まだ最後までしっかり聞かないと。
「……ってことでここに担任卒業の表彰をします。長年お疲れさまでした」
蒼生が読み終えると皆が拍手をしてくれる。
私はもう我慢できなかった。
「ありがとね……こんな素敵な子を無事送りだせた思い出は大切にします」
「泣くなよ!今日はめでたい日なんだろ?」
蒼生がそう言うと後ろで見ていた冬吾さん達が拍手をする。
それを聞いていた他の父兄も拍手をしてくれた。
そうして私の卒業式が終わった。
残務をすませた頃に中山瞳美先生からメッセージが届いた。
「お疲れ様です。〇〇って居酒屋でお待ちしてます」
「でも主人が……」
「冬吾さんも一緒ですから」
冬吾さんも一緒の様だ。
行ってみると瞳美先輩や桜子先輩が待っていた。
「最後にしてやられたみたいだね」
桜子先輩がそう言って笑っている。
「やっぱり片桐家はただ者じゃないですね」
そう返事をしながら座って私の慰労会をしてくれた。
そのあと2次会に呼ばれたけどさすがに疲れたので冬吾さんと一緒に帰る。
家で2人でゆっくりと飲んでいた。
「まだまだ大変だよ?」
菫や茉莉の子供がやがて入学してくるんだ。
「少しの間だけゆっくりしたいかな」
「お疲れさん」
教師としてやれることはやってきた。
ここからは母親としての務めを果たさないといけないと思った。
(2)
卒業旅行の帰りに実家によると母さんが出迎えてくれた。
父さんは仕事みたいだ。
「ただいま~」
「お帰り。北海道はどうだった?」
「まだ雪降ってた」
「そうだろうね。あ、お土産の蟹ありがとうね。さ、上がって」
母さんがそう言うと俺は実家に入る。
すると茉奈が言い出した。
「いつプロポーズしてくれるの?」
「もう少しだけ待って欲しい」
「いつでもいいんだよ?」
「父さんが言ってた。”しっかりと決める所は決めるのが男だ”って」
多分お爺さんから聞いたんだろうけど。
「じゃあ、待ってるね」
そんな話をしていると父さんが帰ってきた。
「あ、結は今日帰ってきたのか」
「うん。すごかった」
「そっか。夕飯食べていくんだろ?話はその時に聞くよ」
そう言って父さんは部屋で着替えてる間に母さんが夕食の準備をする。
「私も手伝います」
「いいのいいの。旅の疲れもあるだろうしゆっくりしておいて」
母さんはそう言って茉奈にリビングで待つように言った。
茉奈とテレビを見ている間に父さんが戻ってきて3人で話をしている間に食事の支度が出来た。
テーブルの椅子に座ると父さんがビールを注いでくれる。
「で、北海道はどうだった?」
父さんが聞いてきた。
「イクラ丼が美味しかった」
イクラって嫌いだったけどあれを食べると価値観が変わる。
TKGなんかよりよほど美味しかった。
「海鮮丼は食べなかったの?」
「それは高校の修学旅行で食べたから」
そんな風に食べ物の話を中心に食事の時間が過ぎていく。
茉奈が片づけをしている間父さんと話をしていた。
「SHの後継は決まったの?」
「海翔になると思う」
誰も文句は言わなかったからそれでいいんだろう。
「……ところでリベリオンの動きって分かる?」
「いや、今のところ大した動きはない。……どうして?」
「結。一つだけ忠告する」
去年末から結と雪が何か企んでるのは父さん達でも分かる。
何をしていたのかは聞かない。
聞いても言わないだろうから。
まさか……ばれてる?
「結達が何か企んでるってこと?」
片づけを終えた茉奈と母さん達が混ざってきた。
「それを今聞いても言えないんだろ?」
「うん」
言わなくても父さん達はきっと分かってる。
父さんもお爺さんも同じ結論に達したらしい。
「決着をつけるつもりでいるんだろう」
「誰と?」
母さんが聞いたら父さんが答えた。
「SHの敵なんてそんなにいないよ」
FGだって片付けたんだし。
となると残るのは……。
「リベリオン?」
茉奈が言うと父さんは頷いた。
結は自分の立場を理解していた。
だから行動しなかった。
不祥事を起こしたら警察官になる事すら難しい。
警察官になってからでも一緒だ。
だから雪を利用する。
雪なら単独行動でも差し支えない。
エイリアスだってつけている。。
いなくても関係ないだろうけど。
天音達の頃なら力づくで行けた。
しかし能力者という存在がある以上あまり力のないものを巻き込みたくない。
ならば自分達で片づける。
そう考えたのだろう。
だけどどうやってリベリオンを潰す?
丸ごと消すってやり方もできるだろうけど不可能だ。
リベリオン全員を掌握するなんて無駄な努力はしない。
となったら考えていることは一つ。
「十郎を始末する?」
「茉奈はそう思っているみたいだけど?」
なぜならお爺さんも同じ結論に達したから。
だけど誠ですら十郎の居場所を割り出せない。
俺はどうやって探し出すつもりだ?
「だめだ!そんな危険なこと雪にさせるつもりなのか?」
誠司郎だって止めるに決まってる。
「そこまでは父さんでも分からないみたいだ。そもそも探す必要がないかもしれない」
存在を知っているのなら消してしまうのが結だから。
だけどそれでは意味がない。
頭のない集団が暴走する。
もっと違う手段を取るつもりだろう。
俺は危険という言葉を知らない。
怖いものを知らないから無謀な策を考える。
それでも実行できるのが俺なんだけど。
「……で、空はどう判断するの?」
母さんが父さんに聞いていた。
「それも父さんと相談したんだけどね。結には伝えておこうと思って」
「うん」
「何もしない。結の動きは茜がちゃんと把握している。危険だと判断したら茜が結に伝えるから」
しかしそれで茉莉や菫が納得するだろうか?
父さんに聞いてみると母さんが笑った。
「あの2人はそのうちそれどころじゃなくなるから大丈夫」
「どうして?」
「天音だってそうだったでしょ」
子供が出来たらそんな事に首を突っ込む余裕なんてない。
天音と水奈ですら乱闘騒ぎは起こさなかった。
だけどその分男がしっかりしないといけない。
そんな話をして俺達は家に帰った。
「でも私は一つだけ不満があるの」
「どうしたの?」
「結は私の事考えてるの?」
そうとは思えない行動だと茉奈が指摘する。
心配する茉奈の事を考えた事があるのだろうか。
それはしっかり考えているようだったと知るのは後になっての話。
「起立」
私が教室に入ると学級委員の声で皆が起立する。
今日はいよいよこの子達の卒業式。
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いつもよりも力が入る。
娘の片桐雪は退屈そうにしているけど。
小学生にして異常なまでに堂々としてそして落ち着いていた。
式の進行について説明すると入場の時間まで待つ。
みんなこの日の為に用意した服装を互いに見て笑っている。
そんな時期も私にもあったなと眺めていた。
「ねえ、誠司郎この服どうかな?」
「お前はいつも適当に”似合ってる”の一言しか言わないじゃないか!」
「そういや今日はスカートの丈長いんだな」
「長いの嫌い?」
「似合ってるよ」
「ありがとう」
親ばか目線からも知れないけど雪はいい子に育ってくれた。
そして誠司郎という良いパートナーを手に入れることが出来たと思う。
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1人ずつ名前を呼んで壇上で校長から卒業証書を授与される。
在校生とお別れのエールを交わして卒業式が終わる。
不思議な事にこの学年に式の間爆睡する子は一人としていなかった。
長年やってきたけど奇跡に近い。
最後の仕上げが待っていた。
式の後に教室に戻って最後の挨拶をする。
「みんな6年間頑張りました。中学生になっても頑張って行けると信じています」
その時に気づいた。
女子は当然の様に泣いている子もいるのは分かるけど、男子が何か企んでいる様に見える。
何より黄島亜優や娘の雪がニコニコしている。
当たり前の様だけど何か違和感を持ちながら挨拶を終え児童と一緒に校庭に出ようとした時だった。
「ちょっとまったぁ!」
赤井蒼生が突然叫んだ。
何事かと後ろで見ていた父兄もざわついている。
「えっとこれ……受け取って欲しいんだ」
蒼生がそう言って画用紙を持って前に出て来た。
ラブレターではないらしい。
なんだろう?
蒼生は画用紙を広げると読み上げる。
「卒業証書!」
え?
さすがにそれを聞いた時は耳を疑った。
「片桐瞳子先生は……6年間俺達の担任として頑張ってきました……」
彼らなりの私に対するサプライズを用意していたのだろう。
元気に読み上げる蒼生。
だめだ、まだ最後までしっかり聞かないと。
「……ってことでここに担任卒業の表彰をします。長年お疲れさまでした」
蒼生が読み終えると皆が拍手をしてくれる。
私はもう我慢できなかった。
「ありがとね……こんな素敵な子を無事送りだせた思い出は大切にします」
「泣くなよ!今日はめでたい日なんだろ?」
蒼生がそう言うと後ろで見ていた冬吾さん達が拍手をする。
それを聞いていた他の父兄も拍手をしてくれた。
そうして私の卒業式が終わった。
残務をすませた頃に中山瞳美先生からメッセージが届いた。
「お疲れ様です。〇〇って居酒屋でお待ちしてます」
「でも主人が……」
「冬吾さんも一緒ですから」
冬吾さんも一緒の様だ。
行ってみると瞳美先輩や桜子先輩が待っていた。
「最後にしてやられたみたいだね」
桜子先輩がそう言って笑っている。
「やっぱり片桐家はただ者じゃないですね」
そう返事をしながら座って私の慰労会をしてくれた。
そのあと2次会に呼ばれたけどさすがに疲れたので冬吾さんと一緒に帰る。
家で2人でゆっくりと飲んでいた。
「まだまだ大変だよ?」
菫や茉莉の子供がやがて入学してくるんだ。
「少しの間だけゆっくりしたいかな」
「お疲れさん」
教師としてやれることはやってきた。
ここからは母親としての務めを果たさないといけないと思った。
(2)
卒業旅行の帰りに実家によると母さんが出迎えてくれた。
父さんは仕事みたいだ。
「ただいま~」
「お帰り。北海道はどうだった?」
「まだ雪降ってた」
「そうだろうね。あ、お土産の蟹ありがとうね。さ、上がって」
母さんがそう言うと俺は実家に入る。
すると茉奈が言い出した。
「いつプロポーズしてくれるの?」
「もう少しだけ待って欲しい」
「いつでもいいんだよ?」
「父さんが言ってた。”しっかりと決める所は決めるのが男だ”って」
多分お爺さんから聞いたんだろうけど。
「じゃあ、待ってるね」
そんな話をしていると父さんが帰ってきた。
「あ、結は今日帰ってきたのか」
「うん。すごかった」
「そっか。夕飯食べていくんだろ?話はその時に聞くよ」
そう言って父さんは部屋で着替えてる間に母さんが夕食の準備をする。
「私も手伝います」
「いいのいいの。旅の疲れもあるだろうしゆっくりしておいて」
母さんはそう言って茉奈にリビングで待つように言った。
茉奈とテレビを見ている間に父さんが戻ってきて3人で話をしている間に食事の支度が出来た。
テーブルの椅子に座ると父さんがビールを注いでくれる。
「で、北海道はどうだった?」
父さんが聞いてきた。
「イクラ丼が美味しかった」
イクラって嫌いだったけどあれを食べると価値観が変わる。
TKGなんかよりよほど美味しかった。
「海鮮丼は食べなかったの?」
「それは高校の修学旅行で食べたから」
そんな風に食べ物の話を中心に食事の時間が過ぎていく。
茉奈が片づけをしている間父さんと話をしていた。
「SHの後継は決まったの?」
「海翔になると思う」
誰も文句は言わなかったからそれでいいんだろう。
「……ところでリベリオンの動きって分かる?」
「いや、今のところ大した動きはない。……どうして?」
「結。一つだけ忠告する」
去年末から結と雪が何か企んでるのは父さん達でも分かる。
何をしていたのかは聞かない。
聞いても言わないだろうから。
まさか……ばれてる?
「結達が何か企んでるってこと?」
片づけを終えた茉奈と母さん達が混ざってきた。
「それを今聞いても言えないんだろ?」
「うん」
言わなくても父さん達はきっと分かってる。
父さんもお爺さんも同じ結論に達したらしい。
「決着をつけるつもりでいるんだろう」
「誰と?」
母さんが聞いたら父さんが答えた。
「SHの敵なんてそんなにいないよ」
FGだって片付けたんだし。
となると残るのは……。
「リベリオン?」
茉奈が言うと父さんは頷いた。
結は自分の立場を理解していた。
だから行動しなかった。
不祥事を起こしたら警察官になる事すら難しい。
警察官になってからでも一緒だ。
だから雪を利用する。
雪なら単独行動でも差し支えない。
エイリアスだってつけている。。
いなくても関係ないだろうけど。
天音達の頃なら力づくで行けた。
しかし能力者という存在がある以上あまり力のないものを巻き込みたくない。
ならば自分達で片づける。
そう考えたのだろう。
だけどどうやってリベリオンを潰す?
丸ごと消すってやり方もできるだろうけど不可能だ。
リベリオン全員を掌握するなんて無駄な努力はしない。
となったら考えていることは一つ。
「十郎を始末する?」
「茉奈はそう思っているみたいだけど?」
なぜならお爺さんも同じ結論に達したから。
だけど誠ですら十郎の居場所を割り出せない。
俺はどうやって探し出すつもりだ?
「だめだ!そんな危険なこと雪にさせるつもりなのか?」
誠司郎だって止めるに決まってる。
「そこまでは父さんでも分からないみたいだ。そもそも探す必要がないかもしれない」
存在を知っているのなら消してしまうのが結だから。
だけどそれでは意味がない。
頭のない集団が暴走する。
もっと違う手段を取るつもりだろう。
俺は危険という言葉を知らない。
怖いものを知らないから無謀な策を考える。
それでも実行できるのが俺なんだけど。
「……で、空はどう判断するの?」
母さんが父さんに聞いていた。
「それも父さんと相談したんだけどね。結には伝えておこうと思って」
「うん」
「何もしない。結の動きは茜がちゃんと把握している。危険だと判断したら茜が結に伝えるから」
しかしそれで茉莉や菫が納得するだろうか?
父さんに聞いてみると母さんが笑った。
「あの2人はそのうちそれどころじゃなくなるから大丈夫」
「どうして?」
「天音だってそうだったでしょ」
子供が出来たらそんな事に首を突っ込む余裕なんてない。
天音と水奈ですら乱闘騒ぎは起こさなかった。
だけどその分男がしっかりしないといけない。
そんな話をして俺達は家に帰った。
「でも私は一つだけ不満があるの」
「どうしたの?」
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そうとは思えない行動だと茉奈が指摘する。
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