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UNSPEAKABLE
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(1)
「メリークリスマス」
「メリークリスマス」
そういってシャンパンの入ったグラスをカチンと鳴らす。
今日はクリスマスイブ。
恋人の藤原心音と一緒にタワーホテルの最上階のレストランに来ていた。
まだこういう状況になるには早いと思っている心音は少し緊張している。
4回目だからいい加減慣れてもいいだろうに。
いや、慣れてる僕がおかしいのだろうか?
ちなみに菫は違うと正行から聞いていた。
「プレゼントは私が欲しいものを買って欲しい」
「合法的な物なら努力するよ」
「心配するな。ただのゲームだ」
もちろんただのゲームなわけがない。
いわゆるクリーチャーを倒すゲーム。
クリスマスに何を考えているのだろう?
理由は一つ。
今日デートでそのゲームの実写映画を見たから。
そんな物をクリスマスイブにやってるこの世界も大概だけど、それは諦めろと父さんが言っていた。
むしろ今まで無事だった僕と心音が奇跡なんだ。
幸いそういう猟奇的な世界とは無縁な性格の彼女が心音だった。
今日見た陳腐なラブストーリーの映画でハンカチで涙を拭う心音。
もちろんあくびをしたわけじゃない。
菫達なら間違いなく爆睡だろう。
で、今は菫と正行はクリーチャーを狩るのに必死なんだそうだ。
戦場ですら戦いを止める日に何をやっているのだろう?
まあ、僕も今日はある意味戦いの日だけどね。
まさか卒業前にこんな試練が待っているとは思わなかった。
父さん達は学生婚をしたそうだけどね。
「秋久さんのお陰です」
突然デザートを食べ終えた心音が言い出した。
「どうしたんだい?突然」
「秋久さんが私と交際を申し出てくれて私の人生が変わりました」
「ごめんよ……」
「謝らないでください。嬉しい事なんですから。普通の大学生ならこんなところで食事なんてありえません」
まあ、そうだろうね。
バイト代が一食で吹き飛ぶくらいなんだから。
クリスマスプレゼントはまだ渡してない。
理由はすぐにわかるよ。
「これだけで私にとって最高の思い出です。とびっきりのプレゼントをありがとう」
なんかこの流れ不味くないか。
クリスマスイブにしくじったなんて母さんや晶さんに知れたら僕の命が危ない。
「ま、待っておくれ。これが最後みたいな言い方止めておくれ……」
「……いいんです。だって秋久さんはこの先の進路はもう決まっているんでしょ?」
酒井グループの会長。
その奥さんになる人は相応の人でなければならない。
母さんが片桐家の娘だったように。
一般人の心音には縁のない世界。
だから今年で最後……
とりあえずよかった。
余命が無いとかそういう話ではないみたいだ。
こういう展開なら何度か結や朔と相談していた。
そして返事もちゃんと考えていた。
「そのふさわしい人っていうのは誰が決めるんだい?」
「え?親とかが決めるのでは?」
「僕の両親はこう言っていたよ。”さっさと結婚して孫を見せろ”って」
正確には母さんだけど。
「やっぱりそうでしたか……」
「ああ、結婚しろって言われて結婚する情けない男が心音の旦那だ」
「え?」
そんなに不安そうな顔をしないでもいいよ。
すぐに幸せにしてあげるから。
「お爺さんもそうだったんだ。心音と同じように必死にバイトで生計を立てる身分だった」
もっともお抱えの送迎を利用する本末転倒な生活だったようだけど。
「どうしてですか?」
「お婆さんが一目ぼれしたそうだよ」
眼球を睨みつけられて獲物を確保したような顔をお婆さんはしていたらしい。
本命だった彼女に見離されて酔った勢いで結婚を決めたそうだ。
「そうなんですね……秋久さんはダメですよ。ちゃんと決めないと」
「分かってるよ。だから自分で自分の伴侶は選びたい」
僕はそう言ってテーブルに小箱を置いた。
心音は僕が何を言いたいのか察したようだ。
まだ表情が強張っている。
「察してくれとか言わない。ずっと心音を愛していました。これからもずっと一緒にいてくれないかい?」
「私でいいんですか?もっとふさわしい人が……」
「そのふさわしい人に僕は心音を選んだつもりだよ」
だから心音も僕を選んでおくれ。
すると心音がすすり泣く。
……多分大丈夫だろう。
大丈夫であって欲しい。
「ありがとうございます。嬉しいです。私も秋久さんをずっと愛しています」
なんとかミッションはこなしたらしい。
「それなら今度正月にでも両親に挨拶に来てもらえませんか?」
「もちろん」
「指輪……はめてくださいませんか?」
そういって小さな手を差し出す心音。
包装をとって箱から指輪を取り出して心音の薬指にはめる。
「夢みたい……大事にしますね」
「ありがとう」
「こちらこそ」
菫よりも場を弁えている心音はこの場でスマホを取り出すような真似はしない。
シェフの挨拶を聞いて部屋に戻ると心音はスマホで皆に自慢していた。
結が何か考えているようだ。
「墓場にようこそ」
そんなメッセージが送られてきた。
その後冬夜は茉奈から怒られたらしい。
(2)
「あの……瑛大さん。あまり息子に変な事教えないでください」
「何のことだ?」
「とぼけるな!結莉から聞いたぞ!結婚は墓場だって教えたそうじゃねーか!」
美希と天音が珍しく手を組んで瑛大に詰め寄ってる。
その話をそばで聞いていたじいじや愛莉も様子を見ていた。
「どういうことだ瑛大?」
亜依が夫の瑛大を睨みつける。
「ま、待て。俺なわけないだろ!?結達は大学生……」
「それなら俺が悠翔から聞いてるよ父さん……」
瑛大が抵抗するけど学も何か知っているようだ。
学が誠と瑛大が「飲み会やるなら俺達も混ぜろ!」と大学生組の飲み会に参加してるらしいと伝えた。
結達にしてみたらただ酒だからと歓迎していたようだ。
そして馬鹿な事を覚えている。
秋久が婚約を決めた日に「墓場にようこそ」と結がメッセージを送って茉奈と喧嘩したらしい。
まあ、瑛大や誠にしてみたらそうなのだろうけど、愛莉たちを見ているとそうでもないようだ。
何が違うんだろう?
「まあ、いいだろう。お前らの言い分を聞いてやる」
亜依が言うと誠が説明した。
「ほら、人生の先輩としてアドバイスをだな……」
「それが”結婚は墓場”か?」
神奈が誠を睨んでいる。
しかし事態は少し変わった。
学が説明していた。
「それが最近水奈も言い出して……」
結婚すると旦那が五月蠅いから一人の時に遊んでおけ。
同棲なんてするもんじゃない。
いまさら何を言ってるのかさっぱり分からない。
「あのバカ娘まで私を困らせるつもりか」
神奈が頭を抱えている。
すると私達に気づいた愛莉がママに言う。
「瞳子、雪達に聞かせていい話ではありません」
「そうですね。雪は誠司郎達と少し何か食べてきなさい」
ママから”食べていい”と言われたんだ。
こんなチャンスはない。
食べ放題を楽しむことにした。
ちなみに父さんと誠司は海外で年を越すらしい。
現地で調整中だ。
本戦に出場してベスト4入りしている。
間違いないだろうとテレビでやっていた。
「なんで雪はそうやって麺類ばかり食べるんだ!?」
「ピラフも食べてるよ?」
「炭水化物から離れた方が良いんじゃないか?」
こういうやりとりを楽しんでいるのかな?
それが結婚ってやつなのだろうか?
「雪や誠司郎ってこういう場所に慣れてるの?」
亜優は相変わらず緊張しているようだ。
まあSHに属していたらそうなるだろう。
亜優が緊張している方が不思議なんだ。
誠司郎がそう言うと亜優が答えた。
「私達の親は確かに雪達の親と仲良かったけど、もともとはSHの敵だったから」
「そんな事気にしてたのか?雪に聞いてみろ。全然違う返事が返ってくるぞ」
そう言って私に話を振る誠司郎。
「SHには絶対に侵してはならないルールがあるの」
「何それ」
「……どんな理由があろうと友達や仲間を傷つける奴は絶対に許さない」
仲間ってそういう事でしょ?
そう答えると亜優は「ありがとう」と小さく笑っていた。
「でもその様子だと雪は違う事考えてた?」
亜優がそう聞いてくると誠司郎も気になったみたいだ。
この際だから二人に聞いてみた。
「亜優や誠司郎にとって結婚って何?」
「どうしたんだ急に?」
「そんな先の事考えてたの?」
誠司郎と亜優が返事をした。
「そうだな。けじめって言ってた。ちゃんと結婚して一緒に暮らすための儀式だって神奈が言ってた」
「でもそれなら同棲でよくない?」
「それだと子供作れないだろ?」
「結婚しないと子供作れないの?」
「子供の作り方なんて雪の方が詳しいだろ?」
「そうかもしれないね」
「じゃあ、聞くなよ」
「そこが不思議なの。結婚しなくても子供が出来るならする意味ないじゃない」
「……そういう事ね」
亜優が笑いながら説明してくれた。
「雪。大事なこと忘れてる。もし雪が子供を産んだら誰の子なの?」
「私の子でしょ?」
「誠司郎の子供でもあるんだよ」
だからそれを証明する手続きをする上で結婚する必要がある。
簡単に言うとそれだけのことだ。
お父さんとお母さんだと証明する手続きが必要だからする。
じゃあ、子供を作らなかったら結婚しなくていいの?
「それも違うかな。やっぱり安心したいんだよ」
この人は私の旦那。
この人は俺の嫁。
そういう保証が欲しい。
誰にも渡したくないから信頼を形にする証。
俺にも好きな人が出来たらそう思うようになるよ。
3人が話しているのを聞きながら考えていた。
「結、見ろよ。花火が上がってる」
窓に映る花火を見る。
パッと咲いてパッと消える。
私もそんな存在なのだろうな。
私は最後どうなるのだろう。
「ああ、いたいた。ちょっと雪と話がしたい。雪の力を借りたい」
結がやってきた。
どうしたんだろう?
私は誠司郎達に部屋に戻っていてと言うと、少し離れたテーブルに座る。
すると結が話した。
「多分、リベリオンの大物が出てくる」
「……うん」
「そこで力を借りたい」
結一人でもどうにかなるけど、作戦を完璧に遂行するには私の力が必要だ。
「私は何をすればいいの?」
「結論から言う。おとり捜査」
「彼らに潜入しろと?」
「ああ、しかもSHにはバレないように」
「そんな事可能なの?」
「その段取りを先に雪に教える」
結はそう言って私に耳打ちする。
言葉を失った。
文字通り十郎の懐に潜り込む作戦。
当然失敗するリスクもある。
それすらも計算に入れた作戦。
「引き受けてくれないか?」
「どうして私を?」
「俺は大学を卒業する」
もう学生じゃない。
思うように動けない。
となると雪以外に適任者がいないと言われた。
「……これで最後なのね」
「そうするつもりだ」
「分かった。手筈が整ったらまた教えて」
「ありがとう」
その後部屋に戻ってシャワーを浴びる。
もう慣れた。
同じベッドで寝る。
いつもの様に誠司郎が私を抱きしめる。
いつもと違うのは誠司郎の不安そうな表情だった。
「雪、何考えてた?何か危険な事を考えてないか?」
「……気のせいだよ」
誠司郎の頭を優しくなでて言う。
もう少しの間だけこの時間を過ごしたい。
ちゃんと役目は果たすから。
そう願いながら誠司郎を抱いて眠りについた。
「メリークリスマス」
「メリークリスマス」
そういってシャンパンの入ったグラスをカチンと鳴らす。
今日はクリスマスイブ。
恋人の藤原心音と一緒にタワーホテルの最上階のレストランに来ていた。
まだこういう状況になるには早いと思っている心音は少し緊張している。
4回目だからいい加減慣れてもいいだろうに。
いや、慣れてる僕がおかしいのだろうか?
ちなみに菫は違うと正行から聞いていた。
「プレゼントは私が欲しいものを買って欲しい」
「合法的な物なら努力するよ」
「心配するな。ただのゲームだ」
もちろんただのゲームなわけがない。
いわゆるクリーチャーを倒すゲーム。
クリスマスに何を考えているのだろう?
理由は一つ。
今日デートでそのゲームの実写映画を見たから。
そんな物をクリスマスイブにやってるこの世界も大概だけど、それは諦めろと父さんが言っていた。
むしろ今まで無事だった僕と心音が奇跡なんだ。
幸いそういう猟奇的な世界とは無縁な性格の彼女が心音だった。
今日見た陳腐なラブストーリーの映画でハンカチで涙を拭う心音。
もちろんあくびをしたわけじゃない。
菫達なら間違いなく爆睡だろう。
で、今は菫と正行はクリーチャーを狩るのに必死なんだそうだ。
戦場ですら戦いを止める日に何をやっているのだろう?
まあ、僕も今日はある意味戦いの日だけどね。
まさか卒業前にこんな試練が待っているとは思わなかった。
父さん達は学生婚をしたそうだけどね。
「秋久さんのお陰です」
突然デザートを食べ終えた心音が言い出した。
「どうしたんだい?突然」
「秋久さんが私と交際を申し出てくれて私の人生が変わりました」
「ごめんよ……」
「謝らないでください。嬉しい事なんですから。普通の大学生ならこんなところで食事なんてありえません」
まあ、そうだろうね。
バイト代が一食で吹き飛ぶくらいなんだから。
クリスマスプレゼントはまだ渡してない。
理由はすぐにわかるよ。
「これだけで私にとって最高の思い出です。とびっきりのプレゼントをありがとう」
なんかこの流れ不味くないか。
クリスマスイブにしくじったなんて母さんや晶さんに知れたら僕の命が危ない。
「ま、待っておくれ。これが最後みたいな言い方止めておくれ……」
「……いいんです。だって秋久さんはこの先の進路はもう決まっているんでしょ?」
酒井グループの会長。
その奥さんになる人は相応の人でなければならない。
母さんが片桐家の娘だったように。
一般人の心音には縁のない世界。
だから今年で最後……
とりあえずよかった。
余命が無いとかそういう話ではないみたいだ。
こういう展開なら何度か結や朔と相談していた。
そして返事もちゃんと考えていた。
「そのふさわしい人っていうのは誰が決めるんだい?」
「え?親とかが決めるのでは?」
「僕の両親はこう言っていたよ。”さっさと結婚して孫を見せろ”って」
正確には母さんだけど。
「やっぱりそうでしたか……」
「ああ、結婚しろって言われて結婚する情けない男が心音の旦那だ」
「え?」
そんなに不安そうな顔をしないでもいいよ。
すぐに幸せにしてあげるから。
「お爺さんもそうだったんだ。心音と同じように必死にバイトで生計を立てる身分だった」
もっともお抱えの送迎を利用する本末転倒な生活だったようだけど。
「どうしてですか?」
「お婆さんが一目ぼれしたそうだよ」
眼球を睨みつけられて獲物を確保したような顔をお婆さんはしていたらしい。
本命だった彼女に見離されて酔った勢いで結婚を決めたそうだ。
「そうなんですね……秋久さんはダメですよ。ちゃんと決めないと」
「分かってるよ。だから自分で自分の伴侶は選びたい」
僕はそう言ってテーブルに小箱を置いた。
心音は僕が何を言いたいのか察したようだ。
まだ表情が強張っている。
「察してくれとか言わない。ずっと心音を愛していました。これからもずっと一緒にいてくれないかい?」
「私でいいんですか?もっとふさわしい人が……」
「そのふさわしい人に僕は心音を選んだつもりだよ」
だから心音も僕を選んでおくれ。
すると心音がすすり泣く。
……多分大丈夫だろう。
大丈夫であって欲しい。
「ありがとうございます。嬉しいです。私も秋久さんをずっと愛しています」
なんとかミッションはこなしたらしい。
「それなら今度正月にでも両親に挨拶に来てもらえませんか?」
「もちろん」
「指輪……はめてくださいませんか?」
そういって小さな手を差し出す心音。
包装をとって箱から指輪を取り出して心音の薬指にはめる。
「夢みたい……大事にしますね」
「ありがとう」
「こちらこそ」
菫よりも場を弁えている心音はこの場でスマホを取り出すような真似はしない。
シェフの挨拶を聞いて部屋に戻ると心音はスマホで皆に自慢していた。
結が何か考えているようだ。
「墓場にようこそ」
そんなメッセージが送られてきた。
その後冬夜は茉奈から怒られたらしい。
(2)
「あの……瑛大さん。あまり息子に変な事教えないでください」
「何のことだ?」
「とぼけるな!結莉から聞いたぞ!結婚は墓場だって教えたそうじゃねーか!」
美希と天音が珍しく手を組んで瑛大に詰め寄ってる。
その話をそばで聞いていたじいじや愛莉も様子を見ていた。
「どういうことだ瑛大?」
亜依が夫の瑛大を睨みつける。
「ま、待て。俺なわけないだろ!?結達は大学生……」
「それなら俺が悠翔から聞いてるよ父さん……」
瑛大が抵抗するけど学も何か知っているようだ。
学が誠と瑛大が「飲み会やるなら俺達も混ぜろ!」と大学生組の飲み会に参加してるらしいと伝えた。
結達にしてみたらただ酒だからと歓迎していたようだ。
そして馬鹿な事を覚えている。
秋久が婚約を決めた日に「墓場にようこそ」と結がメッセージを送って茉奈と喧嘩したらしい。
まあ、瑛大や誠にしてみたらそうなのだろうけど、愛莉たちを見ているとそうでもないようだ。
何が違うんだろう?
「まあ、いいだろう。お前らの言い分を聞いてやる」
亜依が言うと誠が説明した。
「ほら、人生の先輩としてアドバイスをだな……」
「それが”結婚は墓場”か?」
神奈が誠を睨んでいる。
しかし事態は少し変わった。
学が説明していた。
「それが最近水奈も言い出して……」
結婚すると旦那が五月蠅いから一人の時に遊んでおけ。
同棲なんてするもんじゃない。
いまさら何を言ってるのかさっぱり分からない。
「あのバカ娘まで私を困らせるつもりか」
神奈が頭を抱えている。
すると私達に気づいた愛莉がママに言う。
「瞳子、雪達に聞かせていい話ではありません」
「そうですね。雪は誠司郎達と少し何か食べてきなさい」
ママから”食べていい”と言われたんだ。
こんなチャンスはない。
食べ放題を楽しむことにした。
ちなみに父さんと誠司は海外で年を越すらしい。
現地で調整中だ。
本戦に出場してベスト4入りしている。
間違いないだろうとテレビでやっていた。
「なんで雪はそうやって麺類ばかり食べるんだ!?」
「ピラフも食べてるよ?」
「炭水化物から離れた方が良いんじゃないか?」
こういうやりとりを楽しんでいるのかな?
それが結婚ってやつなのだろうか?
「雪や誠司郎ってこういう場所に慣れてるの?」
亜優は相変わらず緊張しているようだ。
まあSHに属していたらそうなるだろう。
亜優が緊張している方が不思議なんだ。
誠司郎がそう言うと亜優が答えた。
「私達の親は確かに雪達の親と仲良かったけど、もともとはSHの敵だったから」
「そんな事気にしてたのか?雪に聞いてみろ。全然違う返事が返ってくるぞ」
そう言って私に話を振る誠司郎。
「SHには絶対に侵してはならないルールがあるの」
「何それ」
「……どんな理由があろうと友達や仲間を傷つける奴は絶対に許さない」
仲間ってそういう事でしょ?
そう答えると亜優は「ありがとう」と小さく笑っていた。
「でもその様子だと雪は違う事考えてた?」
亜優がそう聞いてくると誠司郎も気になったみたいだ。
この際だから二人に聞いてみた。
「亜優や誠司郎にとって結婚って何?」
「どうしたんだ急に?」
「そんな先の事考えてたの?」
誠司郎と亜優が返事をした。
「そうだな。けじめって言ってた。ちゃんと結婚して一緒に暮らすための儀式だって神奈が言ってた」
「でもそれなら同棲でよくない?」
「それだと子供作れないだろ?」
「結婚しないと子供作れないの?」
「子供の作り方なんて雪の方が詳しいだろ?」
「そうかもしれないね」
「じゃあ、聞くなよ」
「そこが不思議なの。結婚しなくても子供が出来るならする意味ないじゃない」
「……そういう事ね」
亜優が笑いながら説明してくれた。
「雪。大事なこと忘れてる。もし雪が子供を産んだら誰の子なの?」
「私の子でしょ?」
「誠司郎の子供でもあるんだよ」
だからそれを証明する手続きをする上で結婚する必要がある。
簡単に言うとそれだけのことだ。
お父さんとお母さんだと証明する手続きが必要だからする。
じゃあ、子供を作らなかったら結婚しなくていいの?
「それも違うかな。やっぱり安心したいんだよ」
この人は私の旦那。
この人は俺の嫁。
そういう保証が欲しい。
誰にも渡したくないから信頼を形にする証。
俺にも好きな人が出来たらそう思うようになるよ。
3人が話しているのを聞きながら考えていた。
「結、見ろよ。花火が上がってる」
窓に映る花火を見る。
パッと咲いてパッと消える。
私もそんな存在なのだろうな。
私は最後どうなるのだろう。
「ああ、いたいた。ちょっと雪と話がしたい。雪の力を借りたい」
結がやってきた。
どうしたんだろう?
私は誠司郎達に部屋に戻っていてと言うと、少し離れたテーブルに座る。
すると結が話した。
「多分、リベリオンの大物が出てくる」
「……うん」
「そこで力を借りたい」
結一人でもどうにかなるけど、作戦を完璧に遂行するには私の力が必要だ。
「私は何をすればいいの?」
「結論から言う。おとり捜査」
「彼らに潜入しろと?」
「ああ、しかもSHにはバレないように」
「そんな事可能なの?」
「その段取りを先に雪に教える」
結はそう言って私に耳打ちする。
言葉を失った。
文字通り十郎の懐に潜り込む作戦。
当然失敗するリスクもある。
それすらも計算に入れた作戦。
「引き受けてくれないか?」
「どうして私を?」
「俺は大学を卒業する」
もう学生じゃない。
思うように動けない。
となると雪以外に適任者がいないと言われた。
「……これで最後なのね」
「そうするつもりだ」
「分かった。手筈が整ったらまた教えて」
「ありがとう」
その後部屋に戻ってシャワーを浴びる。
もう慣れた。
同じベッドで寝る。
いつもの様に誠司郎が私を抱きしめる。
いつもと違うのは誠司郎の不安そうな表情だった。
「雪、何考えてた?何か危険な事を考えてないか?」
「……気のせいだよ」
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