64 / 442
2ndSEASON
雫
しおりを挟む(1)
竹下武史。防府高校一年生。粗暴で野蛮。性格が悪い。
しょうもない事で腹を立ていたぶる。
どうしようもない奴だけど……。
入学式当日。
遠坂さんと、音無さんを一目見ようと教室に詰め寄る。
「あの……通してください!!」
言っても全然聞いてくれない。
困ってた時にすっと現れた腰パンの野蛮そうな男子。
「どけよこらぁ!」
と言って力づくで押しのける。
「ほら、来いよ」
男子は私に手を差し出した。
自然と手が伸びてた。
これって一目惚れ?
「ありがとう、あの私工藤雫。あなたは」
「竹下武史」
それだけ言って竹下君は自分の席についた。
(2)
入学式から1週間くらい経った頃。
片桐君と竹下君が揉めた事件のあと。
「傷……大丈夫?」
片桐君に殴られ蹴られまくった竹下君も、鼻と口から血が滲んでいた。
それをハンカチで拭こうとすると手をはねのけられる。
「うぜえんだよ!」
「やめなよ……そうやって皆を敵視するの」
「うるせーな。そうやって上から目線で見られるのが一番ムカつくんだよ」
どれだけひねくれてるんだ?
「そんなんだと友達もできないよ」
「どうせ出来ねーもんは出来ねーんだよ!」
「そんなことないよ」
「俺と友達になろうなんて奴どこにいるんだよ!どいつもこいつも顔色伺いやがってイラつく」
「ここにいるよ」
「は?」
「私がなってあげる」
「なってあげるって何様のつもりだよ」
私は竹下君の手を握る。
「はい、これで友達。友達だから上も下もないよ。対等な関係」
「お前頭おかしいんじゃないのか?」
「どうとってもらっても結構。これで友達なんだから、友達悲しませるような真似しないでね」
そう言って自分の席にもどった。
その日の放課後
「ちょっと待ってよ!」
「またお前か、なんだよ!?」
「お前じゃない、工藤雫って前に自己紹介した!雫でいいよ」
「で、何の用だよ?」
私はスマホを見せる。
「スマホくらい持ってるんでしょ!番号教えて!」
「はぁ?」
「友達なんだから、番号交換くらいするでしょ!」
「誰がいつ友達になったんだよ!?」
「私が!さっき!」
相手にしてられるかと言わんばかりに立ち去ろうとする竹下君の腰を掴む。
「離せよ!」
「教えてくれるまで離さない!」
人目を気にしたのか竹下君が折れた。
ポケットからスマホを取り出すと、操作を始める。
「ほらよ」
そう言って竹下君がスマホを渡す。
その画面を見て私は自分のスマホに登録する。
そして竹下君のスマホにワン切りする。
「ありがとう。登録しておいてね」
「……はぁ。分かったよ」
そう言って嫌々操作をする竹下君。
操作を終えると「じゃあな」と言って立ち去る。
私はその後を追う。
「なんでついてくるんだよ!」
「だって駅がこっち方向だし!」
「……まじかよ」
そう言って自転車に乗る竹下君。
黙って後ろに乗る。ご丁寧にステップついてるじゃないですか?
「なにやってんだよ!」
「どうせ駅まで行くんでしょ?ゴーゴー!!」
※自転車の二人乗りは大変危険です。やめましょう。
「ちっ……全く」
竹下君は自転車を降りると押して歩き出した。
真面目だねえ。
てか私の為に歩いてるの?
二人乗りでいいじゃん。
「ねえ、何の為にステップつけてるの?」
「雫には関係ねーだろ!」
まあ、世の中の大半は私に関係ないけどね。
「彼女でも乗せてたの?」
揶揄い半分で聞いてみた。が、当たっていたらしい。
「……高校が別々になって別れたよ」
「ごめん」
「いいよ別に。同情してほしくて言ったんじゃないしな」
こういう時のノリって怖いもんだ。
つくづく思い知った。
「じゃあさ、私が彼女に立候補してあげよっか?」
「友達からいきなり彼女かよ!」
「フリーなんでしょ?」
「どうせ、良いって言うまで言い続けるんだろ?」
「嫌ならいいけど……」
「いいぜ」
へ?
「なんだその間抜け面。自分で言いだしたことだろうが」
「……ありがとう。よろしく」
「ああ……」
「と、言うわけで彼女なんで悲しませたりしないでね」
(3)
それから、楽しい日々が続いた。
竹下君も暴力を振るうことはあまりなくなった。
全くとは言えないけど。
休日にデートしたリ。帰りに寄り道したリ。
本当に楽しい日だった。
あの日が来るまでは……。
黒木君にちょっかいを出したあの日。
また片桐君が逆らった。
片桐君の描いた絵をくしゃくしゃにしてごみ箱に捨てた。
授業が終わった後、外に連れ出す。
「何であんなことしたの?」
「なんだっていいだろ!面白いからやったんだよ!ムカついたからやったんだよ」
「約束したよね。彼女悲しませるような真似は止めてね!って」
「悲しむんだったら別れたらいいだろ!」
「……何言ってんの?」
「だから言っただろ!どうせ俺の周りに近づく奴なんてろくなやつじゃねーって……!」
バシッ!
私は竹下君を平手打ちしてた。
そのまま、その場を立ち去る。
彼が気がついたかどうかはわからない。
私の頬を伝わる一滴の涙を。
それから彼との連絡は途絶えた。
だけども連絡先を消せずにいた。
クラスマッチの日。
よりにもよって竹下君と片桐君が一緒のサッカーだ。
竹下君は中学の時サッカーをやっていたらしい。
まあ、スポーツ万能と聞いていたが。
竹下君は一生懸命プレイしていた。
それに引き換え片桐君は……。
あっちうろうろ、こっちうろうろしてる。
やる気あんの?
ふと音無さんと遠坂さんを見る。
にこにこしてる。
ふと、二人に聞いてみた。
「片桐君何してるの?」
二人は口をそろえて言った、
「見てれば分るよ」
それからしばらく見てたが、自分のポジションにもどる。
それを見た、サッカー部の梅木君が何か話しかけてる。
少し話をすると。梅木君が元に戻って行った。
「はじまるよ~」
遠坂さんが一言告げる。
(4)
……、グラウンドは整備されてないな。
ところどころくぼみがある。
まあ、これはこれでやりようがあるか?
自分のポジションに戻ると、梅木君が近寄ってきた。
「行けるか?」
と、一言。
へ?
「おれ宗田小だったからさ、お前のプレイ見てたんだよね。中学の時はやってなかったみたいだけど癖は隠せないよな」
そう言ってにやりと笑う、梅木君。
「まあ、なんとか」
「おっけー」
そう言って自分のポジションに戻る。
とはいえ、相手のキーパーサッカー部の人らしい。
一発で決めるのは無理だろうな。
ちらりと竹下君を見る。
気は進まないけど、やるしかないか。
梅木君がパスを受け取ると同時にスペースに飛び出す。
それを見越して梅木君がパスを出す。
今度は利き足で蹴れそうだ。
足元を見て慎重に蹴る。
周りから見たらボールが一瞬消えたかのように見えただろう。
蹴ったグラインダーのボールはDF3人の足の股をすり抜けてゴールに向かう。
当然キーパーが飛び出しボールを抑え込もうとする。
だが、ボールは手前のくぼみにあたり左に跳ね返る。
そこにはちょうど竹下君が。
竹下君はそのままボールを押し込みゴールとなる。
観客から歓声が上がる。
「竹下君すごい!!」
「良く決めたぞ竹下!」
竹下君は僕のもとに近づく。
また喧嘩するの?
いやだなぁ……面倒だ。
「……ナイスパス」
「偶然だよ。ナイスシュート」
そのまま試合は勝った。
(5)
「きゃあ!さすが冬夜君」
「やる気があれば言うこと無いんだけどなぁトーヤの奴」
二人で騒いでる。
私は唖然としてた。
アレを狙ってやったの?
特技とか言うレベルじゃないじゃん。
でも竹下君に花を添えたつもりなんだろうけど、竹下君の気に障らなければいいんだけど。
ほら、竹下君が片桐君に近づいてる。
何か様子がおかしい。
お互い握手してる。
仲直りしたの?
それならそれでいい。
私以外に友達増えたなら言うこと無い。
片桐君ありがとう。
私の役目はこれでお終いかな。
「雫ちゃんどうしたの?」
遠坂さんが声をかける。
私の頬に一滴の涙が流れていたのだ。
「な、なんでもない」
ちょっと、卒業の気分に浸っただけ。
その晩は意を決して竹下君にメッセージを送った。
「片桐君と仲直りできて良かったね。友達出来て良かったね。もう私必要ないね。散々勝手な事言ってごめんね」
これでいいんだ。
少ししてスマホが着信音を鳴らした。
私は通話に出る。
「もしもし」
「何言ってんだ?雫とは友達じゃないだろ?」
そうでしたね……。
「彼女なんだろ?しっかりしろよ」
え?
「あの時は感情的になって悪かった。謝るよ」
竹下君が謝るの?
「じゃあ、また明日。駅で待ってる。早めに来いよ」
そう言って竹下君は電話を切った。
また明日。
また明日があるんだ。
嬉しかった。
そしてその翌日。
駅で出迎えてくれたのは竹下君だった、
ここから学校までは結構時間がかかる。
私も自転車用意しようかな。
余談。
「片桐君とは仲直りしたの?」
「さあな、またなにかしてきたらわかんね」
「何もしなきゃ片桐君も手出ししないよ」
「そうだな」
そう言って長い通学路を時間をかけて歩くのでした。
苦にはならなかった。
それだけ話す時間があるのだから。
0
あなたにおすすめの小説
宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~
紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。
そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。
大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。
しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。
フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。
しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。
「あのときからずっと……お慕いしています」
かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。
ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。
「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、
シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」
あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。
王宮に薬を届けに行ったなら
佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。
カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。
この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。
慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。
弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。
「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」
驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。
「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」
※ベリーズカフェにも掲載中です。そちらではラナの設定が変わっています。(貴族→庶民)それにより、内容も少し変更しておりますのであわせてお楽しみください。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。
楠ノ木雫
恋愛
蒸発した母の借金を擦り付けられた主人公瑠奈は、お見合い代行のアルバイトを受けた。だが、そのお見合い相手、矢野湊に借金の事を見破られ3ヶ月間恋人役を務めるアルバイトを提案された。瑠奈はその報酬に飛びついたが……
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる