優等生と劣等生

和希

文字の大きさ
102 / 442
2ndSEASON

希望の花、繋いだ絆

しおりを挟む

(1)

「よお、冬夜。遠坂さんたちから話は聞いたぞ」

渡辺君が声をかけた。
この日はクラスメート……いわゆる渡辺班の面々がお見舞いに来ていた。

「もう口に入れてもいいんだろ?ほら、スイーツ持ってきたぞ」

やあ、また会えたね。こんにちはでいいかな?
一口ぱくりと食べる。
美味い!

「本当幸せそうに食べるね、片桐君は」

指原さんが感心するかのように言う。
そりゃ、一週間も病院食で生活してたら、何でも美味いですよ。

「本当に腹刺されたのかよ!普通じゃねーぞその食欲!」

桐谷君が驚きの声を上げる。
これでも我慢してるんですよ。させられてるんですよ。

「でもさすがですね、普通の人には真似できませんよ」

石原君が感心する。
真似するのはお勧めしませんよ。
あの時もゾーンってのに入ってたのかもしれない。
身体が勝手に動いてた。
あ、閃いた。

「だったら一つだけ忠告がある」
「え?」
「死ぬほど痛いぞ」
「??」

困惑する石原君。
結構いい線いったと思うんだけどなあ。

ぽかっ

愛莉本当良い突っ込みするようになったなぁ。
阿吽の呼吸とはこのことだね。

「石原君、真に受けなくていいからね。こういう顔してる時大抵何かのアニメかゲームの台詞真似してるだけなんだから!あれほどやめなさいって言ってるのに!」

そんな事言われても人生一度は言ってみたいランキングに入ってたんだから仕方ないだろ。

「相変わらずマイペースね。それが片桐君らしいんだろうけど。イッシーはイッシーなりの行動でいいのよ。歓心できる行動じゃないわ」

江口さんが、冷静に言う。
愛莉にも何回も言われたことだ。
そんなことして喜ぶ人なんて誰もいないんだよ!って
その時に「誰かを助けるのに理由がいるかい」と言ってさらに怒られたのは言うまでもない。

「とーやってすごい奴なんだな。格好いいとおもうぞ!」

味方がいた。
美嘉さんだ。
だけどカンナが言う。

「あまり調子に乗らせないでくれ。多分こいつ武勇伝くらいにしか思ってないから。どれだけの人を悲しませたのかまるで分ってない。私にも非があるけど」

うん、たぶん人生で一番輝いた瞬間だと思ってた。
相手が愛莉だったら結婚式のエピソードの一つにあげちゃうね。
愛莉と結婚出来たらの話だけど。

「もう、これっきりにしろよ。愛莉のあんな姿二度と見たくない」

神奈が釘をさす。
まあ、何度も起こられても困るけどね。

「まあ、有難く思えよ冬夜。お前の為にこれだけの人が集まったんだ。それはお前にもしもの事があったら同じだけの人間が悲しむってことだ。その事を考えてこれからは行動しろ」

最後に、渡辺君が締める。

「みんな、来てくれてありがとう」

僕はそう言って礼をする。

「じゃあ、冬夜も元気そうだし俺たちはそろそろ行こうか。長居しても冬夜の体に障る」

渡辺君がそう言うと皆病室を出て行った。
愛莉が最後に出ようとすると、カンナと渡辺君がそれを止めた。

「遠坂さんは冬夜の話し相手になってやってくれ、一人だと暇だろうし」
「え、でも……」

戸惑う愛莉の肩をカンナが叩く。

「こいつ一人にしてると、すぐに売店に行きそうだしな。見張り役も兼ねてだ」
「そ、そういうことなら」

愛莉は納得したのか、それとも最初からそうしたかったのか分からないけど愛莉は僕と二人きりになった。
椅子に腰かけ小説を読んでいる。
僕は親に持ってきてもらった携帯ゲーム機で遊んでいる。

「不謹慎な事言ってもいい?」

愛莉が突然話しかけてきた。

「どうした?」
「冬夜君が入院してくれてよかったと思ってる。こうやって二人きりの時間ができたから」

二人きりの時間ならいつでも作ってるだろ?

「傷……まだ痛む?」
「いや、痛み止めが聞いてるから」
「触ってもいい?」
「包帯の上からでもよければ」

愛莉は布団の中に手を入れると傷口を触った。
どうってことない。

「痛いの痛いのとんでけー」

ぽかーん。

「一度言ってみたかったんだ」

恥ずかしそうに言う愛莉。
その顔で傷が癒えそうな気がする。
あ、治ったかも。
だって今すごく愛莉を抱きしめたいから。
理由になってないか。
でもいいや。
愛莉に抱き着く僕。

「冬夜君!?傷口に障らない?」
「このくらいなんともないよ」
「そっか」

愛莉はそう言うと抱き返す。

「片桐さん、包帯変えましょうか……!?あらあら」

看護師さんが僕たちを見て驚いて、笑っていた。
慌てて僕から離れる愛莉。

「すいませんね、お邪魔したみたいで。ちょっとだけですから」
「いいんです。私外で待ってます」

愛莉はそう言って病室を出ようとする。

「待てよ愛莉。一緒にいろよ」
「でも……」

閃いた。

「愛莉知ってるか?患者と看護師って結構いいところまでいくらしいんだぜ」

もちろん冗談だから。
冗談だからね。
そんな凄いオーラ出さないで。

「片桐さん、冗談にもほどがありますよ!」
「冬夜君の馬鹿!!」

そのバッグ、辞典とか入ってるんだろ?
病院で凶器を振り回すのはどうかと思うぞ愛莉。

(2)

冬夜君は入院中。
神奈はバイト。
真っ直ぐ帰るくらいなら……。
と、いうわけで毎日冬夜君の病院に通う日々。
病室にはいると小動物のように口を膨らませ、後ろに何かを隠す冬夜君。

「……出しなさい」

首を振る冬夜君。

「出しなさい!」

ちょっと強めに言うと渋々隠していたものを出す冬夜君。
出てくる出てくる。
お菓子にジュースにパンに……。
いいよ、それが入院中の唯一の楽しみなんでしょ?
でもね……。
色気より食い気なのは今更だからいいんだけど、服装は仕方ないとして髪ぼさぼさに無精ひげはどうかと思うよ!
仕方ないなぁ……。
私は右手を出して「ブラシ!」と言った。
冬夜君は「持ってない」と言う。
当然髭剃りももってないんだろうなぁ。

「今度母さんに持ってきてもらうよ」

そういう冬夜君をよそに私は自分のカバンからブラシを取り出すと冬夜君の髪に通し始めた。
他人の髪を整えるのって生まれて初めてかも。
なんかお人形さんみたいで面白い。
玩具感覚で弄られてるとはつゆしらず冬夜君は緊張して身体を固くしてる。

「髪伸びてるね。今度美容室言った方が良いんじゃない?」
「床屋でいいだろ?」

……ちょっとはお洒落してほしいな。
さすがに髭剃りはもってない。
今度剃ると言ってるしいっか。

さてと、勉強始めますか。
嫌そうな顔をしないの!
私は楽しいよ、冬夜君とお勉強するの。
問題を少しずつって言い聞かせて解いていくの。
数学には恋の方程式もあるそうだよ。
愛には多くのパターンが存在し、そのパターンの研究をしているんだって。
でも……でも私たちには必要ないよね。
だってたった一度で巡り合えたのだから。
私も協力するから、二人で証明していこうね。
夜になると、帰る時間になる。
寂しい。
そんな私をあなたは抱擁してくれるの。
ずっとこのままでいたいけど。
また明日ね。
微笑みをあなたに届けるの。

そんな毎日が続くと思ってた。

(3)

ある日いつものように病院を訪ねると、病室に二人見舞いに来ていた。
一人は冬夜君より背の高いひょろっとした人。
もう一人は……亜子さん!?

「ど、どうして……」

確か実家に帰っていたはず。

「お久しぶりね、愛莉さん」

亜子さんが私を見るとそう言った。
もう一人の男の人は?
私の問いに亜子さんが答えた。

「私の兄の勝也」

勝也さんは私を見るとにやりと笑って「初めまして」と言った。
なんか目つきがいやらしいのは気のせい。
気のせいじゃなくても生理的に受け付けない。

「兄さん、私彼女と話があるから」

亜子さんは私を連れて病室を出た。


ロビーでジュースを買い、それを飲むと亜子さんは話を始めた。

「私がまた冬夜君を奪いに来たと思ったでしょ?」

私は何も言わない。

「安心して、私今彼氏いるから。大学生の」

確か前は、教師を好きになったらしい。
年上好きなのかな?
それならなぜ最初が冬夜君だったの?
単なる嫌がらせだったの?本気で?

「今日来たのは冬夜君が怪我したと聞いて見舞いに来ただけ。今日中に帰るわ。貴方たちは相変わらず続いてるの?」
「そうだよ。前よりも優しくなった」

私にだけだけどね。

「それは良かったわ。お幸せに……なれるといいわね」

どういう意味!?
その時微かに怒声が聞こえてきた。
冬夜君の病室から?

「兄さん始まったわね」

え?どういう意味?

「兄さん困った癖があってね。自分ひとりでアタックする度胸がないわりに人の彼女を奪おうとする癖があるの」

それって私に目を付けたってこと?
しばらくして勝也さんがロビーに現れる。

「亜子、帰るぞ」

勝也さんはそう言うと亜子さんを連れて帰る。

「じゃあ、またね。きっと近いうちに会うことになると思うから」

私はもう会いたくない。会う理由もない。

「それではまた、愛莉ちゃん」

鳥肌立った。
背筋が凍った。
初対面でいきなりちゃん呼ばわりですか?
2人がエレベーターに乗ると私は病室に戻った。
教科書が散乱している。
それを拾い集めると、片づけた。
冬夜君もひどく取り乱しているようだ。
私はなるべく、平静を装って微笑んで冬夜君に言った。

「どうしたの?」
「愛莉には関係ない!」

その怒声に私はびくつく。

「片桐さん他の患者さんに迷惑です静かにしてください!」

看護師さんが、病室に来て注意して帰る。
冬夜君は看護師さんの注意で我に返ったようだ。

「愛莉、ごめん」

私は冬夜君を抱きしめる。

「大丈夫だよ、心配しないで……なにがあったの?」

隠し事はしないって約束したよ?

「愛莉には言っておいた方がいいな……」

冬夜君は話し出した。

(4)

愛莉が亜子と病室を出た後、勝也が呟く。

「可愛い彼女だな……いつから付き合ってるんだ?」
「小6の頃からだけど」
「ああ、祖父さんの通夜の時に言ってた彼女か」
「うん」
「亜子から聞いたんだけどお前もう一人彼女がいるんだって?」

カンナの事か?

「カンナの事なら別に彼氏もういるぞ?」
「お前モテてるんだってな?サッカー本格的に始めたらモテモテなんじゃないのか?」

何が言いたいんだ?
すると予想しなかったことを言い出した。

ベツニカノジョジャナクテモホカノオンナデモイイヨナ

なに言ってる?

カノジョユズッテクレヨ

プツン。

頭の中で何かが弾ける音がした。

「ふざけるな!!」

僕は勝也に辺りにあった物……教科書を投げつける。

「何でお前ばっかりなんだよ。ズルいだろ?俺にもおこぼれくれよ」
「……俺が平静でいられるうちに失せろ!」

もうすでに平静ではないけど。

「じゃあな、考えておいてくれ。まあ、断られても頂くけど」
「帰れ!!」

勝也は病室を出て行った。



って内容を愛莉に話した。
すると愛莉は静かに聞いていたが、突然笑い出す。

「冬夜君私の事で怒ってくれたんだね」

愛莉は笑い出す。
そして愛莉はまた僕を抱きしめる。

「大丈夫、私と冬夜君の間に咲いた希望の花、繋いだ絆が私の胸の中にあるから。決して散ることは無いから。どんな逆境でもそれらを力にして明日を生きるだけだよ」
「あいつ、何してくるか分からない」
「どんなことがあったって負けない。今までだって色々あって今でも問題は山積みだけれど少しずつって言い聞かせて、二人の願いを叶えていこう?」

どこまでも前向きなんだな。

「今までだってすれ違って綻んでいった心を縫い合ってその度に強くなれた。これからもそうだよ」

愛莉の言葉を胸に刻んでいた。
一人で悩んでいる時にくれた優しさ。溢れだしたのは未来を誓った決意の涙。

「愛莉は何があっても守るよ……必ず」
「ありがとう」

愛莉はそう言うと軽くキスをする。

「じゃ、勉強はじめよう」

愛莉は今までの後悔も拾い集めて、並べて希望に変えていくんだろうな。
一緒にラベルを貼って想い出に変えて未来へつないでいこう。


(5)

今日が退院日。
病院を出ると誠とカンナがお出迎え。
え?愛莉?隣にいるけど?

「退院おめでとう」

カンナがそう言って花束を渡す。
花束を受け取ると「ありがとう」と一言。

「さて、帰ったら追試の準備しなくちゃね?」

思いだしたくないことをさらりと言うなよ愛莉。
父さんの車に乗って帰る。



追試は無事にクリアした。
高校最後の一年が始まる。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。 そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。 大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。 しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。 フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。 しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。 「あのときからずっと……お慕いしています」 かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。 ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。 「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、 シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」 あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。

楠ノ木雫
恋愛
 蒸発した母の借金を擦り付けられた主人公瑠奈は、お見合い代行のアルバイトを受けた。だが、そのお見合い相手、矢野湊に借金の事を見破られ3ヶ月間恋人役を務めるアルバイトを提案された。瑠奈はその報酬に飛びついたが……

【完結】転生したら悪役継母でした

入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。 その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。 しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。 絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。 記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。 夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。 ◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆ *旧題:転生したら悪妻でした

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

処理中です...