優等生と劣等生

和希

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2ndSEASON

事件です!

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(1)

愛莉が体を揺すっている。

「いい加減に起きて、ダ~リン♡」

ダ~リン?
うん、夢を見ているに違いない。
もう少し眠らせて。

「起きてってば~」

そういえば今日は休みだったな。
新妻、休日の朝、嫁が甘えてくる。
もう、劣情を催すのは無理ないよね。
夢だしいいや。
僕は愛莉の腰に手を回し抱き寄せる。

「ちょ、ちょっとだめだよ~」

と、いいながらまんざらでもない様子の愛莉。

「休日くらいいいだろ?」
「いい分けないだろこのすかたん!」

カンナが僕をどつく。
カンナ?
僕が目を覚ますと、愛莉を抱きしめる僕とうっとりする愛莉。そして仁王立ちしているカンナがいた。

「私の前で堂々といちゃつきやがって。寝惚けるのもいい加減にしろ!」

頭痛がまだ残る中、僕は記憶をたどる。
確か連休に入って愛莉の家に泊まって勉強することになって……。
愛莉の家には親はいない。
時計を見る。
11時を指していた。
既にカンナは来て愛莉と勉強を始めている。
一向に起きない僕を見かねて愛莉が起こした。
後は意識がある。
夢ではなかった。

「『ダ~リン♡』なんて呼ばれたら誰だって夢だって思うだろ?」
「そう呼べばいちゃついてくれるんだね?」

愛莉は嬉しそうだ。
どこまで前向きなんだ。

「だからやめとけって言っただろ。こいつだって一応男なんだぞ」

カンナが呆れ顔で言う。

「うん、二人っきりの時にする♪」

ダメだ人の話を聞いてない。


すぐにお昼になった。
愛莉が席を立つ。

「お昼か、私も手伝うよ」

カンナも席を立つ。

「神奈はお客さんだからいいの。冬夜君手伝って♪」

僕はお客さんじゃないのか?

「冬夜君はお嫁さんになんでもさせる人なの?」

まだ旦那になった覚えはないぞ。
まあ、手伝ってやることに異論はないけど。
起き上がると愛莉について行きキッチンに立つ。
カンナもついてきた。

「勉強してていいのに」と、愛莉。

「いや、トーヤの働きっぷりを見たいと思ってな」

そう言ってカンナはにやりと笑う。

「誠君は料理とか手伝ってくれないの?」

愛莉は野菜を切りながら愛莉に言う。

「手伝ってはくれるんだけどな、途中で抱き着いてきたりやりたい放題で、寧ろ邪魔になるから大人しくテーブルで待ってろってなる」

誠……お前そんなキャラだったのか?
唖然とする僕を見てカンナはにこりと笑った。

「言ったろ?私の前ではただの馬鹿で変態だって」


スパイシーなカレー味が食欲をそそるカレーピラフの完成。
3人で食べて美味しいと、感想を述べる。

「愛莉は何でもこなすんだな」とカンナ。
「明日はもっと頑張るね♪」と愛莉。
「おかわり♪」と僕。

「おやつまで我慢しなさい!それでも大盛りで作ったんだからね!」

怒られた。


昼からまた勉強再開。
とりあえず宿題を終わらせることから始まる。
その後は苦手分野の解消。
愛莉は……ない。
僕は外国語。
カンナは数学B
カンナは外国語は得意だったのでカンナに教わりながら問題を解いていく。
カンナは愛莉に質問するのだが……。

「そんなの見たらわかるじゃん……うーん、そこはスカラー乗法の分配律で……」

愛莉は人に教えるのが苦手なようだ。


夕方になるとカンナが荷物をまとめ始める。
バイトの時間のようだ。

「じゃあ、また明日」
「神奈、帰ったら今日のところもう一度見直すんだよ」
「バイトで疲れて寝てなかったらやっとくよ」

そう言ってカンナは家を出て行った。

「じゃあ、私たちも夕飯の準備しよっか」

そう言ってキッチンに向かう愛莉。

「何作るの?」
「オムレツだよー……あ、玉子がない」
「買ってくるよ」
「私もいく~」

そして二人でスーパーにお買い物。
当然玉子だけで収まるはずもなく。
ジュース買っておかなくちゃ喉渇くしね。

「麦茶用意してるよ……」

お菓子も買っておかなくちゃね。

「……やっぱり一緒に来てよかった」

愛莉は僕がかごに入れたお菓子を陳列棚に返していく。

「頭脳労働はお腹が空くんだよ!?」
「そんなわけありません!」

さよなら、お菓子たち。

帰り道、登り坂を上っていく。
お店で見かけたカップル……というより夫婦か?
同じように商品を品定めしながら買い物していた。
愛莉は羨ましそうに見てた。
その二人は車で帰っていたけど。
中には手をつないで帰ってる人たちもいた。
そんなのを羨ましそうに見てる愛莉。
もうするべきことは決まってるよね。
重い荷物を片手で持ち、愛莉の手を取る。
驚く愛莉。
しかしその表情はやがて優しい笑みに変わる。

「やっぱり一緒に来てよかった」

それはよかった。

「今なら言える気がする。『いつの日か私はあなたと共にそこにいるでしょう』って……」

愛莉は突然言い出した。

「何かの歌詞?」

愛莉は首を横に振った。

「英語の授業で習ったの。とても素敵な文だなぁって……」

「いつの日か私はあなたと共にそこにいるでしょう」か……。
確かに今なら約束できる、将来僕は愛莉とともにいるでしょうって。

「こうも書いてあったよ『祈るだけでは届かないから、いつの日か未来の夢へ行くために、今一歩を踏み出そう』って……私達踏み出せてるかな?」
「踏み出せてるさ。少なくとも僕は踏み出しているよ。何かがあると信じて」

僕が応えると、愛莉は満面の笑みを浮かべる。

「私も連れていってね。今行かないと後で泣くことになると思うから。そんなのは嫌だから」
「いつも一緒にいるよ」

手離すもんか。
遠い日の奇跡が生んだ出会いなのだから。

(2)

図書館。
僕は恵美と一緒に、勉強しに来てた。
図書館を選んだ理由は家だと家族が五月蠅くて勉強にならないから。
暫く静かに勉強をしていたが、恵美から話しかけてきた。

「イッシー?進路は決めてあるの?」
「うん?地元大学に行くつもりだけど?」
「学部は?」
「経済学部」
「そう……」

笑みはペン回しをして何やら考え込んでいた。

「学部まで合わせる必要は無いわね……」
「え?」
「私も地元大学にするわ。学部は違うけど」

大学も合わせる必要ないとおもうんですけど。

「恵美ならもっといい大学行けるんじゃない?」

僕は恵美に疑問を投げかけた。
すると恵美は言う。

「イッシーはどうして地元大学を選んだの?」
「私立に行くほど余裕はないし、地元を離れるのも不安だから」
「私はイッシーと離れるのが不安だから……って理由じゃ不満?」
「不満はないけど……」

心配はある。
そんな理由で将来を決めて良いの?

「大丈夫、地元大学にも行きたいコースがあるから」

恵美は僕の心配を一蹴した。

「そうなんだ」
「一緒にキャンパスライフ送れるわね」

恵美の中では、僕も恵美も合格することになってるらしい。

「合格するかどうかわからないよ?」
「地元大学くらい余裕でしょ」

でも、一応国公立だよ?

「九大くらい目指すと思ってたけど?」
「地元を離れるのが不安でね」

親離れできないどうしようもない奴と思われてるんだろうなあ。

「親元を離れるのが不安なの?」
「そりゃね、バイトとかも探さないといけないし」
「それは、地元でもいっしょじゃなくて?」
「少なくとも食いっぱぐれることはないだろ?」

親のすねかじりといわれるんだろうな。

「二人で暮らせば、生活費くらいは稼げると思うけど?私もバイトするし」

そんな事を考えていたのか。

「同棲までは考えてなかったなあ」
「同棲なら地元でもできるわよ?」

悪戯っぽく微笑む恵美。

「……までは」
「え?」

恵美が聞き返してくる。

「結婚するまでは同棲なんて認めてもらえないよ」

自分ながら、マザコンだなと思った。

「私との結婚は考えてくれないの?」

クスクスと笑う恵美。

「……高校生でそこまで考える人は少ないと思うよ」

居ないとは言わない。
少なくとも一組は考えてるらしいから。

「でもあなたカラオケで言ってくれたわよね『世界が終わるまでは一緒だ』って……」

それをプロポーズと受け取る女性は世界中を探しても恵美だけだよ。

「イッシーは他の人に恋をしたことは?」
「あるわけないだろ……僕なんかに彼女なんてできるはずがない」
「そう……私も初めての恋をしたの、アナタだけがそこにいたの」
「?」
「優しさに目を覚ましたちっぽけな心だけど会いたくてこうして触れ合ってる」

そういって恵美の手は僕の手に触れている。

「前にも言ったけど……きっかけなんてどうだっていいの。それが恋だったんだから。その後が大事なの。私はいつまでもイッシーと共にいるわよ」

言っとくけどここ図書館ですよ。
恋愛を語る場ではないよ。
恵美の手が触れてる方の手が熱い。
掌が汗ばんでる。
掌の汗が教科書に染みる。

「きょ、今日はここまでにしようか?」
「それはどういう意味?」
「え?あ、いや勉強をここまでにしようかって……」
「なるほどね、いいわよ。この後どうするの?」

帰る。

の一言が言えない状況。
困っていると恵美が仕留めた!と言わんばかりに言う。

「どこも考えてないのね?じゃあ、いい場所があるんだけど……?勉強もできるしゆっくりできるとっておきの場所よ」

……勉強するなら図書館でもいいんだけど。
とっておきの場所ってどこだろう?

(3)

夕食を食べ終えると、お風呂に入り。愛莉と勉強していた。
愛莉の両親は家にいない。
居ても多分状況は変わらない。
両親ともに認められているのだから。
そんな中で密室にいる若い恋人。
消しゴムをとろうとすると触れ合う二つの手。
お互いを見つめ合う。
そして……。


なんてロマンスはとうに卒業してる。
それでも愛莉は何かを期待しているのだろう。
前に会った時みたいに体を寄せ合って勉強している。
それでいて肩を抱こうものなら。

「勉強中だよ!」

と、突き放される。
ある意味拷問だ。
賢者時間という絶対的時間を持っている僕でも偶には欲情することがある。
彼女が肩と肩が触れ合う位置にいて、仄かなシャンプーの匂いがして、隣を見れば頬を赤らめている。
その彼女もこちらをみるとにこりと微笑む。

「もう恋じゃない、愛だよ」

と、まで言われた彼女にそんな真似されて欲情しない奴いたら出てこい!

時計が0時を指した頃、流していたFMラジオから良質な音楽と落ち着いた語り口のナレーションが流れる。

「はい、今日はお終い~」

やっと解放される。
そう思って、愛莉を抱き寄せる前に愛莉の方から僕にもたれかかる。
目を閉じて素敵なBGMを聞いてその空気を味わっている。
1時前にその番組が終わる頃。僕たちはベッドの中に居た。
布団の中で僕を受け入れる照明を消す愛莉。
僕はそんな愛莉を抱き眠りにつく。


朝6時ごろ愛莉が僕を揺さぶり起こす。
今日は未だ休みだろ?
寝させてくれよ。

「早く準備しないと神奈きちゃうよ」

あ、そうだった。
服は……部屋着のままでいいか。
髪だけ寝ぐせが無いのを確認して身支度する。
朝ごはんを食べて、一足先に勉強しているとカンナが来る。
3人で勉強していた時、僕のスマホが鳴る。
誰かからのメッセージだ。
石原君からだ。
メッセージを見る。

「どうしよう……やっちゃった」

何を?

「恵美を傷つけた……」

3人で顔を見合わせる。
何があったんだ?
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