優等生と劣等生

和希

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3rdSEASON

絶対的女王

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(1)

「冬夜君おはよ~」
「あ、愛莉おはよう」

う~ん、困ったなぁ~。
ネットの通りにやってるんだけど上手く行かない。

「どうしたの?」

愛莉はスーツ姿でキチンと決めてる。
それに引き換え僕はネクタイと格闘していた。
上手くいかない……。
……これでいっか。
ネクタイを締めると、愛莉の方に振り返る。

「今日は抱きついたらダメだよ、白いシャツに口紅ついちゃう」

今日は化粧してきたんだね。

「似合ってるよ」
「ありがとう♪」

すると愛莉はぼくとの距離を縮める。
そしてネクタイを締めなおす。

「ネクタイ曲がってたよ♪」
「あ、ごめん……」
「はい、これでおっけ~」

僕はデイバッグを手に取ると部屋を出た。


今日は大学の入学式。
朝は混むらしいので早めに出ることに。

「愛莉ちゃんスーツ姿もばっちりじゃない」

母さんが愛莉を褒める。
うん、そう言えばなんか雰囲気が違う。
髪型はともかく、何だろう?
髪……あっ。ちょっと茶髪入ってる。

「愛莉髪染めた?」
「きづいてくれたのね♪」

愛莉ははしゃいでる。

「似合ってるよ。それで大人っぽく見えたんだ」
「ありがとう。冬夜君も髪染めたら?」
「なんかチャラい男にしか見えなさそうだからいいよ」
「冬夜君基本パーツはそんなに悪くないと思うんだけどなぁ~」

愛莉は腕を組んで悩む。

「冬夜急がないと、遅刻するわよ」
「あ、まずい」

僕は慌ててご飯を食べて、洗面所に急ぐ。

「大学でもお願いね。冬夜あの調子だから」
「不束者ですがよろしくお願いします」

そんな声が聞こえてくる。
なんかおかしくないかその会話。

「準備出来たよ!愛莉車の鍵!」
「は~い」

そう言って愛莉の車の鍵を借りる。
通学は、愛莉の車でと決めてあった。
軽だから燃費がいいし、大きい車でいっても面倒だしという理由でだ。
車は愛莉の家の車庫に止めてあった。

「冬夜君、愛莉ちゃんをおねがいね~」

愛莉ママに見送られ僕たちは入学式式場へ向かった。
地元大学までは車で15分ほど。
本当はもっと早く着くんだけど、車が渋滞することで有名な道だった。
愛莉の車にもナビがついてあったが、ナビを無視して裏道を抜ける。
事前に大学に行っておいて良かった。
駐車場に行くと赤いスポーツカーが止まってある。
カンナに先を越されたか。

「おせーぞトーヤ」

カンナもびしっとスーツ姿が決まってる。
やっぱりスタイルはカンナの方が良い。
格好いいカンナ、可愛らしい愛莉といった感じか?
エレベータの前で待ってると、黒い大型のSUV車、シルバーのコンパクトカー、が入ってきた。
渡辺君と石原君だ。

「お、皆早いな」

渡辺君がそう言った。あと来てないのは指原さんと江口さんか。

「二人共上で待ってるそうだ。行こう……と、その前に」

ぽんっ!

渡辺君に頭を叩かれる。

「お前グループメッセージ見てるか?全然反応がないんだが」

渡辺君に言われてスマホを見る。
今日の集合場所と予定が書かれてあった。

「ごめんね、渡辺君。冬夜君うるさいからってグループメッセージの通知オフにしちゃって」
「なるほどな……これからは遠坂さんに伝えてもらうようにするよ」

渡辺君がそう言うと皆移動を始める。
1Fに上がると人だかりが出来てる。
黒いリムジンから出た、シャネルのスーツを着た女性。
うわあ、美人だなあ。
化粧もばっちりだ、髪の毛は愛莉より少し長い程度か。
愛莉と同じく少しだけ染めた髪の毛を伸ばし、アクセサリにも気品を感じる。
ハイヒールを履いて歩くその女性に魚群のようについて行く男性陣。
例えるなら愛莉とカンナを足して2で割った感じか。

ぽかっ

「何を見とれてるのかな?冬夜君」
「いや、綺麗な人だな~って」
「鼻の下伸びてた~」
「相変わらずだね~二人は」
「本当、見てて退屈しない2人ね」

そう言って後ろから現れたのは指原さんと江口さん。
指原さんは普通なんだけど、プラダのスーツに身を包み同じく高貴な感じを漂わせる江口さん。
この二人の周りにも男がつきまとってないのは、全部あの人が男の視線を奪っているからだろうか?

「誰あの人?」
「志水さんね、オープンキャンパスの時に居たの気づかなかったの?」

江口さんが答えてくれた。
オープンキャンパスに行った記憶すらないよ。

「冬夜君は気にしなくていいの!」
「そうだぞトーヤ!お前は愛莉だけ見てろ!」

カンナの声が志水さんに届いたのか志水さんがこっちを見てる。

「な、なんかこっち見てるけど」
「気にすることないんじゃない?」

愛莉はそう言うも視線を志水さんに向けてる。
志水さんはこっちに向かって歩いてきた。

「貴方が遠坂愛莉さん?」

志水さんは愛莉に話しかける。

「そうですけど……何か?」
「貴方が私と同点一位だった遠坂さんね」

愛莉と同点って……。
こういっちゃなんだけど、国公立とはいえ地元大だぞ?
行く大学ミスってないか?

「私そう言うの興味ないから」

愛莉はそうは言うものの、男性陣の目線が気になったのか僕にしがみ付く。
男性陣の目線は愛莉から僕に移る。

何でこんな冴えないやつがこんな美女と。

そんな風に視線が突き刺さる。
身が縮む。
そんな僕の心情を察したのかカンナが僕の背中をバシッと叩く。

「愛莉の彼氏はお前だけだろ!しっかりしろ!」

カンナは周囲に聞こえるようにわざと大きな声で言った。

「あら?彼氏さんいたんだ。羨ましいなあ」

志水さんから意外な言葉が出た。
後ろにいっぱいイケメンいますよ?
その中から選んだらどうですか?

「……それで私に何の用ですか?」

愛莉が毅然とした態度で志水さんに対峙する。

「そんなに敵視しないでよ、ただ宣誓を断ったもう一人の首位ってのが気になっただけ。これも何かの縁、仲良くしましょうね」

そう言って握手を求める志水さん。
愛莉は無言で握手する。

「あなた学部は?」
「経済学部です」
「じゃあ、違うわね。出来たらまたお会いしたいのだけど……」
「縁があれば会えるんじゃないですか?」
「そうね、それじゃまた」

そう言って志水さんは会場へと向かった。
魚群も志水さんの後を追う。
カンナや江口さんに見とれる者もいたが、江口さんは石原君と腕を組み、カンナには渡辺君がそばにいたため声をかけずに群れにもどった。

「嫌な感じの女性ね……」

江口さんに似ている感じがしたけどね。
多分同じような男性が好みなんじゃないかな?

「おっと!俺たちもそろそろ式場に入ろう」

(2)

僕達はホールにはいると、適当な位置に並び座る。
僕は一番右端。
左には愛莉がいる。
右には頭ぼさぼさの、スーツよれよれ、だらしがないサラリーマンのような男性が座っていた。
男性は僕に気がつくとじっと僕を見てる。
式が始まった。
挨拶とかが始まる中じっと僕を見る彼に問いかけた。

「あの、僕に何か?」
「君、防府高校のFWだった人?確か片桐冬夜君」

ああ、サッカー関係者ね。
聞かなきゃよかったかな?

「あ、勘違いしないでね。僕も高校でサッカーを引退した身でね。バイト三昧でサークルやってる暇ないんだ」
「じゃ、どうして僕の事を?」
「伊田高でキーパーしててさ。君から2失点もらってね。衝撃的だったからつい覚えていて……」

なるほどね、すいませんでした。あの後半45分が僕の唯一のサッカー部の時間だったんだ。

「あ、申し遅れました。僕酒井善幸といいます。片桐君もバイトするからサッカー辞めたの?」
「まだバイト先探してないんだ。講義の時間がよくわからなくてね」
「先にバイト探しておくべきだったかもね。SNSとかで大学のグループみつけて講義の情報は仕入れられるよ」

そうだったのか……。

「なんでも知ってるんだね。酒井君は」
「大体の事はネットで探せるよ」
「そうなんだ……」
「多田君の事は知ってる?」
「誠は中学の頃からの友達だよ」
「ああ、それで。多田君から君の事は聞かされていたよ『あいつはファンタジスタだ』って。実際目の当たりにしたときは震えが止まらなかったね」
「冬夜君はもうサッカーやってませんから!」

愛莉が食いついてきた。

「あなたが片桐君の彼女さん、綺麗な人だなぁ~」

口ではそう言ってるがあんまり興味なさそうだ。

「誠とは友達なの?」
「多田君の周りには人が集まってたよ。誰とでも仲良くできるタイプ?」
「確かにね」

そうこう話をしてる間に入学式が終わった。
これから学生証が発行されるらしい。
どうせ混んでるから後からでもいいや。

「酒井君はどうして地元大を?推薦で私立大目指せたんでない?」
「そこまでサッカーに執着してたわけでもないし、もういいかな?って」

その気持ちは良く分かる。
なんか酒井君とは仲良くやれそうだ。

「ちなみに酒井君は学部どこ?」
「経済学部。あ、お仲間さんが呼んでるよ?」

振り返ると皆が立って待っていた。

「いつまで喋ってんだよ。行くぞ」

カンナがそう言うと僕は席を立ち「じゃ、また」と言ってその場を去った。

(3)

式場からそう離れてないファミレスで。

「誰あの人?」
「伊田高のキーパーだった人。酒井君って言ってた」
「サッカー部の勧誘?」
「いや、サッカーはやらないらしい。バイトで忙しいってさ」
「そうなんだ……」

愛莉は胸を撫でおろす。

「なんかあの人変だね」

愛莉の酷評。

「私の事綺麗な彼女さんって言っておきながら私の事全然見てないの。今までいなかったよそんな人」

愛莉も感じていたのか。

「愛莉を見て愛莉に気がいかないって確かに変だな。まさか……」

それは無いと思うぞカンナ。

「そう言う感じでもない。冬夜君とは友達的感覚で話してたみたい」
「まあ、冬夜も大学で友達出来て良かったじゃないか」
「うん、何でも知ってそうな感じだったし。良かったかも」
「うぅ……」

どうした愛莉。

「私が変なのかな?なんか悔しいの。冬夜君が私以外の人と仲良くしてるのが」
「そんな事ないだろ?渡辺班と話してる時は何とも思ってないじゃないか」
「それは私が入ってるから。冬夜君と酒井君?の間には私がいないからかな?」
「遠坂さん、それは流石に心配し過ぎだよ。そんな事言ってたら冬夜社会人になれないぞ!」

渡辺君が間に入った。

「冬夜も遠坂さんと一緒の時は遠坂さんだけをみてくれるさ、な?冬夜」

僕は頷いた。

「うん……」

愛莉はその日落ち込んでいた。
何かしてやらないとな……。
家で優しくしてやろう。

(4)

翌日から、大学生活が始まった。
基礎演習クラスは僕と愛莉とカンナは一緒だった。
西洋経済史が専門のようだ。
それから履修指導を受け、履修科目の選択に入る。

「冬夜君のも書いてあげる♪」

めんどくさいから愛莉に任せておこう。
愛莉に紙を渡す。

「男子的にはドイツ語なのかなぁ」

バームクーヘンくらいしか知らないぞ。

「専門基礎科目と基礎演習と教養教育科目は外せないっと」

説明を聞いた限りだとバイトする余裕は十分ある。
これなら小遣いなしでもいけるかも。
愛莉と遊べる時間もあるな。

「遠坂さん」

後ろから声がした。
僕と愛莉は振り返る。
酒井君だった。

「ちゃんと説明聞いてた?それだと無理だよ。まず上限超えてる」
「え?」
「ほえ?」

愛莉の手元にあるシートを見る。

「愛莉、何やってんの!?」

僕は教室中に響き渡るくらいの悲鳴を上げていた。

「え?ちゃんと、被らない様に入れたよ」

不思議そうに、僕の顔を見る。

愛莉の隣にいたカンナも愛莉のそれをみて絶句する。

「なんで第二外国語が二つも入ってるの!?」
「だって冬夜君ドイツ語が好きかなって……、私フランス語受けてみたいし」
「要らない科目多すぎだよ!」
「うぅ……だって面白そうじゃん」

ミクロ経済学が魅力的に見えたらしい。

「遠坂さんは4月病にかかってるかもしれないね」

酒井君が呟く。


その後昼休み愛莉の作ったお弁当を食べながら相談する。
酒井君は学食で食事らしい。

「うぅ……」

愛莉は落ち込んでる。

「愛莉、僕もフランス語でいいから一個にしよ?」
「愛莉、取りあえず1年は教養教育科目メインで良いって聞いた。余計なもの外そう。どうせ履修できないし、トーヤだって倒れてしまったら元も子もないだろ?」

僕とカンナで宥める。

「冬夜君は私とキャンパスライフ楽しみたいって言ったもん……」

愛莉のキャンパスライフは勉強で埋め尽くす事だったのか……。
このままだと地獄の生活が待っている。
どうにかして愛莉を説得しないと……。
……こんな時うちの親で助かったよ。

「愛莉、折角時間が空くんだから有意義に使お?」
「……どうせバイトするんでしょ!私単位取れなくてもいいから受ける!」
「……バイトは辞めとくよ。親がああ言ってたんだし、愛莉と過ごしたい」
「うぅ……」
「愛莉が勉強したいなら勉強に付き合うよ。それは家で二人きりでも出来るだろ?」

要は二人っきりの時間が出来ればいいはずだ。
……だよね?

「冬夜君は平気なの?バイトとかサークル活動とかしたいことないの?」
「愛莉と居る時間が大切だよ」

強調してみた。

「うん……わかった」

そう言っていらない講義を削っていく。
履修単位上限ギリギリまで詰め込んでいたが。
誰かに聞いたぞ、期末試験で大変なことになるって。
まあ、愛莉と一緒ならどうにかなるか?
今までだってどうにかなっただろ?
問題は山積みだけど、少しずつ解いていけばいいさ。

(5)

午後に実際に組んだ時間割通りに履修登録をしていく。

「説得できたみたいだね」

と酒井君がうしろから囁いた。

「まあね、余裕はないけど……」
「う、うぅ……だめだった?」

隣にいる愛莉が不安そうに言う。

「大丈夫大丈夫」

そう言って愛莉の頭を撫でてやる。
ちょっと恥ずかしそうに俯く愛莉。
機嫌は直ってるみたいだ。

ガイダンス・オリエンテーションが終わると今日はお終い。
明日から本格的に受講が始まる。
帰りに噂のサークル勧誘合戦が始まっている。

一際高く目立っているのが、志水さんの周りに群がる魚群たちだ。

「志水さんはどのサークルに入るんですか!?」
「ゴルフにしようかと」
「おっしゃああああ!」

ゴルフ部の雄たけびが聞こえる。
今年はゴルフ部志願者が多かったそうな。

そんな中目立って声が聞こえるのが

「片桐君、片桐冬夜君はいませんか?」

拡声器で僕を呼んでいる。
あからさまにサッカー部とバスケ部のユニフォームを着て。
僕は身を縮める。
どうか見つかりませんように。

すると誰かが愛莉の肩にてをかける。
愛莉はびくっとして僕にしがみつく。

「君可愛いね、テニスとか興味ない?あ、そちらの彼氏さん?もいっしょにどう?一緒に青春の汗をかこうよ」
「わ、私サークル興味ないから」

愛莉が怯えている。
僕にも声がかかる。

「焼肉同好会なんだけど、焼肉だけじゃないよ。カラオケとかコンパも計画してるよ」

だからそれサークルに入る意味あるのかと。

「と、冬夜君」

馬鹿、愛莉今名前を呼ぶと……。

「冬夜君!?君が片桐冬夜君か!」

サッカー部とバスケ部に見つかった。

「片桐君!君がいれば2部復帰も!!」
「馬鹿を言うな!片桐君はバスケがしたいに決まってるだろ」

サッカー部とバスケ部が揉める中そうっと逃げる僕達。

「ま、待ってくれ!ビラだけでも見てくれ!」

そう言って強引にビラを渡された。
一人が渡すと次々とビラを渡される。
揉み合う人込みから愛莉を守りながらなんとか駐車場に辿り着く。
ふぅ……。
一息つくと、愛莉が悲鳴をあげた。
ハッとして左を見るとドアに張り付けられた一枚のビラ。
ミスコン参加者募集。
ここまで来るとホラーだな。

(6)

対峙する二人の女性。
一人は僕の彼女、恵美。
もう一人は……志水さんだっけ。
何でこんなことになったかって?

ガイダンスが終わって恵美と待ち合わせ場所に行ったらこうなってた。

「恵美、どうしたの?」
「別になんでもないわよ?ただこの人が……」
「あら?可愛い。あなたの彼氏さん?」

志水さんの口角が上がる。
恵美の眉間のしわが寄る。
片桐君の気持ちが痛いほどわかるよ。
なんか申し訳ない気分になってくる。

「志水さんには彼氏がいるの?」

恵美の表情は笑顔に変わりにこやかに言ってる。

「生憎とまだ決めかねてるのよ」

志水さんがそう言うと、周りの男が次々と立候補する。

「そう?じゃあ、アドバイスしてあげる。運命の人って意外なところで会うものよ。じゃ、いこっか。イッシー」

そう言って踵を返すと歩きだす恵美。
その後を追う僕。
モーゼの如く人混みが割れていく。
後ろを従者の如くぺこぺこと頭を下げながら歩く僕。
今日の恵美は機嫌が悪いらしい。

「イッシー。そんな卑屈にならないで」

そう言うと恵美は僕腕を無理やり掴む。
うわあ、やな視線が突き刺さるよ。
片桐君にメッセージで「助けて」と送りたい。
今日は僕は車で来てない。
恵美が朝迎えに来たから。
そして今大学の門の前でその車が待っている。
一際大きい車が反対側に止まっていたけど。
恵美は先に僕を乗せ、自分が乗ると車が走り出す。

「気分転換をしたいわ……新條。ちょっと遠回りしてちょうだい」
「かしこまりました」

そう言うと恵美は一息つく。

「いったい何があったの?」
「言っておくけど先にしかけてきたのは向こうよ」


教育学部棟を出て、僕との待ち合わせになる途中で志水さんと鉢合わせする。
周りに大勢の雑魚(恵美的表現)を引き連れ近づいて来る志水さん。

「初めましてかしら?確か、江藤さん?」
「江口よ。正確には2度目ね。入学式の時に対面してるわ」
「そうなの?気づかなかった。ごめんなさい」
「お気になさらず。それではごきげんよう」
「こんなところで何してるの?」
「彼と待ち合せなの?」
「彼氏いるんだ。いいなぁ~。是非一度見てみたいわ」

志水さんの周りの男が拒否を許さなかった。

「……好きにしたらいいわ」

そして僕が現れて……。

「遠坂さんが言ってた意味がよくわかるわ『他人の恋人を貶める人よりよほど』マシって……」
「じゃあ、恵美は僕の事で怒ってたのかい?」
「そうよ!あんな言われ方して頭に来ない彼女がいると思うの?」
「僕は気にしないよ。恵美だけに認めてもらえるなら」
「男でしょ!少しはムカつくとかイラッと来たとかないの?」
「ごめんなさい……」

恵美は用意されていたドリンクを飲み一息つく。

「いいのよ……イッシーは悪くないんだから。昔の私もあんなんだったのかな?」

経験者から言わせてもらうと志水さんは恵美よりもっとどす黒いオーラを感じるよ。

「恵美が気にすることないよ」

僕がそう言うと恵美は僕に縋りつく。

「今の私を癒してくれるのはイッシーだけよ」

恵美はそう言うとしばらくしがみついたまま、離れなかった。
黙って恵美を受け止める。
恵美を動揺させる女性がいるとは驚いた。
まあ、学部違うしそんなに接点無いでしょ。
この時はそう思っていたのだけど、思いがけないところで会うことになる。
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