優等生と劣等生

和希

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3rdSEASON

純真

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(1)

部屋に入ると辺りに銀色の空き缶や空き瓶。ペットボトルや紙皿。女性たちが作った一品料理等が散乱していた。

「お、トーヤ戻って来たか!」」

僕の存在に気づいたカンナが声をかけると、皆の注目を集める。

「先ずはまあ、座れよ」

顔を赤くした誠が自分の隣を開ける。
僕と愛莉はそこに座る。その隣に当然の様に西松君が座る。

「遠坂さん、先ほどは失礼しました」
「気にしてませんから」

それが気にしてないという言葉通りの意味なのか気にするほどの存在ではないという意味なのかは愛莉にしかわからないけど。

「さぞお気を悪くしたでしょう、男として最悪の行動だ」
「何のことを言ってるの?」

愛莉の眉がピクリと動いた。
愛莉は全く身に覚えがないわけじゃない、僕の軽はずみな行動についての事だと察しはついていたはずだ。

「本当は気づいてるんでしょ?婚約者がありながら他の女性とキスだなんてあるまじき行動だ」
「へえ、少しは賢くなったんだ」

愛莉が機嫌の悪いとき時折みせる、氷の微笑。そして凍てつくような冷淡な声。

「そこまで分かってるんだったら、何も言わなくても分るよね?どこかの分をわきまえない女とは違うんでしょ」
「しかしそれは彼も油断があったんじゃないですか?遠坂さんという方がいることを忘れていたといった……」
「彼はしたんじゃないの、されたの。不可抗力って言葉知らないんですか?私は冬夜君の言葉を信じる」
「あなたは健気な人だ。だけどそんなんじゃいつか彼に泣かされますよ」
「とっくに一杯泣かされてきましたよ」

愛莉の言葉に一同が反応する。
そして僕に冷たい視線を刺す。

「冬夜君が私を泣かせるときは大抵私の事を想ってくれてる時、何かサプライズ考えてくれてる時なの。私の勘違いが多い。だからお互い本音で話そうって決めたの。今でも冬夜君は守ってくれてる。私に隠し事なんてしない」

愛莉がそう言い終える頃には、皆の視線が溶けていくのを感じた。

「とーやもやるなぁ、サプライズかぁ」と美嘉さんが言えば「そんなに良い物でもないぞ。相談受ける身にもなってくれと」とカンナが返す。
愛莉が「いつもごめんね」と謝れば、カンナは「気にするな友達だろ」と返す。

真鍋君たちをみると新名さんと一緒に座ってる。そして新名さんは真鍋君に謝っている。「もう過ぎたことだから」と真鍋君はやんわりいうものの、彼女は一向に謝罪を止めない。
彼女の足元を見ると銀色の空き缶が転がっている。なるほどね……。
新名さんを心配そうに見てる木下さん。あれ?竹本君は?
花山さんと何か話をしている。どうしたんだろう?

「かずさん就活はどんな感じ?」
「何社かにエントリーはしてるよ」
「決まると良いね」
「こればかりはやってみないと何とも言えないな」

木元先輩と大島さんは楽しそうに話している。

「イッシーもう20歳なんだからもっと堂々と飲みなさい!」
「僕ビール苦手なんだよ」」
「しょうがないなぁ、じゃあ酎ハイなら大丈夫?」
「うん、そっちの方がマシかな」

そう聞けば江口さんが酎ハイを石原君に渡す。

「これなら問題ないわよね?」
「ま、まあね」
「それじゃ、乾杯」

そうか二人とももう二十歳か。ちょっとだけ羨ましく思った。

「善君、そういう事は二人っきりの時に言ってちょうだい」
「なんでだい?僕は何度でもいいますよ。晶ちゃんは確かに僕を愛してる」
「ええ、そうよ。善君はどうなの?」
「僕も何度も言ってるじゃないか。残さず言うよ。僕の中身は晶ちゃんへの愛であふれてる」

酒井君が言うと皆がおお~とどよめく。

「分かったわ……分かったから今日はこの辺にしとかない」
「晶ちゃん帰ったら……しようね」
「本当に、嬉しいわ。今の言葉録音したからね」

志水さんはそう言って隠し持っていたボイスレコーダーを手にする。
いつも持っているんだろうか?
すると酒井君は志水さんの手にもつボイスレコーダーを奪おうとしてるのかと思ったら、どうやら違うみたいだ。志水さんの両肩を掴みその場に押し倒す。君ってそういうキャラだっけ?

「ちょっと!ここじゃだめ……」

周りの目を気にする志水さん。だけど酒井君はそんなことお構いなく、志水さんにキスをする、軽い方ではなく。長く甘い口づけを交わす。

「普段はしてくれないくせに……こういうときだけ……!?」

志水さんが驚いたのは酒井君が志水さんの服の中に手を入れ胸を掴んだから。
息を飲んで見守る一同。って見とれてる場合じゃないな。こんなのに見とれてたら……。

ぽかっ

ほらね。

「冬夜君見てないで志水さん助けてあげないと!」

愛莉に言われるまでもなく立ち上がる僕と渡辺君。

「今夜はこのくらいでお開きにしておこうか。そら!酒井行くぞ!」
「離せ!!僕は晶ちゃんと……!!」
「冬夜手伝ってくれ。そっちもってくれないか?」
「分かった」

僕と渡辺君は二人がかりで酒井君を志水さんから引きはがし両肩を持ち引きずりながら部屋を出た。

「遠坂さん、よかったら。このあと二人で……」
「愛莉。ちょっとだけ片付けよう。簡単にでいいから」
「そうだね」

部屋に残った女子は片づけを始める。
缶とペットボトル、お菓子の袋類を集めて袋に分別する。

「遠坂さん片づけが終わったら二人きりで話をしないかい?」

尚もしつこい西松君。
そんな西松君を意にも解さない愛莉と指原さん。

「愛莉、こんなもんで良いし私達も部屋にもどろうか?」
「うん」
「じゃあ、西松君おやすみなさい」
「……なかなか手ごわいですね。その方が落としがいがあるというもの」

そう言うと西松君も部屋に戻った。

(2)

皆それぞれ盛り上がってる中。気になるところがあった。
部屋の隅でぽつんと座ってる花山さん。
僕は銀色の缶を二つ両手に持つと花山さんに声をかけていた。

「お疲れ様、隣に座ってもいいかな?」
「いつもは平気で座ってくるのに今日に限ってなぜ断り入れるわけ?」
「いつも片桐君たちと話があるから不可抗力だよ。今日はそれらしい理由もないからね」
「それって皮肉?」
「そんなつもりじゃないよ」
「まあ、いいわ。好きにしなさい」

花山さんはそう言って僕が差し出した銀色の缶を受け取る。
僕は適度に距離を起き彼女の隣に座るとプルタブを開ける。カシュッといい音がする。その中身を一口飲むと声がでる。

「あんたいける口?」

花山さんはそう聞いてくると僕は「大丈夫だよ」と答えた。
彼女は立ち上がり、飲み物をとってくると床の上に並べる。

「声をかけてきたのはそっちだからね、後で文句言っても聞かないよ」

そういって花山さんも飲みだす。
声をかけたのは一人寂しそうだったからという理由で特に話題も無かったから沈黙が流れた。
別に理由はないんだけどなぜか気まずい空気だと感じた僕は何か話す事が無いかと模索する。

「そういえば、片桐君にキスしたそうだね」

一番触れちゃいけない話題だったかもしれないと後悔したが、彼女は眉をぴくっと動かすだけで特に何も言わなかった。

「まあね……、あんたの方はどうなの?」
「僕の方?」
「あんた木下さんの事好きなんでしょ?」
「……好きかどうかもまだ分からないんです」
「はあ?自分の気持ちも分からないわけ?ばっかじゃないの?」

そうだね、自分の気持ちがわからないなんて頭悪いよね。僕は「ハハハ」と渇いた笑いしか答えられなかった。

「そんなの言い訳だよ。好きじゃないって言い訳して自分の気持ちを覆い隠したまま平穏無事に生きようとしてるか、それとも告白して失敗した時の言い訳にしてるか。あんたにそもそも告白する勇気なんてないか?自分の気持ちを認める勇気もないんだもんね」

花山さんの意見をただ聞いているだけだった。そうか言い逃れしてるだけなのか。今のモヤモヤしてる自分にようやく説明がついた。それにしても僕の前だと本当に素の自分を曝け出すんだね。

「……私にも言えるのかもしれない。冬夜君の事好きじゃない。これはゲームなんだって言い聞かせて振られるたびに言い訳してる。逃げてるだけなのかもしれない」

それも本音なの?やけに口が軽いのは飲み物のせい?

「何か言いなさいよ。私一人にだけ喋らせるつもり?」
「あ、ごめん。花山さんの言う通りだなと思って。僕は逃げてるだけなんだなって……。あと、本当に僕には愛想振り向かないんだなって」

最後の言葉は余計だったのかもしれない。

「そうね、あんたにだけは本音で話出来てる……」

そう言ってそっぽを向いてしまった。怒らせちゃったのかな?

「今だよ……」
「え?」

僕は聞き返した?

「今みたいな状態の女性なら口説き落としやすいかもしれないよ」

ゲームの事か……。

「そんな理由で人の感情をどうこうするって良くないと思うから」
「それって私の事批判してるわけ?」
「あ、いや。そういうわけじゃないけど……」
「けど何よ?何が言いたいの!はっきり言いなさい」

本当に素の自分を曝け出しているように見えるのは飲み物のせい?

「花山さんの事は凄いと思うよ。傍から見てたら勝ち目のない戦いに勇敢に立ち向かう戦士って感じで凛々しく気高いきがする」
「褒めたって何もでないよ、それとも私を落とす気になった?」
「そんなことないよ。そんな恐れ多い事できるはずがない」

なんたってお姫様なんだから。

「さっきから自分は傍観者だって主張してるように見えるけどあんたも賭けの対象になってること忘れてない?」
「え?」
「私があなたに恋をしたら私の負け。って条件覚えてる?」
「でも渡辺班の人達は勝ち負けの為に人の感情をコントロールするような人達には見えないから」

迷ったら背中を押す。悩んでいたら適当な人を探してきてくっつけようとするグループ。不思議な縁結びの力のあるグループ。

「さっき私のこと冬夜君とキスした凄い人って言ったよね?」
「うん」
「それ大きな間違いだから、キスしたあと思いっきり頬を叩かれた」
「え?」

片桐君が女性に手をあげたの?そんな人には見えないけど。

「叩かれた瞬間ハッとした。私なにやってんだろ?何ムキになってんだろ?って……」
「勢いでやってってわけ?」
「わからない、いつもの悪戯心でやったつもりだったけど、初めての反応だったから」

自分との接触を拒絶されることすら初めてなのだろう。
その時初めて気がついた。彼女はもうすでにその感情を抱いてるんだと。でもそれを言ったら自分の負けを認めてしまいそうで言えずにいる。
彼女風に言うなら「言い訳にして逃げてる」んだろう。僕に言えることはたった一言。

「頑張りなよ」
「あんたに言われるまでも無いわよ。あんたこそ頑張りなさいよ。何も言わずに負けて逃げてこられたってお断りなんだからね!」
「ありがとう」
「ふーっ!すっきりした!なんかもやもやしてたんだよね!今日は飲んで忘れよう!付き合いなさいよ、あんたも。私と飲めるなんて光栄に思いなさい」
「わかってます。お姫様」
「……あんたに言われても嫌味にしか聞こえないんだけど」

そう言いながらも飲み物のせいかもしれないけど彼女の頬は真っ赤に染まっていた。
そんな時だった。渡辺君は「今日はここまでにしようか」という。
見ると酒井君が志水さんを押し倒して大変なことになってる。

「残念だけどまたの機会に」
「そうね」

そう言って彼女は飲みかけのドリンクを手に部屋に戻って行った。
僕は女性陣の片づけを手伝う。
すると音無さんが、僕に声をかける。

「花山と何話してたんだ?」
「え?」
「とぼけるなよ、ずっと二人で話ししてただろ?」

音無さんがそう言うと傍で片づけていた海未ちゃんが僕を見る。

「竹本君花山さんの事が好きなの?」
「ち、ちがうよ。ちょっと愚痴を聞いてただけで」
「愚痴?」
「う、うん。詳しくは言えないけど」
「まあ竹本が二股かけられるほど器用な奴とは思ってないけどな」

音無さんがそう言って片づけにもどる。

「二股?竹本君誰か好きな人いるの?」

海未ちゃんが聞いてきた。

「いるよ……」
「ええ、誰誰?」

海未ちゃんは興味深々だ。まさかここで「君だよ」とはいえず……。

「内緒」とだけ答えた。

「ええ~」
「木下さんちょっとそれ持ってきて」
「は~い」

軽い足取りで遠坂さんの元へ向かう彼女を微笑ましく眺めていた。

(3)

このグループに入った時から感じていた違和感。
それは、瑛大君と誠君以外からの目線を誰からも受けないという事。
無視されてるわけじゃない。ただ、注目を浴びないと言うだけ。
その理由は分かってる。皆が彼女持ちだという事、そしてその彼女が皆綺麗だという事、見た目は関係ないのかもしれないけど。だってずっと続いてきた仲らしいから。
そんな中敵意をむき出しにされている女性がいる。

花山咲
このグループの誰かのカップルを崩したら花山さんの勝ちというちょっと無謀にも思える勝負を挑んでいる人物。
無謀と平然と言ってのけるこのグループの結束は固かった。
縁結びのグループと言われているこのグループの特徴の一つだった。

馬鹿げてる。

そう聞いた時私はドキッとした。
なぜなら私も密かに企んでいたから。
皆を虜にしてやろうとも考えていた。
その考えは一瞬で消えた。

皆自信があるんだ。だから誰も何も言わない。
その自信はどこにあるんだろ?
是非にとも聞いてみたい。
私の部屋には江口さん、志水さん、一ノ瀬さん、大島さん、久世さんの5人がいる。
布団を広げそれぞれの布団に入ると話を始めた。
久世さんは寝ていた。

「さっきは驚いたわね。晶ちゃん」
「彼酒癖が悪いみたいね。でも言質はとれたし良しとするわ」
「酔ってる時の言葉が証拠になるの?」
「彼の声には変わりないもの。でもできる事なら素面の時に言って欲しいわね」

そう言って江口さんと志水さんは笑っている。
志水さんは去年の地元大のミスコンでグランプリをとった人だ。とても美しい女性。
江口さんも一時は親衛隊がいたほど。
今はある事件が発端でほとんどいないらしい。
そんな二人なら自信もあるのだろう。

「あのう、皆さんに聞きたい事があるんですけど」
「何?咲良さん?」
「例のゲームについてなんですけど……ぶっちゃけて言うと皆どうしてそこまで相手を信頼できるんですか?とられちゃうかもと不安になったことはないんですか?」
「ないわね」
「ないわよ」

江口さんと志水さんは口を揃えて言う。この二人は分かる。残りの二人は……。

「心配はしてるけど、信じるしかないですよね」と一ノ瀬さん。
「『私の前でだけ素の自分でいられる』という言葉を信じてるから」と大島さん。

「そう言えばあなたも私立大で取り巻きに囲まれてるんだっけ?」
「ええ~そうですけど」
「桐谷君を誘惑して入ったんだったかしら?」
「誘惑っていうか普通にお願いしただけだけど」
「どうして入ろうと思ったの?」
「最初は花山さんと同じ気持ちでした。でもそれは無理だと分かったので今は考えてないです」

皆の絆を見ていたらとても入り込めるものじゃないと痛感したから。

「そう言えばあなた何もアクションしてないわね」
「今はどう思ってるの?」
「そうですね、その境地に至る経緯、そしてその境地に立った気分に興味がありますね」

そこらにいる人達じゃない私だけの特別な人。

「つまり早い話が彼氏が欲しいってわけね」

まあ、そうなるのかな?

「それもあなただけのとっておきが」
「そうなりますね」
「そういう話なら、亜依ちゃんに聞くのが早いかもしれない」

そう言ってスマホを操作する江口さん。
ほどなくして指原さんと音無さん、新名さんの3人が入ってきた。

「他の3人は?」
「寝ちゃったわ、で……咲良さんだっけ?彼氏が欲しいって言ってたの」

指原さんがそう言うので頷いた。

「まあ、瑛大にずっと付きまとわれるのも面倒だし手助けしてやるかな」
「ごめんなさい」
「亜依ちゃん、この子は花山さんと違って少しは頭が良いみたいよ……」

江口さんが指原さんにさっきの話を説明する。

「なるほどね、確かに咲よりかは出来る子みたい……そうね、竹本君はダメとして西松もだめだよね」
「となるとまた補充か?」
「そうなるわね……大丈夫!何とかしてあげる」
「ありがとうございます。瑛大君の事本当にごめんなさい」
「物分かりのいい子嫌いじゃないのよ」

江口さんがそう言って笑う。

「咲良。なんかこうタイプとか要望はないのか?」

音無さんが質問する。
そこなのよね、問題は……。

「とりあえず、取り巻きにないタイプかな?」
「見た目に惑わされないタイプか、結構難しいわね」

指原さんが頭を悩ませる。
やっぱり無理なのかな?

「大丈夫、渡辺君にも相談して探してみるから」

そう言って指原さんはスマホを操作しはじめる。

「誠にも頼んでみるかな?あいつもそこそこ人脈あるみたいだし」

音無さんもスマホを操作し始める。私立大で見つけるのは難しいと思うけど。

「まあ、私たちに任せてれば大丈夫だから!」

縁結びの不思議なグループ。任せてみるのもいいかもしれない。

「待っていなさいな。あなたが興味を示した世界……とても素敵なものよ」

そう言って私の肩をたたく江口さん。

「辛いこともありますけどね」

新名さんが沈んだ声で話す。

「未来もいつまでも落ち込んでるんじゃねーよ。なんなら未来にも男探してやるか?」

音無さんがそう言う。

「いや、納得いくまで彼を待ってみます」

新名さんの決意も固いものだった。
そこまでしてに入れたいもの……益々興味が湧く。
その日が来るのを楽しみにしていた。

(4)

「困ったな……」
「困りましたね」

俺は誠君と二人でスマホを眺めて頭を悩ませていた。

「咲良に丁度いい男を探してくれ」

そんなメッセージを指原さんと音無さんからそれぞれ受けていた。

「言っちゃなんだけど、神崎さんとつり合い取れる男でしかも純真な子なんて冬夜もう一人連れてこいって言ってるようなもんですよ」

誠君はそう言って頭を抱える。

「私立大では無理ですね、彼女の知名度が高過ぎる」
「そうだろうな、だとすると俺がなんとかするしかないか」
「もしよかったら俺も協力しますよ?」

真鍋君から提案があった。

「俺も結構色々な知合いいるんで聞いてみます。その代わりと言っちゃなんですけど……」

交換条件か?

「なんだ、言ってくれ」

「新名さんに男紹介してやってくれませんか?新しい恋をさせてやりたくて……」
「俺たちは構わんのだが……」
「新名さんとの条件もあるしなあ」
「条件?」
「あっ!」

誠君が慌てて口を押える。もう遅い。

「構わんさ、もう過ぎた話だ。今なら言っても構わんだろ」

俺がそう言うと、新名さんを入れる条件を誠君が説明した。



「竹本が、海未ちゃんをね……薄々気づいてはいましたけど」
「本人は何のアクションも起こす気が無いらしいけどな」

そう言って3人は静かに寝息をたてる竹本君を見る。

「まあ、明日調整してみるさ」

そう言いつつ俺はスマホを操作する。

「それにしても驚きましたよ。まさか新名さんから告られるなんて」

真鍋君には意外だったようだ。一つの事に夢中になると周りが見えなくなるタイプなんだろうな。
単純に興味がなかったのかもしれないが。

「無意識のうちに真鍋君が避けていたのかもしれないな。純真というのは時にして他人に対して重荷になることもある。君がバイト先の社長とやらに向けているそれと同じように」
「女性の恋は上書きだって聞いたんですけどね。どうしたら彼女の想いをリセットできるんでしょうかね」
「時間に頼るしかないのかもしれないな。さてと、俺達も寝るとするか。3人で喋っていても仕方ないし……」
「そうですね」

そう言って俺たちは眠る。
そうして俺たちの波乱の合宿一日目は終わった。
春ももうすぐ終わろうとしている。
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