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3rdSEASON
移りゆく季節の中で
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(1)
11月の夜の事。
夜霧の深い深夜の事。
「愛莉起きて」
「ふぇ……」
時計は0時を指していた。
「こんな時間にどうしたの?」
「ちょっと出かけるから用意して」
「どこに行くの?」
「山」
「また車さんに無理させるの?」
「その調整をね……」
何でも熊本から4WDのターボ車のワンメイクチームがやってくるんだとか。
次から次へとよく来るね。
で、その対策をしようってわけなんだけど。愛莉に隠れてこそこそしないって約束の為、愛莉には悪いけどこんな時間に起きてもらった。
愛莉はのろのろと着替えると「準備出来たよ~」という。
愛莉を連れて山を登って行った。
山にはすでに、竹本君たちが待機していた。
粗方のセッティングは昼間のうちに済ませてある。
微調整を竹本君を助手席に乗せて走りながらする。
数本走っただけで、微調整は終わった、
「大丈夫か?その車で、俺の車使った方がいいんじゃないか?」
中島君は自分の車を指す。
だけど僕は断った。
「大丈夫だよ、エンジンはそんなに変わらないし」
機構もほぼ変わらない。細かい部分は竹本君に修正してもらった。
今日のところはこれで帰った。
家に帰るとテレビをつける。当然何もやっていない時間帯だ。ゲーム機の電源を入れる。
愛莉は着替えてベッドに入ると眠りについた。
この時間に寝ると朝起きれないのが分かっていたので時間つぶしをしていた。
時間はあっという間に過ぎて朝になる。
アラームの音が鳴ると愛莉が起きる。
「うぅ……眠い」
「ごめんね」
「いいの、冬夜君は約束守ってくれてるんだから」
そう言ってふらふらと部屋を出る。
僕もゲームを中断して着替える。
眠気が凄い。
洗面所で顔を洗おうとすると愛莉と遭遇する。
「冬夜君も眠いの?」
「まあね」
「少しでも寝たらよかったのに」
「朝愛莉を困らせたくなかったから」
「困ってなんかないもん」
朝食をとると部屋に戻る。
テレビを眺めていると愛莉がコーヒーを持ってきてくれた。
それを飲むと少しだけ目がさえた気がした。
「冬夜君今日は時間あるし少し寝た方がいいんじゃない?私起こしてあげるから」
「愛莉こそ寝ときなよ。僕は授業中にでも寝るよ」
「それダメじゃない」
そう言えば佐倉さんが動画を送ってくるんだけど内容が変わってきた。
今まではNBAの有名選手や国内の同年代の選手の動画が多かったんだけど、僕がでた試合の動画を送ってくるようになった。
撮影してたんだな。愛莉も気づかなかったらしい。
「先輩やっぱりやればできるんですよ。やりましょうよ」
そう言って、勧誘してくるが、今はそんな気分じゃない。
やりたいときにやりたい事をやるのが一番。
今は走り屋さんに頼まれた走り屋チームの対応策に必死だ。
試しに檜山先輩の車でダウンヒルを試みてみた。
自分の車とは圧倒的に差がある。
いつものやり方で勝てるだろうか?
そんな不安はあった。
「そろそろ時間だよ~」
愛莉がそう言うと大学へ向かった。
負けられない理由は一つある。
相手は自分たちが勝つと負けた側のステッカーを切り刻んでさかさまに貼り、キルマークの代わりにするんだとか。
僕が負けたら走り屋さんの面目が立たない。少なからずプレッシャーを感じていた。
やはりプライドを捨てて車を変えた方がいいのか?
「そんなに手ごわい相手なの?」
授業中愛莉が聞いてきた。
「実際にやったことないけど、車の性能差は感じるよ」
「冬夜君力み過ぎだよ?頼まれてやるだけなんだからそんなに重く感じることないよ」
「でも……」
「今回も私助手席に乗るからね。冬夜君一人だと無茶しそうだし」
「分かってるよ」
2限目を終えると竹本君達を交えてミーティング。
「やれるだけはやりました。あとは最終調整だけです。タイヤのコンディションもよくなってます」
「トーヤ本当にお前の車で大丈夫なのか?私の車貸してもいいんだぞ?」
「多分大丈夫だと思う。やってみないとわからないけど」
「片桐先輩!」
佐倉さんがやってきた。
「今日は多いですねどうしたんですか?」
「ミーティングしてたんですよ」
竹本君が答えた。
「ミーティング?何の?」
竹本君が事情を説明する。
「そんな危ない事してたんですか?駄目ですよ絶対!」
「冬夜君の運転は危なくないから大丈夫なんだよ」
「事故は自分が起こすだけじゃない、巻き込まれることだってあるんですよ」
「冬夜君はそれも予測して運転するから平気なの」
「……応援に行きます。いつやるんですか?」
「今度の土曜日」
「頑張ってくださいね。けど無理はしないでください」
そして、いつもの通り自分の話題に切り替える。
「片桐先輩はインサイドとアウトサイドどっちが好きなんですか?」
「どっちかっていうとアウトサイドかな」
理由は特にない。どこから打っても入れる自信はあったから、態々インに入ってもみくちゃになるのが嫌なだけ。
どこから打っても入るって自信はどこから?
だって何となく軌道がわかるだろ?
「となるとやっぱりあの選手が目標ですよね。あの選手も当時は凄くて今でもバスケの神様と呼ばれてるくらいだし」
あの人そう言えばポジションSGだっけ?
「でも先輩のプレイスタイルあの人そっくりですよ。まあ、先輩はあの試合見てた限りだと何でもこなしそうだけど」
「身長ないし体格も良くないからセンターやPFは無理だよ」
「まあ、先輩は無理にインサイドに入る必要ないですよね」
そんな感じで佐倉さんの相手をしてやりながらもひっそりと愛莉の手を握っている。
こうしているだけで愛莉の心は落ち着いているから。
「また今度年末に試合やるみたいですよ」
「年末はうち忙しいから無理」
「どうしてですか?」
「同棲の練習があるから」
同棲の練習というのはどうせ両親とも実家に帰って親がいないから、二人で家事とかを全てこなさなきゃならない。
愛莉に任せっきりで自分はバスケとはさすがにいかない。
「そうですか……残念です」
「それより、佐倉さんは今月末の紅葉狩り行かないの?」
「私が言っても邪魔みたいだし」
「邪魔って事は無いと思うよ」
そう言って皆の顔を見る、特に問題は……なさそうだけど。
「じゃあ、片桐先輩がいくなら行きます」
「うん、それがいいよ」
「じゃあ、私用が済んだしそろそろ行きますね」
「じゃあ、また明日」
「はい、また明日」
そう言って佐倉さんは店を出ていった。
「いいんですか?片桐君。あんなこと言って。片桐君はその気がないのに期待をさせてるみたいですよ」
「何の話?」
「だから佐倉さんの話です!」
一ノ瀬さんは一段声をあげた。
「遠坂さんに悪いと思わないんですか?」
愛莉の顔を見る、愛莉は大丈夫と言わんばかりにうなずいていた。
「愛莉なら大丈夫だよ」
「その信頼の上に胡坐をかくような態度、見過せないわね」
志水さんがこっちを睨む。
「そんな事無いよ、愛莉の事もちゃんと考えてある」
僕が反論すると愛莉も「大丈夫だよ」という。
「冬夜君が浮気なんてするはずがないもん。私の事いつも考えていてくれてる。昨夜だって……」
愛莉が昨夜の一件を話す。
「それって片桐君が愛莉に付き合わせているだけじゃない」
「そう約束したのは私だもん。冬夜君約束守ってくれてるだけだよ……」
「愛莉。信じるのと甘やかすのは違うのよ」
「大丈夫だよ……冬夜君と約束したもん」
自信なさげな愛莉だったが、自信をつけさせてやるのは僕の役割なんろうな。
愛莉の手を握る手に力が入っていた。
(2)
椎名さんは仕事でごない。
ほっとした?
じゃあ、なぜ私は今悲しいの?
家の手伝いをしながら考える。
ふと想像する。
真鍋君と原田さんが仲良く歩く中一人ぽつんと残される私。
そっか、独りぼっちが寂しいんだ。
そんな寂しさを椎名さんは取り払ってくれた。
その椎名さんがいない。
手伝いが終わって部屋に戻る。
時計は22時を回っていた。
もう仕事終わってるかな?
ふと椎名さんに電話していた。
どうして真鍋君にしなかったんだろう?
3回目のコール音で彼はでた。
「はい、椎名です」
仕事モードの椎名さんの口調?
いつもと何か違う。
「あ、新名です」
「ああ、新名さん?ちょっとまって」
部屋の外に出る音が聞こえる。
まだ仕事中だった。
「あの、お仕事中でしたか?」
「まあね、ちょっと立て込んでて」
「じゃあ、また明日にします」
「いいよ、どうせ今日も泊まり込みだ。慌てることはない」
椎名さんはそう言って笑っていた。
今日も……?
「ずっと泊まり込みなんですか?」
「まあね、いろいろと雑用が溜まっていてね」
「あの、やっぱり今度にします」
「大丈夫だよ、言ったろ?いつでもかけておいでって」
「でも……」
「で、何があったの?」
「特に何もないです。椎名さんの声が聞きたかっただけ」
「……」
本当にただそれだけだった。
「じゃあ、また電話します。今日はすいませんでした」
「真鍋君たちによろしくね」
「はい、椎名さんも気をつけて」
電話は切れた。
スマホを握り締めてたまま私は泣いていた。
どうして泣いているんだろう?
寂しいから泣いているんだよ。
どうして寂しいの?
その答えを私は知りたくなかった。
(3)
突然の新名さんからの電話。
声が聞きたかった。
何かあったのだろうか?
真鍋君と何があった?
それとも単に寂しかっただけか?
いずれにせよ、新名さんは俺を求めている。
俺は何しなくていい。
勝手に新名さんが俺を求めてくるはずだ。
弱り切ったところにちょこっと優しい声をかけてやるだけ。
それですべては決まる。
俺は外に出てタバコを吸った。
なのに何でこんなに落ち着かない。
今の彼女なら誰でも落とせる。
俺である必要すらない。
だから焦ってる?
仕事は順調にきている。
客先はクリスマスまでの竣工を望んでいる。
否応なくクリスマスには帰れる。
あと2か月もない、待っていればいいんだ。
真鍋君を見ていると昔の自分を見ているようで恥ずかしくなる。
青春時代の記憶。
憧れは俺だと言った。
こそばゆい。
真鍋君は今だ行動に移せずにいる。
思い切っていけばいい。
後からでは遅いんだ。
時が来れば行くと言っていた。
じゃあ、その時はいつなんだ。
今だろ!
そう言って背中を押してやりたい事もある。
だけど他人の色恋沙汰に気を回してる暇はない。
自分の色恋沙汰すらままならないのに。
色恋沙汰?
俺は恋をしているのか?
……しているのは認めよう。
大人には大人の恋愛の仕方がある。
帰ったら、新名さんに何かしてやろう。
幾らでも泣きたかったら聞いてあげよう。
だから……。
頼むから俺以外の男の前で泣くなよ……
そう願っていた。
(4)
「俺達の条件は一つ、そこの青いDAA-RU4と勝負させてもらうこと。その後は自由だ。満足いくまで戦ってやる……もし負けたらステッカーをもらうからな」
白いバンダナを巻いた男がそう言った。
「分かった……」
万が一の為に檜山先輩の車も調整してある。
僕が前に出るとバンダナの男はこう言う。
「腕はいいようだな。だが車が話にならない。どんなに良い腕をしていても車がダメだと無駄だという事を俺が教えてやる。勝負というよりは指導だな」
どうしてこの手の人は自信過剰なんだろうね。
「ところで助手席に座ってるのは誰だ?」
男は助手席に座っている愛莉に気がついたらしい。
「彼女だけど?」
男は鼻で笑う。
「舐められたものだな。彼女を載せてドライブ気分とはな」
この男には負けたくない。
僕は何も言わず運転席に乗り込む。
白いCZ4Aが相手のようだ。
「冬夜君大丈夫?」
愛莉が心配そうに僕を見る。
「愛莉しっかりつかまってろよ」
お前に生命を吹き込んでやる。
カウントが開始される。
「GO!」
アクセルを思い切り踏みつける。
車は急発進する。
相手の車は後ろから追う形になった。
ちゃんと加速してない?
今までとは違う展開に少々困惑したが、どうやら舐められてるらしいと悟るのにさほど時間は必要なかった。
その油断が命取りになるとはつゆ知らず。
最初のコーナーに入る。
コーナーではこっちの方が若干早い。
コーナーで早いなら勝ち目はある。
しばらく。膠着状態が続く。
ストレートではぴったしくっついて来てコーナーで引き離すという状況。
それも長くは続かない。
この先はキャッツアイが埋め込まれてる区間だ。
コーナーで車線を変えることは出来ない。
イン側になれば相手はスピードを落とす。
ライン取りに自由性が無いため低速コーナーと化す。
ここが勝負どころだ。
お前に魂があるのなら…応えろ
高速で突っ込んで思いっきりブレーキを踏んでドリフト状態に入る。
粘れ!!
タイヤのコンディションが良いと言ったのは本当のようだ。
タイヤはセンターラインを割ることなくコーナーを脱出する。
連続ヘアピンが続く。
イン側に入れば差が開きアウト側でも路肩ギリギリのところで保ちながら弾丸のように疾駆する。
キャッツアイの区間が終わる頃にはある程度の差を持っていたが。ストレートで一気に追いつかれる。
しかしコーナーはこっちの方が速い。
加えて相手は、対向車線に出ようとする意志を感じなく。同じ流れが続く。
ストレートも相手の方が若干有利だったというだけで、ターボではないものの、VTECの恩恵があるのかコーナーでつけた差をひっくり返すまでは無かった。
勝負は最初の一本で決まった。
「信じられねえ、弘平が負けるなんて……」
そんな言葉が相手チームがから聞こえた。
「コースに恵まれたな……」
白いバンダナの男はいう。
その事を承知で挑んできたのではないのか?
言い訳にしてはみっともなくないか?
「そんなこと承知で挑んでくるものだと思ったけど?負け惜しみにもなってないよ」
男は何も言い返さなかった。
そんな男を後目に僕は皆のもとに帰った。
「お疲れ様」
走り屋の先輩が肩を叩く。
「じゃ、皆始めようか」
渡辺班の身にきてくれていた皆が手にした炭酸飲料を振る。
そしてプシュッとプルタブを空ければ中の液体が飛び散る。
皆でかけあう。
「先輩凄いです!」
佐倉さんが褒める。
その間竹本君がセッティングを元に戻してくれてる。
「うちのチームに入っちまえよ」
走り屋の先輩がそう言うと首を振った。
「ダメですよ!先輩はバスケするんだから」
いや、まだ決めてないんだけど……。
そんな僕を愛莉は遠くから見ていた。
(5)
「ねえ、冬夜君」
家に帰って風呂を浴びてきた僕に愛莉は話しかけた。
「こんな事私が言っても良いのか分からないけど……」
「どうした?」
「冬夜君バスケやったらどうかな?」
え?
「どうしたの突然……」
「車を走らせてる時もそうだけど、冬夜君の活き活きしてる顔が見たい。もちろん渡辺班の活動をするなとは言わない。でも冬夜君の笑ってる顔素敵だから」
「でも、愛莉が……」
「私なら平気だよ、練習見てるから。試合も応援に行くよ」
愛莉がすすめるとは珍しいな。
「どういう心境の変化?本音で話そう?」
「うん、冬夜君と一緒にいたい。冬夜君はその要求に応えようとしてくれてる。私も冬夜君に笑顔でいて欲しい」
「だったら、愛莉と一緒にいるだけで……」
「ずっと冬夜君と一緒だと思ってた。でも冬夜君が社会に出たら離れることだってある。いや、離れてしまう。なら今のうちに慣れておきたい。寂しいとか言わないで」
「愛莉は平気なの?」
「平気じゃなきゃいけないの。冬夜君の事信じてるって言った以上はそのくらい慣れなきゃ」
愛莉の決心は固いようだ。
「愛莉がそこまで言うならやるよ、練習も毎回出なくて良いって言ってたし」
「うん」
愛莉はバッグから一枚の紙きれを取り出した。
「はい、これ」
それは入部届だった。準備していたんだな。それに書き込む僕。
「本当にいいんだな」
愛莉は僕に抱き着く。
「いつもいっしょだよ」
愛莉を優しく抱き返す
「わかってるよ」
秋の月が綺麗な夜だった。
11月の夜の事。
夜霧の深い深夜の事。
「愛莉起きて」
「ふぇ……」
時計は0時を指していた。
「こんな時間にどうしたの?」
「ちょっと出かけるから用意して」
「どこに行くの?」
「山」
「また車さんに無理させるの?」
「その調整をね……」
何でも熊本から4WDのターボ車のワンメイクチームがやってくるんだとか。
次から次へとよく来るね。
で、その対策をしようってわけなんだけど。愛莉に隠れてこそこそしないって約束の為、愛莉には悪いけどこんな時間に起きてもらった。
愛莉はのろのろと着替えると「準備出来たよ~」という。
愛莉を連れて山を登って行った。
山にはすでに、竹本君たちが待機していた。
粗方のセッティングは昼間のうちに済ませてある。
微調整を竹本君を助手席に乗せて走りながらする。
数本走っただけで、微調整は終わった、
「大丈夫か?その車で、俺の車使った方がいいんじゃないか?」
中島君は自分の車を指す。
だけど僕は断った。
「大丈夫だよ、エンジンはそんなに変わらないし」
機構もほぼ変わらない。細かい部分は竹本君に修正してもらった。
今日のところはこれで帰った。
家に帰るとテレビをつける。当然何もやっていない時間帯だ。ゲーム機の電源を入れる。
愛莉は着替えてベッドに入ると眠りについた。
この時間に寝ると朝起きれないのが分かっていたので時間つぶしをしていた。
時間はあっという間に過ぎて朝になる。
アラームの音が鳴ると愛莉が起きる。
「うぅ……眠い」
「ごめんね」
「いいの、冬夜君は約束守ってくれてるんだから」
そう言ってふらふらと部屋を出る。
僕もゲームを中断して着替える。
眠気が凄い。
洗面所で顔を洗おうとすると愛莉と遭遇する。
「冬夜君も眠いの?」
「まあね」
「少しでも寝たらよかったのに」
「朝愛莉を困らせたくなかったから」
「困ってなんかないもん」
朝食をとると部屋に戻る。
テレビを眺めていると愛莉がコーヒーを持ってきてくれた。
それを飲むと少しだけ目がさえた気がした。
「冬夜君今日は時間あるし少し寝た方がいいんじゃない?私起こしてあげるから」
「愛莉こそ寝ときなよ。僕は授業中にでも寝るよ」
「それダメじゃない」
そう言えば佐倉さんが動画を送ってくるんだけど内容が変わってきた。
今まではNBAの有名選手や国内の同年代の選手の動画が多かったんだけど、僕がでた試合の動画を送ってくるようになった。
撮影してたんだな。愛莉も気づかなかったらしい。
「先輩やっぱりやればできるんですよ。やりましょうよ」
そう言って、勧誘してくるが、今はそんな気分じゃない。
やりたいときにやりたい事をやるのが一番。
今は走り屋さんに頼まれた走り屋チームの対応策に必死だ。
試しに檜山先輩の車でダウンヒルを試みてみた。
自分の車とは圧倒的に差がある。
いつものやり方で勝てるだろうか?
そんな不安はあった。
「そろそろ時間だよ~」
愛莉がそう言うと大学へ向かった。
負けられない理由は一つある。
相手は自分たちが勝つと負けた側のステッカーを切り刻んでさかさまに貼り、キルマークの代わりにするんだとか。
僕が負けたら走り屋さんの面目が立たない。少なからずプレッシャーを感じていた。
やはりプライドを捨てて車を変えた方がいいのか?
「そんなに手ごわい相手なの?」
授業中愛莉が聞いてきた。
「実際にやったことないけど、車の性能差は感じるよ」
「冬夜君力み過ぎだよ?頼まれてやるだけなんだからそんなに重く感じることないよ」
「でも……」
「今回も私助手席に乗るからね。冬夜君一人だと無茶しそうだし」
「分かってるよ」
2限目を終えると竹本君達を交えてミーティング。
「やれるだけはやりました。あとは最終調整だけです。タイヤのコンディションもよくなってます」
「トーヤ本当にお前の車で大丈夫なのか?私の車貸してもいいんだぞ?」
「多分大丈夫だと思う。やってみないとわからないけど」
「片桐先輩!」
佐倉さんがやってきた。
「今日は多いですねどうしたんですか?」
「ミーティングしてたんですよ」
竹本君が答えた。
「ミーティング?何の?」
竹本君が事情を説明する。
「そんな危ない事してたんですか?駄目ですよ絶対!」
「冬夜君の運転は危なくないから大丈夫なんだよ」
「事故は自分が起こすだけじゃない、巻き込まれることだってあるんですよ」
「冬夜君はそれも予測して運転するから平気なの」
「……応援に行きます。いつやるんですか?」
「今度の土曜日」
「頑張ってくださいね。けど無理はしないでください」
そして、いつもの通り自分の話題に切り替える。
「片桐先輩はインサイドとアウトサイドどっちが好きなんですか?」
「どっちかっていうとアウトサイドかな」
理由は特にない。どこから打っても入れる自信はあったから、態々インに入ってもみくちゃになるのが嫌なだけ。
どこから打っても入るって自信はどこから?
だって何となく軌道がわかるだろ?
「となるとやっぱりあの選手が目標ですよね。あの選手も当時は凄くて今でもバスケの神様と呼ばれてるくらいだし」
あの人そう言えばポジションSGだっけ?
「でも先輩のプレイスタイルあの人そっくりですよ。まあ、先輩はあの試合見てた限りだと何でもこなしそうだけど」
「身長ないし体格も良くないからセンターやPFは無理だよ」
「まあ、先輩は無理にインサイドに入る必要ないですよね」
そんな感じで佐倉さんの相手をしてやりながらもひっそりと愛莉の手を握っている。
こうしているだけで愛莉の心は落ち着いているから。
「また今度年末に試合やるみたいですよ」
「年末はうち忙しいから無理」
「どうしてですか?」
「同棲の練習があるから」
同棲の練習というのはどうせ両親とも実家に帰って親がいないから、二人で家事とかを全てこなさなきゃならない。
愛莉に任せっきりで自分はバスケとはさすがにいかない。
「そうですか……残念です」
「それより、佐倉さんは今月末の紅葉狩り行かないの?」
「私が言っても邪魔みたいだし」
「邪魔って事は無いと思うよ」
そう言って皆の顔を見る、特に問題は……なさそうだけど。
「じゃあ、片桐先輩がいくなら行きます」
「うん、それがいいよ」
「じゃあ、私用が済んだしそろそろ行きますね」
「じゃあ、また明日」
「はい、また明日」
そう言って佐倉さんは店を出ていった。
「いいんですか?片桐君。あんなこと言って。片桐君はその気がないのに期待をさせてるみたいですよ」
「何の話?」
「だから佐倉さんの話です!」
一ノ瀬さんは一段声をあげた。
「遠坂さんに悪いと思わないんですか?」
愛莉の顔を見る、愛莉は大丈夫と言わんばかりにうなずいていた。
「愛莉なら大丈夫だよ」
「その信頼の上に胡坐をかくような態度、見過せないわね」
志水さんがこっちを睨む。
「そんな事無いよ、愛莉の事もちゃんと考えてある」
僕が反論すると愛莉も「大丈夫だよ」という。
「冬夜君が浮気なんてするはずがないもん。私の事いつも考えていてくれてる。昨夜だって……」
愛莉が昨夜の一件を話す。
「それって片桐君が愛莉に付き合わせているだけじゃない」
「そう約束したのは私だもん。冬夜君約束守ってくれてるだけだよ……」
「愛莉。信じるのと甘やかすのは違うのよ」
「大丈夫だよ……冬夜君と約束したもん」
自信なさげな愛莉だったが、自信をつけさせてやるのは僕の役割なんろうな。
愛莉の手を握る手に力が入っていた。
(2)
椎名さんは仕事でごない。
ほっとした?
じゃあ、なぜ私は今悲しいの?
家の手伝いをしながら考える。
ふと想像する。
真鍋君と原田さんが仲良く歩く中一人ぽつんと残される私。
そっか、独りぼっちが寂しいんだ。
そんな寂しさを椎名さんは取り払ってくれた。
その椎名さんがいない。
手伝いが終わって部屋に戻る。
時計は22時を回っていた。
もう仕事終わってるかな?
ふと椎名さんに電話していた。
どうして真鍋君にしなかったんだろう?
3回目のコール音で彼はでた。
「はい、椎名です」
仕事モードの椎名さんの口調?
いつもと何か違う。
「あ、新名です」
「ああ、新名さん?ちょっとまって」
部屋の外に出る音が聞こえる。
まだ仕事中だった。
「あの、お仕事中でしたか?」
「まあね、ちょっと立て込んでて」
「じゃあ、また明日にします」
「いいよ、どうせ今日も泊まり込みだ。慌てることはない」
椎名さんはそう言って笑っていた。
今日も……?
「ずっと泊まり込みなんですか?」
「まあね、いろいろと雑用が溜まっていてね」
「あの、やっぱり今度にします」
「大丈夫だよ、言ったろ?いつでもかけておいでって」
「でも……」
「で、何があったの?」
「特に何もないです。椎名さんの声が聞きたかっただけ」
「……」
本当にただそれだけだった。
「じゃあ、また電話します。今日はすいませんでした」
「真鍋君たちによろしくね」
「はい、椎名さんも気をつけて」
電話は切れた。
スマホを握り締めてたまま私は泣いていた。
どうして泣いているんだろう?
寂しいから泣いているんだよ。
どうして寂しいの?
その答えを私は知りたくなかった。
(3)
突然の新名さんからの電話。
声が聞きたかった。
何かあったのだろうか?
真鍋君と何があった?
それとも単に寂しかっただけか?
いずれにせよ、新名さんは俺を求めている。
俺は何しなくていい。
勝手に新名さんが俺を求めてくるはずだ。
弱り切ったところにちょこっと優しい声をかけてやるだけ。
それですべては決まる。
俺は外に出てタバコを吸った。
なのに何でこんなに落ち着かない。
今の彼女なら誰でも落とせる。
俺である必要すらない。
だから焦ってる?
仕事は順調にきている。
客先はクリスマスまでの竣工を望んでいる。
否応なくクリスマスには帰れる。
あと2か月もない、待っていればいいんだ。
真鍋君を見ていると昔の自分を見ているようで恥ずかしくなる。
青春時代の記憶。
憧れは俺だと言った。
こそばゆい。
真鍋君は今だ行動に移せずにいる。
思い切っていけばいい。
後からでは遅いんだ。
時が来れば行くと言っていた。
じゃあ、その時はいつなんだ。
今だろ!
そう言って背中を押してやりたい事もある。
だけど他人の色恋沙汰に気を回してる暇はない。
自分の色恋沙汰すらままならないのに。
色恋沙汰?
俺は恋をしているのか?
……しているのは認めよう。
大人には大人の恋愛の仕方がある。
帰ったら、新名さんに何かしてやろう。
幾らでも泣きたかったら聞いてあげよう。
だから……。
頼むから俺以外の男の前で泣くなよ……
そう願っていた。
(4)
「俺達の条件は一つ、そこの青いDAA-RU4と勝負させてもらうこと。その後は自由だ。満足いくまで戦ってやる……もし負けたらステッカーをもらうからな」
白いバンダナを巻いた男がそう言った。
「分かった……」
万が一の為に檜山先輩の車も調整してある。
僕が前に出るとバンダナの男はこう言う。
「腕はいいようだな。だが車が話にならない。どんなに良い腕をしていても車がダメだと無駄だという事を俺が教えてやる。勝負というよりは指導だな」
どうしてこの手の人は自信過剰なんだろうね。
「ところで助手席に座ってるのは誰だ?」
男は助手席に座っている愛莉に気がついたらしい。
「彼女だけど?」
男は鼻で笑う。
「舐められたものだな。彼女を載せてドライブ気分とはな」
この男には負けたくない。
僕は何も言わず運転席に乗り込む。
白いCZ4Aが相手のようだ。
「冬夜君大丈夫?」
愛莉が心配そうに僕を見る。
「愛莉しっかりつかまってろよ」
お前に生命を吹き込んでやる。
カウントが開始される。
「GO!」
アクセルを思い切り踏みつける。
車は急発進する。
相手の車は後ろから追う形になった。
ちゃんと加速してない?
今までとは違う展開に少々困惑したが、どうやら舐められてるらしいと悟るのにさほど時間は必要なかった。
その油断が命取りになるとはつゆ知らず。
最初のコーナーに入る。
コーナーではこっちの方が若干早い。
コーナーで早いなら勝ち目はある。
しばらく。膠着状態が続く。
ストレートではぴったしくっついて来てコーナーで引き離すという状況。
それも長くは続かない。
この先はキャッツアイが埋め込まれてる区間だ。
コーナーで車線を変えることは出来ない。
イン側になれば相手はスピードを落とす。
ライン取りに自由性が無いため低速コーナーと化す。
ここが勝負どころだ。
お前に魂があるのなら…応えろ
高速で突っ込んで思いっきりブレーキを踏んでドリフト状態に入る。
粘れ!!
タイヤのコンディションが良いと言ったのは本当のようだ。
タイヤはセンターラインを割ることなくコーナーを脱出する。
連続ヘアピンが続く。
イン側に入れば差が開きアウト側でも路肩ギリギリのところで保ちながら弾丸のように疾駆する。
キャッツアイの区間が終わる頃にはある程度の差を持っていたが。ストレートで一気に追いつかれる。
しかしコーナーはこっちの方が速い。
加えて相手は、対向車線に出ようとする意志を感じなく。同じ流れが続く。
ストレートも相手の方が若干有利だったというだけで、ターボではないものの、VTECの恩恵があるのかコーナーでつけた差をひっくり返すまでは無かった。
勝負は最初の一本で決まった。
「信じられねえ、弘平が負けるなんて……」
そんな言葉が相手チームがから聞こえた。
「コースに恵まれたな……」
白いバンダナの男はいう。
その事を承知で挑んできたのではないのか?
言い訳にしてはみっともなくないか?
「そんなこと承知で挑んでくるものだと思ったけど?負け惜しみにもなってないよ」
男は何も言い返さなかった。
そんな男を後目に僕は皆のもとに帰った。
「お疲れ様」
走り屋の先輩が肩を叩く。
「じゃ、皆始めようか」
渡辺班の身にきてくれていた皆が手にした炭酸飲料を振る。
そしてプシュッとプルタブを空ければ中の液体が飛び散る。
皆でかけあう。
「先輩凄いです!」
佐倉さんが褒める。
その間竹本君がセッティングを元に戻してくれてる。
「うちのチームに入っちまえよ」
走り屋の先輩がそう言うと首を振った。
「ダメですよ!先輩はバスケするんだから」
いや、まだ決めてないんだけど……。
そんな僕を愛莉は遠くから見ていた。
(5)
「ねえ、冬夜君」
家に帰って風呂を浴びてきた僕に愛莉は話しかけた。
「こんな事私が言っても良いのか分からないけど……」
「どうした?」
「冬夜君バスケやったらどうかな?」
え?
「どうしたの突然……」
「車を走らせてる時もそうだけど、冬夜君の活き活きしてる顔が見たい。もちろん渡辺班の活動をするなとは言わない。でも冬夜君の笑ってる顔素敵だから」
「でも、愛莉が……」
「私なら平気だよ、練習見てるから。試合も応援に行くよ」
愛莉がすすめるとは珍しいな。
「どういう心境の変化?本音で話そう?」
「うん、冬夜君と一緒にいたい。冬夜君はその要求に応えようとしてくれてる。私も冬夜君に笑顔でいて欲しい」
「だったら、愛莉と一緒にいるだけで……」
「ずっと冬夜君と一緒だと思ってた。でも冬夜君が社会に出たら離れることだってある。いや、離れてしまう。なら今のうちに慣れておきたい。寂しいとか言わないで」
「愛莉は平気なの?」
「平気じゃなきゃいけないの。冬夜君の事信じてるって言った以上はそのくらい慣れなきゃ」
愛莉の決心は固いようだ。
「愛莉がそこまで言うならやるよ、練習も毎回出なくて良いって言ってたし」
「うん」
愛莉はバッグから一枚の紙きれを取り出した。
「はい、これ」
それは入部届だった。準備していたんだな。それに書き込む僕。
「本当にいいんだな」
愛莉は僕に抱き着く。
「いつもいっしょだよ」
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秋の月が綺麗な夜だった。
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