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3rdSEASON
これは夢じゃないってわかるから
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(1)
「愛莉起きて、朝だよ」
愛莉に優しく声をかけてやると「うぅ……」と唸りながら目を覚ます。
昨夜は遅かったからな、愛莉も眠いんだろうな。
愛莉も一人の人間なんだと実感する瞬間だった。
「眠いなら僕一人で行ってくるけど?」
愛莉に聞くと「30秒待って……」という。
しばらくすると「よしっ!」と言って目を開けて着替えを始める。
ゴムで髪を縛ると「行こっ」と言って家を出ると自転車に跨る。
僕は軽く屈伸して膝を伸ばしてアキレス腱を伸ばすと走り始める。
愛莉はその後を追う。
1時間くらい走ると家の前に着いて軽くストレッチして家に入る。
家に入ると愛莉はすぐさま朝食の準備に入る。
僕はシャワーで汗を流して仕度を済ませると朝食が出来上がっている。
その時間には親も起きてきていて、皆で「いただきます」といって朝食を済ませる。
朝食を済ませると愛莉は仕度をはじめその間に、部屋に帰って着替えをする。
PCでニュースを見ながらテレビをつけていると愛莉がマグカップをもって上がってくる。
PCを閉じて、テレビを見ていると母さんが呼んでいる。
手紙が届いてるらしい。
JBAからだ。
2月の代表合宿の招待状だ。
前もって電話を通じて受けているので特別驚くほどの事でもない。
ちょうどテストが終わり春休みが始まったあたりから始まるらしい。
「いよいよだね」
愛莉の方が緊張している。
場所は長野で行われるらしい。
3日間行われる。
思ったより短い期間なんだな。
手紙を仕舞うと愛莉にそろそろ時間だよというと愛莉はバッグを手に取り部屋を出る。
僕もバッグを手に取り部屋を出た。
授業が終わると青い鳥に向かう。
練習が始まるまでまだ時間があるから。
「そうですか、片桐君もとうとう代表入りですか」
酒井君がそういう。
「行くからにはちゃんと活躍してもらわないと困るわよ」と晶さんが言う。
「片桐君なら問題なくスタメン入りですよね」と一ノ瀬さんがいうけど……。
「そんな簡単なものでもないよ」と僕は笑う。
「まあ、頑張って来てくれ」と中島君と木元先輩が言う。
「愛莉寂しいね」と花菜さんが言う。けど愛莉は言う。
「寂しいけどバスケ勧めといて今更行かないでって言うわけにもいかないでしょ」と。
やっぱり愛莉は寂しいのか。
「たった3日間だし、ちゃんと毎晩電話してやるから」というと愛莉は微笑んで返した。
「片桐君、そろそろ時間だ。行かないと」
木元先輩が時計を見て言う。
僕達は店を出た。
体育館に行くとすでに皆練習を始めていた。
と、いっても自主トレみたいなもんだけど。
そうも言っておれずストレッチをするとシュート練習を始める。
そして監督が来ると皆が集まる。
「冬夜にはもう手紙が届いてると思うが……」
その話から始まるのか。
「来月から3日間代表の強化合宿に参加する」
皆から拍手される。
「冬夜はこれからは怪我のないように気をつけてくれ。じゃあいつ戻りのメニューで始めろ」
そこからは普段通りの練習が始まる。
月末には今期最後の練習試合がある。
それに向けた調整もあるのだろう。
最後の試合。
皆自分が出ると意気込んでいるのだろう。
練習にも気合が入っていた。
水島君も類にもれない。
1年も来期のレギュラー目指して頑張っている。
必死だった。
そして悲劇が起こった。
水島君のシュートをブロックしに行った一年の選手と水島君が接触して倒れた。
僕はコートの外で練習を見ていた時だった。
水島君はその後も普通に練習をしていたが、シュートのフォームが変だ。
シュートも決まらない。
異変を察した佐倉さんが練習を止める。
「水島先輩大丈夫ですか?」
佐倉さんがかけよるも、大丈夫の一点張り。
「大丈夫なら肩見せてください!」
佐倉さんの剣幕に圧され肩を見せる。
佐倉さんは肩を触る。
「痛みますか?」
「だ、大丈夫だなんてことない」
「我慢しないで!」
「ちょっと痛むだけだ」
佐倉さんは時計を見る。
「まだ整形外科やってますね。監督。ちょっと水島先輩を病院に連れて行きます」
「うむ、任せた。佐(たすく)の代わりに冬夜入れ」
2人は病院に向かった。
(2)
整形外科。
患者はほとんどおらずシーンと静まり返る。
嫌がる先輩を無視して一緒に診察に立ち会う。
何事も無ければいい。
そんな願いも空しく……。
「一か月は無理したらいけない」
今から一か月。
月末の試合には間に合わない。
うなだれる水島先輩。
先輩にチャンスが回ってきたかもしれない試合。
そんな先輩に告げられる非情な宣告。
診察室を出ると先輩は笑う。
「別にどうってことないさ。試合までには治るよ。治してみせる」
「心配しなくていい」という水島先輩。
先輩の試合に出たい気持ちは良く分かる、だけど……。
私は冷酷に徹する。
「だめです、監督には報告します。一か月は休養してもらいます。運転も駄目です。私が送迎します」
先輩は頭を下げる。
「頼む!今回が最後のチャンスかもしれないんだ。冬夜が調整で欠場するかもしれない今度の試合でアピールしなきゃいけないんだ!黙っていてくれ」
「最後だって決まったわけじゃありません。まだあと2年もあるじゃないですか?片桐先輩だって代表の合宿とかで開ける時が多いと思うし……」
「何で分かってくれないんだよ!」
「ただの練習試合の為に将来を棒に振るような真似、マネージャーとして容認できません」
「どんな試合だっていい!コートに立ちたいんだよ!一年に今のポジション奪われるかもしれない!そんな気持ちお前に分かるか!?たとえ将来を棒に振ったとしても今試合に出れなきゃ意味がない……!?」
バシッ!
「将来を棒に振ってもいい?……そんな言葉簡単に口にしないで!!」
私は叫んでいた。
「ここは病院ですよ、お静かにお願いします」
「すいませんでした……先輩行きますよ」
立ちすくむ先輩の手を取って病院を出た。
しばらく車の中で休んでいた。
私に怒鳴られて困惑してる水島先輩。
怒りのあまりに涙が止まらない私。
こんな状態で運転できない。
「……運転替わろうか?」
「先輩は安静にしててください。……もう少し時間下さい。立て直しますから」
「……分かった」
しばらくして車を発進させる。
向かった先は大学じゃない。
海の側にある、ホテル街を抜けて海岸沿いに車を止める。
ここの夜景は綺麗だと聞いていた。
「もしもし、片桐先輩ですか?ちょっと今日はこのまま水島先輩を家に送ります。監督に伝えてもらえませんか?」
「わかった。水島君大丈夫?」
「明日監督に詳しく話します」
「て、事は大丈夫じゃないんだね」
「明日話すので」
「……わかった」
それで電話は終わった。
「やっぱり監督には話すんだな」
水島先輩がシートを倒して寝ながら言った。
「話します。先輩の将来に関わることです」
「俺の将来は俺が決める」
「……先輩、少し私の話聞いてもらえませんか?」
「……いいけど?」
「私が小6の頃でした。まだ男女混合でサッカーが出来ていたころの話です」
(3)
私は女ながらにFWで活躍していた。
体格は既に男子と差がついていたけど技術で体力面をカバーしていた。
実際に試合でもポイントゲッターとして活躍していた。
小学校最後の大会の決勝。
私のプレイを無視出来なかった相手は私に二人のマークを付けてきた。
それでも必死に足を使って振り切りパスを受け取りチャンスを作っていた。
焦った相手は私を削る。
体格で劣っていた私は徐々に体力を奪われる。
男子女子関係ない勝負の世界……のはずだった。
相手からヤジが飛ぶ。
「女性だからって接触プレイ気にするなよ」
「その女どうせ貧乳なんだろ!」
暴言に近い野次。
その時相手が私にタックルを仕掛けてきた。
私は倒れる。
笛が鳴る。
フリーキックのチャンスだった。
しかし私は外に出される。
鼻血の止血の為だ。
鼻血はすぐに止まった。
でも監督は冷淡に放った。
選手交代
「どうしてですか!?私まだやれます!」
「ダメだ」
「なぜですか!?」
「相手があそこまでラフプレーするとは予想しなかった。お前の顔に傷でも入れたら大変だ」
それって私が女子だからですか?
鼻血を出した時よりショックだった。
その試合には勝てた。
でも観客の暴言が胸を打つ。
「やっぱり、女子を入れてた分ハンデがあったか」
何気ない一言だったのかもしれない。
だけど私にはショックだった。
そして中学に入るとダメもとで入部届を出した。
女子サッカー部なんてなかったから。
案の定却下された。
「相手が女子だと知ったら知らず知らずのうちに手加減するかもしれないだろう?いや例えしなかったとしても言い訳にお前を使うかもしれない。傷つくのは佐倉だぞ」
その言葉が今まさに私を傷つけていた。
私のサッカー人生はそこで終わってしまった。
終わらざるを得なかった。
でもサッカーに関わっていたい私はマネージャーとしての道を進んだ。
雑用を任されながら。時にアドバイスをする私。
そのアドバイスを鬱陶しいと思ったのか……。
「マネージャーの癖に出しゃばり過ぎなんだよ!女子にサッカーの何が分かるって言うんだ!」
言い返せなかった。悔しかったそんな私の味方をしてくれたのが多田先輩だった。
「女子にダメだしされて悔しいのも分かるけど、女子サッカー選手だっている時代に時代錯誤も甚だしいぞ!」
その一言で救われた。
そんな多田先輩が唯一認めるプレイヤーが片桐先輩だった。
「あいつのプレイは見ていて魅せられる。敵には回したくないな」
そう言って笑う。多田先輩。
どんなプレイをするんだろう。
そのプレイを見ることがただ一回だけで来た。
とんでもない奇抜なプレイをする片桐先輩。
体力の差なんてものともしない誰にも文句を言わせない片桐先輩の1プレイ。
その先輩に憧れた。
そしてサッカーを勧めたが「勉強があるから」「愛莉との時間が大切だから」と断られる。
彼女がいたことよりもそれを理由にサッカーの道から自ら引いた先輩に苛立ちを覚えた。
そんな先輩はバスケもこなすことを知った。
バスケは好きらしい。
ならばバスケの道に引きずり込もう。
バスケじゃなくてもいい。なんでもいいからスポーツをさせてみたい。
そう思って必死に勧誘した。
時に厳しい事を言ったかもしれない。
でも間違いじゃないことを証明してみせる。
そして今に至る……
(4)
私の話をじっと聞いている水島先輩。
「将来を棒に振ってもいいなんて間違ってます。私には将来すら用意されていなかったのだから。お願いだから最後まで諦めないで。好きなんでしょう?バスケ」
私はまた泣いていた。
黙ったままの水島先輩がようやく口を開く。
「大変だったんだな。お前も……。すまなかった」
そう言って私の肩を抱く水島先輩。
私は水島先輩の腕の中で号泣していた。
泣きわめく子供をあやすかのように私の背中をさする水島先輩。
今までため込んでいたものをすべて吐き出した。
しばらくすると落ち着いたのか泣き止んだ。
「すいません、みっともないところ見せてしまって」
「俺なんかよりずっとすげーよ、佐倉は」
いけない、また泣きだしそうだ。
「明日監督には俺から話す、素直に全部……。けがの治療に専念するよ」
「水島先輩……」
想いは届いたようだ。
「そろそろ帰ろう。お前の家の人も心配するぞ」
「私一人暮らしなんで」
「そうか……」
その後水島先輩を家に送り届ける。
先輩もまた大学近くのアパートに住んでいた。
アパートの前に車を止める。
「あのさ……」
水島先輩が口を開いた。
「スマホの番号教えてくれないか?」
「え?」
「また悩みとかあった時に聞いて欲しいからさ……。それにお前の愚痴も聞いてやりたい」
「……いいですよ」
そう言って私は電話番号を水島先輩に教える。
水島先輩からも電話番号を聞いた。
「それじゃ、水島先輩無理しないでゆっくり休んでくださいね」
「佐……」
「これからは佐でいいよ」
「わかりました佐先輩。また明日」
「ああ……」
私は車を出した。
それがマネージャーと選手の関係から一歩踏み込んだものだとは知らなかった。
(5)
「それじゃ、新年会も兼ねて必勝会はじめようか!?」
吉良君がそう言うと宴は始まった。
「冬夜、じゃんじゃん飲めよ!お前の激励会も兼ねてるんだからな!」
「青山先輩止めてください!明日試合なんですよ!二日酔いでプレイできないなんてシャレになりません!」
佐倉さんが抵抗する。
しかし、水島君の故障は聞いて驚いた。
水島君もよく休養に納得したな。絶対出るって言うと思ったんだけど。
「しかし佐。よく我慢する気になったな。あと体育館に帰ってこなかったけどどこ行ってたんだ」
吉良君が聞くと水島君が驚くべき発言をした。
「ホテル街……」
周りの空気が凍り付いた。
「……の先にある観光スポット」
「佐倉、こいつの言ってる事本当か?」
「……ホテルには行っていませんけどね」
「あそこホテルじゃなくても色々いちゃつくスポットだろ!?お前らまさか……」
「ちげーよ!」
「違います!」
「二人して否定するところが怪しいんだよな」
吉良君の追及が止まらない。
「……で、どこまで進んでるんだ?」
赤井君も容赦ないなあ。お酒のせいか?
「電話番号聞くまでは進んだよ」
水島君が笑いながら言う。
電話番号なら僕も知ってるけど?
「佐先輩止めてください!そんなつもりで教えたんじゃありません!あくまでもマネージャーとして!」
「わーってるよ」
そう言ってビールを飲む水島君。
二人のやりとりを見ていて分かった事。
ああ、そういう仲なんだ。
僕は何も言わなかった。
「冬夜!心を読めるんだよな?この二人の気持ち今見てくれよ」
青山君がそう言ってくる。
「悪いけどそんな野暮ったい真似しないよ」
「ちょっと、片桐先輩まで勘違いしてるんですか!?」
「読まなくても分かるよ。佐先輩って呼び合うくらいの仲にはなってるんだろ?」
僕がそう言うと佐倉さんの顔が赤くなる。
「心読んだのか?」
水島君が聞く。
「いや、さっきも言ったけど……」
こつんと僕の頭を叩く水島君。
「つくづくお前が羨ましいよ」
水島君のその言葉には棘は無く、心底そう思ってるらしい。
本当に二人の間に何があったのだろうか?
「畜生!冬夜と言い蒼汰と言い佐と言い!バスケ部ってモテるんじゃなかったのかよ!?俺がモテないだけなのか!?」
サッカーでも似たようなこと聞いたな。サッカー選手はモテるって。
僕はモテたとは言えないけどね。あ、でも誠はモテてるな、イケメンだからかな?
どうしてサッカーとバスケはイケメンが多いと思うのだろう?あとテニスとかもか。
「分かったから落ち着け祐樹。今度女バスとの合コンセッティングしてやるから」
「まじか!蒼汰。さすがだ!!」
「明日の試合に勝ったらな……」
「冬夜がいるから間違いなく勝てるよ」
だといいね。
「じゃ、二次会行こうぜ」
「ダメです!どうせ明日また祝勝会とか言って飲むつもりなら今日は明日に備えてください!皆寝不足で試合に負けたとか言ったら当分飲み会禁止ですからね!」
佐倉さんは取り付く島もない。
「青山君明日合コンが掛かってるんだろ?万全を期した方がいいよ」
「くっ、しょうがないな。そのかわり明日勝ったら祝勝会っすよ!」
藤間君が電話をしている、僕も愛莉に電話しよう。
「祐樹、今清美に迎えの電話するついでに頼んでおいた。明日勝ったら合コンだ!応援にもくるってよ」
「よっしゃあ!燃えてきた!!」
テンションの上がる青山君。
上げ方が凄いな……。
プップー。
クラクションを鳴らしてる車が。あ、愛莉だ。近くにいたのか?
「じゃあ、僕迎えが来たから帰るね」
「お疲れ様でしたー。佐先輩も帰りますよ」
「わかったよ、じゃあな冬夜」
「うんまた明日」
そう言って愛莉の車に乗った。
愛莉の運転で帰るなんて珍しい事もあるんだな。
飲み会であったことを愛莉に話した。
「え?じゃあ、水島君佐倉さんと付き合ってるの?」
「そこまではいってないけど」
「佐倉さんにも彼氏できたのか~渡辺班って不思議だね」
だから付き合ったとまでは言ってないってば。
「それにしても……合コンですか?」
「ぼ、僕が言い出したわけじゃないぞ!」
「うん、分かってる……」
「大丈夫だって、何もないから」
「本当?」
「信じてくれるんだろ?」
「うん」
家に帰るとシャワーを浴びて寝る。
翌日の試合には青山君が大いに能力を発揮して大差をつけて勝った。
青山君待望の合コンでは村川さんと仲良くなリ連絡先を交換するのでした。
「愛莉起きて、朝だよ」
愛莉に優しく声をかけてやると「うぅ……」と唸りながら目を覚ます。
昨夜は遅かったからな、愛莉も眠いんだろうな。
愛莉も一人の人間なんだと実感する瞬間だった。
「眠いなら僕一人で行ってくるけど?」
愛莉に聞くと「30秒待って……」という。
しばらくすると「よしっ!」と言って目を開けて着替えを始める。
ゴムで髪を縛ると「行こっ」と言って家を出ると自転車に跨る。
僕は軽く屈伸して膝を伸ばしてアキレス腱を伸ばすと走り始める。
愛莉はその後を追う。
1時間くらい走ると家の前に着いて軽くストレッチして家に入る。
家に入ると愛莉はすぐさま朝食の準備に入る。
僕はシャワーで汗を流して仕度を済ませると朝食が出来上がっている。
その時間には親も起きてきていて、皆で「いただきます」といって朝食を済ませる。
朝食を済ませると愛莉は仕度をはじめその間に、部屋に帰って着替えをする。
PCでニュースを見ながらテレビをつけていると愛莉がマグカップをもって上がってくる。
PCを閉じて、テレビを見ていると母さんが呼んでいる。
手紙が届いてるらしい。
JBAからだ。
2月の代表合宿の招待状だ。
前もって電話を通じて受けているので特別驚くほどの事でもない。
ちょうどテストが終わり春休みが始まったあたりから始まるらしい。
「いよいよだね」
愛莉の方が緊張している。
場所は長野で行われるらしい。
3日間行われる。
思ったより短い期間なんだな。
手紙を仕舞うと愛莉にそろそろ時間だよというと愛莉はバッグを手に取り部屋を出る。
僕もバッグを手に取り部屋を出た。
授業が終わると青い鳥に向かう。
練習が始まるまでまだ時間があるから。
「そうですか、片桐君もとうとう代表入りですか」
酒井君がそういう。
「行くからにはちゃんと活躍してもらわないと困るわよ」と晶さんが言う。
「片桐君なら問題なくスタメン入りですよね」と一ノ瀬さんがいうけど……。
「そんな簡単なものでもないよ」と僕は笑う。
「まあ、頑張って来てくれ」と中島君と木元先輩が言う。
「愛莉寂しいね」と花菜さんが言う。けど愛莉は言う。
「寂しいけどバスケ勧めといて今更行かないでって言うわけにもいかないでしょ」と。
やっぱり愛莉は寂しいのか。
「たった3日間だし、ちゃんと毎晩電話してやるから」というと愛莉は微笑んで返した。
「片桐君、そろそろ時間だ。行かないと」
木元先輩が時計を見て言う。
僕達は店を出た。
体育館に行くとすでに皆練習を始めていた。
と、いっても自主トレみたいなもんだけど。
そうも言っておれずストレッチをするとシュート練習を始める。
そして監督が来ると皆が集まる。
「冬夜にはもう手紙が届いてると思うが……」
その話から始まるのか。
「来月から3日間代表の強化合宿に参加する」
皆から拍手される。
「冬夜はこれからは怪我のないように気をつけてくれ。じゃあいつ戻りのメニューで始めろ」
そこからは普段通りの練習が始まる。
月末には今期最後の練習試合がある。
それに向けた調整もあるのだろう。
最後の試合。
皆自分が出ると意気込んでいるのだろう。
練習にも気合が入っていた。
水島君も類にもれない。
1年も来期のレギュラー目指して頑張っている。
必死だった。
そして悲劇が起こった。
水島君のシュートをブロックしに行った一年の選手と水島君が接触して倒れた。
僕はコートの外で練習を見ていた時だった。
水島君はその後も普通に練習をしていたが、シュートのフォームが変だ。
シュートも決まらない。
異変を察した佐倉さんが練習を止める。
「水島先輩大丈夫ですか?」
佐倉さんがかけよるも、大丈夫の一点張り。
「大丈夫なら肩見せてください!」
佐倉さんの剣幕に圧され肩を見せる。
佐倉さんは肩を触る。
「痛みますか?」
「だ、大丈夫だなんてことない」
「我慢しないで!」
「ちょっと痛むだけだ」
佐倉さんは時計を見る。
「まだ整形外科やってますね。監督。ちょっと水島先輩を病院に連れて行きます」
「うむ、任せた。佐(たすく)の代わりに冬夜入れ」
2人は病院に向かった。
(2)
整形外科。
患者はほとんどおらずシーンと静まり返る。
嫌がる先輩を無視して一緒に診察に立ち会う。
何事も無ければいい。
そんな願いも空しく……。
「一か月は無理したらいけない」
今から一か月。
月末の試合には間に合わない。
うなだれる水島先輩。
先輩にチャンスが回ってきたかもしれない試合。
そんな先輩に告げられる非情な宣告。
診察室を出ると先輩は笑う。
「別にどうってことないさ。試合までには治るよ。治してみせる」
「心配しなくていい」という水島先輩。
先輩の試合に出たい気持ちは良く分かる、だけど……。
私は冷酷に徹する。
「だめです、監督には報告します。一か月は休養してもらいます。運転も駄目です。私が送迎します」
先輩は頭を下げる。
「頼む!今回が最後のチャンスかもしれないんだ。冬夜が調整で欠場するかもしれない今度の試合でアピールしなきゃいけないんだ!黙っていてくれ」
「最後だって決まったわけじゃありません。まだあと2年もあるじゃないですか?片桐先輩だって代表の合宿とかで開ける時が多いと思うし……」
「何で分かってくれないんだよ!」
「ただの練習試合の為に将来を棒に振るような真似、マネージャーとして容認できません」
「どんな試合だっていい!コートに立ちたいんだよ!一年に今のポジション奪われるかもしれない!そんな気持ちお前に分かるか!?たとえ将来を棒に振ったとしても今試合に出れなきゃ意味がない……!?」
バシッ!
「将来を棒に振ってもいい?……そんな言葉簡単に口にしないで!!」
私は叫んでいた。
「ここは病院ですよ、お静かにお願いします」
「すいませんでした……先輩行きますよ」
立ちすくむ先輩の手を取って病院を出た。
しばらく車の中で休んでいた。
私に怒鳴られて困惑してる水島先輩。
怒りのあまりに涙が止まらない私。
こんな状態で運転できない。
「……運転替わろうか?」
「先輩は安静にしててください。……もう少し時間下さい。立て直しますから」
「……分かった」
しばらくして車を発進させる。
向かった先は大学じゃない。
海の側にある、ホテル街を抜けて海岸沿いに車を止める。
ここの夜景は綺麗だと聞いていた。
「もしもし、片桐先輩ですか?ちょっと今日はこのまま水島先輩を家に送ります。監督に伝えてもらえませんか?」
「わかった。水島君大丈夫?」
「明日監督に詳しく話します」
「て、事は大丈夫じゃないんだね」
「明日話すので」
「……わかった」
それで電話は終わった。
「やっぱり監督には話すんだな」
水島先輩がシートを倒して寝ながら言った。
「話します。先輩の将来に関わることです」
「俺の将来は俺が決める」
「……先輩、少し私の話聞いてもらえませんか?」
「……いいけど?」
「私が小6の頃でした。まだ男女混合でサッカーが出来ていたころの話です」
(3)
私は女ながらにFWで活躍していた。
体格は既に男子と差がついていたけど技術で体力面をカバーしていた。
実際に試合でもポイントゲッターとして活躍していた。
小学校最後の大会の決勝。
私のプレイを無視出来なかった相手は私に二人のマークを付けてきた。
それでも必死に足を使って振り切りパスを受け取りチャンスを作っていた。
焦った相手は私を削る。
体格で劣っていた私は徐々に体力を奪われる。
男子女子関係ない勝負の世界……のはずだった。
相手からヤジが飛ぶ。
「女性だからって接触プレイ気にするなよ」
「その女どうせ貧乳なんだろ!」
暴言に近い野次。
その時相手が私にタックルを仕掛けてきた。
私は倒れる。
笛が鳴る。
フリーキックのチャンスだった。
しかし私は外に出される。
鼻血の止血の為だ。
鼻血はすぐに止まった。
でも監督は冷淡に放った。
選手交代
「どうしてですか!?私まだやれます!」
「ダメだ」
「なぜですか!?」
「相手があそこまでラフプレーするとは予想しなかった。お前の顔に傷でも入れたら大変だ」
それって私が女子だからですか?
鼻血を出した時よりショックだった。
その試合には勝てた。
でも観客の暴言が胸を打つ。
「やっぱり、女子を入れてた分ハンデがあったか」
何気ない一言だったのかもしれない。
だけど私にはショックだった。
そして中学に入るとダメもとで入部届を出した。
女子サッカー部なんてなかったから。
案の定却下された。
「相手が女子だと知ったら知らず知らずのうちに手加減するかもしれないだろう?いや例えしなかったとしても言い訳にお前を使うかもしれない。傷つくのは佐倉だぞ」
その言葉が今まさに私を傷つけていた。
私のサッカー人生はそこで終わってしまった。
終わらざるを得なかった。
でもサッカーに関わっていたい私はマネージャーとしての道を進んだ。
雑用を任されながら。時にアドバイスをする私。
そのアドバイスを鬱陶しいと思ったのか……。
「マネージャーの癖に出しゃばり過ぎなんだよ!女子にサッカーの何が分かるって言うんだ!」
言い返せなかった。悔しかったそんな私の味方をしてくれたのが多田先輩だった。
「女子にダメだしされて悔しいのも分かるけど、女子サッカー選手だっている時代に時代錯誤も甚だしいぞ!」
その一言で救われた。
そんな多田先輩が唯一認めるプレイヤーが片桐先輩だった。
「あいつのプレイは見ていて魅せられる。敵には回したくないな」
そう言って笑う。多田先輩。
どんなプレイをするんだろう。
そのプレイを見ることがただ一回だけで来た。
とんでもない奇抜なプレイをする片桐先輩。
体力の差なんてものともしない誰にも文句を言わせない片桐先輩の1プレイ。
その先輩に憧れた。
そしてサッカーを勧めたが「勉強があるから」「愛莉との時間が大切だから」と断られる。
彼女がいたことよりもそれを理由にサッカーの道から自ら引いた先輩に苛立ちを覚えた。
そんな先輩はバスケもこなすことを知った。
バスケは好きらしい。
ならばバスケの道に引きずり込もう。
バスケじゃなくてもいい。なんでもいいからスポーツをさせてみたい。
そう思って必死に勧誘した。
時に厳しい事を言ったかもしれない。
でも間違いじゃないことを証明してみせる。
そして今に至る……
(4)
私の話をじっと聞いている水島先輩。
「将来を棒に振ってもいいなんて間違ってます。私には将来すら用意されていなかったのだから。お願いだから最後まで諦めないで。好きなんでしょう?バスケ」
私はまた泣いていた。
黙ったままの水島先輩がようやく口を開く。
「大変だったんだな。お前も……。すまなかった」
そう言って私の肩を抱く水島先輩。
私は水島先輩の腕の中で号泣していた。
泣きわめく子供をあやすかのように私の背中をさする水島先輩。
今までため込んでいたものをすべて吐き出した。
しばらくすると落ち着いたのか泣き止んだ。
「すいません、みっともないところ見せてしまって」
「俺なんかよりずっとすげーよ、佐倉は」
いけない、また泣きだしそうだ。
「明日監督には俺から話す、素直に全部……。けがの治療に専念するよ」
「水島先輩……」
想いは届いたようだ。
「そろそろ帰ろう。お前の家の人も心配するぞ」
「私一人暮らしなんで」
「そうか……」
その後水島先輩を家に送り届ける。
先輩もまた大学近くのアパートに住んでいた。
アパートの前に車を止める。
「あのさ……」
水島先輩が口を開いた。
「スマホの番号教えてくれないか?」
「え?」
「また悩みとかあった時に聞いて欲しいからさ……。それにお前の愚痴も聞いてやりたい」
「……いいですよ」
そう言って私は電話番号を水島先輩に教える。
水島先輩からも電話番号を聞いた。
「それじゃ、水島先輩無理しないでゆっくり休んでくださいね」
「佐……」
「これからは佐でいいよ」
「わかりました佐先輩。また明日」
「ああ……」
私は車を出した。
それがマネージャーと選手の関係から一歩踏み込んだものだとは知らなかった。
(5)
「それじゃ、新年会も兼ねて必勝会はじめようか!?」
吉良君がそう言うと宴は始まった。
「冬夜、じゃんじゃん飲めよ!お前の激励会も兼ねてるんだからな!」
「青山先輩止めてください!明日試合なんですよ!二日酔いでプレイできないなんてシャレになりません!」
佐倉さんが抵抗する。
しかし、水島君の故障は聞いて驚いた。
水島君もよく休養に納得したな。絶対出るって言うと思ったんだけど。
「しかし佐。よく我慢する気になったな。あと体育館に帰ってこなかったけどどこ行ってたんだ」
吉良君が聞くと水島君が驚くべき発言をした。
「ホテル街……」
周りの空気が凍り付いた。
「……の先にある観光スポット」
「佐倉、こいつの言ってる事本当か?」
「……ホテルには行っていませんけどね」
「あそこホテルじゃなくても色々いちゃつくスポットだろ!?お前らまさか……」
「ちげーよ!」
「違います!」
「二人して否定するところが怪しいんだよな」
吉良君の追及が止まらない。
「……で、どこまで進んでるんだ?」
赤井君も容赦ないなあ。お酒のせいか?
「電話番号聞くまでは進んだよ」
水島君が笑いながら言う。
電話番号なら僕も知ってるけど?
「佐先輩止めてください!そんなつもりで教えたんじゃありません!あくまでもマネージャーとして!」
「わーってるよ」
そう言ってビールを飲む水島君。
二人のやりとりを見ていて分かった事。
ああ、そういう仲なんだ。
僕は何も言わなかった。
「冬夜!心を読めるんだよな?この二人の気持ち今見てくれよ」
青山君がそう言ってくる。
「悪いけどそんな野暮ったい真似しないよ」
「ちょっと、片桐先輩まで勘違いしてるんですか!?」
「読まなくても分かるよ。佐先輩って呼び合うくらいの仲にはなってるんだろ?」
僕がそう言うと佐倉さんの顔が赤くなる。
「心読んだのか?」
水島君が聞く。
「いや、さっきも言ったけど……」
こつんと僕の頭を叩く水島君。
「つくづくお前が羨ましいよ」
水島君のその言葉には棘は無く、心底そう思ってるらしい。
本当に二人の間に何があったのだろうか?
「畜生!冬夜と言い蒼汰と言い佐と言い!バスケ部ってモテるんじゃなかったのかよ!?俺がモテないだけなのか!?」
サッカーでも似たようなこと聞いたな。サッカー選手はモテるって。
僕はモテたとは言えないけどね。あ、でも誠はモテてるな、イケメンだからかな?
どうしてサッカーとバスケはイケメンが多いと思うのだろう?あとテニスとかもか。
「分かったから落ち着け祐樹。今度女バスとの合コンセッティングしてやるから」
「まじか!蒼汰。さすがだ!!」
「明日の試合に勝ったらな……」
「冬夜がいるから間違いなく勝てるよ」
だといいね。
「じゃ、二次会行こうぜ」
「ダメです!どうせ明日また祝勝会とか言って飲むつもりなら今日は明日に備えてください!皆寝不足で試合に負けたとか言ったら当分飲み会禁止ですからね!」
佐倉さんは取り付く島もない。
「青山君明日合コンが掛かってるんだろ?万全を期した方がいいよ」
「くっ、しょうがないな。そのかわり明日勝ったら祝勝会っすよ!」
藤間君が電話をしている、僕も愛莉に電話しよう。
「祐樹、今清美に迎えの電話するついでに頼んでおいた。明日勝ったら合コンだ!応援にもくるってよ」
「よっしゃあ!燃えてきた!!」
テンションの上がる青山君。
上げ方が凄いな……。
プップー。
クラクションを鳴らしてる車が。あ、愛莉だ。近くにいたのか?
「じゃあ、僕迎えが来たから帰るね」
「お疲れ様でしたー。佐先輩も帰りますよ」
「わかったよ、じゃあな冬夜」
「うんまた明日」
そう言って愛莉の車に乗った。
愛莉の運転で帰るなんて珍しい事もあるんだな。
飲み会であったことを愛莉に話した。
「え?じゃあ、水島君佐倉さんと付き合ってるの?」
「そこまではいってないけど」
「佐倉さんにも彼氏できたのか~渡辺班って不思議だね」
だから付き合ったとまでは言ってないってば。
「それにしても……合コンですか?」
「ぼ、僕が言い出したわけじゃないぞ!」
「うん、分かってる……」
「大丈夫だって、何もないから」
「本当?」
「信じてくれるんだろ?」
「うん」
家に帰るとシャワーを浴びて寝る。
翌日の試合には青山君が大いに能力を発揮して大差をつけて勝った。
青山君待望の合コンでは村川さんと仲良くなリ連絡先を交換するのでした。
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