243 / 442
3rdSEASON
雲が運ぶ明日
しおりを挟む
(1)
「うーっす」
僕はコートに入ると挨拶する。
愛莉は2階で見てる。
「おっす冬夜。話は木元先輩や佐(たすく)から聞いたぞ」
真司がそう言って挨拶を返した。
「世界一とはまた随分派手な約束かましたな」
ストレッチしながら話を聞いている。
「そのくらいしないと納得してくれないと思ってね」
もっとも佐倉さんは納得してないみたいだけど。
ストレッチを終えるとボールを取りシュート練習をする。
シュート練習をソコソコに終えると真司に手伝ってもらいシュート練習してる反対側のコートを使い1ON1を始める。
パスとシュート以外に選択肢を広げたい。ならドリブルを鍛えよう。
そう思ってマンツーの練習を取り組むことになった。
「先輩クロスオーバーだけじゃなくて他の技術も使って。癖になってますよ!直ぐ見抜かれます」
佐倉さんに呼ばれる。
佐倉さんは僕に動画を見せる。
「それを見てドリブルのテクニック全部覚えるくらいの勢いでやってください」
「……何種類あるのこれ?」
「そのくらい覚えないと世界一なんて無理ですよ!」
とりあえず動画を見る。
一つ一つ見ながら実際に試してみる。
大体がレッグスルーか、バックチェンジの応用みたいなものだった。
基本的だけど意識をボールだけに向けない相手の手と足を見る。そんなところか。
理解はした。後は実践あるのみ。
真司に頼むとまたマンツーを始めた。
しかし真司には失礼だけどそんなに高度な技術使わなくても基本的な技術だけで抜けちゃうんだよね。
ドリブルしかしないというハンデを負っても。
「やっぱり先輩を一人で止める選手なんて国内にいないですよね」
佐倉さんが頭を悩ませる。
「真司俺も手伝う。ディフェンスくらいなら問題ないだろ?桜子」
佐がそう言うと「無理なディフェンスしちゃだめですよ」佐倉さんが一言いう。
「よしこいっ!」
試したい事があった。
ドリブルをすると二人に突進する。二人が中心を塞ぐバックチェンジで右手に持ち替えつつ右側に一回転する。
軽やかにステップを踏みながら空中でボールを受けドリブルを続ける。ディフェンスに背を向けさらに切り込む。前が空いた。ゴールに向かって跳躍する。後ろからブロックを受けるも体を反転させながらボールを持ち替えブロックを躱してシュート。
「ダブルチームでもダメなのかよ!」
「……トリプルだとさすがにドリブルだけじゃきついかな」
「さすがにトリプルついてドリブルだけで抜くって場面はないだろ」
真司がそう言って笑う。
昼前になると女バスが集まってくる。
「おはよう!」
女バスの明るい声が響き渡る。
女バスもストレッチを終えると個人練習を始めた。
7番の3Pを見ていた。
余り安定してないようだ。
7番の選手、村川さんが僕の視線に気がついたようだ。
「ははは、私腕力無いからワンハンドじゃロングシュート苦手でね」
女性は皆そうみたいだね。
「何かアドバイスあったら欲しいな~」
「あまり力むなって感じですね。あとは飛ぶ時は前に飛ばすに真上に跳ぶこと。手もスナップを聞かせて回転をかける。この時手を傾け過ぎない事。ボールは高くふんわりと上げる事。足首を使って飛ぶこと。腕じゃなくて手をリングに向けて打つことですかね?」
そう助言したのは僕じゃない。佐倉さんだった。
「何ぼーっと女子のプレイに見とれているんですか!?そんな暇あったら3P10本連続で入るまで打ち続ける!」
怒っているのは佐倉さんだけじゃない、愛莉も上からの目線が怖かった。
そして怒っているのは女性だけじゃない。
「冬夜!何俺の茉里奈に手を出してるんだよ!」
「だしてないよ!」
「冬夜、茉里奈に教える暇あったら俺に3P教えてくれよ」
「教えるって言ってもなあ……」
「何でもいいからコツでもいいから教えてくれよ」
「……なんでもいいのか?」
「ああ」
「ゴールを見てたら何となく軌道が見えるだろ?それになぞるように打つだけだよ。後は強弱の問題」
「……聞いた俺が馬鹿だった」
だから言ったろ?
(2)
僕と晶ちゃんは成田空港に到着した。
行き先は晶ちゃんから聞いてない。
「ところでどこに行くんだい?」
「分からない?新婚旅行よ」
「それはわかるんだけどね?」
行き先もツアーもすべて晶ちゃんが手配してくれた。
普通に考えたらハワイとかなんだろうけど……。
「せめて行先だけでも教えてくれないかい?」
「行ってみての楽しみってあるでしょ?」
恐怖しか感じられないんだけど。
「えーとハネムーンツアーの皆さまこの旗の下に集合してください」
「ほら行くわよ」
晶ちゃんが腕を掴んで僕を引っ張る。
「本日は当旅行ツアーにご参加いただきありがとうございます。8日間のんびりお楽しみください」
8日間!?
「どうりで荷物が多いと思ったよ」
「それでは搭乗手続きの方にご案内します」
ぞろゾロと集団で行動する。
搭乗手続きをすると手荷物を預ける。僕達はキャリーバッグを預ける。
その後出入国検査を受ける。
そのあと搭乗ゲートに向かい時間を潰す。時間が来ると飛行機に乗る。
「本日は……航空をご利用いただき……」
なんかとんでもない国名を聞いた気がするんだけど。
ペアシートになっていたので隣には機内放送を聞きながらくつろいでる晶ちゃんがいる。
「当機は……に……着の便です、時刻は」
はい?
「言っとくけど目的地じゃないからね。乗り継ぎらしいのよ」
そう言ってる間に飛行機は離陸する。
「そろそろ教えてくれてもいいだろう?」
「そうね、もう今更引き戻せないしね?」
「どこなんだい?」
「スペインよ」
「はい?」
「手堅くイタリアも考えたんだけど……ちょっとね」
そのちょっとが凄く疑問なんだけど。
多くの不安を抱えたまま。僕たちはヨーロッパ国内便を乗り継いでスペインに向かった。
(3)
「ただいま~」
「おかえり~、お風呂準備出来てるわよ」
「ありがとう」
僕は家に帰るとお風呂に入った。
その間に恵美は食事の準備をしている。
今日は魚料理だった。
それを食べると恵美がお風呂に行ってる間に片づけをする。
それが終わると冷蔵庫からビールを取り出し一杯飲みながらテレビを見る。
恵美が風呂からもどってくると「私にも一杯ちょうだい」と言い、グラスに注ぐ。
その後は恵美の好きなドラマを見る。
僕の好きな女優の出てる番組。
番組の途中にCMが流れる。
バッシュのCMだ。
それに注目する。
片桐君が出ている。
片桐君は結局契約を交わしたらしい。
最初だからと2年契約が認められたんだとか。
プロ転向の意思は無いと伝えたがそれでもいいとメーカー側が妥協したらしい。
契約金は明かされていない。
それにしても早すぎる契約とCMの撮影だ。
既に用意されていたのだろうか?
ドラマが終わるとニュースを見る。
未だに片桐君の話題で持ちきりだ。
バスケットがここまで取りあげられるのも珍しい。
しばらくすると「そろそろ寝た方が良いんじゃない」と恵美が言う。
寝室にはいるとベッドに入り恵美と会話する。
話題は片桐君についてだ。
「すっかり時の人になっちゃたわね」
「そうだね」
「遠い存在になっちゃったみたい」
「そんなことはないよ、本質は変わってないと思うし」
カップ蕎麦のCMとかもオファーが来てるとか。
冬夜君なら喜んで出るだろうな。
「これで愛莉ちゃんも安心して結婚できるわね。片桐君一生分のお金手に入れてるんだし」
「どうだろうね。本人は就職するまではと考えてるんじゃないかな?」
安定した生活を求めているようだし。
じゃ、なきゃプロになれるのを捨ててまで就職しようとは思わないだろ?
「私達も早く挙式したいわね」
いつしてくれるの?と恵美が催促する。
「もうちょっと待って」
結局引っ越し費用も恵美が全額負担した。お金は残ってる。せめて折半したい。
「いつまでも待つわよ」
恵美はそう言って笑う。
「ごめんね」
「いいのよ、あなたが納得するまで頑張ればいいわ」
そう言って恵美は眠った。
僕も寝ることにした。
(4)
寝耳に水だった。
春樹が事故った。
あり得ない。
春樹の運転で事故なるなんて。
巻き込まれた?
私は、瑛大君の車で別府の救急病院に急いだ。
渡辺班の面々も駆け付けている。
事情を聞いた。
「カーブで後ろから不意に当てたやつがいるらしい」
それで挙動を乱して事故ったんだとか。
私の顔は青ざめていた。
「春樹は無事なの?」
「命に別状はないらしいよ、咲良さん落ち着いて」
その後看護師がと春樹の両親が病室から出てきた。
「息子が皆さんに話があるそうです。どうか聞いてやってください」
私達は病室に入る。
腕と足にギブスを嵌められ横たわってる春樹を見て思わず泣いてしまった。
「片桐はいるか?」
「いるけど?」
「絶対に別府の山には行くな。あいつら、事故らせるのを面白がってる。片桐はバスケの件もある。万が一の場合を考えて行動しろ」
「私が絶対に行かせないから大丈夫」
と愛莉が言うけど。冬夜君の意思は別の方に向いてるようだ。
「でも……」
許せない。
片桐君の心中は穏やかではなかったようだ。
「冬夜これは渡辺班としての命令だ。絶対に行くな!韓国戦もあるしユニバーシアードもあるんだろ?今不祥事を起こしたらどうなるかくらいお前だって分かってるだろ?」
「……わかったよ」
渡辺君の説得を受け入れたようだ。
「でもどんな風にしてそうなったの?」
「……コーナーでドリフトしてたら後ろから軽く当てらえてな。制御がきかなくなってポールに当ってそれからは覚えてない」
「なるほどね。酷い連中だね」
「ああ、悪質な連中だ。お前は関わるな。アイツらはレースを求めてるんじゃない。潰しにかかってるだけだ」
「それって別府の山だけじゃないって事じゃない?」
「……そうかもな」
「冬夜君は夜山に行くの禁止!」
遠坂さんが突然言った。
「冬夜君言ったよね『本気でバスケやる』って……だったら、怪我するかもしれないことしちゃだめ!これは私からのお願い。冬夜君のお願い聞いてるんだからそのくらい守って」
遠坂さんが片桐君に縋る。
「トーヤの欠点だ。すぐに頭に血が上ってなにするかわかんない。今回だけは愛莉の言うこと聞いとけ」と神奈さんが言う。
「私からもお願いします~。決して仇討とか考えないでください~」
私からもお願いした。
「愛莉、夜しっかりトーヤを見張ってろ!この馬鹿目を離すと何するか分からない」
「神奈わかった」
やれやれと頭を掻く片桐君。
「あの、そろそろ面会時間過ぎてますので……」
看護師さんが言うと皆病院を出た。
そのあとファミレスで作戦会議。
「今回は相手にしないが一番だろうな」
渡辺君が言うと皆が頷く。
「私からもお願いします~」と言う。
片桐君だけは納得していないようだ。
「冬夜、聞いてるのか……?」
「聞いてるよ」
「冬夜、同じアスリートとして忠告させてもらう、お前危機管理が足りなさすぎる。今まで無事だったからいいものの。今はこれまでと環境が違うんだ。自分の体が資本なんだぞ。もっと自分を大事にしろ」
多田君が説得すると神奈さんも続けて言った。
「自分もだけど愛莉の事も考えてやれ。咲良だって取り乱すんだ。愛莉がどうなるかくらいわかるだろ?」
「分かってるってば!」
「じゃあ何でそんなにイラついてるんだよ」
「車を大事にしない走り屋なんて許されないだろ?」
「何も分かってないじゃないか!その自分は走り屋だって意識は捨てろ!お前はもうれっきとしたバスケ選手なんだぞ」
神奈さんが叫ぶ。
「冬夜君私を置いて遊びに行かないって言ったよね?私が一緒に乗ったら危険な運転しないって言ったよね?だったらそれ守ってよ」
遠坂さんが片桐君の腕にしがみ付く。
遠坂さんの涙声を聞いて少しは我に返ったのか……。
「わかったよ」と一言言った。
だけどこの件はこれだけでは済まなかったのだった。
(5)
その日の帰り。
愛莉を乗せて家に帰る僕。
檜山先輩をあんな目にあわせたやつ、許せなかった。
わざとぶつけた?
絶対に許されない所業だ。
別府の山の谷は深い。
もし崖側でなくて谷川だったらと思うとぞっとする。
「お~い」
愛莉が何か言ってる。
「またさっきの事考えてるでしょ?駄目だからね!」
バスケ選手として、しかもスポーツメーカーや飲料メーカーとの短期契約を結んでいる現状。事故を起こして違約金なんて取られたら目も当てられない。
やっぱり、契約なんてするんじゃなかったか?
「そうじゃなくて、車はもう卒業して。そんな怖い人たちがいるのに冬夜君が山に行くなんて絶対に許せません。佐倉さんだって止めるよ」
「……わかってるよ」
「分かってないから悩んでるんでしょ!」
「愛莉、じゃあ僕のストレスはどこで吐き出したらいいの?」
「冬夜君ストレス抱えてるの?」
「毎日バスケ漬けじゃストレスも抱えるさ」
「うぅ……私じゃ駄目なの?」
「愛莉に不満を言うなんて無理だろ?」
「そのくらい受け止める度量くらいつけたつもりだよ?それとも私といるのもストレス?」
「それはないけど」
本気になったとは言え、やはり息抜きは欲しい。どうやって息抜きしたらいいか分からない。
「冬夜君は前はダラダラ過ごしてたから余裕があったけど今はバスケの練習で疲れてるんだよ?そんな状態であんな危険な運転絶対ダメ」
愛莉のいう事も一理ある。あそこまで集中力を保てるかどうか怪しい。
「ゲームに夢中になってた方がまだましだよ。一緒にゲームしてあげるからそれで気を紛らわそう?あとはお昼にドライブに行ったりデートしたリ……」
愛莉がありとあらゆる気分転換の方法を羅列する。
愛莉も僕の事考えてくれてるんだな。
「わかったよ、もうあんな運転はしない」
「本当?」
愛莉の表情が明るくなる。
「ああ、オフは愛莉とのんびり過ごすよ」
「わ~い」
愛莉の笑顔を見ているだけでこんなに気持ちが穏やかになれるとはね……。
(6)
マドリッドに着くと、すぐにホテルに向かった。
チェックインをして部屋に入る。
食事をしてシャワーを浴びるとベッドにダイブする。
いやあ、一日中飛行機に乗ってるのも疲れるね。
明日からスペイン観光だ。
「明日の朝早いから早めに寝た方がいいわよ」
晶ちゃんが言う。
「ところでどうしてスペインなんだい?」
晶ちゃんならフランスを選ぶと思ったけど。
「特に理由はないわ。情熱の国って聞いただけで行ってみたいと思っただけどよ」
観光地も多いみたいだし、と付け加えた。
晶ちゃんはパンフレットを僕に見せる。
「ほら、こことか素敵じゃない?」」
中世風の建築物が沢山ある。ヨーロッパならではの観光名所。
「いいね」
「でしょう!だから今日早く寝て明日に備えましょう」
晶ちゃんがそう言ってベッドの中に誘う。
言われるがままにベッドの中に入る。
話題は片桐君の事になった。
すでにCMが流れている。
某スポーツメーカーのバッシュのCMとかだ。
まだ1週間も経ってないのに早すぎる。
片桐君は結局契約を飲んだのだろうか?
だとしたらもう立派なプロ選手だ。
それを2年でやめるなんて許されるのだろうか?
そもそもやめる条件をクリアできるのか?
片桐君は自分を追い詰めるのが好きらしい。
追い詰めないと何もできないというのが実際のところなんだろう。
「それにしてもプロという道を外してまで、選びたい道ってなんでしょうね?」
晶ちゃんは悩む。
「それならなんとなく理由がわかるけど?」
「なに?」
「プロになると家にいられる時間が少なくなる。片桐君はそれを心配しているんだろう。でもそんな理由到底皆が受け入れるはずがない。だから無茶な条件をだして納得させてるんだろうね」
「そんなに愛莉のそばにいたいの?」
「離れるのが不安なんでしょう」
「……前に愛莉が言っていたわ『二人一緒だから安心していられるんだ』って」
「それが理由だろうね」
「理解し難い物ね」
「そんな絆で結ばれてるのさ」
「絆か……」
晶ちゃんは考えている。
どうしたらいいかくらい僕だって心得てある。
「僕達だって誓い合ったばかりだろ」
「そうだったわね」
そう言うと灯りを消して眠りについた。
夢がかなうと良いね。片桐君。
(7)
愛莉はその晩ゲームを僕としていた。
正確に言うと愛莉がゲームしているのを僕が見ていた。
愛莉は器用だけどゲームは苦手のようだ。
操作にもたついている間に死んじゃうことがよくある。
そんな時変わってやる。
その後PCゲームを二人でする。
愛莉に指示を出しながらゲームをする。
たまに桐谷君たちに一緒にダンジョン行こうと言って誘われることもある。
そこでしか手に入れられないレアアイテムもあるのでついて行く。
愛莉も一緒だ。
偶に車の爆音が聞こえると体がぴくっと動く。
愛莉が止めに入る。
「だめっていったでしょ?」
「わかってるよ」
愛莉にそう言って宥める。
ゲームが終わる頃には日を跨いでいることもある。
すぐにPCを消して二人ベッドに入る。
偶に愛莉がPCをつけて、動画を見ている。
僕がでてるCMの動画だ。
僕はあのあとスポンサーと契約を交わした。
多額の契約金を手にする事が出来た。
愛莉に指輪を買ってやることだってできる。
でもやはり待つことにした。
愛莉も承諾してくれた。
お金は貯えてある。
本当は、親の仕送りを止めてもらうkとも考えた。
だけど両親は「そのお金はいざという時の為にとっておきなさい」という。
愛莉に預けることにした。
僕のお金を管理するのは愛莉らしいから。
愛莉は別口座を作った。
そこに今後の収入が入るようにしてある。
「愛莉、もういいだろ?今日は寝よう」
「は~い」
愛莉はベッドに潜り込むと僕に言う。
「本当に良かったの?」
「何が?」
「皆に言っちゃって。冬夜君止めれなくなっちゃうよ」
「前を向いていけっていうじゃない。勝つことしかイメージないよ」
「そっか~」
愛莉は納得したようだ。
がっちりと僕に抱き着いてる。
寝てる間に出ていくことがないようにと。
愛莉に温かさを感じながらその日は眠りについた。
「うーっす」
僕はコートに入ると挨拶する。
愛莉は2階で見てる。
「おっす冬夜。話は木元先輩や佐(たすく)から聞いたぞ」
真司がそう言って挨拶を返した。
「世界一とはまた随分派手な約束かましたな」
ストレッチしながら話を聞いている。
「そのくらいしないと納得してくれないと思ってね」
もっとも佐倉さんは納得してないみたいだけど。
ストレッチを終えるとボールを取りシュート練習をする。
シュート練習をソコソコに終えると真司に手伝ってもらいシュート練習してる反対側のコートを使い1ON1を始める。
パスとシュート以外に選択肢を広げたい。ならドリブルを鍛えよう。
そう思ってマンツーの練習を取り組むことになった。
「先輩クロスオーバーだけじゃなくて他の技術も使って。癖になってますよ!直ぐ見抜かれます」
佐倉さんに呼ばれる。
佐倉さんは僕に動画を見せる。
「それを見てドリブルのテクニック全部覚えるくらいの勢いでやってください」
「……何種類あるのこれ?」
「そのくらい覚えないと世界一なんて無理ですよ!」
とりあえず動画を見る。
一つ一つ見ながら実際に試してみる。
大体がレッグスルーか、バックチェンジの応用みたいなものだった。
基本的だけど意識をボールだけに向けない相手の手と足を見る。そんなところか。
理解はした。後は実践あるのみ。
真司に頼むとまたマンツーを始めた。
しかし真司には失礼だけどそんなに高度な技術使わなくても基本的な技術だけで抜けちゃうんだよね。
ドリブルしかしないというハンデを負っても。
「やっぱり先輩を一人で止める選手なんて国内にいないですよね」
佐倉さんが頭を悩ませる。
「真司俺も手伝う。ディフェンスくらいなら問題ないだろ?桜子」
佐がそう言うと「無理なディフェンスしちゃだめですよ」佐倉さんが一言いう。
「よしこいっ!」
試したい事があった。
ドリブルをすると二人に突進する。二人が中心を塞ぐバックチェンジで右手に持ち替えつつ右側に一回転する。
軽やかにステップを踏みながら空中でボールを受けドリブルを続ける。ディフェンスに背を向けさらに切り込む。前が空いた。ゴールに向かって跳躍する。後ろからブロックを受けるも体を反転させながらボールを持ち替えブロックを躱してシュート。
「ダブルチームでもダメなのかよ!」
「……トリプルだとさすがにドリブルだけじゃきついかな」
「さすがにトリプルついてドリブルだけで抜くって場面はないだろ」
真司がそう言って笑う。
昼前になると女バスが集まってくる。
「おはよう!」
女バスの明るい声が響き渡る。
女バスもストレッチを終えると個人練習を始めた。
7番の3Pを見ていた。
余り安定してないようだ。
7番の選手、村川さんが僕の視線に気がついたようだ。
「ははは、私腕力無いからワンハンドじゃロングシュート苦手でね」
女性は皆そうみたいだね。
「何かアドバイスあったら欲しいな~」
「あまり力むなって感じですね。あとは飛ぶ時は前に飛ばすに真上に跳ぶこと。手もスナップを聞かせて回転をかける。この時手を傾け過ぎない事。ボールは高くふんわりと上げる事。足首を使って飛ぶこと。腕じゃなくて手をリングに向けて打つことですかね?」
そう助言したのは僕じゃない。佐倉さんだった。
「何ぼーっと女子のプレイに見とれているんですか!?そんな暇あったら3P10本連続で入るまで打ち続ける!」
怒っているのは佐倉さんだけじゃない、愛莉も上からの目線が怖かった。
そして怒っているのは女性だけじゃない。
「冬夜!何俺の茉里奈に手を出してるんだよ!」
「だしてないよ!」
「冬夜、茉里奈に教える暇あったら俺に3P教えてくれよ」
「教えるって言ってもなあ……」
「何でもいいからコツでもいいから教えてくれよ」
「……なんでもいいのか?」
「ああ」
「ゴールを見てたら何となく軌道が見えるだろ?それになぞるように打つだけだよ。後は強弱の問題」
「……聞いた俺が馬鹿だった」
だから言ったろ?
(2)
僕と晶ちゃんは成田空港に到着した。
行き先は晶ちゃんから聞いてない。
「ところでどこに行くんだい?」
「分からない?新婚旅行よ」
「それはわかるんだけどね?」
行き先もツアーもすべて晶ちゃんが手配してくれた。
普通に考えたらハワイとかなんだろうけど……。
「せめて行先だけでも教えてくれないかい?」
「行ってみての楽しみってあるでしょ?」
恐怖しか感じられないんだけど。
「えーとハネムーンツアーの皆さまこの旗の下に集合してください」
「ほら行くわよ」
晶ちゃんが腕を掴んで僕を引っ張る。
「本日は当旅行ツアーにご参加いただきありがとうございます。8日間のんびりお楽しみください」
8日間!?
「どうりで荷物が多いと思ったよ」
「それでは搭乗手続きの方にご案内します」
ぞろゾロと集団で行動する。
搭乗手続きをすると手荷物を預ける。僕達はキャリーバッグを預ける。
その後出入国検査を受ける。
そのあと搭乗ゲートに向かい時間を潰す。時間が来ると飛行機に乗る。
「本日は……航空をご利用いただき……」
なんかとんでもない国名を聞いた気がするんだけど。
ペアシートになっていたので隣には機内放送を聞きながらくつろいでる晶ちゃんがいる。
「当機は……に……着の便です、時刻は」
はい?
「言っとくけど目的地じゃないからね。乗り継ぎらしいのよ」
そう言ってる間に飛行機は離陸する。
「そろそろ教えてくれてもいいだろう?」
「そうね、もう今更引き戻せないしね?」
「どこなんだい?」
「スペインよ」
「はい?」
「手堅くイタリアも考えたんだけど……ちょっとね」
そのちょっとが凄く疑問なんだけど。
多くの不安を抱えたまま。僕たちはヨーロッパ国内便を乗り継いでスペインに向かった。
(3)
「ただいま~」
「おかえり~、お風呂準備出来てるわよ」
「ありがとう」
僕は家に帰るとお風呂に入った。
その間に恵美は食事の準備をしている。
今日は魚料理だった。
それを食べると恵美がお風呂に行ってる間に片づけをする。
それが終わると冷蔵庫からビールを取り出し一杯飲みながらテレビを見る。
恵美が風呂からもどってくると「私にも一杯ちょうだい」と言い、グラスに注ぐ。
その後は恵美の好きなドラマを見る。
僕の好きな女優の出てる番組。
番組の途中にCMが流れる。
バッシュのCMだ。
それに注目する。
片桐君が出ている。
片桐君は結局契約を交わしたらしい。
最初だからと2年契約が認められたんだとか。
プロ転向の意思は無いと伝えたがそれでもいいとメーカー側が妥協したらしい。
契約金は明かされていない。
それにしても早すぎる契約とCMの撮影だ。
既に用意されていたのだろうか?
ドラマが終わるとニュースを見る。
未だに片桐君の話題で持ちきりだ。
バスケットがここまで取りあげられるのも珍しい。
しばらくすると「そろそろ寝た方が良いんじゃない」と恵美が言う。
寝室にはいるとベッドに入り恵美と会話する。
話題は片桐君についてだ。
「すっかり時の人になっちゃたわね」
「そうだね」
「遠い存在になっちゃったみたい」
「そんなことはないよ、本質は変わってないと思うし」
カップ蕎麦のCMとかもオファーが来てるとか。
冬夜君なら喜んで出るだろうな。
「これで愛莉ちゃんも安心して結婚できるわね。片桐君一生分のお金手に入れてるんだし」
「どうだろうね。本人は就職するまではと考えてるんじゃないかな?」
安定した生活を求めているようだし。
じゃ、なきゃプロになれるのを捨ててまで就職しようとは思わないだろ?
「私達も早く挙式したいわね」
いつしてくれるの?と恵美が催促する。
「もうちょっと待って」
結局引っ越し費用も恵美が全額負担した。お金は残ってる。せめて折半したい。
「いつまでも待つわよ」
恵美はそう言って笑う。
「ごめんね」
「いいのよ、あなたが納得するまで頑張ればいいわ」
そう言って恵美は眠った。
僕も寝ることにした。
(4)
寝耳に水だった。
春樹が事故った。
あり得ない。
春樹の運転で事故なるなんて。
巻き込まれた?
私は、瑛大君の車で別府の救急病院に急いだ。
渡辺班の面々も駆け付けている。
事情を聞いた。
「カーブで後ろから不意に当てたやつがいるらしい」
それで挙動を乱して事故ったんだとか。
私の顔は青ざめていた。
「春樹は無事なの?」
「命に別状はないらしいよ、咲良さん落ち着いて」
その後看護師がと春樹の両親が病室から出てきた。
「息子が皆さんに話があるそうです。どうか聞いてやってください」
私達は病室に入る。
腕と足にギブスを嵌められ横たわってる春樹を見て思わず泣いてしまった。
「片桐はいるか?」
「いるけど?」
「絶対に別府の山には行くな。あいつら、事故らせるのを面白がってる。片桐はバスケの件もある。万が一の場合を考えて行動しろ」
「私が絶対に行かせないから大丈夫」
と愛莉が言うけど。冬夜君の意思は別の方に向いてるようだ。
「でも……」
許せない。
片桐君の心中は穏やかではなかったようだ。
「冬夜これは渡辺班としての命令だ。絶対に行くな!韓国戦もあるしユニバーシアードもあるんだろ?今不祥事を起こしたらどうなるかくらいお前だって分かってるだろ?」
「……わかったよ」
渡辺君の説得を受け入れたようだ。
「でもどんな風にしてそうなったの?」
「……コーナーでドリフトしてたら後ろから軽く当てらえてな。制御がきかなくなってポールに当ってそれからは覚えてない」
「なるほどね。酷い連中だね」
「ああ、悪質な連中だ。お前は関わるな。アイツらはレースを求めてるんじゃない。潰しにかかってるだけだ」
「それって別府の山だけじゃないって事じゃない?」
「……そうかもな」
「冬夜君は夜山に行くの禁止!」
遠坂さんが突然言った。
「冬夜君言ったよね『本気でバスケやる』って……だったら、怪我するかもしれないことしちゃだめ!これは私からのお願い。冬夜君のお願い聞いてるんだからそのくらい守って」
遠坂さんが片桐君に縋る。
「トーヤの欠点だ。すぐに頭に血が上ってなにするかわかんない。今回だけは愛莉の言うこと聞いとけ」と神奈さんが言う。
「私からもお願いします~。決して仇討とか考えないでください~」
私からもお願いした。
「愛莉、夜しっかりトーヤを見張ってろ!この馬鹿目を離すと何するか分からない」
「神奈わかった」
やれやれと頭を掻く片桐君。
「あの、そろそろ面会時間過ぎてますので……」
看護師さんが言うと皆病院を出た。
そのあとファミレスで作戦会議。
「今回は相手にしないが一番だろうな」
渡辺君が言うと皆が頷く。
「私からもお願いします~」と言う。
片桐君だけは納得していないようだ。
「冬夜、聞いてるのか……?」
「聞いてるよ」
「冬夜、同じアスリートとして忠告させてもらう、お前危機管理が足りなさすぎる。今まで無事だったからいいものの。今はこれまでと環境が違うんだ。自分の体が資本なんだぞ。もっと自分を大事にしろ」
多田君が説得すると神奈さんも続けて言った。
「自分もだけど愛莉の事も考えてやれ。咲良だって取り乱すんだ。愛莉がどうなるかくらいわかるだろ?」
「分かってるってば!」
「じゃあ何でそんなにイラついてるんだよ」
「車を大事にしない走り屋なんて許されないだろ?」
「何も分かってないじゃないか!その自分は走り屋だって意識は捨てろ!お前はもうれっきとしたバスケ選手なんだぞ」
神奈さんが叫ぶ。
「冬夜君私を置いて遊びに行かないって言ったよね?私が一緒に乗ったら危険な運転しないって言ったよね?だったらそれ守ってよ」
遠坂さんが片桐君の腕にしがみ付く。
遠坂さんの涙声を聞いて少しは我に返ったのか……。
「わかったよ」と一言言った。
だけどこの件はこれだけでは済まなかったのだった。
(5)
その日の帰り。
愛莉を乗せて家に帰る僕。
檜山先輩をあんな目にあわせたやつ、許せなかった。
わざとぶつけた?
絶対に許されない所業だ。
別府の山の谷は深い。
もし崖側でなくて谷川だったらと思うとぞっとする。
「お~い」
愛莉が何か言ってる。
「またさっきの事考えてるでしょ?駄目だからね!」
バスケ選手として、しかもスポーツメーカーや飲料メーカーとの短期契約を結んでいる現状。事故を起こして違約金なんて取られたら目も当てられない。
やっぱり、契約なんてするんじゃなかったか?
「そうじゃなくて、車はもう卒業して。そんな怖い人たちがいるのに冬夜君が山に行くなんて絶対に許せません。佐倉さんだって止めるよ」
「……わかってるよ」
「分かってないから悩んでるんでしょ!」
「愛莉、じゃあ僕のストレスはどこで吐き出したらいいの?」
「冬夜君ストレス抱えてるの?」
「毎日バスケ漬けじゃストレスも抱えるさ」
「うぅ……私じゃ駄目なの?」
「愛莉に不満を言うなんて無理だろ?」
「そのくらい受け止める度量くらいつけたつもりだよ?それとも私といるのもストレス?」
「それはないけど」
本気になったとは言え、やはり息抜きは欲しい。どうやって息抜きしたらいいか分からない。
「冬夜君は前はダラダラ過ごしてたから余裕があったけど今はバスケの練習で疲れてるんだよ?そんな状態であんな危険な運転絶対ダメ」
愛莉のいう事も一理ある。あそこまで集中力を保てるかどうか怪しい。
「ゲームに夢中になってた方がまだましだよ。一緒にゲームしてあげるからそれで気を紛らわそう?あとはお昼にドライブに行ったりデートしたリ……」
愛莉がありとあらゆる気分転換の方法を羅列する。
愛莉も僕の事考えてくれてるんだな。
「わかったよ、もうあんな運転はしない」
「本当?」
愛莉の表情が明るくなる。
「ああ、オフは愛莉とのんびり過ごすよ」
「わ~い」
愛莉の笑顔を見ているだけでこんなに気持ちが穏やかになれるとはね……。
(6)
マドリッドに着くと、すぐにホテルに向かった。
チェックインをして部屋に入る。
食事をしてシャワーを浴びるとベッドにダイブする。
いやあ、一日中飛行機に乗ってるのも疲れるね。
明日からスペイン観光だ。
「明日の朝早いから早めに寝た方がいいわよ」
晶ちゃんが言う。
「ところでどうしてスペインなんだい?」
晶ちゃんならフランスを選ぶと思ったけど。
「特に理由はないわ。情熱の国って聞いただけで行ってみたいと思っただけどよ」
観光地も多いみたいだし、と付け加えた。
晶ちゃんはパンフレットを僕に見せる。
「ほら、こことか素敵じゃない?」」
中世風の建築物が沢山ある。ヨーロッパならではの観光名所。
「いいね」
「でしょう!だから今日早く寝て明日に備えましょう」
晶ちゃんがそう言ってベッドの中に誘う。
言われるがままにベッドの中に入る。
話題は片桐君の事になった。
すでにCMが流れている。
某スポーツメーカーのバッシュのCMとかだ。
まだ1週間も経ってないのに早すぎる。
片桐君は結局契約を飲んだのだろうか?
だとしたらもう立派なプロ選手だ。
それを2年でやめるなんて許されるのだろうか?
そもそもやめる条件をクリアできるのか?
片桐君は自分を追い詰めるのが好きらしい。
追い詰めないと何もできないというのが実際のところなんだろう。
「それにしてもプロという道を外してまで、選びたい道ってなんでしょうね?」
晶ちゃんは悩む。
「それならなんとなく理由がわかるけど?」
「なに?」
「プロになると家にいられる時間が少なくなる。片桐君はそれを心配しているんだろう。でもそんな理由到底皆が受け入れるはずがない。だから無茶な条件をだして納得させてるんだろうね」
「そんなに愛莉のそばにいたいの?」
「離れるのが不安なんでしょう」
「……前に愛莉が言っていたわ『二人一緒だから安心していられるんだ』って」
「それが理由だろうね」
「理解し難い物ね」
「そんな絆で結ばれてるのさ」
「絆か……」
晶ちゃんは考えている。
どうしたらいいかくらい僕だって心得てある。
「僕達だって誓い合ったばかりだろ」
「そうだったわね」
そう言うと灯りを消して眠りについた。
夢がかなうと良いね。片桐君。
(7)
愛莉はその晩ゲームを僕としていた。
正確に言うと愛莉がゲームしているのを僕が見ていた。
愛莉は器用だけどゲームは苦手のようだ。
操作にもたついている間に死んじゃうことがよくある。
そんな時変わってやる。
その後PCゲームを二人でする。
愛莉に指示を出しながらゲームをする。
たまに桐谷君たちに一緒にダンジョン行こうと言って誘われることもある。
そこでしか手に入れられないレアアイテムもあるのでついて行く。
愛莉も一緒だ。
偶に車の爆音が聞こえると体がぴくっと動く。
愛莉が止めに入る。
「だめっていったでしょ?」
「わかってるよ」
愛莉にそう言って宥める。
ゲームが終わる頃には日を跨いでいることもある。
すぐにPCを消して二人ベッドに入る。
偶に愛莉がPCをつけて、動画を見ている。
僕がでてるCMの動画だ。
僕はあのあとスポンサーと契約を交わした。
多額の契約金を手にする事が出来た。
愛莉に指輪を買ってやることだってできる。
でもやはり待つことにした。
愛莉も承諾してくれた。
お金は貯えてある。
本当は、親の仕送りを止めてもらうkとも考えた。
だけど両親は「そのお金はいざという時の為にとっておきなさい」という。
愛莉に預けることにした。
僕のお金を管理するのは愛莉らしいから。
愛莉は別口座を作った。
そこに今後の収入が入るようにしてある。
「愛莉、もういいだろ?今日は寝よう」
「は~い」
愛莉はベッドに潜り込むと僕に言う。
「本当に良かったの?」
「何が?」
「皆に言っちゃって。冬夜君止めれなくなっちゃうよ」
「前を向いていけっていうじゃない。勝つことしかイメージないよ」
「そっか~」
愛莉は納得したようだ。
がっちりと僕に抱き着いてる。
寝てる間に出ていくことがないようにと。
愛莉に温かさを感じながらその日は眠りについた。
0
あなたにおすすめの小説
王宮に薬を届けに行ったなら
佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。
カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。
この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。
慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。
弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。
「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」
驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。
「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」
※ベリーズカフェにも掲載中です。そちらではラナの設定が変わっています。(貴族→庶民)それにより、内容も少し変更しておりますのであわせてお楽しみください。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。
楠ノ木雫
恋愛
蒸発した母の借金を擦り付けられた主人公瑠奈は、お見合い代行のアルバイトを受けた。だが、そのお見合い相手、矢野湊に借金の事を見破られ3ヶ月間恋人役を務めるアルバイトを提案された。瑠奈はその報酬に飛びついたが……
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
厄災烙印の令嬢は貧乏辺境伯領に嫁がされるようです
あおまる三行
恋愛
王都の洗礼式で「厄災をもたらす」という烙印を持っていることを公表された令嬢・ルーチェ。
社交界では腫れ物扱い、家族からも厄介者として距離を置かれ、心がすり減るような日々を送ってきた彼女は、家の事情で辺境伯ダリウスのもとへ嫁ぐことになる。
辺境伯領は「貧乏」で知られている、魔獣のせいで荒廃しきった領地。
冷たい仕打ちには慣れてしまっていたルーチェは抵抗することなくそこへ向かい、辺境の生活にも身を縮める覚悟をしていた。
けれど、実際に待っていたのは──想像とはまるで違う、温かくて優しい人々と、穏やかで心が満たされていくような暮らし。
そして、誰より誠実なダリウスの隣で、ルーチェは少しずつ“自分の居場所”を取り戻していく。
静かな辺境から始まる、甘く優しい逆転マリッジラブ物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる