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4thSEASON
陰謀の足跡
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(1)
ピピピピ……。
目を覚ます。
冬夜君がアラームを消している。
私は寝たふりをする。
冬夜君の目覚めの合図を待っている。
今日は晴れてるみたい。
冬夜君はベッドから出ようとしている。
がしっ
逃がさないんだから!
ちゃんとしてくれるまで起きてあげないんだもん。
「愛莉、今日はジョギングする時間あるぞ。遅れちゃうよ」
知ってるよ~。だから早くして。
困ったお嫁さんだとか思ってるでしょ?
毎朝の行事だよ。
もう今更照れも何もないでしょ?
ほら、早く。
「愛莉、起きて」
言葉と共に唇に触れる冬夜君の唇。
思わず冬夜君を抱きしめる。
「おはよう冬夜君」
目を開けると眠そうにしている冬夜君がいた。
私は起きると急いで着替える。
その間に冬夜君も着替えてる。
そして朝のジョギングを済ませると冬夜君はシャワーを浴びに行く。
その間に朝食を作る。
シャワーから戻ってくると冬夜君は配膳を手伝ってくれる。
冬夜君のパパさんと麻耶さんが起きてきた。
4人そろって朝食にする。
「そう言えば昨日蒼良を捕まえたんだって?」
どこから入ってくるのそういう情報?
冬夜君も同じ事を想ったらしい、冬夜君のパパさんに聞いていた。
「俺にも昔のツテがある。そういう情報はすぐに手に入る。流石は俺の息子だ。だが油断するなよ。ここからが本番だ」
冬夜君のパパさんの顔つきは真剣だ。
冬夜君も真面目に聞いている。
冬夜君は部屋に戻る。
私も部屋に戻って着替えをもって、シャワーを浴びにいった。
その際に冬夜君に聞いてみた。
「今日の下着どれが良いかな?」
冬夜君は驚いていた。
冬夜君は悩んだ後、薄いパステルカラーの下着を選んでくれた。
冬夜君の好みはそういうのなんだね?
そういうの大量に買っておかなくちゃ。
だっていつスカートめくられてもいい様にしておかないとね?
冬夜君は変わった。
朝からいちゃついてくれるようになった。
いい事なのか悪い事なのか分からないけど、私は嬉しい。
ほら、今日もシャワーから戻って髪を乾かしていると冬夜君が抱きついてくる。
男性の朝の性欲を馬鹿にしちゃいけない。
それは科学的にも証明されてるらしい。
冬夜君は私をただの性処理につかうのはお嫁さんに対して申し訳ないと思ってるらしい。
だから、朝からエッチな動画を見たりする。
誠君の癖が移ったのかと心配したけどそうじゃなかったんだね?
冬夜君なりの心遣いなんだね。
でも困ってるならいいんだよ、私も変わらなくちゃ。
冬夜君の欲を一緒に解消してあげる。
冬夜君は欲望だけで動いてるんじゃない、愛情もちゃんと確かにあるんだ。
そう思えるだけで私は幸せに思う。
「まだ準備終わってないよ~」
少しくらい焦らしてもいいよね。
「準備終わったらできないだろ?」
冬夜君が言う。
それもそうだね。
準備が終わると冬夜君と朝のコーヒータイム。
テレビを見ながらコーヒーを啜ってる。
冬夜君は私の匂いが気になるらしい。
そんなに匂いを嗅いでたらお犬さんみたいだよ。
カフェオレを飲み終えると私はマグカップをキッチンに持って行く。
落胆する冬夜君の表情。
そんな彼を後目に部屋を出る。
戻ってくるとスマホを弄っている。
そんな冬夜君の隣に座る。
そして冬夜君い身を預ける。
冬夜君はしっかり受け止めてくれた。
その姿勢のままテレビを見てる。
昨夜の事件について取り扱っていた。
警察の見解は事故。
そこに晶さん達の圧力がかかっていたのは言うまでもない。
だけどテレビ局の一部にはテロではないかと噂されていた。
そりゃそうだよね。
銃撃の跡が残ってるんだもん。
解説者が解説するが、どれも的外れな見解ばかり。
2人で笑って聞いていた。
もっとも冬夜君はそれどころじゃないみたいだけど。
私をじっと見ている。
私警戒してるように思った?
いつでもいいんだよ。
いつものように押し倒してきてよ。
だけど冬夜君はスマホを操作してる。
うぅ……。
そう来るなら良いもん!
私が冬夜君を押し倒す。
慌てる冬夜君。
偶には逆もいいでしょ。
「困ったお嫁さんだな」
冬夜君は言う。
「困った旦那様ですね」
私が言う。
時間的には無理だから冬夜君のデスクトップを開く。
誠君からもらった動画ファイルを見る。
けど冬夜君は今日はムラムラ来ないらしい。
私の香りが気になるそうだ。
ああ、今日は香水つけてるからね。
リラックス効果があるんだって。
でもやっぱり気になるのは気になるらしい。
私の胸とかを触ってくる。
そんなに触っちゃだめだよ。
私までその気になっちゃう。
いや、最初からその気になってたのかもしれない。
冬夜君の為すがままにされる私。
けれで現実は残酷で。
「ぶ~、時間切れで~す」
嘆く冬夜君。
スマホとか弄ってるからだよ。
「また夜だね?」
私は笑顔で返す。
「今夜も遅くなるぞ、多分」
そうだね。きっとユニティの活動あるよね。
冬夜君は部活もあるし、大変だね。
「休前日にしよっ!」
「……そうだな」
でも明日の朝も同じことを繰り返すんだろうな?
同じ朝を迎えられる喜び。
誰よりも強く感じていた。
(2)
昼休みに入ると、愛莉のお弁当を食べる。
眠気より食い気。
弁当を食べていると皆が集まってくる。
「昨夜は皆お疲れ」
渡辺君が言う。
「お疲れ」
「冬夜、今夜集まれるか?」
「大丈夫だけど」
また愛莉との夜はお預けだな。
愛莉をちらりと見る、少し寂しそうだった。
「じゃ、今夜またファミレスで」
「檜山先輩呼んでくれないか?」
僕は渡辺君に頼んでた。
「……例の暗号の件か?」
渡辺君が言うと僕は頷く。
「分かった。呼び出しかけてみる」
「ゴッドさんはどうなったの?」
愛莉が聞く。
「今のところ問題はないよ。こっちの質問にも答えてくれてる。ただ気になる言葉が出てな『神は祭り上げられる存在。神の陰で得をするものがいる』ってさ」
やっぱりね。
「冬夜君の言った通りだね?でも冬夜君どうして分かったの?」
「信じる者と書いて儲けるって書くそうで」
「ほえ?」
「もちろん神と呼ばれる存在も儲けてるよ。でもそれ以上に祭り上げてる存在が利益を得ているはずなんだ」
「なるほどね~、それが誰だかわかるの?」
「分かったら苦労しないよ。大体の想像はつくけど。渡辺君はその辺の話は?」
「それについては黙秘したままだ」
「カマかける必要があるね?」
僕が言うとみんな驚いていた。
「カマかけるって目星はついてるのか?」
渡辺君が聞く。
「いったろ?大体の想像はつくと。神を祭り上げて利益を得る存在。相手のクラスを考えたらすぐわかるよ」
それを確かめる為に一度ゴッドに会う必要がある。
「今夜にでも会うか?」
「出来る?」
「それは可能よ」
晶さんが言う。
「じゃあ、折角だし別府のファミレスにしようか?」
「前に誰か言ってたよね。酔っ払いのたわ言くらいにしか聞こえないってだったらもっと騒げる場所でもいい」
「どこだそれ?」
別府で騒ぐ場所って言ったら限られてるでしょ。
「それはね……」
ぽかっ
愛莉には気づかれたようだ。
「渡辺君ファミレスでいいよ!冬夜君の狙いは他にあるんだから!どうせ焼肉食べたいとかそんな考えなんでしょうけどそうはいきませんからね!」
「愛莉、お前の勘もたいしたもんだな!」
カンナが愛莉を褒める。
「そうだな……ファミレスにしよう」
「誰が来れる?」
「時間も時間だしな。大体のメンバーは来れると思う」
「そうか、それはよかった」
「どうした冬夜?誰か気になる人でもいるのか?」
「桐谷君にキャバクラでどれだけ情報を漏らしたのか気になる」
今さら気にする必要もないけどね。
「瑛大にはお灸をすえないといけないしな。分かった」
渡辺君が頷く。
本当はもっと気になることがあった。
昨日の騒ぎ、本当にあれでよかったのか?得をしたのは僕達だけか?
だけどそれはいくら考えても思いつかなかった。
(3)
「ゴッドは殉職した」
新しいエゴイストのホームページには昨夜起きた惨状の跡がしるされてある。
敵対グループユニティの過剰な報復。
その結果、エゴイストの末端の怒りはユニティに向けられている。
「ゴッドは真の神となった」
そう書き込まれてある。
エゴイストの新生。
エゴイストのメンバーが盛り上がる。
全てウォーロックの計画通りだ。
しかし、ゴッドがすべてを喋ればすべては水泡と帰す。
「大丈夫なの?」
私はウォーロックに聞いていた。
「死人に口なしってね?神はもういない。法的証拠にはならない」
「DNA鑑定を受ければ隠ぺいの事実も発覚するのでは?」
「そういうのをもみ消すのはうちの得意分野だろ?」
「あなたがそこまで言うのならそうなのでしょうね。失敗は許されない」
「大丈夫だよ、ただ。もみ消す準備はしなきゃいけない。ウィザードもまだ見つかってないしね」
彼と私はドーナツを食べながら話をしていた。
「まだ、エゴイストが新生するには時間がかかる。その時間を稼がなくちゃいけない。その為の隠蔽工作は施してある」
「隠蔽工作?」
「言ったろ?彼らと同じ手段を取ると。ただその手段も探られてはいけない」
「……デコイか?」
「ああ、まずは。問題の火種から作り直す」
「……わかった。その後は?」
「木を隠すなら森の中ってね」
ウォーロックは笑いながら言ってた。
「森は既に出来上がっている?」
「ああ、すでに『幸せを運ぶサークル』は乱立している。チャンスだ」
ウォーロックの狙いはわかった。
私は頷いた。
「連中の手札を無効化させる。可能な限り一枚でも多く」
「どの事実も真相には届かない」
「ああ、麗しき君の言う通りだよ」
「その呼び方は止めて」
「気に障ったら謝るよ」
「じゃあ、今日はこの辺で。また来週ね」
「偶には遊んでいかない?いつも味気ないデートじゃないか?」
「私は遊びに来たんじゃない」
「それは残念」
私達は店を出る。
「次の場所はまた指示するよ。たまには映画館とかもいいかもね?」
「あなたデートのつもり?」
「そのくらいの感覚で会ったほうが違和感ないと思うけど?」
「わかったわ……映画館ね」
「好みの映画とかある?」
どこまで本気なのだろうか?この男は?
「特に興味ない。あなたに任せる」
「ラブロマンス物がいいかもね」
「私はあなたにそんな感情持ったことは一切ない」
「それは残念」
「ではまた」
「ああ、麗しき君」
どこまでもふざけた男。
だけど彼の手腕はゴッド以上だ。
エゴイストの新生には必要不可欠な存在。
そしてこれからの私にも必要不可欠な存在。
だけどそこに恋愛感情は無い。
車に乗り込むと車は出る。
私達の計画はまだ始まったばかりだ。
(4)
「エゴイストが捕まった」
寝耳に水だった
潜入捜査にやられたらしい。
ゴッドも捕まって情報が漏れたか。
しかしゴッドは死んだと聞いてある。
何が起こっている?
このままでは俺にも手がかかる。
その時スマホが着信した。
ウォーロックからだ。
「どういう事だウォーロック!?」
「その調子だと知ってるみたいだね」
「今テレビを見た」
「じゃあ、説明はいらないね。君には用件だけを伝えるよ」
「用件?」
俺に何をしろというのか?
「君には新しくエゴイストを作って欲しい」
「エゴイストを作り直す?」
「ああ、そのための部下は準備してやる」
「俺がお縄にかかることはないのか?」
「心配するな。手は打ってある」
「しかし、奴らの罠はどこまで張り巡らされてるかわからない」
「心配するなエンペラー。君には絶対に届かない」
「信用していいんだな」
「神に誓って」
「その神は死んだぞ!」
「じゃあ何に誓えば良い?」
ふざけてるのかこいつは。
「……保証してもらえるんだろうな?」
「君も言ったろ『神はいない』と万能な奴なんていないさ」
「……わかった。それで手はずは?」
「前と一緒でいい。名前も変える必要はない。上手くいく。心配するな。エンペラー」
「……わかった」
「念のため君の新居を用意してやる。執行者をよこすから言われたとおりに行動しろ」
「わかった」
「じゃあ幸運を、エンペラー」
ウォーロック、何を考えている?子供のゲーム感覚で遊んでいるつもりなんだろうか?
(5)
夕方のニュースを見て驚いた。
乱交サークル「エゴイスト」逮捕。
僕達は何もしていない。
情報もリークしていない。
可能性があるとすれば……。
「腐ったミカンはもう要らない……か」
僕達はエゴイストの全容は解明していた。
だが、肝心の高橋グループの事まではまだ辿り着いてない。
「フリージア」も迂闊に出せなくなった。
「ダメだ!奴ら強固なサーバーに変えやがった」
誠がノートPCを使って新しいサーバーに侵入しようとしている。
だが、罠が張り巡らされていてうかつに侵入できないという。
「無理そうか?」
「いや、方法はある」
誠はにやりと笑う。
「無理矢理こじ開ける事も可能だけど、それはスマートじゃない。もっとシンプルな方法を使う」
「どんな方法?」
「名付けて人間トロイの木馬作戦」
はい?
「言ったろ。エゴイストのサーバーに接続した奴らは大体網羅済みだと」
「エゴイストのメンバーは全員捕まったと」
「まだ捕まってないやつがいる」
「……ポープさんとエンペラーさんとウォーロックさんだ」
「あとハーミットもいるけどね」
愛莉が答えると誠はそう返す。
「で、どうするんだ?」
「4人とも幹部だろ?当然深いところまでアクセス権限があるはずだ。その権限を乗っ取る」
「バレないのか?」
「誘導してもらうだけ。全然問題ないよ」
「で、その後どうする?」
「後は重要な情報だけ抜き取っておさらばさ」
「過信するなよ。完全にクロなんだ」
「わーってるって。心配するな。それよりお前の方こそ大丈夫なのか?」
「会ってみないと分からないよ」
「成功を祈る」
「ついでに、誠にお願いがあるんだけど?」
「なんだ?」
「地元銀行のサーバーに侵入できるか?」
「お安い御用だ」
「じゃあ、今夜頼む」
「地元銀行に拘るんだな?」
「多分そこが肝心なんだ」
「ゴッドの情報か?」
「ああ」
「じゃあ、夜な」
電話をしているうちに晶さんの別荘に辿り着く。
僕と愛莉は門番の人に話をするとすんなり中に入れてくれた。
「君は片桐冬夜?」
「どうも」
ゴッドに話しかけると用件だけを伝えた。
「エゴイストが捕まった。時間が無い。『鍵』を渡して欲しい」
「君は頭も切れるらしいな」
「そう言われるのは初めてです」
「俺の首にかけてあるストラップをとってくれ」
ろくに身体チェックもしなかったらしい。
首にかけられたストラップにはUSBメモリと鍵がくくられてあった。
「重要な証拠だ。大切に使え」
「ありがとう。あ、それと君の言った神を祭り上げてる存在分かってるよ」
「え?」
愛莉がそう言う。
「君は勘がするどいな。ここ通信網はないんだな……察しの通りだ」
「神に認められた存在が一番神の恩恵をうけるからね」
愛莉は不思議そうに僕を見ている
「その通りだよ」
ゴッドはそう言う。
「ありがとう、じゃあまた」
そう言うと踵を返して車に乗る。
「冬夜君、それな~に?」
「いいものだよ。それより檜山先輩に連絡してくれないかな。地元銀行の本店で待ち合わせしようって」
「わかった~」
愛莉はスマホを操作する。そして……。
「いいよって~」
車を一度地元に向けて走らせる。
「ねえ?神に認められてた人って誰?」
「古来よりエンペラーは神に選ばれた人間とか神が人間に成りすましているとか言われてるんだ。そしてそれを認めているのはポープ。ポープは神の代行者として崇められている」
「なるほどね……」
愛莉は感心している。
銀行に着くと檜山先輩と咲良さんがいた。
「俺に何の用だ?」
「貸金庫に案内して欲しいんだけど」
「ああ、そういうことか?」
貸金庫は無数にあったけど僕は39番の金庫のカギを開ける。
当っていた。
中には分厚い茶封筒に沢山の資料が入っている。
それをバッグに仕舞うと銀行を出る。
「じゃあ、先輩別府のファミレスで……あと……」
「……わかった。確認しておく」
「冬夜君今のって?」
「謎は全て解けたよ」
ぽかっ
「漫画の台詞は引用しちゃダメっていったでしょ!」
もう古いからばれないと思ったんだけどな。
別府のファミレスに着くと皆待っていた。
僕は恵美さんにさっき銀行で入手した。資料を渡し、誠にはUSBメモリを渡す。
「これは?」
2人が僕に聞く。
「神の贈り物だよ。慎重に使って」
「……わかった」
2人は大事にしまう。
「別府に呼び寄せたのは他に用事あるんだろ?」
檜山先輩が聞く。
「檜山先輩さっきの件は?」
「父さんのツテを使って調べたよ。冬夜すごいな、お前の言う通りだった」
やっぱり。
「誠、侵入は?」
「とっくにできてるよ。で、何を調べたらいいんだ?」
「口座番号***-***-0009997を調べて欲しい」
「……わかった」
誠はすぐ行動に移す。
「これって……冬夜マジかよ!」
どうやら大当たりだったらしい。
「いったい何が入っているというの?」
恵美さんが聞く。
「高橋グループの本家の口座だ。闇金の移動なんかがすべて乗ってある」
みんな驚いて声がでないようだ。
「凄い冬夜君!どうしてわかったの?」
「地元銀行だってのは本人の口から聞いた、多分支店コードは本店だろうって直感した。残るは『サンキューな』だ」
「その謎が0009997なの?」
「サンキューは39、金庫の番号。397の可能性もあったけど」
「それで?」
「39を英語で言うとどうなる?」
「サーティナイン?」
愛莉は悩んでいるようだ?
「わかったぞ!スリーナインだな!」
カンナが叫ぶ。
僕は頷く。
「良く分かったな!」
「39じゃ口座番号にしては短いと思ったからね」
「これで、証拠固めは完ぺきね」
「すげーやUSBの中味も極秘資料だぜ……」
誠がノートPCをいじって驚いている。
「高橋グループとのつながりもしっかりある。後はどこに提出するかだな」
「やっぱり関幹事長や石生副大臣に渡す?」
「まだだよ」
僕は言った。
「どうしてだ?」
渡辺君が言う。
「相手はエゴイストを切り捨てた。もう一度尻尾を捕まえる必要がある。今度は切られないように胴体を押さえて」
「それならばっちりだぜ」
誠が言う。
「あいつらエゴイストを作り直すつもりらしい。検索ロボットに引っかからないようにして」
「で、捕まえたのか?」
「逃がすもんかよ。しっかり捕獲してあるぜ」
「やっとたどり着いたな」
渡辺君が言う。
「長かったが皆よく耐えた。ここからは一気に押すぞ!」
「おお!」
皆が盛り上がる。
「でも注意は必要だよ。父さん達は寸でのところで逃げられてしまった」
「逃げ道を塞ぐことからだね」
亜依さんが言うと僕は頷く。
もう絶対に逃がさない。
エゴイストも高橋グループもまとめて壊滅させてやる。
そう意気込んでいた。
ピピピピ……。
目を覚ます。
冬夜君がアラームを消している。
私は寝たふりをする。
冬夜君の目覚めの合図を待っている。
今日は晴れてるみたい。
冬夜君はベッドから出ようとしている。
がしっ
逃がさないんだから!
ちゃんとしてくれるまで起きてあげないんだもん。
「愛莉、今日はジョギングする時間あるぞ。遅れちゃうよ」
知ってるよ~。だから早くして。
困ったお嫁さんだとか思ってるでしょ?
毎朝の行事だよ。
もう今更照れも何もないでしょ?
ほら、早く。
「愛莉、起きて」
言葉と共に唇に触れる冬夜君の唇。
思わず冬夜君を抱きしめる。
「おはよう冬夜君」
目を開けると眠そうにしている冬夜君がいた。
私は起きると急いで着替える。
その間に冬夜君も着替えてる。
そして朝のジョギングを済ませると冬夜君はシャワーを浴びに行く。
その間に朝食を作る。
シャワーから戻ってくると冬夜君は配膳を手伝ってくれる。
冬夜君のパパさんと麻耶さんが起きてきた。
4人そろって朝食にする。
「そう言えば昨日蒼良を捕まえたんだって?」
どこから入ってくるのそういう情報?
冬夜君も同じ事を想ったらしい、冬夜君のパパさんに聞いていた。
「俺にも昔のツテがある。そういう情報はすぐに手に入る。流石は俺の息子だ。だが油断するなよ。ここからが本番だ」
冬夜君のパパさんの顔つきは真剣だ。
冬夜君も真面目に聞いている。
冬夜君は部屋に戻る。
私も部屋に戻って着替えをもって、シャワーを浴びにいった。
その際に冬夜君に聞いてみた。
「今日の下着どれが良いかな?」
冬夜君は驚いていた。
冬夜君は悩んだ後、薄いパステルカラーの下着を選んでくれた。
冬夜君の好みはそういうのなんだね?
そういうの大量に買っておかなくちゃ。
だっていつスカートめくられてもいい様にしておかないとね?
冬夜君は変わった。
朝からいちゃついてくれるようになった。
いい事なのか悪い事なのか分からないけど、私は嬉しい。
ほら、今日もシャワーから戻って髪を乾かしていると冬夜君が抱きついてくる。
男性の朝の性欲を馬鹿にしちゃいけない。
それは科学的にも証明されてるらしい。
冬夜君は私をただの性処理につかうのはお嫁さんに対して申し訳ないと思ってるらしい。
だから、朝からエッチな動画を見たりする。
誠君の癖が移ったのかと心配したけどそうじゃなかったんだね?
冬夜君なりの心遣いなんだね。
でも困ってるならいいんだよ、私も変わらなくちゃ。
冬夜君の欲を一緒に解消してあげる。
冬夜君は欲望だけで動いてるんじゃない、愛情もちゃんと確かにあるんだ。
そう思えるだけで私は幸せに思う。
「まだ準備終わってないよ~」
少しくらい焦らしてもいいよね。
「準備終わったらできないだろ?」
冬夜君が言う。
それもそうだね。
準備が終わると冬夜君と朝のコーヒータイム。
テレビを見ながらコーヒーを啜ってる。
冬夜君は私の匂いが気になるらしい。
そんなに匂いを嗅いでたらお犬さんみたいだよ。
カフェオレを飲み終えると私はマグカップをキッチンに持って行く。
落胆する冬夜君の表情。
そんな彼を後目に部屋を出る。
戻ってくるとスマホを弄っている。
そんな冬夜君の隣に座る。
そして冬夜君い身を預ける。
冬夜君はしっかり受け止めてくれた。
その姿勢のままテレビを見てる。
昨夜の事件について取り扱っていた。
警察の見解は事故。
そこに晶さん達の圧力がかかっていたのは言うまでもない。
だけどテレビ局の一部にはテロではないかと噂されていた。
そりゃそうだよね。
銃撃の跡が残ってるんだもん。
解説者が解説するが、どれも的外れな見解ばかり。
2人で笑って聞いていた。
もっとも冬夜君はそれどころじゃないみたいだけど。
私をじっと見ている。
私警戒してるように思った?
いつでもいいんだよ。
いつものように押し倒してきてよ。
だけど冬夜君はスマホを操作してる。
うぅ……。
そう来るなら良いもん!
私が冬夜君を押し倒す。
慌てる冬夜君。
偶には逆もいいでしょ。
「困ったお嫁さんだな」
冬夜君は言う。
「困った旦那様ですね」
私が言う。
時間的には無理だから冬夜君のデスクトップを開く。
誠君からもらった動画ファイルを見る。
けど冬夜君は今日はムラムラ来ないらしい。
私の香りが気になるそうだ。
ああ、今日は香水つけてるからね。
リラックス効果があるんだって。
でもやっぱり気になるのは気になるらしい。
私の胸とかを触ってくる。
そんなに触っちゃだめだよ。
私までその気になっちゃう。
いや、最初からその気になってたのかもしれない。
冬夜君の為すがままにされる私。
けれで現実は残酷で。
「ぶ~、時間切れで~す」
嘆く冬夜君。
スマホとか弄ってるからだよ。
「また夜だね?」
私は笑顔で返す。
「今夜も遅くなるぞ、多分」
そうだね。きっとユニティの活動あるよね。
冬夜君は部活もあるし、大変だね。
「休前日にしよっ!」
「……そうだな」
でも明日の朝も同じことを繰り返すんだろうな?
同じ朝を迎えられる喜び。
誰よりも強く感じていた。
(2)
昼休みに入ると、愛莉のお弁当を食べる。
眠気より食い気。
弁当を食べていると皆が集まってくる。
「昨夜は皆お疲れ」
渡辺君が言う。
「お疲れ」
「冬夜、今夜集まれるか?」
「大丈夫だけど」
また愛莉との夜はお預けだな。
愛莉をちらりと見る、少し寂しそうだった。
「じゃ、今夜またファミレスで」
「檜山先輩呼んでくれないか?」
僕は渡辺君に頼んでた。
「……例の暗号の件か?」
渡辺君が言うと僕は頷く。
「分かった。呼び出しかけてみる」
「ゴッドさんはどうなったの?」
愛莉が聞く。
「今のところ問題はないよ。こっちの質問にも答えてくれてる。ただ気になる言葉が出てな『神は祭り上げられる存在。神の陰で得をするものがいる』ってさ」
やっぱりね。
「冬夜君の言った通りだね?でも冬夜君どうして分かったの?」
「信じる者と書いて儲けるって書くそうで」
「ほえ?」
「もちろん神と呼ばれる存在も儲けてるよ。でもそれ以上に祭り上げてる存在が利益を得ているはずなんだ」
「なるほどね~、それが誰だかわかるの?」
「分かったら苦労しないよ。大体の想像はつくけど。渡辺君はその辺の話は?」
「それについては黙秘したままだ」
「カマかける必要があるね?」
僕が言うとみんな驚いていた。
「カマかけるって目星はついてるのか?」
渡辺君が聞く。
「いったろ?大体の想像はつくと。神を祭り上げて利益を得る存在。相手のクラスを考えたらすぐわかるよ」
それを確かめる為に一度ゴッドに会う必要がある。
「今夜にでも会うか?」
「出来る?」
「それは可能よ」
晶さんが言う。
「じゃあ、折角だし別府のファミレスにしようか?」
「前に誰か言ってたよね。酔っ払いのたわ言くらいにしか聞こえないってだったらもっと騒げる場所でもいい」
「どこだそれ?」
別府で騒ぐ場所って言ったら限られてるでしょ。
「それはね……」
ぽかっ
愛莉には気づかれたようだ。
「渡辺君ファミレスでいいよ!冬夜君の狙いは他にあるんだから!どうせ焼肉食べたいとかそんな考えなんでしょうけどそうはいきませんからね!」
「愛莉、お前の勘もたいしたもんだな!」
カンナが愛莉を褒める。
「そうだな……ファミレスにしよう」
「誰が来れる?」
「時間も時間だしな。大体のメンバーは来れると思う」
「そうか、それはよかった」
「どうした冬夜?誰か気になる人でもいるのか?」
「桐谷君にキャバクラでどれだけ情報を漏らしたのか気になる」
今さら気にする必要もないけどね。
「瑛大にはお灸をすえないといけないしな。分かった」
渡辺君が頷く。
本当はもっと気になることがあった。
昨日の騒ぎ、本当にあれでよかったのか?得をしたのは僕達だけか?
だけどそれはいくら考えても思いつかなかった。
(3)
「ゴッドは殉職した」
新しいエゴイストのホームページには昨夜起きた惨状の跡がしるされてある。
敵対グループユニティの過剰な報復。
その結果、エゴイストの末端の怒りはユニティに向けられている。
「ゴッドは真の神となった」
そう書き込まれてある。
エゴイストの新生。
エゴイストのメンバーが盛り上がる。
全てウォーロックの計画通りだ。
しかし、ゴッドがすべてを喋ればすべては水泡と帰す。
「大丈夫なの?」
私はウォーロックに聞いていた。
「死人に口なしってね?神はもういない。法的証拠にはならない」
「DNA鑑定を受ければ隠ぺいの事実も発覚するのでは?」
「そういうのをもみ消すのはうちの得意分野だろ?」
「あなたがそこまで言うのならそうなのでしょうね。失敗は許されない」
「大丈夫だよ、ただ。もみ消す準備はしなきゃいけない。ウィザードもまだ見つかってないしね」
彼と私はドーナツを食べながら話をしていた。
「まだ、エゴイストが新生するには時間がかかる。その時間を稼がなくちゃいけない。その為の隠蔽工作は施してある」
「隠蔽工作?」
「言ったろ?彼らと同じ手段を取ると。ただその手段も探られてはいけない」
「……デコイか?」
「ああ、まずは。問題の火種から作り直す」
「……わかった。その後は?」
「木を隠すなら森の中ってね」
ウォーロックは笑いながら言ってた。
「森は既に出来上がっている?」
「ああ、すでに『幸せを運ぶサークル』は乱立している。チャンスだ」
ウォーロックの狙いはわかった。
私は頷いた。
「連中の手札を無効化させる。可能な限り一枚でも多く」
「どの事実も真相には届かない」
「ああ、麗しき君の言う通りだよ」
「その呼び方は止めて」
「気に障ったら謝るよ」
「じゃあ、今日はこの辺で。また来週ね」
「偶には遊んでいかない?いつも味気ないデートじゃないか?」
「私は遊びに来たんじゃない」
「それは残念」
私達は店を出る。
「次の場所はまた指示するよ。たまには映画館とかもいいかもね?」
「あなたデートのつもり?」
「そのくらいの感覚で会ったほうが違和感ないと思うけど?」
「わかったわ……映画館ね」
「好みの映画とかある?」
どこまで本気なのだろうか?この男は?
「特に興味ない。あなたに任せる」
「ラブロマンス物がいいかもね」
「私はあなたにそんな感情持ったことは一切ない」
「それは残念」
「ではまた」
「ああ、麗しき君」
どこまでもふざけた男。
だけど彼の手腕はゴッド以上だ。
エゴイストの新生には必要不可欠な存在。
そしてこれからの私にも必要不可欠な存在。
だけどそこに恋愛感情は無い。
車に乗り込むと車は出る。
私達の計画はまだ始まったばかりだ。
(4)
「エゴイストが捕まった」
寝耳に水だった
潜入捜査にやられたらしい。
ゴッドも捕まって情報が漏れたか。
しかしゴッドは死んだと聞いてある。
何が起こっている?
このままでは俺にも手がかかる。
その時スマホが着信した。
ウォーロックからだ。
「どういう事だウォーロック!?」
「その調子だと知ってるみたいだね」
「今テレビを見た」
「じゃあ、説明はいらないね。君には用件だけを伝えるよ」
「用件?」
俺に何をしろというのか?
「君には新しくエゴイストを作って欲しい」
「エゴイストを作り直す?」
「ああ、そのための部下は準備してやる」
「俺がお縄にかかることはないのか?」
「心配するな。手は打ってある」
「しかし、奴らの罠はどこまで張り巡らされてるかわからない」
「心配するなエンペラー。君には絶対に届かない」
「信用していいんだな」
「神に誓って」
「その神は死んだぞ!」
「じゃあ何に誓えば良い?」
ふざけてるのかこいつは。
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「君も言ったろ『神はいない』と万能な奴なんていないさ」
「……わかった。それで手はずは?」
「前と一緒でいい。名前も変える必要はない。上手くいく。心配するな。エンペラー」
「……わかった」
「念のため君の新居を用意してやる。執行者をよこすから言われたとおりに行動しろ」
「わかった」
「じゃあ幸運を、エンペラー」
ウォーロック、何を考えている?子供のゲーム感覚で遊んでいるつもりなんだろうか?
(5)
夕方のニュースを見て驚いた。
乱交サークル「エゴイスト」逮捕。
僕達は何もしていない。
情報もリークしていない。
可能性があるとすれば……。
「腐ったミカンはもう要らない……か」
僕達はエゴイストの全容は解明していた。
だが、肝心の高橋グループの事まではまだ辿り着いてない。
「フリージア」も迂闊に出せなくなった。
「ダメだ!奴ら強固なサーバーに変えやがった」
誠がノートPCを使って新しいサーバーに侵入しようとしている。
だが、罠が張り巡らされていてうかつに侵入できないという。
「無理そうか?」
「いや、方法はある」
誠はにやりと笑う。
「無理矢理こじ開ける事も可能だけど、それはスマートじゃない。もっとシンプルな方法を使う」
「どんな方法?」
「名付けて人間トロイの木馬作戦」
はい?
「言ったろ。エゴイストのサーバーに接続した奴らは大体網羅済みだと」
「エゴイストのメンバーは全員捕まったと」
「まだ捕まってないやつがいる」
「……ポープさんとエンペラーさんとウォーロックさんだ」
「あとハーミットもいるけどね」
愛莉が答えると誠はそう返す。
「で、どうするんだ?」
「4人とも幹部だろ?当然深いところまでアクセス権限があるはずだ。その権限を乗っ取る」
「バレないのか?」
「誘導してもらうだけ。全然問題ないよ」
「で、その後どうする?」
「後は重要な情報だけ抜き取っておさらばさ」
「過信するなよ。完全にクロなんだ」
「わーってるって。心配するな。それよりお前の方こそ大丈夫なのか?」
「会ってみないと分からないよ」
「成功を祈る」
「ついでに、誠にお願いがあるんだけど?」
「なんだ?」
「地元銀行のサーバーに侵入できるか?」
「お安い御用だ」
「じゃあ、今夜頼む」
「地元銀行に拘るんだな?」
「多分そこが肝心なんだ」
「ゴッドの情報か?」
「ああ」
「じゃあ、夜な」
電話をしているうちに晶さんの別荘に辿り着く。
僕と愛莉は門番の人に話をするとすんなり中に入れてくれた。
「君は片桐冬夜?」
「どうも」
ゴッドに話しかけると用件だけを伝えた。
「エゴイストが捕まった。時間が無い。『鍵』を渡して欲しい」
「君は頭も切れるらしいな」
「そう言われるのは初めてです」
「俺の首にかけてあるストラップをとってくれ」
ろくに身体チェックもしなかったらしい。
首にかけられたストラップにはUSBメモリと鍵がくくられてあった。
「重要な証拠だ。大切に使え」
「ありがとう。あ、それと君の言った神を祭り上げてる存在分かってるよ」
「え?」
愛莉がそう言う。
「君は勘がするどいな。ここ通信網はないんだな……察しの通りだ」
「神に認められた存在が一番神の恩恵をうけるからね」
愛莉は不思議そうに僕を見ている
「その通りだよ」
ゴッドはそう言う。
「ありがとう、じゃあまた」
そう言うと踵を返して車に乗る。
「冬夜君、それな~に?」
「いいものだよ。それより檜山先輩に連絡してくれないかな。地元銀行の本店で待ち合わせしようって」
「わかった~」
愛莉はスマホを操作する。そして……。
「いいよって~」
車を一度地元に向けて走らせる。
「ねえ?神に認められてた人って誰?」
「古来よりエンペラーは神に選ばれた人間とか神が人間に成りすましているとか言われてるんだ。そしてそれを認めているのはポープ。ポープは神の代行者として崇められている」
「なるほどね……」
愛莉は感心している。
銀行に着くと檜山先輩と咲良さんがいた。
「俺に何の用だ?」
「貸金庫に案内して欲しいんだけど」
「ああ、そういうことか?」
貸金庫は無数にあったけど僕は39番の金庫のカギを開ける。
当っていた。
中には分厚い茶封筒に沢山の資料が入っている。
それをバッグに仕舞うと銀行を出る。
「じゃあ、先輩別府のファミレスで……あと……」
「……わかった。確認しておく」
「冬夜君今のって?」
「謎は全て解けたよ」
ぽかっ
「漫画の台詞は引用しちゃダメっていったでしょ!」
もう古いからばれないと思ったんだけどな。
別府のファミレスに着くと皆待っていた。
僕は恵美さんにさっき銀行で入手した。資料を渡し、誠にはUSBメモリを渡す。
「これは?」
2人が僕に聞く。
「神の贈り物だよ。慎重に使って」
「……わかった」
2人は大事にしまう。
「別府に呼び寄せたのは他に用事あるんだろ?」
檜山先輩が聞く。
「檜山先輩さっきの件は?」
「父さんのツテを使って調べたよ。冬夜すごいな、お前の言う通りだった」
やっぱり。
「誠、侵入は?」
「とっくにできてるよ。で、何を調べたらいいんだ?」
「口座番号***-***-0009997を調べて欲しい」
「……わかった」
誠はすぐ行動に移す。
「これって……冬夜マジかよ!」
どうやら大当たりだったらしい。
「いったい何が入っているというの?」
恵美さんが聞く。
「高橋グループの本家の口座だ。闇金の移動なんかがすべて乗ってある」
みんな驚いて声がでないようだ。
「凄い冬夜君!どうしてわかったの?」
「地元銀行だってのは本人の口から聞いた、多分支店コードは本店だろうって直感した。残るは『サンキューな』だ」
「その謎が0009997なの?」
「サンキューは39、金庫の番号。397の可能性もあったけど」
「それで?」
「39を英語で言うとどうなる?」
「サーティナイン?」
愛莉は悩んでいるようだ?
「わかったぞ!スリーナインだな!」
カンナが叫ぶ。
僕は頷く。
「良く分かったな!」
「39じゃ口座番号にしては短いと思ったからね」
「これで、証拠固めは完ぺきね」
「すげーやUSBの中味も極秘資料だぜ……」
誠がノートPCをいじって驚いている。
「高橋グループとのつながりもしっかりある。後はどこに提出するかだな」
「やっぱり関幹事長や石生副大臣に渡す?」
「まだだよ」
僕は言った。
「どうしてだ?」
渡辺君が言う。
「相手はエゴイストを切り捨てた。もう一度尻尾を捕まえる必要がある。今度は切られないように胴体を押さえて」
「それならばっちりだぜ」
誠が言う。
「あいつらエゴイストを作り直すつもりらしい。検索ロボットに引っかからないようにして」
「で、捕まえたのか?」
「逃がすもんかよ。しっかり捕獲してあるぜ」
「やっとたどり着いたな」
渡辺君が言う。
「長かったが皆よく耐えた。ここからは一気に押すぞ!」
「おお!」
皆が盛り上がる。
「でも注意は必要だよ。父さん達は寸でのところで逃げられてしまった」
「逃げ道を塞ぐことからだね」
亜依さんが言うと僕は頷く。
もう絶対に逃がさない。
エゴイストも高橋グループもまとめて壊滅させてやる。
そう意気込んでいた。
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