優等生と劣等生

和希

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4thSEASON

力への意思

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(1)

「おはよう冬夜君朝だよ~」

地元では最低気温を記録する2月半ば。
部屋は暖房がタイマー設定されてあって温かいけど、冬夜君は布団を抱いて寝ている。
この時期の冬夜君は起こすのに一苦労する。
ぽかぽか温まって気持ちいいのは分かるけど。
いつもの作戦が聞かないのは分かってる。
何かしようとすると冬夜君はすぐに抱きついてくる。それはそれで嬉しいんだけど……えへへ~。
……ってそんな事を言ってる場合じゃない。

「冬夜君起きないと朝ごはん抜きなんだから!お腹空いても知らないよ!」

すると冬夜君はすぐに起きる。
そこまではいい。
その後私に抱きついて私と一緒に寝ようとする。

「私が朝ごはん作るんだよ!寝てたらつくれないよ~」
「母さんが作るからいいよ」
「うぅ……やっぱり麻耶さんのごはんの方が好きなんだ」

ちょっといじけてみる。
すると冬夜君はすぐに起き上がる。

「そんなわけないだろ!可愛いお嫁さんのごはんが一番だよ」
「うぅ……とりあえず早く着替えて日課に行く!」
「わかったよ」

やっと冬夜君は着替えてくれた。
それから日課をする。
最近バスケットボールに触ってないからという理由でジョギングが終わった後公園にあるバスケットのゴールを利用してシュートの練習をしている。
触ってなくても体には染みこんでいるようで、綺麗にシュートを決めていく。
しばらく冬夜君のバスケットの練習に付き合って私達は家に帰る。
冬夜君がシャワーを浴びてる間に朝食を作って。そして冬夜君の部屋に入ってテーブルの上に箱を置いておく。
その後朝食を食べて私がシャワーに入る。
冬夜君気づいてくれるかな~?
シャワーを出ると冬夜君がダイニングで待っていた。
そうだった……最近私がシャワーを浴びるまでダイニングで待っているんだった。
冬夜君はいつものようにコーヒーを入れると部屋に戻る。
直接渡した方が良かったのかな?
冬夜君が部屋にもどると、テーブルの上にある箱に気づく。

「なんだこれ?」

なんだこれ?じゃないでしょ、気付いてよ!

「これ愛莉のか?」

うぅ……。拗ねてやる。
私は無視してテレビを見ながら髪を乾かす。
冬夜君はまだ気づいてないらしい。
気づくどころか私がどうしてへそを曲げているのか真剣に考えているらしい。
するとテレビがいいタイミングで特集をやっていた。
冬夜君はやっと気づく。
箱を開くと中には生チョコが入ってあった。
もちろん手作り。
冬夜君がテレビを見てる間に作ったの。

「ありがとうな、愛莉」

そう言って冬夜君はキスをしてくれる。
そして冬夜君はチョコを食べながらコーヒーを飲む。
私も準備が終ると隣でテレビを見ながらカフェオレを飲む。
冬夜君はノートPCで何かを検索してるようだ。
何を検索してるのか想像はついた。
だから私は教えてあげる。

「明日は後期の打ち上げの日だよ」って……。

冬夜君はそうだったと苦笑いする。

「また二人だけで2次会しようね」
「そうだな……泊まる場所も用意しとくよ」

わ~い。

今日は2月14日。
恋人に思いを伝える日。
そして明日は2月15日。
私と冬夜君が付き合いだして9年目の記念日。

あの事件から、もう一か月近く立とうとしていた。
スティンガーの活動は続いているけど、向こうは手出ししてこない。
それどころか紅会の動きもない。
九尾の狐も行方をくらましたまま。
居場所は特定していたけど。
ずっと国東の山の中にいる。
エックスさんとジャッカルさんだけかもしれないけど。
二人とも個人情報は特定できずにいた。
戸籍がないらしい。
そんな人がいるのだろうか?
アレンさんはロシア人らしい。
その情報はパパさんから聞いた。
元・宇宙飛行士。物凄いエリートだった人がどうしてテロリストなんかに?
九尾の狐も誠君が全部情報を持っていた。
九尾の狐という割には11人いるらしい。
構成的にはアレンさんの下に10人の配下がいるのだとか。
その九尾の狐も行動を起こさない。
やはりケガの治療をしているのだろうか?
とにかくこの一か月何もなかった。
でもこのままでは終わらないと冬夜君は言う。
私としてはこのまま終わって春休みくらいどこか遊びに行きたいな~。
そんな事を考えながら冬夜君も私も無事単位を修得して後期を終えようとしていた。

(2)

学校が終わると、僕達は送迎者で帰るが。今日は奈留は友達と帰るという。
さすがに奈留にも友達ができたようだ。
SPを護衛につけるというが奈留はSPの人に耳打ちする。
するとSPの人が笑って護衛を女性の人と交代する。

「どうしたの?」
「公生には関係ない」

笑顔でいるあたり機嫌が悪いわけではないらしい。
仕方ないので一人で車に乗って帰る。
家に帰ると作業の続きをする。
調べることは沢山あった。
まず太陽の騎士団の情報がネット上から全て削除されている事。
IRISも完全に削除されてある。
僕の裏コードを使っても駄目だった。
僕と誠君以外にアクセスするとしたら……高橋蒼良が真っ先に思いついた。
しかし今更消したところで江口家のサーバーにしっかり入ってある。
それも消そうとしているのは不正アクセスの証拠がしっかり残ってあった。
でも誠君の作った壁を突破するにはいたらなかったようだ。
それにすでに警察やマスコミ、政治家などにばらまかれた何の希少価値もない重要証拠。
そこまで固執する理由がわからなかった。
高橋蒼良の安否も知りたい。今さら高橋蒼良に何の価値があるのか知らないけど彼等は取引に使った。
国外逃亡してないのだけは確かだという。
高橋グループの総裁高橋憲伸が退院したという。
居場所は不明。高橋グループに以前の力は無いと思うけど、それでもまだ高橋忍の力が残っている。
そして須藤グループ。
「ドラゴン」と「賢者」はいまだ健在している。
「隠者」も復帰した今、彼等を放っておいたらまた以前の力を取り戻すだろう。
急いで所在と目的を突き止めなければ。
しかし、何もないまま一か月が過ぎようとしていた。
相手の動きもない。
それは相手が活動を停止したわけじゃない事くらいわかってる。
何かの準備期間なんだろう?
奈留が帰ってきた。

「遅かったね?どうしたの?」

奈留は制服にコートを羽織り厚手の手袋をで鞄を持っている。
様子がいつもと違う。

「なにかあった?」
「今日は何の日だと思う?」

へ?
ああ、そうか!

「ああ、バレンタインだったね。クラスの連中も浮かれていたよ。呑気なもんだよね。くだらないよね」
「くだらない……?」

奈留の表情が一変して泣きそうになってる。
奈留が一人の女子だということを失念していた。
奈留は買ってきたチョコレートを僕に投げつける。

「公生の馬鹿!!」
「待って奈留!」

奈留は部屋を飛び出して、屋敷を出る。

「外に出たら危ないよ奈留!」
「ほっといてよ!」

悪い事は重なるもので、家の門の前にたつ巨体。
容姿からして多分スティールレディ。

「おほほほほ!鴨が葱背負ってくるってのはこのことね。さあお嬢ちゃんいらっしゃい。お姉さんが素敵な場所に案内してあげるわよ」

奈留はその容姿に怯えて立ち止まる。
そんな奈留に容赦なく襲い掛かるチェーンソー。
危ない!!
奈留の腰に腕を巻き付け倒れる僕。
無慈悲は一撃は何とか避けた。しかし……。

「2人纏めてあの世に送ってあげるわよ」

チェーンソーを突き立てるスティールレディ。
ちゃんとチョコレート食べてあげなくてごめんね。
死ぬときって痛みすらないんだろうか?
恐怖の時間がとまった。

「おじさん!」

仰向けに倒れていた奈留が指差す。
僕はその声で振り返るとスティールレディの頭に跳び蹴りをするおじさんがいた。
おじさんはロングコートを着ている。ぴったりと鍛えられた肉体にフィットしたスーツがはちきれようとしている。
おじさんの体から稲光が発してるようだった。

「私の子供になんてものを向けてるんだ貴様は!」
「おじさん危ない」
「公生と奈留は屋敷に戻っていなさい」

おじさんはそう言ってにこりと笑う。

「どいつもこいつも乙女に向かってなんて対応なの!?まとめて叩き切ってくれるわ!」

怒り狂ったスティールレディがおじさんに切りかかる。
チェーンソーを振りかぶったスティールレディに果敢に踏み込むおじさん。

「むん!!」

スティールレディの顔もでかいけどそのデカさを十分フォローするほどのおじさんの大きな拳はスティールレディのむき出しになってる顔をまともに捕らえ家の門まで吹き飛ばす。

「こう見えても子供を守れるくらいには日々鍛錬してるつもりだ。父親の強さを思い知れ!」

RPGを顔にまとも食らっても耐えていた彼女を見事に吹き飛ばすおじさん。
彼女は鼻と口から血を垂れ流し白目をむいて倒れていた。

「公生!奈留!大丈夫か!」
「おじさんこそ大丈夫なんですか?」
「心配いらないよ。家に入っていなさい。我が子を守るパパは強いんだよ」
「母親も負けてないわよ」
「おばさん!」

振り返ると恵美のお母さんが男を二人引き図って屋敷から出てきた。

「弥生。そいつらは?」
「娘の大事なサーバールームに不法侵入しようとした不届き者よ!」

そう言っておばさんは二人を門の外に放り出す。
容姿からしてバードマンとアズライールだ。

「公生と奈留はこの3人を知っているようだけど?」

おばさんが聞いてきた。
僕と奈留が説明する。

「なるほどな……こいつらが……」
「じゃあ、警察に引き渡した方が良さそうね」

おじさんとおばさんが相談していると。四駆の車が門のそばにとまった。
一人の男が後部座席から降りてくる。
男は男二人とスティールレディを軽々と担ぎ上げる。

「すまないがこの3人は回収させてもらう」

おじさん達が動かないのは銃を向けられているから。
男は3人を車に積むと自分も車に乗る。
車は走り去っていった。
おじさんは車を確認して電話をする。

「あんた達はあぶないから屋敷に戻りなさい」

おばさんが優しい声で言ってくれる。
僕達は大人しく部屋に入る。
沈んでいる奈留。
多分僕のせいだ。
どうしたら奈留の気分を晴らす事が出来る?
僕は机の上に置いておいたさっきのチョコレートの包みを取る。

「ありがとう奈留。美味しいよこれ」

奈留が笑う。
帰りに友達と選んで買ってきたらしい。
今はやりのお店で買ったんだとか。
君がそうやって選んでくれるだけで光栄だよ。
それにしても江口家というのは凄い血筋らしい。
スティールレディを拳一つで倒してしまうとは……。
おばさんの戦闘力も桁違いだとは思うけど。
こんな家で育てられたら望のような戦士はいくらでも生み出されるんだろうな。

(3)

「晴斗……これあげる」

今日はバレンタイン。
初めて恋人にチョコレートを渡した日。

「あざーっす!マジ嬉しいっす」

お返しに夕食をご馳走してくれるらしい。

戸惑い。

今日は私があなたに想いを伝える日なのにどうしてあなたが私をもてなしてくれるの?

「そういうのって来月するもんじゃないの?」
「ホワイトデーもちゃん用意するっす!今日は単なるデートっす」

そう言って、彼は地元に向かおうとしてた。
あなたは私を喜ばせるのが上手いみたいね。
渋滞中にチョコレートを早速食べて美味しいといってくれる。
それだけでお返しだよ。
それにしても車がやけに混んでる。

「おかしいっすね。まだそんな時間でもないと思ったんすけど」

晴斗も怪しんでる。
答えはすぐわかった。
警官が交差点で交通整理をしている。
消防車や救急車が引っ切り無しに走ってる。
火災でもあったんだろうか?
その割には煙は見えない。

私達の番に回ってきた。
晴斗が窓を開けて対応する。

「ちょっと荷物見てもいいですか?」
「いいっすよ?何かあったんすか?」

その理由を聞いて私達は唖然とした。

毒物テロ。

地下道に有毒ガスを発生させた者がいるらしい。
目的は不明。
確かに意図が分からない。
ただ単に道路を横断するためだけに作られた地下道で毒ガスを巻くなんて。
検問を抜けると車は走り出す。
私はスマホを何気なく見る。

「あっ」
「どうしたっすか?」

別府で地下道毒ガステロ事件発生。犯人と思われる者の犯行声明がネットに公開される。

いやな予感がした。
その記事をタップする。

犯人はunityと名乗っており目的はバレンタインで浮かれるカップルに制裁を……。

間抜けな理由だ。
でもユニティを名乗っている。
恐らく敵は……スティンガー。

「折角平和に暮らせてると思ったのにやってくれるっすね」

私はキャンディを齧る。
冷静になれ。
まずすることはなんだ?
ユニティに連絡する。

「その記事は俺も今読んだ。そっち大丈夫か?」
「検問してた」
「俺は今から警察に出頭する。大丈夫俺達がやったわけじゃない。証拠もないし問題ないさ」

渡辺さんが言ってる。
完全なる無差別テロ。
許すわけにはいかない。

「明日の打ち上げで話し合おう。今後について。俺も出来るだけ情報を仕入れておく」

メッセージを読みながらキャンディを齧る。

「明日はちょっとした騒動になりそうっすね」

晴斗が言う。
また、抗争が始まるの?
抗争が始まるのは平気。でも相手の意図が読めないのが不安。
晴斗と夕食をして帰る頃にはいつもの街並みにもどっていた。

「晴斗気をつけて帰ってね」
「春奈も一人で出歩くのはだめっすよ」

そう言って晴斗は帰っていった。
私は部屋に戻るとシャワーを浴びる。
そしてチャットを見る。
皆ざわついてる。
誠君は犯行声明をだした身元を早速割り出していた。
スティンガーのメンバーの名簿にいたという。
しかしスティンガーの……須藤グループの意図は依然分からないままでいた。

(4)

「それでは後期お疲れ様でした!」

渡辺君がそう言うと打ち上げの始まり……ってわけにはいかず。

「ちょっと待ってくださいよ昨日の事件の説明をお願いします」

真鍋君が言う。

「どうもこうも俺たちはやってない。それだけだ」

渡辺君が言う事が正論だ。

「心当たりあるんでしょう?俺達にも情報回してくださいよ」

真鍋君が言うと渡辺君が僕を見る。
渡辺君は僕の目を見て察したのか話を始めた。

「回りくどい話は無しにする。今回の敵は須藤グループと高橋グループ!」
「高橋グループって壊滅したんじゃないんですか?」
「まだ生き残っていたようだ。高橋憲伸が退院した!奴らの活動が再開したって事だ」
「何度叩いても沸いてきやがる!しぶとい野郎だな!」

美嘉さんが言う。

「今回の件だがもうすでに手は打ってある。暴露サイトに全部載せてある。奴らの身元から顔写真まで丁寧に添えてな!」

黙って聞いていた、椎名さんが言う。

「君、今回の件と言っていたけど他にまだあるんじゃないのかい?」
「そうなんですか!?渡辺先輩!」

真鍋君が言うと渡辺君が僕を見る。
僕はうなずいてみせると渡辺君は言った

「恵美さんの実家のサーバーが直接狙われた。九尾の狐の仕業だ」

さすがに皆動揺を隠せないようだ。

「どいつもこいつもしぶとい野郎だ!」

美嘉さんが掌に拳を打ちつける。
その後も渡辺君は包み隠さずすべてを話した。
IRISの事、高橋蒼良の事、そして九尾の狐の裏にいる敵の事。

「そんなの相手にしてたらキリがないですよ。そろそろ手を引いた方がいいんじゃ……」

真鍋君が言う。

「だから、言ったろ?俺達は何もしてないと」

渡辺君はそう言うとにやりと笑う。

「何もしないって事か!?正志!」

美嘉さんが食ってかかる。

「俺達に直接被害はないんだ。手を出す理由もないだろう?」
「でもあいつらはユニティを騙ったんだぞ!」
「だからそれは暴露サイトで暴いたって言っただろ。美嘉落ち着け」

そんなやりとりを見ながら呑気に食べ物にありつく。

「冬夜君はどう思ってるの?」

愛莉が聞く。
皆の注目集める。
僕は静かに口を開いた

「今まで何もしてこなかった相手が仕掛けてきた。準備が整ったという事だろう。相手の土俵に上がるなんてばかばかしい。くだらないね」

僕がそういうと案の定反論がでた。

「準備が整ったってこは遅かれ早かれ攻めて来るんじゃないの!?」
「そうだろうね」
「そうだろうね……ってまたいつ襲われるか分からない日々を過ごすわけ?」

亜依さんが言う。

「高橋グループも須藤グループも根っこを押さえられずにいた。さらに相手は後ろに太陽の騎士団とやらがいる」
「それって終わらない戦いが続くってこと?」
「一度始まったらそうなるだろうね」
「冬夜、回りくどい言い方はよせ。打開策は見つけてるんだろ?」

佐(たすく)が言う。

「……誠が見つけたログの中に気になるワードがあった……『月』だ」
「月?」
「月と太陽……九尾の狐……高橋蒼良……結びつけるものは唯一つ」
「IRIS?」

愛莉が言うと僕はにこりと笑った。

「IRISってのを利用してどうするつもりなんだ?」
「IRISを管理してるのは僕達と高橋蒼良だ。ネットワークから全削除されてる」
「警察やマスコミはどうなるの?」
「そんなのもみ消すだろうさ」

須藤グループなら朝飯前だろ。

「ここから先は文字通り抗争だ。紅会と九尾の狐との抗争になる」

そう言いながらも僕は一つ心配していた。
恐らくIRISの情報との取引条件は金だ。
その金を使って何をする?

「で、指揮官の采配はどうなってるんだ?」
「恵美さんちのサーバーの徹底管理。石原君達にも混ざってもらう。ここが踏ん張りどころだ」

石原君はうなずいた。

「誠と公生はもう一度IRISの情報を探ってくれ。何か見落としてるかもしれない」
「OK」
「どんな小さなファイルも見落とさない」
「冬夜君はまだIRISに何かあると思ってるの?」

愛莉が聞いた。

「多分ね」
「それと毒ガステロは関係あるんですか?」

真鍋君が言う。

「ただの陽動だよ。ユニティの名前を出すと僕達は過剰に反応する。それを利用してるだけだ」
「お前の行動は読めたぞ……月の正体を暴きだす。そうだな」
「僕らは『ステラ』になって見守ろう。奴らはきっと分裂する」

渡辺君が言うと僕が答えた。

「と、いうわけだ。俺達は今まで通り過ごしているだけでいい!あとは誠君や恵美さんが情報を集めてくれる!反撃はその後だ」
「手札を作って攻撃……これまで通りですね」

石原君が言うと僕が頷いた。

「じゃあ、方針も決まったし今夜は盛り上がろう!」

渡辺君が言うと皆の宴が始まった。

(5)

1次会が終ると僕達は別行動をとることにした。
誠や渡辺君は事情を知っていたので承諾してくれた。
愛莉と二人でバーに行って二人だけの二次会をする。

「まさかテロにまで巻き込まれるとわね~」

愛莉も気にしているようだ。

「さっきも話したけどその件は気にする必要が無いよ」
「じゃあ、何を気にしたらいいの?」
「今夜は僕だけの事を考えて」

自分で言ってて恥ずかしいセリフを言うと愛莉が笑う。

「は~い。でもいつも冬夜君の事は考えてるよ」
「それでいいんだよ、いつも通りで……」
「本当に?冬夜君は何か気にしてるみたいだけど?」

愛莉に隠し事は通用しないな。

「そうだね、愛莉に隠し事はしないって約束したもんな」
「ってことはなんかあるんだ?」
「今更になってIRISを狙う敵の動向が気になる」

もうそのカードは切ったはずだ。
捨て札をサルベージする意図はなんだ?
ただの陽動か?
どちらにしろ情報が揃わないと何もできない。
出来ることはこちらのデッキを構築する事。
今できることは二人の記念日を楽しむこと。

「折角の記念日なんだ。今夜はゆっくり楽しもう」
「……はい」

その後ジャズバーやダーツバーをはしごして楽しむ
コンビニに寄って酎ハイを買うとホテルに戻る。
シャワーを浴びてから酎ハイを飲んでテレビをつける。
テレビは昨日のテロ事件で持ち切りだ。
暴露サイトの事も書いてあった。
相手は黒いフード付きのコートを着ていたがきっちりその容姿は防犯カメラに映っていた。
その動画も合わせてアップロードしてあるので言い逃れは出来ない。
今頃警察に追われている身であろう。
敵はもうユニティを名乗っている以上いつもの粛正は通用しない。
どう動くか敵の出方を待っていればいい。
愛莉がチャンネルを変えた。
芸能人のトーク番組をやっていた。
二人とも特に興味のないゲストだった。

「今夜は忘れるんでしょ?」

愛莉はそう言って笑っていた。
程よい時間になると愛莉と寝る。



「冬夜君朝だよ~」

目を覚ますと愛莉が横で僕の寝顔を見ていた。
着替えて準備すると朝食を食べる。
後はチェックアウトの時間までテレビをみたりして時間を潰す。

「愛莉前に約束したよな?」
「ほえ?」
「事件が落ち着いたらドライブに行こうって」
「……うん!」
「今日行こうか?あまり遠出はできないけど」
「いいよ~」

愛莉ははしゃいでいる。
それなら早めにチェックアウトしてもいいな。
愛莉の仕度が済むと部屋を出る。
そして愛莉とドライブに出かけた。
僕達の前には大きな力が壁となって立ちはだかっている。
立ちはだかるなら砕いて進むのみ。
まずはその大きさを確かめることから。
でもどんなに大きな力が待っていようと僕達の意思は変わらない。
今できることをただするだけ。
たとえどんなことが起きても二人の心は一緒だから。
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