優等生と劣等生

和希

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4thSEASON

致命的な戦い

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(1)

「冬夜君朝だよ、おはよ~」

愛莉に体を揺すられ起きる。

「愛莉おはよう」

朝のあいさつ代わりに軽くキスをする。

「えへへ~」

こうしてやると日常を生きていると実感する。
愛莉の朝の機嫌の取り方もなれたものだ。

「早く着替えて日課こなそう?」

愛莉に急かされ着替えると、日課を済ませて家に戻る。
家に戻るとシャワーを浴びて朝ごはんを食べる。
愛莉がシャワーを浴びてる間父さんとリビングでテレビを見ている。

「そう言えば今夜行われるそうだな?パーティは」

父さんの耳にまで届くくらいだ。間違いないだろう。

「気をつけろよ。今度ばかりは相手が悪い」
「優しい相手なんてこれまでもいなかったよ」

僕は父さんにそう返す。

「それもそうだな」

父さんはそう言って笑う。
愛莉がシャワーから戻るとコーヒーを入れて自分の部屋に戻る。
愛莉は髪を乾かしながらテレビを見てる。
そんな愛莉を見ながらコーヒーを飲んで寛ぐ。
愛莉は髪を乾かし終えると僕の隣に座ってカフェオレを飲む。
愛莉から漂うシャンプーの匂いを堪能する。

「ねえ、冬夜君。私から提案があるんだけど」
「どうしたの?」
「私今日は家事しないって約束するから冬夜君も約束して」
「何を約束したらいいの?」
「約束の時間になるまでお部屋でゆっくり休む事」

その時間まで自分に構って欲しいと愛莉は主張する。

「愛莉絶対に家事しないって約束できるか?」
「うん」
「じゃあ、わかったよ」
「よかった。今夜大仕事だもん、冬夜君疲れさせたくないから」
「優しいお嫁さんで助かるよ」
「わ~い」

愛莉はそう言って早速抱きついてくる。
そんな愛莉をあやしながら午前中を楽しんだ。
お昼を食べてから夕方まで愛莉とゲームしたりテレビ観たりして時間を潰す。
そんなまったりした時間も約束の時間が近づくと愛莉から緊張感が漂ってくる。
二人共黙って出かける準備をする。
準備といってもデートに出かけるわけじゃない。愛莉も最低限の準備だけする。

「準備出来たよ」

家を出ると車に乗る。
緊張している。
目を閉じて集中する。
細く広く……全神経を研ぎ澄ます。
愛莉の呼吸が聞こえるくらいまで集中する。
目を開ける。

「行くよ」
「……うん」

そうして僕達は集合場所に向かった

(2)

「おめでとうございます」

皆が山村元首相に声をかけていた。
山村元首相の豪邸のホールで行われている誕生日パーティは早々たる顔ぶれだった。
地元銀行の頭取。合同新聞の会長。デパートの会長。製鉄所の工場長。などなど地元の超名人がずらりと並んでいた。
野党の時期首相候補と言われている男も今日は来ていた。

「みんなありがとう」

俺達もスーツを着て。見張りに駆り出されていた。
外には黒服のSPもいる。
一見警護が固いように見えた。
しかし裏返せば脆い物。
アレンがそっと山村に近づく。

「この時を待っていた」
「お前は誰だ?」

山村が警戒する。

「十数年だ、この日を夢見て十数年耐え忍んできた」

異変を察知したSPがアレンの肩を掴む。
だが二人共崩れ落ちた。
俺とジャッカルでナイフを突き刺したから。
床に広がる赤い液体がワインではないことを知るとゲストは半狂乱になる。
俺は一発の銃声を鳴らす。

「騒ぐな!!騒いだ奴から殺す!!」

テーブルの下に隠れる。
外にいたSPは部下が始末した。
アレンは山村の頭に銃を向ける。

「ま、待て!私が何をしたというのだ!?」

自分のやったことを覚えてないというのか?
どこまでも頭の悪い奴だ。

「お前は数百万人の命を見殺しにした。そしてお前たちは俺の最愛の女性の命を奪った。それだけで十分だろう?」
「あの事件の事を言ってるのか!?あれは仕方なかったんだ!」
「パーティに行っていて対応が遅れたなどと理由になるか!その場で自衛隊に災害派遣を許可すればよかっただけだろう?」

出来るはずがない。
こいつは反戦派という名の売国奴のリーダー。自衛隊の活動など認めるはずもない。
その結果初期救助が遅れて何万人もの救われるはずの命が失われた。

「言い残すことはあるか?無いなら死ね」
「ま、まて!目的は金か!?金なら出す!」
「ほう?犬はエサで飼える、人は金で飼える、俺も金で飼おうってつもりか?」
「金では不満か!?な、何でもだす」
「なら俺の最愛の女性を返してもらおうか?」
「そ、それは……」
「出来ないだろう?なら死ね」

銃声がなる。
山村は気を失った。
弾が命中しなかったのは俺がアレンの腕を掴んだからだ。

「落ち着けアレン。目的はこいつの命じゃない。そうだろう?」
「そうだったなヴァイパー……、こいつらに要求を言え」

ヴァイパーにそう言われて俺はパーティに言る奴らに要求を伝えた。

「5000億円用意しろ。日が変わるまでに現金で用意しろ」
「県の予算以上じゃないか。無茶を言うな」
「お前たちなら可能だろう?」

その時ジェット機の音が聞こえてくる。気を失った山村を引きずってジェット機から投下されたコンテナのに縛り付ける。
コンテナにつけられたタイマーをセットした。

「この中には毒ガスが詰め込んである。時間までに要出来なかったら中身を飛散させる。警察にも伝えろ!」

俺達の準備はこれで終わった。
部下が全員の身柄を拘束している。
これだけで済むはずが無いよな。
俺達は奴等が来るのを待っていた。
これで終わりにしてみせる。

(3)

山村邸を警官が囲んでいる。
また周囲の住人の避難も始めている。
要求は身代金5000億円。
県予算に匹敵する数字の金だ。
用意できなかったら、周囲に毒ガスを巻くと脅している。
愛莉パパを通じてその事を聞いた。
わざわざ警察に連絡するように言ったらしい。
僕達は山村邸の門の前にいた。

「何だお前たちは、関係者以外は立ち入り禁止だぞ!」
「悪いが関係者なんだ」
「なんだと?」

渡辺君は胸のバッヂを見せる。

「し、失礼しました!」

この手の人間は権力に弱いらしい。

「で、現在の状況は?」

渡辺君が警官に聞いている。

「遠坂警視正の指揮のもと山村邸を包囲しています。また現金5000億円を用意中です」
「だ、そうだが。どうする?指揮官様?」

渡辺君が僕に聞く。
こんなの聞くまでもないだろう?

「考えるまでも無いよ。乗り込む」
「それしかないですよね」

石原君が賛同する。

「誰が突入する?」
 
渡辺君が聞く。

「そうだね、兵隊は警察と一緒に周りを封鎖してもらおう、僕達だけで乗り込む」

どうせ敵もそんなにいないはず。
戦闘できる人間は12人。
ただし愛莉たちは時間制限がある。
20分で終わる戦闘だとは思えない。状況を見て判断して入ってくれたらいい。

「男だけで突っ込もう。その後女性陣が増援で入る形で」
「たった5人で大丈夫なの?」

恵美さんが聞く。

「まずいと思ったら合図するからその時お願い」
「わかった。気を付けてね。望」
「ここでケリをつけて来るよ」
「冬夜君も気を付けてね」

不安そうな愛莉の髪を撫でてやる。

「約束果たさないといけないもんな?」
「うん」
「じゃあ、入ろうか?」
「って正々堂々入るつもりか?」

誠が聞く。

「そりゃ、向こうもそのつもりなんだろうし」

そう言って警官に門を開けるようにお願いすると門を開けてくれた。

「緊張しますね」

石原君が言う。

「ここできっちり片付けるっす!」

晴斗が意気込む。

「今日も終わったら打ち上げだな!」

渡辺君が皆を励ます。

「これを機に引退したいですね。片桐君の気持ちわかりますよ」

酒井君が言うと皆が笑った。

「じゃあ行こう」

僕が言うと皆中央の庭へと駆け出した。

中央の庭には大きなコンテナがおいてありそれに老人が縛り付けられてある。

「皆ヘッドセットをオンにして!指示は随時出すから」

皆がヘッドセットをオンにする。
コンテナが多分毒ガスだろう?老人が元首相か?

「5人だけでくるとは勇敢だな!」

黒いバンダナを巻いた男が拍手する。
ヴァイパーだ。
庭にいるのはカムイ、ジャック、スティールレディ、ジャッカル、サリエル、あと知らない男6人、
全部で13人。
こちらより多い。

「女性陣は庭まで隠れて侵入して。各自判断して参加して」
「わかった」

恵美さんが言う。

「で、君達の目的は?」

僕はヴァイパーに聞いていた。

「要求は伝えたはずだが?」

ヴァイパーは首を傾げる。
そんなヴァイパーを見て僕は笑う。

「その割には警備が手薄だね。僕達がここに来ることを待ち望んでいたようだ」

僕が言うとヴァイパーはフッと笑う。

「察しが良い様だな。君たちにやられたままでは気が済まない連中がいてね」

ヴァイパーが言うと5人が構える。

「酒井君爆弾解体できるんだって?」
「まあある程度の物なら」
「じゃあ、この爆弾の解体任せる。それに集中して」
「しかしこっちの方が数的不利では」
「まずは皆の安全確保が優先」
「……あの女誰が相手するんですか?」
「……そう言う事なら皆行くわよ!」

恵美さんだ。

「おお!レッツプレイ!モジュレーション」

木陰から七色の光があふれる。

「7つの光が導く未来!輝け!プリズムフェイス!」

7人が木陰から飛び出してきた。
皆が呆気に取られてる。

「やっぱし、この掛け声いらないんじゃないか?」

カンナが言う。

「ええ、なんか掛け声あった方が良いよ~」

愛莉が言う。

「私も同感。何か欲しい」

白鳥さんもそっち系だったのね……。

「お嬢ちゃん達も戦うってのかい?」

ヴァイパーが笑いながら言う。

「その小生意気なふざけた女は私が相手してあげるわ」

知らない6人は動く気配が無いらしい。
数的にはちょうどあってるか?

「ジャッカルは僕がやります、片桐君はジャックを!」

石原君が言う。

「カムイってのは自分やるっす!」

晴斗が言う。

「じゃあ、俺はサリエルってやつだな」
「渡辺君は酒井君を護衛して」

僕が渡辺君に言う。

「それなら私も旦那の援護にまわるわ」

晶さんが言う。

「……サリエルは私が仕留める」

白鳥さんが言う。

「女性陣は時間大丈夫なの?」

僕が言うと恵美さんが笑った。

「男性陣だけ制限時間無しなんて不公平な真似しないわよ。とっくに改良済み」

それなら問題ない。

「皆一人ずつ確実にしとめて行こう」
「OK!」

皆が頷く。

「仕留められるのはあんた達よ!」

スティールレディーが飛び出した。

「この小賢しくて性悪な子猫は世の女性を代表して私が成敗してあげるわ」

そう言ってスティールレディはチェーンソーを振り回す。
そのチェーンソーに向かって容赦なくケリを入れる美嘉さん。
チェーンソーは折れた。

「世の女性を代表してお前みたいなやつが女を名乗るなんて許しておけねぇ」

美嘉さんが怒りをあらわにしている。
カンナが身を低くしてスティールレディの足元に滑り込み足払いを決める。
思いっきり転倒するスティールレディの両足を掴んで振り回すカンナ。

「ちっとは痩せるとか化粧を勉強するとか努力することを覚えてから出直してきやがれ!!食らえ、プリズムフルドライブ!!」

遠心力のついたスティールレディをヴァイパーに目掛けて投げつける。
弾丸のような速さでヴァイパーに向かって飛んでいく。
ヴァイパーはそれを避ける。
スティールレディの体は大理石の柱に頭から突き刺さり自力で脱出することが出来ず足をジタバタしている。

「まず一人!次はだれだ!?」

カンナと美嘉さんが挑発する。
挑発に乗ったのはサリエルだった。
サリエルはノーモーションでナイフを投げる
白鳥さんが2人の前に出てナイフをキャッチする。

「あなたの相手は私だと言った」

白鳥さんがそう言ってる間にサリエルは白鳥さんの背後に回り込む。
背中にナイフを突き刺そうとすると美嘉さんとカンナが両腕を掴む。

「お前の事はちゃんと聞いてる容赦はしねぇ!行くぞ神奈」
「わかってる」

二人は両腕を左右に引っ張る。
腕は肩から先が捥げ、血しぶきを上げる。
そんなサリエルの頭を白鳥さんが掴み地面に押し倒すと心臓にナイフを突き刺す。頭は地面にたたきつけられ粉砕していた。
そこまでやるか……?

「ぼうっとしてる場合か!?少年!」
「冬夜君!」

愛莉の声を聞く前に僕の体は反応してた。
ジャックが飛び掛かってくる。僕はジャックに向かって構える。
ジャックは僕の間合いに入る手前で着地して剣を上段に構える。
両腕とも回復してるようだ。
ジャックとにらみ合いが続く。
ジャッカルが僕に向かってアサルトライフルを向けると同時に石原君がジャッカルに向かって発砲していた。
ジャッカルの持っていた拳銃は破壊される。
発砲すると同時にジャッカルに向かって駆け出していた石原君。
ジャッカルはアサルトライフルを捨てると懐から拳銃を取り出し石原君にむける。
石原君が拳銃を向けほぼ同時に発砲すると、ジャッカルの撃った弾丸を迎撃するという芸当を見せる。
石原君はジャッカルの死角にはいり腹部に掌底を打ち込む。
ジャッカルはよろける。
石原君は銃を持つ手を掴み足を蹴り上げ肘を砕く。
ジャッカルは銃を落すと石原君はその銃を奪いジャッカルの両足に撃つ。
その間にカムイがスティールレディを柱から抜いていた。
怒り狂ったスティールレディが女性陣に突っ込むその間に割って入ったのは晴斗君だった。

「女性ばかりにいい格好させてられないっす」

変身した晴斗は背中から棍棒を取り出し突進してくるスティールレディをフルスイングで捕らえる。
いい当たりだったようだ。
彼女の体は高く弧を描き屋敷を飛び越えて遥か彼方に跳んでいった。

「お前の相手は俺だろ!?」

カムイが突進してくる。
カムイを迎え撃つ晴斗。晴斗は武器を捨て両手を叩く。

「お前とは素手で勝負っす!」

カムイに突進してカムイの腕を掴むとカムイの勢いを利用して投げつける。
掴んだ腕を極めて力を入れるとポキっと折れる。
さらに反対側の肩を足で思いっきり踏みつける。
肩が砕けた。
晴斗はカムイの腰を掴んで持ち上げると高く飛び上がる。
カムイの頭を地面に叩きつける。
カムイの意識が無くなった。
後はジャック。

まだヴァイパー達もいる。
のんびりはしてられない。
僕はジャックに向かって突進する。
ジャックの剣が頭上に落ちてくる。
死中に活を!
左足を踏み込んで抜刀する。
神速で突っ込んでからの抜刀術。
早さも威力も申し分ない、
僕の頭上に剣が振り下ろされる前に僕の一撃が辺りジャックを吹き飛ばした。
死ぬか死なないかのギリギリを見極めて撃ったはず。
ジャックもまた意識を失った。

「解体終了しましたよ」

酒井君が告げる。
後はヴァイパーとアレン。
ヴァイパーに向かって構える。
するとそれまで静観をしていた6人が動き出した。
一人がガトリングガンを撃ちこむ。女性陣7人は皆躱す。
女性陣6人に向かって飛び掛かる5人。
彼女たちを人質にと考えたのだろうか?
しかしまだ彼女達の力を見くびっていた。

「プリズムハートブレイク!」

愛莉は合計12打撃のコンボ技を決めてフィニッシュに両手を組んで頭上からたたきつける。
男は地面に頭を叩きつけられ血を流しながら失神していた。死んでないかな?

「一匹ずつなんて面倒なのよ!プリズムバーストブレイク!!」

恵美さんが地面を叩きつけて土砂を巻き上げれば土石が周りの男にあたりよろめく。

「恵美の言う事ももっともね!私もやるわよ!プリズムボディソニック!!」

恵美さんが飛びのいたあとに亜依さんが飛び込み高速で身を震わせる。
超高速で動いたため衝撃波がよろめく4人を吹き飛ばす。
残るはあと3人。ヴァイパーとアレンともう一人知らない男。
しかしその知らない男に油断していた。
プリズムボディソニックを放った亜依さんの腕の関節を極め喉にナイフを当てる。

「遊びはここまでだ」

皆の動きがとまる。

「ここまでよく頑張った。だがそれも終わりだ」

アレンが言う。

「紹介が遅れたね。その男はアレクセイ・ロマノヴィッチ。元・スペツナズだった男だ。彼にはったりは通用しない。冷酷な男だ。動けば彼女の命は無い」

アレンが紹介すると男は頭を下げる。
そうしてる間に「再生」を終えたサリエルが動き出した。
男性陣は身動きが取れない。
ジャッカルも起き上がる。

「まあ素人にしたらよくやったほうがだな。坊ちゃん武器をよこしな」

石原君は武器をジャッカルに向かって放り投げる。

「お前もだ、片桐冬夜。武器を捨ててもらおうか」

僕も武器を地面に置こうとした時だった。
クスクス。
女性陣が笑っている。
最初はクスクス笑っていたのがやがて大きな笑い声になった。

「冬夜君武器を置く必要なんてないよ」

愛莉が笑いながら言う。

「……ただの脅しだと思ってるようだね。アレクセイやれ」
「やめろ!!」

だがアレクセイは無慈悲に亜依さんの首を斬りつける。
女性陣は相変わらず笑っている。
神妙にしていた亜依さんもこらえきれずわらいだした。
男性陣は現状が理解できずにいた。
切り付けられたはずの彼女の首は無傷。それどころかアレクセイのナイフが折れてる。

「愛莉ちゃんの言う通りだったわね。男って単純」

恵美さんが笑いながら言う。

「冬夜君の行動と変わらないから面白かった~。透けてる服は下着、ミニスカートの下には下着。男性って本当単純だね?」

愛莉が言う。
その場にいた皆が呆然としていた。7人を覗いて。

「一番の急所の首が素肌なわけねーだろ!ちゃんとスーツを装着してるよ。ガドリングガンを弾く装甲がナイフで切れるわけねーだろ!」

美嘉さんが言うと女性陣が大笑いしてる。
その間に石原君が武器を取り戻していた。

「ごめんね、片桐君。一度こういうシチュエーションを経験してみたいって女性陣が言うからちょっと芝居して見た」

事態がいまいちの見込めてないアレクセイの腕を力づくで解く亜依さん。

「スペツナズだかツナ缶だか知らないけど悪く思わないでね」

亜依さんはそういうとアレクセイの頭を思いっきり蹴り飛ばす。
アレクセイは気を失って倒れた。
その背後に迫るサリエルに対峙したのは白鳥さん。

「妄執……しつこい男は嫌われるそうよ?」

サリエルの動きがとまったな。

「いやはや、女性の方が強いというのは本当のようですね。ですが、少しは男性を頼って欲しい……動いたらどうなるかわりますよね。サリエルさん」

酒井君の巻き付けたワイヤーが首に食い込む。

だが女性は怖い。

サリエルの頭を掴みグイッと引っ張ると首無し人間に変わった。

「再生……元が残っていたらどうなるのかしら?」

白鳥さんは首を足下に落とすと思いっきり蹴飛ばす。
サリエルの頭は夜空に星となって消えて行った。
サリエルの首無しはその場に倒れる。
しかしサリエルの頭部は再生を始める。

「こまったわね。こういう時どうしたらいいのかしら?」

晶さんが言っている。

「は~い。首に栓でもでしたらいいと思いま~す」

愛莉が答える。
何処から取り出したのか分からない鍋の蓋を首の部分に置いて酒井君のワイヤーで固定する。
事態がいまいちの見込めない僕達。

「まあ、そういうわけなんでそろそろ大人しく投降しませんか?」

酒井君が言うと現実に引き戻される。
僕は刀を構える。

「今日は引き下がるしかないようだな」
「……ミカ!」

アレンが元県知事に向かって銃を向けた時、石原君が銃をアレンに向けた時に一発の銃声が聞こえた。
その弾丸はアレンの額を撃ちぬいていた。

「アレン!!」

ヴァイパーが倒れたアレンを抱き起す。
だが、アレンは事切れていた。
残るはヴァイパーのみ。
ヴァイパーは黙ってジャックとジャッカルを連れて去ろうとする。

「無駄な抵抗はやめろ!」

僕がヴァイパーに向けて突進する。
ヴァイパーは僕の足を狙って発砲する。
袴は防弾仕様になっているけど反射的に躱してしまった。
その隙を縫ってヴァイパーは3人を抱えたまま壁に飛び上がる。

「いつまでも偽りの平和を楽しむと良い」

そう言い残してヴァイパーは闇夜に消えた。
どうやって逃走したのか分からないが彼等は警察の手に落ちることはなかった。

(4)

「それじゃ完全勝利を祝して乾杯!!」

カラオケ店で祝杯を上げていた。

「しかしあんなドッキリはこれっきりにしてくれよ」

渡辺君が言う。

「もうこんな事件起こらないでしょう」

恵美さんが言う。

「あの……ユニティ解散したらどうなるんですか?私達?」

森園さんが聞くと渡辺君が答える。

「どうもしないさ、これまで通りの日々だよ」

そう、もう僕達を狙う者はいない。遥か昔だったような平和な日々が続く。

「皆さんお疲れっス!」

晴斗が酌を注いで回る。
僕の分は愛莉がしてくれた。

「冬夜君もお疲れ様」
「ありがとう」

愛莉は僕の顔をじーっとみてる。
どうしたんだろう?

「どうしたの?」
「冬夜君が何も言わない時が不安で……まだなんかあるんじゃないかって」
「まさかトーヤまだ何かあるのか!?」

カンナが聞くと僕は首を振った。

「完全に壊滅したよ。あとは警察に任せればいいよ」

まあ、気になることはあるけど口にはしなかった。
例えば月の事とか……。九尾の狐の事とか。
ちなみに高橋グループと須藤グループはIRISの情報の元、家宅捜索がはいったらしい。
それでも壊滅まではいかないだろう。
結局僕達のやってきたことに意味は無く、これまで通りの生活が続く。
サークルも相変わらず「幸せになれるサークル」の乱立が続き相手にするのも馬鹿馬鹿しいほど。
そんなに乱立したらそんな胡散臭い話に乗る物も減る。
結局自然淘汰されていくだろう。
僕達はいつもの生活に戻ればいい。
毎日がトラブル続きの一日を。
悠々自適に暮らせる生活はあと一年しかないのだから。

「先輩わかってますね!?来週からはみっちりバスケ生活なんですからね!」

佐倉さんが言う。

「冬夜君覚えてるよね?連休にはデート行こうね?」

愛莉が言う。

「わかってるよ」

就職活動もしないといけないな。
今からでは遅いかもだけど。
いざとなったらバスケに逃げるか。

「咲良はいつ引っ越すんだ?」

カンナが聞いていた。

「連休の間に引っ越そうと思います~。両親に挨拶に行かないといけないし~」
「それはそうとまた新人ゲットしないとね」
「そうね、鍛えがいのあるやつが良いわね」

亜依さんと恵美さんが相談してる。
次の生贄を探してるわけね。

「いよいよ最後の一年か~」

亜依さんの言葉に皆が何かを思ってる。

「最高の一年にしたいよね!」

愛莉が言うと皆が頷く。

「大丈夫、きっと最高の一年になるさ」

渡辺君が言う。
皆で遊んで、騒いでこうやって集まって……。
社会人になればきっとそういう回数も減っていくだろう。
だから心残りの無い一年を。
皆が思っていた。

「新名さんは来週から働くんだって?」
「ええ、真鍋君の会社で……」
「海未ちゃんは?」
「絵を描いて生活しようと思ってます」
「海未ちゃんなら出来るよ」
「ありがとうございます」
「冬夜君の絵すごかったよ。ちょっと買えなかったけど。欲しいなって思った」

愛莉が言う。

「特別に一枚書きますよ」
「本当に!?じゃあ、書いて欲しい一枚があるんだ~」
「どんなのですか?」
「冬夜君がオリンピックで金メダル取って掲げるシーン」
「オリンピックが終わった後で良ければ」
「ありがとう~」
「負けられないな……冬夜」

佐(たすく)が言う。

「どのみち勝つしかないんだから」

勝たなければ道は開けない。
どんな困難も乗り越えてきたんだ。
きっと切り開ける。
そう信じていた。

「とりあえずは冬夜の応援からだな!」

渡辺君が言う。

「盛り上げていこうぜ!」

美嘉さんは既に盛り上がっている。
そうして夜を過ごした。
家に帰るとシャワーを浴びて愛莉を待つ。
愛莉が酎ハイを持ってきてくれる。

「2人きりで乾杯」
「お疲れ様」

愛莉と缶を合わせるとグイっと飲む。
テレビをつけるとニュースがやってる。
今日の事件を取りあげていた。
肝心なところはもみ消されたまま。
やはりいつも通りか。
でも僕たちの戦いは終わった。
これからは普通の生活を送れると思っていた。

「あと一年だね」
「そうだな」
「約束覚えてるよね?」
「分かってるよ」
「冬夜君は大学卒業したらすぐに家を出るの?」
「できるならそうしたいかな?」

愛莉は僕の腕を掴む。

「私も一緒していいですか?」

愛莉の頭を撫でる。

「ずっと一緒なんだろ?」
「うん」
「……そろそろ寝ようか?」
「そうだね、今日はくたびれたもんね」
「愛莉を受け止めるくらいの余力はあるよ?」
「本当に?」
「ああ」
「わ~い」

愛莉は僕に抱きついてくる。
こんな幸せが毎日続く事を願っていた。
春が訪れ新しい風が吹く。
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