優等生と劣等生

和希

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5thSEASON

春色

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(1)

「おはよう、冬夜君。朝だよ~」

春眠暁を覚えずとはよくいったものだ。
心地よくてまだ眠っていない。

「朝ごはん食べれなくなっても知らないからね!」

ごめん、やっぱり起きる。

目を覚ますと、愛莉がじっと見てる。
その表情はとても穏やかな笑顔だった。

「ご飯って言うと本当にすぐ起きるね」
「そりゃ、愛莉の朝ごはんが食べれないと大変だから」

そう言って起き上がると着替えを始める。
着替えると朝の日課を済ませて家に帰るとシャワーを浴びて朝食を食べる。
コーヒーを入れて部屋に戻ると愛莉を待つ。
テレビを見ながら暇だからスマホを弄っていると愛莉がシャワーから戻ってくる。
愛莉は髪の毛を乾かしながら、テレビを見てる。
乾かすと愛莉は隣に座ってカフェオレを飲む。
飲み終わるとマグカップを持ってキッチンに行き、そしてまた部屋にもどってくる。
化粧を始める愛莉をぼーっと見ながらスマホを弄る。
化粧が終ると愛莉はバッグを手に取る。

「冬夜君、準備終わったよ」
「ああ、分かった」

家を出て学校に向かうと体育館に向かう。
更衣室で着替えると久々のバッシュを履く。
ボールを手に取りドリブルして久しぶりの音を聞く。
そしてシュート。
綺麗に決まる。

「勘は鈍ってねーようだな」

佐(たすく)がそう言ってやってくる。

「お帰りっす冬夜」

蒼汰が言うと皆がやってくる。
久しぶりの皆との再会。
そんな再会を懐かしんでる時間は無い。

「喋ってないで練習始めてください」

佐倉さんは相変わらずのようだ。
そうして久しぶりの朝練を始める。
徹底的にフィジカルを鍛えていたようだ。
皆の体つきの変化が見て取れる。
愛莉は2階から一人練習を眺めている。
1限目の時間が始まる頃練習をやめる。
僕達は2限目からだったので図書館で時間を潰す。
この際だから取れる資格は全部取っておこう。
愛莉は相変わらずギリギリの時間割を作ってくれた。
その分こうやって時間を見つけては図書館で愛莉とお勉強。
実際卒業に必要な最低履修単位はとってるのであとは必修単位をとればいいだけなのだが、愛莉の望んでいる事なので付き合ってる。
授業の時間になると教室に移動する。
授業を受けて学食に皆が集まる。

「本当にのんびりした時間ですね。久しぶりだ……」

石原君が言う。

「やっと平和になった。当たり前の日常が戻った。実感できます」
「これが当たり前んなんですけどね」

酒井君が返す。

「で、どうだ渡辺。新人獲得できそうか?」
「それなんだがな……」

渡辺君は苦笑して説明する。
ユニティの裏の顔が有名になりすぎた。誰も怖気ついて近寄りもしないそうだ。

「地元大からは無理かもな」

渡辺君は言う。

「今年は新人0かもね。どこの大学だってそうでしょうよ」

恵美さんが言う。

「そうでもねーぜ、実は一人確保してある」

カンナが言う。
いつの間に?

「片桐先輩!」

佐倉さんの声がする。
振り返ると佐倉さんと背の高い男性と佐が並んでいる。
誰だろう?

「待望の新戦力ですよ!高槻翔君。ポジションはセンター。インハイに出場経験ありの有望株です!」
「あなたが片桐先輩?話は聞いてます。高槻翔といいます。一緒にプレイできるなんて光栄です。よろしくお願いします」
「よろしく」

高槻君と握手する。
でもどうしてここに?
部活で一緒になるだろうに。

「彼を渡辺班に入れて欲しいんです」

佐倉さんが言った。

「渡辺班に……?」
「ああ!お前朝の!?」
「あ、あの時の!?」

カンナは知ってるらしい。
カンナに事情を聞いてみた。
カンナは話し出した。

(2)

「女子マネを一人勧誘しろ」

藤間先輩から言われたバスケ部の入部条件。
あの日本代表の片桐先輩と一緒にプレイしたい。
そんな思いもあって俺は必死に勧誘していた。

「私バスケの事知らないからパス」
「応援だけしてればいいわ」
「なんか厳しそうだし、大学生になってまで汗かきたくないし遠慮しとくわ」

なかなか見つからない。そんな時に現れたのが彼女だった。
サークルの勧誘合戦の中ぼーっと佇んでる一人の女性に目が言った。
澄んだ瞳をしていて、サラサラの黒髪を上で纏めている。背は低いけど綺麗な曲線美の女性。
影が薄いのか誰も彼女に声をかけようとしない。

この子だ!

僕は彼女の方に手をかけた。
彼女は振り向く。警戒されているようだ。

「初めまして。俺高槻翔。君新入生?」

恰好からして新入生っぽいのは間違いないと思ったけど取りあえず話のきっかけにと思って聞いてみた。

「……多田千歳。新入生です。ご用件は?」
「実は俺バスケ部に入りたいんだけど……」
「あ、ちいちゃんじゃないか!地元大に入ったんだな?」
「神奈さん」

振り返るとちょっと年上の容姿が綺麗な女性が立っていた。

「正月ぶりだなぁ!地元大に入ったなら一言言ってくれたらよかったのに」
「兄には言っておいたんですけど……」
「あの馬鹿……で、こいつは誰だ?」

神奈と呼ばれた人は俺を睨む。

「バスケ部の勧誘みたいです」
「バスケ部?バスケ部にはマネージャーがいるだろ!?」

神奈さんがそう言う。

「あ、そうなんだ。じゃあ入らなくていいですね」

多田さんに、あっさりと断られた。

「でもすごいんですね。噂には聞いていたけどこんなにすごいなんて思ってもみなかった」
「まあ、前期初日だしな。もっとすごいことになるよ」
「そうなんだ」

僕を置き去りにして二人で話をしている。

「そう言えばこんなにチラシもらったんですけどお勧めのサークルってありますか?私部活もしてこなかったからわからなくて」
「別に絶対入らないといけないって事もないんだけどな。そうだなぁ。お姉さんと一緒のグループに入るか?」
「そう言えば兄が言ってました。渡辺班ってグループに入ると良いって」

そのグループを探していたが、見つからなかったらしい。

「お姉さんが入ってるグループが渡辺班なんだ。ちょうどいい。ちなみに学科は?」
「教育学部です」
「ならグループの仲間にもいる。問題ない。今日の夕方青い鳥って喫茶店に来れるか?」
「大丈夫です。国道沿いの喫茶店ですよね?」
「皆を紹介してやるよ。……ところでお前はいつまでいるんだ?」
「そろそろ授業の時間なので行きますね」
「ああ、待ってるからな!」

俺は完全に置き去りにされた。
でもあの子を見た時どきっとした。
多田千歳。
胸に刻んでおこう。
そして渡辺班。
聞いたことがある。裏組織ともつながりがあると噂されていたユニティの前身。
今は解散してて、もう存在しないと聞いていたがまだあったのか?
もしあるんだとしたら俺にもまだチャンスがあるのかもしれない。
確か片桐先輩も入っていたはず。
早速聞いてみよう。
俺の大学生活は早くも春を迎えようとしていた。

(3)

「蒼汰の馬鹿が……」

佐が言う。

「村川さんに言いつけないとですね」

佐倉さんも怒ってる。

「じゃあ、君が渡辺班に入りたい理由は……」
「多田さんと仲良くなりたいから」
「渡辺先輩私からもお願いします。もとはと言えばバスケ部の不始末なんですが放っておけないし」

渡辺君が理由を聞くと高槻君と佐倉さんがいう。
僕はいつも通り高槻君の目を見ていた。
彼は純心そのものだ、友達の彼女か……贔屓目に見ても悪くはない。
渡辺君は僕を見てる。僕はうなずいた。

「君のメッセージのID教えてくれないか?俺達はインカレだからメッセージでやり取りすることが多いんだ」

渡辺君が言うと、高槻君は笑顔でスマホを取り出す。

「おい、大丈夫なんだろうな?仮にも義理の妹の彼氏候補だぞ。何かあってからじゃ遅い」

カンナが話す。

「問題ない。彼の言ってる事に嘘偽りは無いよ」

僕がそう言うとカンナは納得したようだ。

「よろしくお願いします」

高槻君は頭を下げる。

「地元大の面々は昼休み大体ここに集まるからここに来ると良い」
「はい!」
「あとはそうだな、今日の夕方時間空いてたら青い鳥って喫茶店に来てくれ」
「大丈夫です。時間空けておきます」
「これで取りあえず一組だな?」

渡辺君はそう言って笑う。
そうかちぃちゃん地元大に入ったんだ。
最後にあったのはいつだろう?
小学生の時かな。

「冬夜君は千歳さんの事知ってるの?」

愛莉が聞いてくる。

「誠の妹だよ。僕も長いことあってない」
「そうなんだ。じゃあ、神奈の妹ってことだね?」
「そうなるね」
「どうな娘なんだろ?楽しみだなぁ」

愛莉はそう言ってメッセージを見ていた。
多分ちぃちゃんの事を皆に伝えてるんだろう。

「誠!ちぃちゃんが地元大に入ったらなら前もって言っとけ!」
「あ、忘れてたか。悪い、千歳の事頼む」
「ちゃんと確保したから安心しとけ」
「悪いな」
「ちゃんといい彼氏さんも準備したよ~」

神奈と誠の会話に愛莉が割り込む。

「千歳に彼氏!?今日青い鳥来るのか?」
「来るみたいだよ~」
「そいつは見ておきたいな!千歳にふさわしいかどうか兄の俺が見極める!」
「冬夜君は問題ないって言ってるよ」
「……冬夜が言うなら大丈夫か」

高槻君に早くも試練が訪れたようだ。

(4)

二人の新人を確保できた。それで十分だ。
あまり入れるとまたややこしくなる。
しかし春のそよ風というのは思いがけないときに来るもので。
つい目にしてしまった。

「あ、あの離してください」

黒い髪をおさげにした眼鏡の地味そうな女性がサークルの勧誘に巻き込まれている。

「俺達のグループ入りなよ。地元大で噂になってる縁結びのサークルなんだぜ?今なら女性なら入会費無料だから」
「噂の……?」

彼女は噂のサークルの事は知ってるようだ。

「そうそう。キャンパスライフに花咲かせたいだろ?一緒に満喫しようよ」
「お取込み中悪いんだが、そのグループはそもそも会費はとってないぞ?」

俺は自然と話に割り込んでいた。

「何だお前?」
「渡辺って言えば分かってもらえるかな?」

気づいてもらえたようだ。
男たちは気まずそうにその場を立ち去っていった。
一人残った女性に話しかける。

「君、縁結びのグループに興味あるのかい?」
「……結んで欲しい相手はいます。でも大学違うし……」
「そういう話なら問題ない。君車で来てる?」
「はい」
「なら国道を上っていって左側に青い鳥って喫茶店がある。今日そこに来て欲しい」
「い、今からですか?」
「来れるならいつでも?」
「い、行きます!あのあなたは……」
「ただのお遊びグループのリーダーだよ」
「わかりました。私朝倉伊織といいます」
「俺は渡辺正志」
「じゃあ、これから直ぐ向かいます」

そう言って彼女は駐車場に向かって走っていった。
俺も急いで行くかな。
彼女の話に興味を持っていた。

(5)

久しぶりの青い鳥。
コーヒーの香りが漂う。

「やあ、片桐君。いつものでいいかい?」

酒井君がそう言うと僕はうなずく。

「お好きな席へどうぞ」

愛莉とテーブル席でコーヒーを飲みながら会話をしているとカンナと知らない女性。高槻君と渡辺君、亜依さんと誠、あと知らない女性がいた。
僕の席には渡辺君と知らない女性がついた。
カンナが知らない女性を連れてくる。

「お久しぶりです、片桐さん」

その声を聞いて思い出した。

「久しぶりだね、ちぃちゃん」

神奈達は別のテーブルで話をしている。
今は渡辺君の隣にいる女性の話が優先らしい。
ちぃちゃんは誠が渡辺班に招待していた。

「で、渡辺君隣の人誰?」

渡辺君に聞くと渡辺君は説明を始めた。
学校の帰りにあったことを聞く。

「なるほど、気になる人がいるんだね?」

僕は朝倉さんに聞いていた。

「はい、でも大学違うし……無理ですよね?」
「私立大なら問題ないよ。なあ!誠」
「ああ、名前さえ分かれば何とかなる。名前は?」

誠がそう言うと朝倉さんは「如月翔太」と答えた。

「ついでに顔写真とかあると助かるんだけど」

誠が言うと朝倉さんはスマホの待ち受けの写真を見せた。

「OK。今週中には捕獲するよ」

誠は自信あるらしい。

「ちなみにどんな人なの?」

愛莉が聞いていた。

「そうですね~……」

しばらく考えてから朝倉さんは話し出した。

頭が悪い、見た目も冴えない、運動神経もいいわけじゃない、特技があるわけでもない、鈍い、どんくさい、そのくせ彼女の理想は高い。
……いいとこ全くないじゃないか。

「如月君のどこを好きになったの?」

愛莉が笑みをこぼしながら聞いている。
朝倉さんはもじもじしてる。

「大丈夫?みんな笑ないよ?自信もって答えて」

愛莉がそう言うと話し出した。

話は小学生の頃まで遡る。

如月君と芋虫の飼育係に任命された時のお話。
朝倉さんは最初嫌がっていた。気持ち悪いと思っていた。
しかし如月君は言う。

「馬鹿だなぁ、今はこんな姿だけど蛹になって綺麗な蝶にかわるんだぜ!どんなに醜くても綺麗になれるんだ」

その言葉にときめいたらしい。
自分もいつか蝶のように生まれ変われるんじゃないか?
淡い期待を胸に2人で飼育していた。
しかし淡い期待は呆気ない幕切れを迎える。
ある日全く動かなくなった芋虫。

「残念だったね……」

朝倉さんは如月君に声をかける。

「ごめんな、蝶にしてやれなくて……」

そういう如月君の小刻みに震える如月君を見て恋心を抱いたらしい。
しかし、いくら声をかけても如月君は振り向いてくれない。
自分より綺麗な女性に声をかけては振られる日々を過ごす。
そうして中学高校と過ごしてきた。
自分の気持ちを打ち明けられずについに大学で離れ離れになってしまった。

みんな朝倉さんの話に聞き入ってた。

「私は応援するよ!朝倉さんを!」

亜依さんが言うと女性陣は皆賛同した!

「大丈夫!渡辺班の真価を見せる時が来たみたいね!」

恵美さんが言う。

「渡辺君、とりあえず渡辺班に招待して。話はそれからだよ」

愛莉が言うと渡辺君は朝倉さんとID交換してグループに招待した。

「後は任せといて!まずは彼女を蝶に変身させることからだね!」
「如月君は俺達が必ず捕まえる!任せておいてくれ」

誠が言う。

「でも彼の家有名企業のお金持ちで……私みたいな貧乏な家の娘なんて」

朝倉さんがそう言う。

「お生憎様。そういう身分差なんて障壁軽くぶち壊すのが渡辺班なのよ」

晶さんが言う。

「そ、それじゃよろしくお願いします」

朝倉さんが深く礼をすると「バイトがあるから」と言って店を出ていった。

「まずはその如月君とやらにあってみないと話にならないな」

渡辺君が言う。

「大丈夫、名前さえ聞き出せば後はどうにでもなる、そうだよな。恵美さん」
「……そういうことね。ええ1週間もあればどうにかなるわ」
「……じゃ、そっちは誠君達に任せるとして次は千歳さんと翔君だな」

渡辺君が2人を呼ぶ。
翔君を見る。間違いなくちぃちゃんに恋してる。
ちぃちゃんの方は……上手く読み取れない。

「ちぃ、翔君の事どう思ってるんだ?」

誠が聞く。

「どうって?」
「だから好きか嫌いかだよ!」
「わかんない。だって今日いきなりあったんだよ?」
「ってことは、嫌いではないって事だね?」

僕が言うと「そうですね」とちぃちゃんは答えた。

「じゃ、取りあえず付き合ってみなよ。答えはその後出してもいいんだし」
「おい冬夜、俺の妹に向かって『とりあえず』はないだろ?」

誠が言う。

「誠とカンナだって似たような期間あったじゃないか?」
「う……それはそうだけど」
「ちぃちゃんが傷ついたらトーヤが責任とれるんだろうな?」

カンナが言う。

「心配しなくてもカンナ達が心配するような事態にはならない」

僕は断言する。

「私はかまいませんけど?」

ちぃちゃんが言う。
高槻君は喜んでいる。

「じゃあ、二人連絡先交換しな」

カンナが言うと二人は連絡先を交換した。

「よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
「それじゃカンナ達も心配だろうから最初は4人で話したら?」

そう言うとカンナ達は別のテーブルで話を始めた。

「冬夜君あれで本当にいいの?」
「高槻君は真面目そうだし大丈夫だよ」
「でもこんな事言ったら失礼かもしれないけど千歳さんって……」
「愛莉の思ってる通りだと思うよ」
「うぅ……それって……」
「ちぃちゃんの理想は誠なんだろうね」
「それって良いのか悪いのかわかんないね?」

さすがに実家で趣味は暴露してないと思うぞ愛莉。

「じゃ、まずは伊織の方からだね」

亜依さんが言う。

「伊織の件なんだけどさ。まず伊織は私達に任せてくれないかな?」
「任せるって?」

渡辺君が聞く。

「伊織見てからピンと来たんだよね。そうね、『蛹から蝶に変化させる』っていえばいいかな?」
「出来るの?」

僕が聞いていた。

「出来るから言ってるんじゃん。伊織の予定聞いて空いてる時間に一気にやっちゃうから」
「と、言ってるが冬夜はどう思う?」

渡辺君が聞く。

「女性陣にまかせておけばいいんじゃない?」
「じゃあ、亜依さん達に任せるかな?」
「OK!男性陣をびっくりさせてやるよ!」

亜依さんは秘策があるらしい、こういうのは女性陣に任せた方がいいだろう?

「あ、俺そろそろ行かないと。部活の時間だ」
「冬夜君もだよ!」
「それじゃ僕達行くから!」
「ああ、また今度」
「うん」

僕達は会計をすませて店を出て大学に戻った

(6)

部活を終えると家に帰ってご飯食べて風呂に入る。
風呂に入ると愛莉が風呂を出るのを待つ。
愛莉は酎ハイを持って部屋に戻ってきた。
愛莉と二人で乾杯をする。

「また人が増えたね」
「そうだね」
「楽しくなると良いな~」

人の色恋沙汰をどうにかするのが楽しみな渡辺班ならきっと楽しくなるだろう。

「でも私伊織の話聞いていて昔を思い出しちゃったよ」
「へ?」
「小学生の頃の冬夜君」
「ああ……」
「私の中ではあの頃の冬夜君が今でも残ってるんだ。ずっと変わらない」

僕も忘れたことは無いよ。愛莉が初めて声をかけてくれた時の事。

「それにしても高槻君すごかったね」
「そうだね」

赤井も焦るほどのインサイドのプレイだった。
スタメン交代あり得るかもな。

「で、女子グルで何を相談してるの?」
「内緒だよ~」
「そうか」
「……気にならないの?」
「内緒ならいいよ。愛莉の事は信じてるから」
「うれしいな~」

愛莉は僕に抱きつく。

「それじゃ、そろそろ寝るか」
「うん」

僕と愛莉はベッドに入ると電気を消す。
朝倉さんの事は個人的にも応援してやりたい。
しかし、現実的には朝倉さんもちぃちゃんも難しいかもしれない。
それでも幸せをもたらすのが渡辺班。
僕達の周りは春色で染まっていた。
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