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5thSEASON
面接
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(1)
「冬夜君朝だよ!日課の時間だよ~!」
どうしたものか困っていた。
素直に起きると寂しそうにするし、起きなかったら拗ねるし。
起きてから後で甘えさせてやればいいのか?
しかし最近朝練で構ってやれてないしな。
やっぱり夜に相手してやるしかないか?
「夜に構ってくれるなら大丈夫だよ?」
愛莉が僕の胸に耳を当てて耳を澄ましている。
それで僕の心が読めるんだったらある意味凄いぞ愛莉。
「と、いうわけで起きて着替えましょうね」
愛莉がそう言うので素直に従う。
折角愛莉が機嫌良いのに損ねさせる理由が見つからない。
「準備出来たよ。行こうか?」
「うん」
そう言って家を出ると日課を始める。
日課が終ると家に戻りシャワーを浴びて朝食を取りコーヒーを入れて部屋に持って行く。
マグカップは夢の国で買った奴を使ってる。
愛莉は今頃シャワーを浴びている。
その間何をするかが問題なんだけど。
ゲームはすると愛莉が怒るししょうがないからテレビを見ながらネットでも見るか。
最近物騒な事件も起こってないし特にニュースは無い。
政治家の汚職とかそういうのは沢山あるけど。
後は最近あるのは角界の不祥事か?
あんな人の暴行受けたらそりゃ痛いだろうな。
一通り見るとPCをシャットダウンする。
その頃には愛莉が戻ってきてた。
愛莉はすぐに髪を乾かしだす。
髪を乾かし終えると愛莉は僕の隣に座りカフェオレを飲む。
カフェオレを飲み終わると既に飲み終わった僕のマグカップと一緒にキッチンに持って行く。
戻ってくると化粧を始める。
「準備終わったよ~」
愛莉がそう言うと僕達は家を出て学校に向かう。
学校に着くと体育館にむかう。
すでに佐(たすく)と高槻君が練習を始めていた。
朝練は個人練習が主だ。
自主練みたいなものだしね。
皆月末の春季大会い向けて気合が入ってる。
勝つことはもちろんの事、試合に出たいという気持ちが出てる。
僕もうかうかしてられない。
練習する様を愛莉は2階から眺めている。
時間になると皆、授業に行く者、時間を潰す者に分かれる。
僕達は前者だった。
今日は1限からだったので教室に向かう。
2限が終ると学食に行く前に求人票を見に行く。
何社か申し込みをして書類を渡す。
履歴書は何枚か用意してある。
あとは志望動機を書き込むだけでいいようにしている。
地元の人事担当の人は頭の固い人がいて手書きの履歴書じゃないと突き返されるときがある。
今時PCを扱えない人の方が問題だと思うんだけど。
それから学食に行くと既にみんな揃っている。
一人だけ遅れてくる。
Tシャツにジャケットを羽織ってデニムのパンツをはいた女性北村さんだ。
なんでも構内で迷子になったらしい。
「いつも同じ格好だね」
花菜さんが言った。
「そうですけど?何か問題が?」
「偶にはスカートとか履かないの?」
「そういうの興味ないんで」
「でも女子大生だよ、もう少し服装に気を配っても……」
「お洒落は自己満足でするためのもので人からとやかく言われる事じゃないと思うんですけど」
「ま、まあいいんじゃない?人それぞれ自由だし」
愛莉が間に入る。
「僕も北村さんに賛成ですね。それにまったく気を使ってないわけじゃないみたいですよ?」
酒井君が言う。
「善君、どういうこと?」
晶さんが聞く。
「彼女のTシャツブランドものですよ」
「何でそんな事に詳しいの?」
晶さんの目が怖い。
「よく見てください。女性なら分かるでしょ」
「だからなんで善君が女性の服に詳しいの?」
「それは晶ちゃんの服装見てるから……同じTシャツ着てるなって」
晶さんの服装はちゃんとチェックしてるらしい。
それを聞いて晶さんの機嫌は直ったらしい。
「ところで片桐君今日16時からですよね?面接」
石原君が言う。
「うん、学校終わったらすぐに行こうと思ってる」
「筆記試験もあるそうですよ」
「私がみっちり仕込んだから大丈夫だよ~」
愛莉が得意気に言う。
「よかったバスケと旅行で全然勉強してないんじゃないかと思ったから」
僕だって、試験に備えての勉強くらいするよ。
「ところで今日栗林君は?」
北村さんが聞いてきた。
「この場所知らないんじゃないかな?誰も伝えてないみたいだし。栗林君に用があるの?」
僕が聞いてみた。
「いえ、特にないんですが……気になったので」
もうひと押しかな?
「また来てって言ったんでしょ?きっと彼来るよ」
僕が言った。
「それもそうですね……」
気だるそうに答えるけどその言葉は安堵を漏らしている。
「冬夜君そろそろ時間!」
愛莉が言うと僕達は教室に向かう。
授業を終えると、僕達は家に帰る。
それからリクルートスーツに着替えて髪を整えるとネクタイをする。
愛莉のチェックが入る。
「ほらまたネクタイ曲がってるよ?」
「あ、ありがとう」
「私がいないと駄目だね」
「じゃあ、ちょっと行ってくるから」
「うん、私ちょっと出かけてくるね」
「どこに行くの?」
「青い鳥。恵美や晶も来るみたいだし」
「わかった。事故に気を付けてね」
「うん」
そうして僕は人生初の面接に挑みに行った。
(2)
江口トレーディングカンパニー、本社ビル。
面接の日。
地元大から受けてるのは僕と石原君だった。
筆記試験は上手くいったと思う。
問題は面接。
出来レースとはいえやはり緊張する。
そんな僕にきづいた石原君は軽く僕の背中を叩く。
そして囁く。
「そんなに緊張しなくてもほぼ決まってるんですから」
最初に呼ばれたのは石原君だった。
戦地に同胞を送る気分だった。
面接は15分くらい続いた。
その時間が長く感じられた。
やがて扉が開くと石原君が出て来る。
そして僕を見てにこりと笑う。
「やはり出来レースでしたよ」
そう言って僕の緊張をほぐす。
「次片桐君どうぞ」
僕の順番が回ってくる。
「片桐君、リラックス」
そんな言葉を背に受けながら僕は面接している部屋に入る。
「地元大片桐冬夜です。失礼します」
「どうぞかけてください」
面接官は全員で5人いる。
その中には恵美さんのお母さんもいた。
「いつも娘がお世話になってるわね」
恵美さんのお母さんが話を切り出した。
「まず我が社を志望した理由だけど……。月並みな回答ね」
いきなりダメ出しを食らった気分だ。
「成績は悪くないですね、十分単位を取っている。これなら遊んでいても卒業できるでしょ」
「まだ卒論が出来てないので安心できません」
「だめよ、ネガティブな発言するのは」
恵美さんのお母さんから再度注意を受けた。
「緊張しないで。明日また別の会社の面接を受けるのでしょう?うちは予行演習だと思ってリラックスして」
それって僕は不採用ということか?
「まずうちの企業についてどのくらいご存知ですか?」
「御社については……」
上手く説明できた。
「上手ね、そこは及第点」
やっとお墨付きをもらえた。
「バスケットで有名だけどそっちの進路は考えてないの?」
「はい、バスケットボールは大学でお終い。そう考えています」
「なぜですか?」
「目標を達成したら。後は惰性でやってる気がして……普通の人生を送りたい」
「随分と思い切った選択ですね」
面接官が書類を見ている。
「うん、成績も素行も問題ない。ちょっと3年生の時にやんちゃやってるくらいか」
恵美さんのお母さんの右側の男性が言った。
「その行動に後悔はしてない?」
「仲間を守るために取った行動です。後悔はしてません」
「そこは反省してますとかいうべきですね。褒められた行動じゃないわ。個人的には見事な采配だと評価してますが」
そんな感じで面接の手ほどきを受けながら面接は続いていった。
「特技はバスケットボールとサッカーと書いてますがサッカーはどのくらいやってたんですか?」
「小学生の頃にやってたのと中学と高校時代に1試合ずつ」
「1試合?」
サッカーをやった経緯を説明する。
「あまり好きではなかったのね?でもその回答はしない方がいいわね。協調性のない人間と思われてしまう」
ダメ出しを食らう。
「ご趣味は?」
「インターネットとゲームとドライブと旅行です」
「随分と多趣味ですね」
「はい」
「そこはドライブと旅行だけでもいいかもしれないわね」
アドバイスを受けた。
「後は今年卒業するだけね」
恵美さんのお母さんはそう言った。
「私は問題ない好青年だと思ういますけど皆さんはどうですか?」
「素行は悪くない。今でもバスケは日本代表だと書いてる。応援させてほしいくらいだ」
「そうですね、成績も十分うちでやっていける成績だと思います」
「仲間を守るためにとった勇敢な指揮。名采配だ。」
「個人的にはバスケを続けて欲しいですが、本人の意思を尊重しましょう」
「でも、金メダルを取れなかったら、バスケを続けるのでしょう?」
最後の面接官が尋ねると「金メダルを取ることしか考えていません」と答えた。
「随分自信がおありでのようで」
「仲間を信頼してますから」
「仲間を信じるか、いい返答だ」
「いいわ、まずはバスケットボールを頑張って。応援している、席は用意してあげるから」
「ありがとうございます」
「では面接は以上です。今日はありがとうございました」
「ありがとうございました。失礼します」
僕はそう言うと礼をして退室した。
石原君が外で待っていた。
「どうでした?」
「3年の時の無茶を指摘されたよ」
やっぱりあれ、やりすぎたね。と笑って答える。
「僕も言われました」
石原君もそう言って笑う。
「これからどうする?」
「青い鳥行きましょう。皆待ってるみたいだから」
「そうしようか」
そして僕達は青い鳥に向かった。
(3)
青い鳥に着くと晶、恵美、酒井君、穂乃果、中島君、栗林君、北村さんがいた。
北村さんは栗林君への対応がよそよそしい。
突然の告白でやはり戸惑っているのだろうか。
「いつものでよろしいですか?」
「はい」
そう言ってカウンターに座る。
「今日は片桐君も面接ね」
恵美が言う。
「うん、すっごい緊張してた」
「緊張することないのに。ほぼ決まってる出来レースみたいなものなんだから」
恵美がそう言って笑う。
「恵美のところがダメならうちで雇ってもいいのよ」
晶が言う。
「だめよ、片桐君みたいな人材渡す気はないわ」
本当は本採用したいくらいなのに、と恵美が答える。
「本命は明日なんだって?」
「うん、面接続きで大変みたい」
「受かるといいわね」
「そうだね~」
「片桐君なら来てくれたら僕も心強いんですけどね」
酒井君が言う。
酒井君はいきなり社長だもんね。大変だね。
「理解できないですね。どうして約束された将来があるのに棒に振るような真似するんでしょうか?」
北村さんが言う。
「それは私たちも同感なの。何より愛莉ちゃんがそう思ってるはずよ。ねえ愛莉ちゃん?」
恵美が言う。
「そうだね~でも本人が決めた意志だから」
いつも本人の意思を尊重してきた。これからも私はそんな冬夜君を支えるだけ。
出来レースでもって勝敗を決めたって拍手を送るべき勝利者は存在しない。
冬夜君はそう考えているのだろう。
「そうね、出来レースじゃ意味がない、足掻くだけ足掻いて勝ち取った者こそ真価がある。そうよね?栗林君」
恵美が言うと栗林君はえ?と答える。
「あなたも一生手に入らないかもしれないものを手に入れようと足掻いてる。それをみっともないと蔑む人間は渡辺班にはいないわ」
皆足掻いて手に入れた者だからこそ大切にする。そう恵美は言う。
「北村さん?貴方にも同じ事が言えるのよ?」
「私……ですか?」
「あなたは人を好きになることを無駄だと思っている。でも本当は違う、付き合ってもいないうちから諦めてる。私には無理だって」
北村さんは何も言わない。
「でも本当は心の中で思ってる。それはとても価値ある物なんじゃないか?って」
「私は心底興味がないです。興味をもったことはない。持つ意味すらわからない」
「本当にそうなの?」
「はい」
「なるほどね……」
恵美はそう言って笑う。
カランカラン
冬夜君と石原君が戻ってきた。
「お帰り望」
「お帰り冬夜君どうだった?」
「緊張してダメダメだったよ」
でもアドバイスを受けてきたと笑っていた。
「じゃあ、明日の本番は大丈夫だね」
私は精一杯励ました。
「駄目でも大丈夫、そう考えることにしたよ」
「そうよ片桐君。ダメなら善君の会社で働けばいいのだから」
晶がそう言う。
「じゃあ、俺はそろそろ帰ります」
「あら?早いのね?」
栗林君がそう言うと晶が言う。
「俺もバイトくらいしてるから」
栗林君がそう言って笑う。
「バイト……なにしてるんですか?」
「コンビニの店員だよ」
深夜だと時給がいいんだと栗林君は北村さんに笑って答える。
「無理しないでくださいね」
「ありがとう、また明日来るよ」
栗林君はそう言って店を出た。
「良い彼だね」
冬夜君がそう言った。
「まだ彼じゃありません」
「そうなんだ?でも告白は受けたんだろ?」
「断りました……」
「その割には迷ってるみたいだけど」
「私学校生活とバイトと交際を掛け持ちできるほど器用じゃないので」
「彼氏はいたことあるの?」
「ないです」
「もったいないなあ、僕が立候補……」
うぅ……。
ぽかっ
「お嫁さんの前でナンパは止めなさいって言ってるでしょ!」
本当に目が離せない人なんだから!
「まあ、最終的な結論を出すにはまだ早いよ?知り合って一週間も経ってないんでしょ?」
冬夜君が言う。
「これ以上時間をかけても時間の無駄だと思うんですけど」
「そうかな?」
冬夜君がそう言って笑っていた。
冬夜君は何か確証を掴んだみたいだ。
後で聞いてみよう。
(4)
私は帰りの電車に乗っていた。
夜遅くてほとんど人が乗っていない。
学生が地べたに座って話をしている。
短いスカートをはいて、そんなんだと見えちゃうんじゃない?
同性ながらそう思っていた。
でも人のファッションに他人がとやかく言うべきじゃない。
そう判断していた。
片桐先輩が言った言葉の意味を探っていた。
「そうかな?」
「そうです」と返せなかった。
私は彼に未練を持っている?
無理に決まってるあんなイケメン。
弄ばれてポイ捨てされるに決まってる。
私には不相応な人だ。
不相応だと言ってる時点で私は彼に憧れている?
彼に興味を抱いている?
すぐにその考えは捨てた。
どうせ彼と付き合ったって……。
惨めになる自分を想像してしまった。
電車を降りると乗り換える。
住宅街を抜ける。
私が見るのは崖の方。
まるで住宅街の明るい明りに目を背けるように。
そんな明りに憧れを抱いている。
憧れから目を背けている。
栗林君に対してもそうなんだろうか?
私には一生無理だと決めつけてるだけなんじゃないだろうか?
笑いながら未来を行こう。
私は笑えてる?
どうすれば笑える?
それが彼氏を作ることだとは考えづらい。
辛い事を繰り返すだけなんじゃないか?
そう思っていた。
今日はファミレスに寄った。
別に一人で入ったって何とも思わない。
ふと見る一組のカップル。
楽しそうに食事をする二人。
そんな2人に憧れを抱いていた。
憧れ?
私は今、その二人を羨ましいと思っているのだろうか?
食事を終えるとファミレスを出る。
家に帰ると風呂に入ってテレビを見る。
何気ない一日。
そんな一日に空しさを覚えていた。
嫌な気分になる。
渡辺班のチャットを見ていた。
みんな楽しそうだ。
今週末に久々に女子会やろうぜ!
美嘉先輩が言ってた。
皆乗り気だった。
私はどうする?
「美里はどうする?」
神奈先輩が一言そう言った。
私は悩んだ。
後悔は先に立たない。
ならば踏み出してみよう。
「行きます」
「じゃあ週末の18時に駅前に集合な」
これから私はどうすればいいのか?
聞いてみようと思う。
私の道しるべを誰かに立てて欲しい。
いや、もう答えは出てる。
背中をして欲しいのかもしれない。
月明かりに憧れる。
醜い部分を隠してくれるから。
陽の光を嫌う。
全てを曝け出すのがいやだから。
でも本当は光に憧れているのかもしれない。
宵闇から暁光に羽ばたく時が来たのかもしれない。
(5)
「うわっ痛そう!」
愛莉がそう言って目を背けるそのシーンは。捕虜を拷問するシーン。
「うぅ……酷い事するんだね」
そう言いながらも耐えて画面を見続けている。
僕はゲーム機の電源を切る。
「もう止めちゃうの?」
私なら平気だよ?愛莉はそう言う。
「じっくりやりたから。今日はこっちで遊ぼう?」
そう言ってノートPCを取り出す。
「うん!」
テレビを見ながらゲームをする僕達。
「ねえ冬夜君?」
「どうした?」
「どうして北村さんはあそこまで恋愛を拒絶するんだろう?」
相手は栗林君だよ?断る理由が分かんないよ?
愛莉はそういう。
「じゃあ、愛莉が栗林君と付き合えば……」
ぽかっ。
「私には冬夜君が一番なの!冬夜君酷いよ」
「そういう事?押し付けるのは良くないよ」
「北村さんには好きな人がいるの?」
「いないね。そもそも恋愛というものに興味がない」
「その割には冬夜君何か掴んだ見たいだけど?」
鋭いな、愛莉は。
「北村さんに告白は成功したんだろうね」
「え?でも断られたって」
「晴斗の時覚えてる?」
「壁をハンマーでぶち壊すってやつ?」
「そそ」
「栗林君北村さんのそれを壊しちゃった?」
「ひびくらいは入れたんじゃないかな?」
「どうしてそう言えるの?断られたんだよ?」
弾き返されちゃったんじゃないかと愛莉は言う。
僕は笑って答える。
「愛莉今日のやり取り覚えてる」
「まあ、少しは?」
「彼女言ってたよ『まだ、付き合ってません』って……」
「あ!?」
愛莉は何かに気づいたようだ。
そしてその回答に満足した僕はうなずいてみせた。
「後は誰かが背中を押してやるだけ」
そしてその機会は美嘉さんが作ってくれたと愛莉に言う。
「女子会でやればいいんだね?」
「ああ、たぶん彼女から相談してくるだろうからその時皆で背中を押してやればいい」
「わかった~任せて!」
愛莉が自分の胸をぽんと叩く。
でも、本当は彼女は気づいてるはず。
ただ誰かに背中を押して欲しい。
口実がが欲しいんだ。
「仕方ないから付き合う」という口実が。
その後は栗林君次第だと思うけど
栗林君なら大丈夫だろう。
今宵も月が綺麗だ。
優しい光に照らされて。
彼女は自分の弱さに気づいた。
人は誰もが強くはない。
だからこそ今そばにいて欲しい人を求める。
その人を思い遣る気持ちがあればいい。
月は今日もまた語りかける。
そのことを忘れないように。
「冬夜君朝だよ!日課の時間だよ~!」
どうしたものか困っていた。
素直に起きると寂しそうにするし、起きなかったら拗ねるし。
起きてから後で甘えさせてやればいいのか?
しかし最近朝練で構ってやれてないしな。
やっぱり夜に相手してやるしかないか?
「夜に構ってくれるなら大丈夫だよ?」
愛莉が僕の胸に耳を当てて耳を澄ましている。
それで僕の心が読めるんだったらある意味凄いぞ愛莉。
「と、いうわけで起きて着替えましょうね」
愛莉がそう言うので素直に従う。
折角愛莉が機嫌良いのに損ねさせる理由が見つからない。
「準備出来たよ。行こうか?」
「うん」
そう言って家を出ると日課を始める。
日課が終ると家に戻りシャワーを浴びて朝食を取りコーヒーを入れて部屋に持って行く。
マグカップは夢の国で買った奴を使ってる。
愛莉は今頃シャワーを浴びている。
その間何をするかが問題なんだけど。
ゲームはすると愛莉が怒るししょうがないからテレビを見ながらネットでも見るか。
最近物騒な事件も起こってないし特にニュースは無い。
政治家の汚職とかそういうのは沢山あるけど。
後は最近あるのは角界の不祥事か?
あんな人の暴行受けたらそりゃ痛いだろうな。
一通り見るとPCをシャットダウンする。
その頃には愛莉が戻ってきてた。
愛莉はすぐに髪を乾かしだす。
髪を乾かし終えると愛莉は僕の隣に座りカフェオレを飲む。
カフェオレを飲み終わると既に飲み終わった僕のマグカップと一緒にキッチンに持って行く。
戻ってくると化粧を始める。
「準備終わったよ~」
愛莉がそう言うと僕達は家を出て学校に向かう。
学校に着くと体育館にむかう。
すでに佐(たすく)と高槻君が練習を始めていた。
朝練は個人練習が主だ。
自主練みたいなものだしね。
皆月末の春季大会い向けて気合が入ってる。
勝つことはもちろんの事、試合に出たいという気持ちが出てる。
僕もうかうかしてられない。
練習する様を愛莉は2階から眺めている。
時間になると皆、授業に行く者、時間を潰す者に分かれる。
僕達は前者だった。
今日は1限からだったので教室に向かう。
2限が終ると学食に行く前に求人票を見に行く。
何社か申し込みをして書類を渡す。
履歴書は何枚か用意してある。
あとは志望動機を書き込むだけでいいようにしている。
地元の人事担当の人は頭の固い人がいて手書きの履歴書じゃないと突き返されるときがある。
今時PCを扱えない人の方が問題だと思うんだけど。
それから学食に行くと既にみんな揃っている。
一人だけ遅れてくる。
Tシャツにジャケットを羽織ってデニムのパンツをはいた女性北村さんだ。
なんでも構内で迷子になったらしい。
「いつも同じ格好だね」
花菜さんが言った。
「そうですけど?何か問題が?」
「偶にはスカートとか履かないの?」
「そういうの興味ないんで」
「でも女子大生だよ、もう少し服装に気を配っても……」
「お洒落は自己満足でするためのもので人からとやかく言われる事じゃないと思うんですけど」
「ま、まあいいんじゃない?人それぞれ自由だし」
愛莉が間に入る。
「僕も北村さんに賛成ですね。それにまったく気を使ってないわけじゃないみたいですよ?」
酒井君が言う。
「善君、どういうこと?」
晶さんが聞く。
「彼女のTシャツブランドものですよ」
「何でそんな事に詳しいの?」
晶さんの目が怖い。
「よく見てください。女性なら分かるでしょ」
「だからなんで善君が女性の服に詳しいの?」
「それは晶ちゃんの服装見てるから……同じTシャツ着てるなって」
晶さんの服装はちゃんとチェックしてるらしい。
それを聞いて晶さんの機嫌は直ったらしい。
「ところで片桐君今日16時からですよね?面接」
石原君が言う。
「うん、学校終わったらすぐに行こうと思ってる」
「筆記試験もあるそうですよ」
「私がみっちり仕込んだから大丈夫だよ~」
愛莉が得意気に言う。
「よかったバスケと旅行で全然勉強してないんじゃないかと思ったから」
僕だって、試験に備えての勉強くらいするよ。
「ところで今日栗林君は?」
北村さんが聞いてきた。
「この場所知らないんじゃないかな?誰も伝えてないみたいだし。栗林君に用があるの?」
僕が聞いてみた。
「いえ、特にないんですが……気になったので」
もうひと押しかな?
「また来てって言ったんでしょ?きっと彼来るよ」
僕が言った。
「それもそうですね……」
気だるそうに答えるけどその言葉は安堵を漏らしている。
「冬夜君そろそろ時間!」
愛莉が言うと僕達は教室に向かう。
授業を終えると、僕達は家に帰る。
それからリクルートスーツに着替えて髪を整えるとネクタイをする。
愛莉のチェックが入る。
「ほらまたネクタイ曲がってるよ?」
「あ、ありがとう」
「私がいないと駄目だね」
「じゃあ、ちょっと行ってくるから」
「うん、私ちょっと出かけてくるね」
「どこに行くの?」
「青い鳥。恵美や晶も来るみたいだし」
「わかった。事故に気を付けてね」
「うん」
そうして僕は人生初の面接に挑みに行った。
(2)
江口トレーディングカンパニー、本社ビル。
面接の日。
地元大から受けてるのは僕と石原君だった。
筆記試験は上手くいったと思う。
問題は面接。
出来レースとはいえやはり緊張する。
そんな僕にきづいた石原君は軽く僕の背中を叩く。
そして囁く。
「そんなに緊張しなくてもほぼ決まってるんですから」
最初に呼ばれたのは石原君だった。
戦地に同胞を送る気分だった。
面接は15分くらい続いた。
その時間が長く感じられた。
やがて扉が開くと石原君が出て来る。
そして僕を見てにこりと笑う。
「やはり出来レースでしたよ」
そう言って僕の緊張をほぐす。
「次片桐君どうぞ」
僕の順番が回ってくる。
「片桐君、リラックス」
そんな言葉を背に受けながら僕は面接している部屋に入る。
「地元大片桐冬夜です。失礼します」
「どうぞかけてください」
面接官は全員で5人いる。
その中には恵美さんのお母さんもいた。
「いつも娘がお世話になってるわね」
恵美さんのお母さんが話を切り出した。
「まず我が社を志望した理由だけど……。月並みな回答ね」
いきなりダメ出しを食らった気分だ。
「成績は悪くないですね、十分単位を取っている。これなら遊んでいても卒業できるでしょ」
「まだ卒論が出来てないので安心できません」
「だめよ、ネガティブな発言するのは」
恵美さんのお母さんから再度注意を受けた。
「緊張しないで。明日また別の会社の面接を受けるのでしょう?うちは予行演習だと思ってリラックスして」
それって僕は不採用ということか?
「まずうちの企業についてどのくらいご存知ですか?」
「御社については……」
上手く説明できた。
「上手ね、そこは及第点」
やっとお墨付きをもらえた。
「バスケットで有名だけどそっちの進路は考えてないの?」
「はい、バスケットボールは大学でお終い。そう考えています」
「なぜですか?」
「目標を達成したら。後は惰性でやってる気がして……普通の人生を送りたい」
「随分と思い切った選択ですね」
面接官が書類を見ている。
「うん、成績も素行も問題ない。ちょっと3年生の時にやんちゃやってるくらいか」
恵美さんのお母さんの右側の男性が言った。
「その行動に後悔はしてない?」
「仲間を守るために取った行動です。後悔はしてません」
「そこは反省してますとかいうべきですね。褒められた行動じゃないわ。個人的には見事な采配だと評価してますが」
そんな感じで面接の手ほどきを受けながら面接は続いていった。
「特技はバスケットボールとサッカーと書いてますがサッカーはどのくらいやってたんですか?」
「小学生の頃にやってたのと中学と高校時代に1試合ずつ」
「1試合?」
サッカーをやった経緯を説明する。
「あまり好きではなかったのね?でもその回答はしない方がいいわね。協調性のない人間と思われてしまう」
ダメ出しを食らう。
「ご趣味は?」
「インターネットとゲームとドライブと旅行です」
「随分と多趣味ですね」
「はい」
「そこはドライブと旅行だけでもいいかもしれないわね」
アドバイスを受けた。
「後は今年卒業するだけね」
恵美さんのお母さんはそう言った。
「私は問題ない好青年だと思ういますけど皆さんはどうですか?」
「素行は悪くない。今でもバスケは日本代表だと書いてる。応援させてほしいくらいだ」
「そうですね、成績も十分うちでやっていける成績だと思います」
「仲間を守るためにとった勇敢な指揮。名采配だ。」
「個人的にはバスケを続けて欲しいですが、本人の意思を尊重しましょう」
「でも、金メダルを取れなかったら、バスケを続けるのでしょう?」
最後の面接官が尋ねると「金メダルを取ることしか考えていません」と答えた。
「随分自信がおありでのようで」
「仲間を信頼してますから」
「仲間を信じるか、いい返答だ」
「いいわ、まずはバスケットボールを頑張って。応援している、席は用意してあげるから」
「ありがとうございます」
「では面接は以上です。今日はありがとうございました」
「ありがとうございました。失礼します」
僕はそう言うと礼をして退室した。
石原君が外で待っていた。
「どうでした?」
「3年の時の無茶を指摘されたよ」
やっぱりあれ、やりすぎたね。と笑って答える。
「僕も言われました」
石原君もそう言って笑う。
「これからどうする?」
「青い鳥行きましょう。皆待ってるみたいだから」
「そうしようか」
そして僕達は青い鳥に向かった。
(3)
青い鳥に着くと晶、恵美、酒井君、穂乃果、中島君、栗林君、北村さんがいた。
北村さんは栗林君への対応がよそよそしい。
突然の告白でやはり戸惑っているのだろうか。
「いつものでよろしいですか?」
「はい」
そう言ってカウンターに座る。
「今日は片桐君も面接ね」
恵美が言う。
「うん、すっごい緊張してた」
「緊張することないのに。ほぼ決まってる出来レースみたいなものなんだから」
恵美がそう言って笑う。
「恵美のところがダメならうちで雇ってもいいのよ」
晶が言う。
「だめよ、片桐君みたいな人材渡す気はないわ」
本当は本採用したいくらいなのに、と恵美が答える。
「本命は明日なんだって?」
「うん、面接続きで大変みたい」
「受かるといいわね」
「そうだね~」
「片桐君なら来てくれたら僕も心強いんですけどね」
酒井君が言う。
酒井君はいきなり社長だもんね。大変だね。
「理解できないですね。どうして約束された将来があるのに棒に振るような真似するんでしょうか?」
北村さんが言う。
「それは私たちも同感なの。何より愛莉ちゃんがそう思ってるはずよ。ねえ愛莉ちゃん?」
恵美が言う。
「そうだね~でも本人が決めた意志だから」
いつも本人の意思を尊重してきた。これからも私はそんな冬夜君を支えるだけ。
出来レースでもって勝敗を決めたって拍手を送るべき勝利者は存在しない。
冬夜君はそう考えているのだろう。
「そうね、出来レースじゃ意味がない、足掻くだけ足掻いて勝ち取った者こそ真価がある。そうよね?栗林君」
恵美が言うと栗林君はえ?と答える。
「あなたも一生手に入らないかもしれないものを手に入れようと足掻いてる。それをみっともないと蔑む人間は渡辺班にはいないわ」
皆足掻いて手に入れた者だからこそ大切にする。そう恵美は言う。
「北村さん?貴方にも同じ事が言えるのよ?」
「私……ですか?」
「あなたは人を好きになることを無駄だと思っている。でも本当は違う、付き合ってもいないうちから諦めてる。私には無理だって」
北村さんは何も言わない。
「でも本当は心の中で思ってる。それはとても価値ある物なんじゃないか?って」
「私は心底興味がないです。興味をもったことはない。持つ意味すらわからない」
「本当にそうなの?」
「はい」
「なるほどね……」
恵美はそう言って笑う。
カランカラン
冬夜君と石原君が戻ってきた。
「お帰り望」
「お帰り冬夜君どうだった?」
「緊張してダメダメだったよ」
でもアドバイスを受けてきたと笑っていた。
「じゃあ、明日の本番は大丈夫だね」
私は精一杯励ました。
「駄目でも大丈夫、そう考えることにしたよ」
「そうよ片桐君。ダメなら善君の会社で働けばいいのだから」
晶がそう言う。
「じゃあ、俺はそろそろ帰ります」
「あら?早いのね?」
栗林君がそう言うと晶が言う。
「俺もバイトくらいしてるから」
栗林君がそう言って笑う。
「バイト……なにしてるんですか?」
「コンビニの店員だよ」
深夜だと時給がいいんだと栗林君は北村さんに笑って答える。
「無理しないでくださいね」
「ありがとう、また明日来るよ」
栗林君はそう言って店を出た。
「良い彼だね」
冬夜君がそう言った。
「まだ彼じゃありません」
「そうなんだ?でも告白は受けたんだろ?」
「断りました……」
「その割には迷ってるみたいだけど」
「私学校生活とバイトと交際を掛け持ちできるほど器用じゃないので」
「彼氏はいたことあるの?」
「ないです」
「もったいないなあ、僕が立候補……」
うぅ……。
ぽかっ
「お嫁さんの前でナンパは止めなさいって言ってるでしょ!」
本当に目が離せない人なんだから!
「まあ、最終的な結論を出すにはまだ早いよ?知り合って一週間も経ってないんでしょ?」
冬夜君が言う。
「これ以上時間をかけても時間の無駄だと思うんですけど」
「そうかな?」
冬夜君がそう言って笑っていた。
冬夜君は何か確証を掴んだみたいだ。
後で聞いてみよう。
(4)
私は帰りの電車に乗っていた。
夜遅くてほとんど人が乗っていない。
学生が地べたに座って話をしている。
短いスカートをはいて、そんなんだと見えちゃうんじゃない?
同性ながらそう思っていた。
でも人のファッションに他人がとやかく言うべきじゃない。
そう判断していた。
片桐先輩が言った言葉の意味を探っていた。
「そうかな?」
「そうです」と返せなかった。
私は彼に未練を持っている?
無理に決まってるあんなイケメン。
弄ばれてポイ捨てされるに決まってる。
私には不相応な人だ。
不相応だと言ってる時点で私は彼に憧れている?
彼に興味を抱いている?
すぐにその考えは捨てた。
どうせ彼と付き合ったって……。
惨めになる自分を想像してしまった。
電車を降りると乗り換える。
住宅街を抜ける。
私が見るのは崖の方。
まるで住宅街の明るい明りに目を背けるように。
そんな明りに憧れを抱いている。
憧れから目を背けている。
栗林君に対してもそうなんだろうか?
私には一生無理だと決めつけてるだけなんじゃないだろうか?
笑いながら未来を行こう。
私は笑えてる?
どうすれば笑える?
それが彼氏を作ることだとは考えづらい。
辛い事を繰り返すだけなんじゃないか?
そう思っていた。
今日はファミレスに寄った。
別に一人で入ったって何とも思わない。
ふと見る一組のカップル。
楽しそうに食事をする二人。
そんな2人に憧れを抱いていた。
憧れ?
私は今、その二人を羨ましいと思っているのだろうか?
食事を終えるとファミレスを出る。
家に帰ると風呂に入ってテレビを見る。
何気ない一日。
そんな一日に空しさを覚えていた。
嫌な気分になる。
渡辺班のチャットを見ていた。
みんな楽しそうだ。
今週末に久々に女子会やろうぜ!
美嘉先輩が言ってた。
皆乗り気だった。
私はどうする?
「美里はどうする?」
神奈先輩が一言そう言った。
私は悩んだ。
後悔は先に立たない。
ならば踏み出してみよう。
「行きます」
「じゃあ週末の18時に駅前に集合な」
これから私はどうすればいいのか?
聞いてみようと思う。
私の道しるべを誰かに立てて欲しい。
いや、もう答えは出てる。
背中をして欲しいのかもしれない。
月明かりに憧れる。
醜い部分を隠してくれるから。
陽の光を嫌う。
全てを曝け出すのがいやだから。
でも本当は光に憧れているのかもしれない。
宵闇から暁光に羽ばたく時が来たのかもしれない。
(5)
「うわっ痛そう!」
愛莉がそう言って目を背けるそのシーンは。捕虜を拷問するシーン。
「うぅ……酷い事するんだね」
そう言いながらも耐えて画面を見続けている。
僕はゲーム機の電源を切る。
「もう止めちゃうの?」
私なら平気だよ?愛莉はそう言う。
「じっくりやりたから。今日はこっちで遊ぼう?」
そう言ってノートPCを取り出す。
「うん!」
テレビを見ながらゲームをする僕達。
「ねえ冬夜君?」
「どうした?」
「どうして北村さんはあそこまで恋愛を拒絶するんだろう?」
相手は栗林君だよ?断る理由が分かんないよ?
愛莉はそういう。
「じゃあ、愛莉が栗林君と付き合えば……」
ぽかっ。
「私には冬夜君が一番なの!冬夜君酷いよ」
「そういう事?押し付けるのは良くないよ」
「北村さんには好きな人がいるの?」
「いないね。そもそも恋愛というものに興味がない」
「その割には冬夜君何か掴んだ見たいだけど?」
鋭いな、愛莉は。
「北村さんに告白は成功したんだろうね」
「え?でも断られたって」
「晴斗の時覚えてる?」
「壁をハンマーでぶち壊すってやつ?」
「そそ」
「栗林君北村さんのそれを壊しちゃった?」
「ひびくらいは入れたんじゃないかな?」
「どうしてそう言えるの?断られたんだよ?」
弾き返されちゃったんじゃないかと愛莉は言う。
僕は笑って答える。
「愛莉今日のやり取り覚えてる」
「まあ、少しは?」
「彼女言ってたよ『まだ、付き合ってません』って……」
「あ!?」
愛莉は何かに気づいたようだ。
そしてその回答に満足した僕はうなずいてみせた。
「後は誰かが背中を押してやるだけ」
そしてその機会は美嘉さんが作ってくれたと愛莉に言う。
「女子会でやればいいんだね?」
「ああ、たぶん彼女から相談してくるだろうからその時皆で背中を押してやればいい」
「わかった~任せて!」
愛莉が自分の胸をぽんと叩く。
でも、本当は彼女は気づいてるはず。
ただ誰かに背中を押して欲しい。
口実がが欲しいんだ。
「仕方ないから付き合う」という口実が。
その後は栗林君次第だと思うけど
栗林君なら大丈夫だろう。
今宵も月が綺麗だ。
優しい光に照らされて。
彼女は自分の弱さに気づいた。
人は誰もが強くはない。
だからこそ今そばにいて欲しい人を求める。
その人を思い遣る気持ちがあればいい。
月は今日もまた語りかける。
そのことを忘れないように。
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