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LASTSEASON
にじいろ
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(1)
「如月君おめでとう」
僕達は如月君に挨拶をしていた。
今日は如月君と伊織さんの結婚式。
二次会は渡辺班だけで行われた。
「ありがとう」
「ありがとうございます」
2人が言う。
「今日はめでたい日だからゆっくり楽しんで」
そう言って僕達は席に戻る。
僕達のテーブルには多田夫妻、桐谷夫妻、渡辺夫妻がいる。
いつもと同じ面子。
食事をしながらALICEとますたーどの余興を楽しんでいた。
ALICEは年末にメジャーデビューが決まったらしい。
すでに新曲のレコーディングが始まっている。
有名なプロデューサーを確保したらしい。
ますたーども年末のお笑い芸人のグランプリに出場が決まったらしい。
知名度も上がる事だろう。
森重市長も順調に市政の改革が進んでいるようだ。
まずは市の予算の清浄化を目指しているらしい。
もちろん市議会での反発もある。
これからが戦いの本番だという。
酒井君の仕事はどうか聞いてみた。
「順調と言えば順調ですかね……」
晶さんの気まぐれで職を失った人間は数えきれないらしい。
酒井君は毎日胃の痛い生活を送っているのだとか。
残業は一切許さない主義。サビ残すら許さない。
聞こえはいいが、普通のブラック企業よりも質が悪い面もある。
その日のうちに通したい稟議書は最低でも15時までには作成して通しておかないと間に合わないとか社員の負担は計り知れない。
酒井君も秘書や専務と協力して必死に目を通している。
とはいえ、客先に訪問したり時間を取る場合もある。
もちろん移動中も書類に目を通しているのだが。
毎日が秒刻みのスケジュールで動いてるらしい。
もちろん休日出勤も許されない。
晶さんの逆鱗に触れようものなら翌日ハロワに失業者で溢れることになる。
ある意味太陽の騎士団より質が悪い。
渡辺君も大変らしい。
アルコール依存症の相手をしたり。障碍者の就職支援を行ったり。それはまだいい方だ。
健常者でありながら、働く意思のない人をどうやって働かせるかが一番の悩みらしい。
ワーキンブプアのの問題もある。
渡辺君達の仕事は生活貧困者を救う事。とはいえ生活保護は国の税金なのでコストを下げたい。
そのジレンマが渡辺君達を苦しめる。
誠達は順調のようだ。このまま行けばJ1残留は確実だろうと誠は言う。
最低限の仕事はした。契約解除はないだろうと誠は安心している。
カンナも何とかノルマをこなしているらしい。
とはいえ、カンナも今の仕事を続けていくつもりは無いらしい。
「誠が稼いでくれるなら育児に専念するよ」と笑って言う。
育児と言えば美嘉さんも子供を作りたいのだが、渡辺君と生活のすれ違いがあり難しいらしい。
休日も合わせられないので大変なんだとか。
「亜依はどうなの?」
愛莉が亜依さんに聞いていた。
「まだ難しいかな。生活やっていけるか不安でさ」
「ごめん……」
亜依さんが言うと桐谷君は謝っている。
桐谷君の様子がおかしいのは何となく気付いている。
いつもなら誠と馬鹿を言っているはずなのにそれすらない。
「桐谷君どうしたの?」
愛莉が亜依さんに聞いた。
「それが、最近様子が変なんだよね。ゲームもあんまりしてないみたいだし。眠れても無いみたいだし」
亜依さんは言う。
最近喜怒哀楽も減って来たらしい。
「まあ、仕事で瑛大も疲れてるんだろう?」
渡辺君はそう言う。
「桐谷君、さっきから何も口にしてないけど大丈夫なの?」
愛莉が桐谷君に聞いていた。
「なんか食事しても味がわからなくなってきてさ」
桐谷君が言う。
「ま、今日は仕事の事なんか忘れてぱーっといこうぜ!2次会はカラオケだろ!?神奈も明日休みだし朝までつきあっちゃる」
誠が桐谷君に言う。
「そうっすよ、瑛大先輩。ぱーっとやりましょう」
晴斗もやって来た。
「私も明日深夜勤だしさ。朝まで付き合うよ」
亜依さんも言う。だけど……。
「ごめん、そう言う気分じゃないんだよね」
桐谷君はそう言う。
2次会が終ると高校生組と桐谷君は帰るという。
「亜依は折角だから残って遊んできなよ」
そう言って桐谷君は一人で帰った。
僕達はカラオケ店に移動する。
北村さんや梅本君達主導で騒いでいた。
だが、亜依さんが浮かない顔をしている。
不安なようだ。
「亜依さん、帰ってあげた方がいいかもしれない。僕もちょっと気になる点がある」
僕は亜依さんに言った。
僕が言うと亜依さんは意を決したようだ。
「このままここに居てもみんなに心配かけるし、ごめん。先に帰るわ。どうも気になる」
そう言って亜依さんは帰っていった。
「冬夜さん、桐谷君大丈夫ですよね?」
愛莉が聞いてくる。
正直に答えるべきだろうか?
「トーヤ。どうなんだ?正直に言ってくれ」
多田夫妻も渡辺夫妻も穂乃果さんも心配なようだ。
正直に言った方がいいか。
「彼なんか負のオーラに満ちてた。嫌な予感がするんだ」
僕がそう言うと皆静まり返る。
「いやな予感ってなんだ?」
渡辺君が言う。
「中島君のときよりも酷い。馬鹿な真似をしなければいいけど……」
「馬鹿な真似って……?」
愛莉が聞いてきた。
僕の思い過ごしだと自分で言い聞かせた。
少なくとも今口にする事じゃない。
「僕の気のせいかもしれない。今は楽しもう」
僕は自分に言い聞かせるように言った。
「冬夜、俺なりに色々勉強してきたつもりだ。そう言うケースも扱って来たしな」
渡辺君が言う。
「俺もどうも気にかかる。明日良かったら俺達だけで瑛大の家に行ってみないか?」
渡辺君も気にかけているようだ。
「……それがいいかもね」
「じゃ、この話はこの辺にして盛り上がろうか?」
渡辺君が言ってしばらくしてからメッセージを着信した。
渡辺班だ。
皆メッセージを見る。
そして声を失った。
「瑛大が自殺未遂した」
亜依さんからだ。
「どこの病院!?」
僕が聞いていた。
「今西松医院に向かってる!」
「俺たちと冬夜と遠坂さんで行く!他の皆は待機しててくれ!」
渡辺君が言うと僕達はカラオケ店をでて西松医院に向かった。
(2)
1人で電車で家に帰る。
当然家には誰もいない。
淋しい。
そんな感情は湧かない。
安堵。
そんな気分すら覚えてくる。
そして不安。
これから俺はどうなるのだろう?
将来この仕事を続けていけるのだろうか?
上司に罵られながら詐欺まがいの職を続けていけるのだろうか?
孤独な老人を上手く言い含めてただの栄養ドリンクをコンビニの3倍の価格で売って回る商法。
数十万するサプリを売りつける。
良心なんて既に麻痺してる。
成果を出さなければ上司の罵倒が待っている。
それでも今までの亜依への償いと思ってやってきた。
ここで辞めてまた振り出しに戻るのが怖かった。
もう引き返せない。
転職=根性無し
亜依にそう思われるのが嫌だった。
亜依はきつくても大変でも一生懸命に働いている。
そうしなければ食べていけないから。
だから僕も一生懸命働かなくちゃ。
でもこれ以上我慢できない。
体の悪い年寄りにサプリを売ったところで何の効果もあるはずがない。
それでも話し相手になってくれるからと買ってくれる。
必要以上に買ってくれる。
そんな年寄りの笑顔を見てるのが耐えきれない。
でも辞められない。
また亜依に負担をかけてしまう。
これ以上亜依に負担をかけるわけにはいかない。
でも……。
僕が生きていることが亜依への負担になっているのではないか?
そうなら亜依を楽にしてやりたい。
僕は駄目な人間だ。
亜依は素敵な女性だ。
僕なんかにはもったいないくらいに。
便せんに亜依へのメッセージを書き残した。
亜依へ。
今までごめん。
ずっと苦労を掛けてきた。
一生懸命亜依は僕を支えてくれた。
これ以上亜依を苦しめたくない。
亜依と一緒にいられて幸せだった。
最後まで迷惑をかけてごめん。
だけど僕はもう生きて行く希望が無い。
僕自身に生きている価値が見いだせない。
亜依は素敵な女性だ。
もっといい人に巡り合えますように。
さようなら。
ありがとう。
書置きを残すと僕はキッチンに立った。
そして包丁を取り出す。
痛いんだろうな。
両手が震える。
だけど、その時亜依が帰ってきた。
「瑛大!」
ピクリと僕の動きが止まった。
亜依は僕の様子を見てすぐに察したようだ。
僕に近づくと、僕か包丁を取り上げ僕を叩く。
「何やってんだお前は!」
亜依は泣いていた。
僕の思考は止まっている。
亜依は僕の書置きに気付いたようだ。
それを手に取ると書置きを読んでそしてびりびりに破り捨てる。
亜依はどこかに電話してる。
電話が済むと僕の手を取る。
僕は抵抗していた。
「いいから来るんだ!」
亜依は僕をタクシーに乗せて走り出した。
タクシーの中で亜依から散々言われた。
亜依は泣いていた。
(3)
「亜依さん、帰ってあげた方がいいかもしれない。僕もちょっと気になる点がある」
片桐君に言われてカラオケ店を出るとタクシーを拾って家に帰った。
片桐君の予感は大体当たる。
家に帰ると、瑛大がキッチンに立っていた。
手に持っているのは……。
私はすぐに瑛大からそれを取りあげて瑛大を叩いた。
「何やってんだお前は!」
私は泣いていた。
どうしてこんなになるまで気づいてやれなかったのだろう?
瑛大はずっとSOSを出し続けていたはずだ。
一番に気づいてやらないといけない私が気づいてやれなかった。
片桐君の言葉が無かったらと思うとぞっとする。
私は動揺していた。
落ち着け!
まず最初にすることはなんだ!?
病院に電話する。
私も平静とは言えない。
タクシーを使う事にする。
タクシーが来ると瑛大を連れてタクシーに乗せる。
「西松医院まで」
まだ私の頭は混乱している。
どうすればいい?
なんて声をかけてやればいい?
私の気持ちを伝えればいい。
「間に合って良かった」
それが私の第一声だった。
「ごめん、今まで気づかなかった。お前がそこまで追いつめられてるなんて気づこうともしなかった」
励ましや叱咤は禁句だ。
一言一言慎重に言葉を選んでいく。
そうやって私の気持ちを伝えていく。
届かなくてもいい。響かなくてもいい。
瑛大の事だけを想って訴える。
そうしてる間に病院についた。
精神科の救急窓口に向かう。
そして瑛大と一緒に診察を受ける。
仕事のストレスによるうつ病。
思った通りだ。
とりあえず抗うつ薬と睡眠薬をもらう。
「仕事は当分休め」
私はそう伝えた。
「それはできない。治療費だってかかるし」
「いいから休め。手続きは私がする」
「……また亜依に迷惑をかけてしまう。俺はどこまでダメな男なんだろう」
「どうしてそう思うんだ?」
「いつも亜依に迷惑をかけてる。俺は亜依に何もしてやれないのに」
私は瑛大を抱きしめる。
「こうしてくれてるだけでいい。お前が今生きているだけでいい」
死んじゃったらこうしている事すらできなくなってしまうんだぞ?
「亜依さん!」
渡辺君達が駆け付けた。
渡辺君達に事情を説明する。
片桐君は何も言わなかった。
渡辺君は瑛大に声をかける。
「どうして俺達に何の相談もしなかった!?」
「……皆を巻き込みたくなかった」
「巻き込みたくなかったって現に巻き込んでるじゃねーか!何のための仲間だ!?」
美嘉さんが言うと片桐君が口を開く。
「美嘉さんも渡辺君も落ち着いて。桐谷君、今日はとりあえずゆっくり休むと良いよ。じゃ、僕達は行くね。桐谷君が無事で安心した」
「じゃ、亜依さんまた」と、言って片桐君たちは去っていった。
私達も家に帰った。
家に帰ると薬を飲ませて瑛大を休ませると瑛大の会社に電話する。
「急に休まれると困る!」
会社はそう言う。
「妻としても看護師としても出勤させることは出来ません」
私はそう主張する。
「彼はまだ試用期間だ。解雇することもできるんだぞ?」
脅しか?
「どうぞご自由に」
そう言うと相手が電話を切った。
それから皆に相談する。
「桐谷君の真面目さはわかったわ。良い職紹介してあげる。安心して今は病気の回復を待ちなさい」
恵美さんがそう言ってくれた。
しばらくすると瑛大が目を覚ます。
そろそろ昼食か。
食事を作ると瑛大と食べる。
瑛大に仕事の事とか説明する。
解雇の二文字に瑛大は落ち込んでいたが、私は励ます。
「大丈夫。今はゆっくり休め」
私は片づけをするとさすがに眠くなってきたので寝た。
2時間おきに一度目が覚めたけど。
瑛大がまた馬鹿な真似をしないか心配だった。
瑛大は虚ろな目でテレビを見ていた。
夕食を食べて出勤時間になると私は家を出る。
「じゃあ、行ってくる」
「行ってらっしゃい」
後日会社から解雇通知書が届いた。
その後恵美から紹介状が届いた。
江口トレーディングカンパニーの営業職。
顧客相手に新商品の提供をする職。顧客への対応が主なのでノルマも無い。飛び込み営業が出来た瑛大ならうってつけだろうと用意してくれた。
それを聞いて瑛大も安心したのか順調に回復していた。
瑛大の回復も必要なので採用は来年度からにしてもらった。
今はまだ休め。
私はそう言う。
瑛大の物語はもう一度やり直しだ。
ずっと長く道は続く。
虹色の雨降り注げば空は高鳴る。
眩しい笑顔の奥に悲しい音がする。
寄り添って今があってこんなにも愛おしい。
手をつなげば温かい事。
一つ一つがあなたになる。
風が運ぶ希望の種。
光が夢の蕾になる。
あなたが笑えば私も笑える。
一つ一つがあなたになる。
これから始まるあなたの物語。
ずっと長い道が続く。
虹色の雨降り注げば空は高鳴る。
(4)
「よし、カウント始めるよ!」
ヘッドセットで聞こえる桐谷君の声。
桐谷君が秒読みを始める。
「GO」の掛け声とともに突撃する。
僕達のギルドは僕を先頭に一気に敵拠点を制圧し砦を確保する。
そして時間になる。
「おつかれさま~」
皆が安堵する瞬間。
桐谷君は大分よくなったようだ。
今は就労支援施設に通いながらリハビリをしているらしい。
この分だとすぐに回復するだろう。
この日久しぶりに亜依さん達も交えて4人参加した。
今日の桐谷君の指揮する様子をみて亜依さんも安心したようだ。
2人の笑い声が聞こえてくる。
「じゃ、僕達もう落ちるから」
そう言ってログアウトする。
「桐谷君よかったですね」
愛莉が言う。
「そうだね」
愛莉も安心したようだ。
愛莉はドラマを見だした。
僕はスマホを見ている。
「秋吉君、ALICEのメジャーデビューはいつなんだ?」
「来年になると思います」
「じゃ、またクリスマスにはお披露目だな?」
「そう予定しています」
秋吉君と桐谷君が話している。
「これで渡辺班の問題はなくなったな」
渡辺君も安心したようだ。
「本当にそうかな?」
そう言うのは佐々木君。
「どういう意味だよ佐々木」
「多田さんも桐谷さんもそうだけど渡辺班て女性に頭が上がらないよね」
なんか嫌な予感がするんだけど……
「そ、そんなことはないよな?誠」
「そ、そうだよな。きっちり言うことは言ってるぜ?」
誠と桐谷君も学習したようだ。
「佐々木、お前は結婚してねーからわかんねーんだよ!」
如月君が言う。
「どういう意味?これから結婚するかもしれないからぜひ教えてもらいたいんだけど」
「言いなりになってるくらいがちょうどいいんだよ。男の器が試されるってもんだ」
「誠の言う通り。少々うるさくてもガミガミ言われてるうちがいいんだよ」
前言撤回。
他の皆は渡辺班で会話を始めた。
「言いたい事も言えないのが果たして本当にいいと言えるの?」
「よくいうだろ!一言言うと3倍になって返ってくるって。所詮男はそう言う生き物なんだよ」
「3倍ならましだぜ!うちなんか100倍くらいになって返ってくるぜ」
「うちも結婚してから伊織の小言が増えた。女は化け物だ。結婚してから本性を現す生き物だ」
如月君まで語りだす。
そろそろスマホ放置した方がいいかな?
だが、気付いた時には時すでに遅し。
愛莉にスマホを取りあげられる。
「翔太は例えが上手いな。女は心まで化粧してる。結婚すると化粧すらしなくなるぜ……げっ!」
「亜依もそう言えば化粧しなくなったな。色気すら失ってしまうのか女は……あっ!」
「どうしたの二人共?なにがあった?……あっ伊織!」
「3人とも渡辺班にきなさい!」
愛莉が入力する。
愛莉にスマホを返してもらうと渡辺班を見る、悲惨なことになってた。
「お前ら……最近大人しいと思っていたらそう言う事か」
「ちょっと油断してたらすぐこれだから……男共は」
「ちょっと翔ちゃんどういうつもり!?」
カンナと亜依さんと伊織さんが言ってる。
他の男性陣は俺は無実だと主張している。
僕も愛莉に僕は関係ないと今必死に主張している。
「分かってますよ」と愛莉は微笑む。
でも「私小言多いですか?」と悩んでる。
僕はスマホをテーブルに置くとベッドに入って愛莉に「おいで」と言う。
愛莉はベッドに入ってくる。
照明を落とす。
それから愛莉にそんなことは無いって事を説明していく。
ずっと長く道は続いていく。
虹色の雨降り注げば空は高鳴る。
「如月君おめでとう」
僕達は如月君に挨拶をしていた。
今日は如月君と伊織さんの結婚式。
二次会は渡辺班だけで行われた。
「ありがとう」
「ありがとうございます」
2人が言う。
「今日はめでたい日だからゆっくり楽しんで」
そう言って僕達は席に戻る。
僕達のテーブルには多田夫妻、桐谷夫妻、渡辺夫妻がいる。
いつもと同じ面子。
食事をしながらALICEとますたーどの余興を楽しんでいた。
ALICEは年末にメジャーデビューが決まったらしい。
すでに新曲のレコーディングが始まっている。
有名なプロデューサーを確保したらしい。
ますたーども年末のお笑い芸人のグランプリに出場が決まったらしい。
知名度も上がる事だろう。
森重市長も順調に市政の改革が進んでいるようだ。
まずは市の予算の清浄化を目指しているらしい。
もちろん市議会での反発もある。
これからが戦いの本番だという。
酒井君の仕事はどうか聞いてみた。
「順調と言えば順調ですかね……」
晶さんの気まぐれで職を失った人間は数えきれないらしい。
酒井君は毎日胃の痛い生活を送っているのだとか。
残業は一切許さない主義。サビ残すら許さない。
聞こえはいいが、普通のブラック企業よりも質が悪い面もある。
その日のうちに通したい稟議書は最低でも15時までには作成して通しておかないと間に合わないとか社員の負担は計り知れない。
酒井君も秘書や専務と協力して必死に目を通している。
とはいえ、客先に訪問したり時間を取る場合もある。
もちろん移動中も書類に目を通しているのだが。
毎日が秒刻みのスケジュールで動いてるらしい。
もちろん休日出勤も許されない。
晶さんの逆鱗に触れようものなら翌日ハロワに失業者で溢れることになる。
ある意味太陽の騎士団より質が悪い。
渡辺君も大変らしい。
アルコール依存症の相手をしたり。障碍者の就職支援を行ったり。それはまだいい方だ。
健常者でありながら、働く意思のない人をどうやって働かせるかが一番の悩みらしい。
ワーキンブプアのの問題もある。
渡辺君達の仕事は生活貧困者を救う事。とはいえ生活保護は国の税金なのでコストを下げたい。
そのジレンマが渡辺君達を苦しめる。
誠達は順調のようだ。このまま行けばJ1残留は確実だろうと誠は言う。
最低限の仕事はした。契約解除はないだろうと誠は安心している。
カンナも何とかノルマをこなしているらしい。
とはいえ、カンナも今の仕事を続けていくつもりは無いらしい。
「誠が稼いでくれるなら育児に専念するよ」と笑って言う。
育児と言えば美嘉さんも子供を作りたいのだが、渡辺君と生活のすれ違いがあり難しいらしい。
休日も合わせられないので大変なんだとか。
「亜依はどうなの?」
愛莉が亜依さんに聞いていた。
「まだ難しいかな。生活やっていけるか不安でさ」
「ごめん……」
亜依さんが言うと桐谷君は謝っている。
桐谷君の様子がおかしいのは何となく気付いている。
いつもなら誠と馬鹿を言っているはずなのにそれすらない。
「桐谷君どうしたの?」
愛莉が亜依さんに聞いた。
「それが、最近様子が変なんだよね。ゲームもあんまりしてないみたいだし。眠れても無いみたいだし」
亜依さんは言う。
最近喜怒哀楽も減って来たらしい。
「まあ、仕事で瑛大も疲れてるんだろう?」
渡辺君はそう言う。
「桐谷君、さっきから何も口にしてないけど大丈夫なの?」
愛莉が桐谷君に聞いていた。
「なんか食事しても味がわからなくなってきてさ」
桐谷君が言う。
「ま、今日は仕事の事なんか忘れてぱーっといこうぜ!2次会はカラオケだろ!?神奈も明日休みだし朝までつきあっちゃる」
誠が桐谷君に言う。
「そうっすよ、瑛大先輩。ぱーっとやりましょう」
晴斗もやって来た。
「私も明日深夜勤だしさ。朝まで付き合うよ」
亜依さんも言う。だけど……。
「ごめん、そう言う気分じゃないんだよね」
桐谷君はそう言う。
2次会が終ると高校生組と桐谷君は帰るという。
「亜依は折角だから残って遊んできなよ」
そう言って桐谷君は一人で帰った。
僕達はカラオケ店に移動する。
北村さんや梅本君達主導で騒いでいた。
だが、亜依さんが浮かない顔をしている。
不安なようだ。
「亜依さん、帰ってあげた方がいいかもしれない。僕もちょっと気になる点がある」
僕は亜依さんに言った。
僕が言うと亜依さんは意を決したようだ。
「このままここに居てもみんなに心配かけるし、ごめん。先に帰るわ。どうも気になる」
そう言って亜依さんは帰っていった。
「冬夜さん、桐谷君大丈夫ですよね?」
愛莉が聞いてくる。
正直に答えるべきだろうか?
「トーヤ。どうなんだ?正直に言ってくれ」
多田夫妻も渡辺夫妻も穂乃果さんも心配なようだ。
正直に言った方がいいか。
「彼なんか負のオーラに満ちてた。嫌な予感がするんだ」
僕がそう言うと皆静まり返る。
「いやな予感ってなんだ?」
渡辺君が言う。
「中島君のときよりも酷い。馬鹿な真似をしなければいいけど……」
「馬鹿な真似って……?」
愛莉が聞いてきた。
僕の思い過ごしだと自分で言い聞かせた。
少なくとも今口にする事じゃない。
「僕の気のせいかもしれない。今は楽しもう」
僕は自分に言い聞かせるように言った。
「冬夜、俺なりに色々勉強してきたつもりだ。そう言うケースも扱って来たしな」
渡辺君が言う。
「俺もどうも気にかかる。明日良かったら俺達だけで瑛大の家に行ってみないか?」
渡辺君も気にかけているようだ。
「……それがいいかもね」
「じゃ、この話はこの辺にして盛り上がろうか?」
渡辺君が言ってしばらくしてからメッセージを着信した。
渡辺班だ。
皆メッセージを見る。
そして声を失った。
「瑛大が自殺未遂した」
亜依さんからだ。
「どこの病院!?」
僕が聞いていた。
「今西松医院に向かってる!」
「俺たちと冬夜と遠坂さんで行く!他の皆は待機しててくれ!」
渡辺君が言うと僕達はカラオケ店をでて西松医院に向かった。
(2)
1人で電車で家に帰る。
当然家には誰もいない。
淋しい。
そんな感情は湧かない。
安堵。
そんな気分すら覚えてくる。
そして不安。
これから俺はどうなるのだろう?
将来この仕事を続けていけるのだろうか?
上司に罵られながら詐欺まがいの職を続けていけるのだろうか?
孤独な老人を上手く言い含めてただの栄養ドリンクをコンビニの3倍の価格で売って回る商法。
数十万するサプリを売りつける。
良心なんて既に麻痺してる。
成果を出さなければ上司の罵倒が待っている。
それでも今までの亜依への償いと思ってやってきた。
ここで辞めてまた振り出しに戻るのが怖かった。
もう引き返せない。
転職=根性無し
亜依にそう思われるのが嫌だった。
亜依はきつくても大変でも一生懸命に働いている。
そうしなければ食べていけないから。
だから僕も一生懸命働かなくちゃ。
でもこれ以上我慢できない。
体の悪い年寄りにサプリを売ったところで何の効果もあるはずがない。
それでも話し相手になってくれるからと買ってくれる。
必要以上に買ってくれる。
そんな年寄りの笑顔を見てるのが耐えきれない。
でも辞められない。
また亜依に負担をかけてしまう。
これ以上亜依に負担をかけるわけにはいかない。
でも……。
僕が生きていることが亜依への負担になっているのではないか?
そうなら亜依を楽にしてやりたい。
僕は駄目な人間だ。
亜依は素敵な女性だ。
僕なんかにはもったいないくらいに。
便せんに亜依へのメッセージを書き残した。
亜依へ。
今までごめん。
ずっと苦労を掛けてきた。
一生懸命亜依は僕を支えてくれた。
これ以上亜依を苦しめたくない。
亜依と一緒にいられて幸せだった。
最後まで迷惑をかけてごめん。
だけど僕はもう生きて行く希望が無い。
僕自身に生きている価値が見いだせない。
亜依は素敵な女性だ。
もっといい人に巡り合えますように。
さようなら。
ありがとう。
書置きを残すと僕はキッチンに立った。
そして包丁を取り出す。
痛いんだろうな。
両手が震える。
だけど、その時亜依が帰ってきた。
「瑛大!」
ピクリと僕の動きが止まった。
亜依は僕の様子を見てすぐに察したようだ。
僕に近づくと、僕か包丁を取り上げ僕を叩く。
「何やってんだお前は!」
亜依は泣いていた。
僕の思考は止まっている。
亜依は僕の書置きに気付いたようだ。
それを手に取ると書置きを読んでそしてびりびりに破り捨てる。
亜依はどこかに電話してる。
電話が済むと僕の手を取る。
僕は抵抗していた。
「いいから来るんだ!」
亜依は僕をタクシーに乗せて走り出した。
タクシーの中で亜依から散々言われた。
亜依は泣いていた。
(3)
「亜依さん、帰ってあげた方がいいかもしれない。僕もちょっと気になる点がある」
片桐君に言われてカラオケ店を出るとタクシーを拾って家に帰った。
片桐君の予感は大体当たる。
家に帰ると、瑛大がキッチンに立っていた。
手に持っているのは……。
私はすぐに瑛大からそれを取りあげて瑛大を叩いた。
「何やってんだお前は!」
私は泣いていた。
どうしてこんなになるまで気づいてやれなかったのだろう?
瑛大はずっとSOSを出し続けていたはずだ。
一番に気づいてやらないといけない私が気づいてやれなかった。
片桐君の言葉が無かったらと思うとぞっとする。
私は動揺していた。
落ち着け!
まず最初にすることはなんだ!?
病院に電話する。
私も平静とは言えない。
タクシーを使う事にする。
タクシーが来ると瑛大を連れてタクシーに乗せる。
「西松医院まで」
まだ私の頭は混乱している。
どうすればいい?
なんて声をかけてやればいい?
私の気持ちを伝えればいい。
「間に合って良かった」
それが私の第一声だった。
「ごめん、今まで気づかなかった。お前がそこまで追いつめられてるなんて気づこうともしなかった」
励ましや叱咤は禁句だ。
一言一言慎重に言葉を選んでいく。
そうやって私の気持ちを伝えていく。
届かなくてもいい。響かなくてもいい。
瑛大の事だけを想って訴える。
そうしてる間に病院についた。
精神科の救急窓口に向かう。
そして瑛大と一緒に診察を受ける。
仕事のストレスによるうつ病。
思った通りだ。
とりあえず抗うつ薬と睡眠薬をもらう。
「仕事は当分休め」
私はそう伝えた。
「それはできない。治療費だってかかるし」
「いいから休め。手続きは私がする」
「……また亜依に迷惑をかけてしまう。俺はどこまでダメな男なんだろう」
「どうしてそう思うんだ?」
「いつも亜依に迷惑をかけてる。俺は亜依に何もしてやれないのに」
私は瑛大を抱きしめる。
「こうしてくれてるだけでいい。お前が今生きているだけでいい」
死んじゃったらこうしている事すらできなくなってしまうんだぞ?
「亜依さん!」
渡辺君達が駆け付けた。
渡辺君達に事情を説明する。
片桐君は何も言わなかった。
渡辺君は瑛大に声をかける。
「どうして俺達に何の相談もしなかった!?」
「……皆を巻き込みたくなかった」
「巻き込みたくなかったって現に巻き込んでるじゃねーか!何のための仲間だ!?」
美嘉さんが言うと片桐君が口を開く。
「美嘉さんも渡辺君も落ち着いて。桐谷君、今日はとりあえずゆっくり休むと良いよ。じゃ、僕達は行くね。桐谷君が無事で安心した」
「じゃ、亜依さんまた」と、言って片桐君たちは去っていった。
私達も家に帰った。
家に帰ると薬を飲ませて瑛大を休ませると瑛大の会社に電話する。
「急に休まれると困る!」
会社はそう言う。
「妻としても看護師としても出勤させることは出来ません」
私はそう主張する。
「彼はまだ試用期間だ。解雇することもできるんだぞ?」
脅しか?
「どうぞご自由に」
そう言うと相手が電話を切った。
それから皆に相談する。
「桐谷君の真面目さはわかったわ。良い職紹介してあげる。安心して今は病気の回復を待ちなさい」
恵美さんがそう言ってくれた。
しばらくすると瑛大が目を覚ます。
そろそろ昼食か。
食事を作ると瑛大と食べる。
瑛大に仕事の事とか説明する。
解雇の二文字に瑛大は落ち込んでいたが、私は励ます。
「大丈夫。今はゆっくり休め」
私は片づけをするとさすがに眠くなってきたので寝た。
2時間おきに一度目が覚めたけど。
瑛大がまた馬鹿な真似をしないか心配だった。
瑛大は虚ろな目でテレビを見ていた。
夕食を食べて出勤時間になると私は家を出る。
「じゃあ、行ってくる」
「行ってらっしゃい」
後日会社から解雇通知書が届いた。
その後恵美から紹介状が届いた。
江口トレーディングカンパニーの営業職。
顧客相手に新商品の提供をする職。顧客への対応が主なのでノルマも無い。飛び込み営業が出来た瑛大ならうってつけだろうと用意してくれた。
それを聞いて瑛大も安心したのか順調に回復していた。
瑛大の回復も必要なので採用は来年度からにしてもらった。
今はまだ休め。
私はそう言う。
瑛大の物語はもう一度やり直しだ。
ずっと長く道は続く。
虹色の雨降り注げば空は高鳴る。
眩しい笑顔の奥に悲しい音がする。
寄り添って今があってこんなにも愛おしい。
手をつなげば温かい事。
一つ一つがあなたになる。
風が運ぶ希望の種。
光が夢の蕾になる。
あなたが笑えば私も笑える。
一つ一つがあなたになる。
これから始まるあなたの物語。
ずっと長い道が続く。
虹色の雨降り注げば空は高鳴る。
(4)
「よし、カウント始めるよ!」
ヘッドセットで聞こえる桐谷君の声。
桐谷君が秒読みを始める。
「GO」の掛け声とともに突撃する。
僕達のギルドは僕を先頭に一気に敵拠点を制圧し砦を確保する。
そして時間になる。
「おつかれさま~」
皆が安堵する瞬間。
桐谷君は大分よくなったようだ。
今は就労支援施設に通いながらリハビリをしているらしい。
この分だとすぐに回復するだろう。
この日久しぶりに亜依さん達も交えて4人参加した。
今日の桐谷君の指揮する様子をみて亜依さんも安心したようだ。
2人の笑い声が聞こえてくる。
「じゃ、僕達もう落ちるから」
そう言ってログアウトする。
「桐谷君よかったですね」
愛莉が言う。
「そうだね」
愛莉も安心したようだ。
愛莉はドラマを見だした。
僕はスマホを見ている。
「秋吉君、ALICEのメジャーデビューはいつなんだ?」
「来年になると思います」
「じゃ、またクリスマスにはお披露目だな?」
「そう予定しています」
秋吉君と桐谷君が話している。
「これで渡辺班の問題はなくなったな」
渡辺君も安心したようだ。
「本当にそうかな?」
そう言うのは佐々木君。
「どういう意味だよ佐々木」
「多田さんも桐谷さんもそうだけど渡辺班て女性に頭が上がらないよね」
なんか嫌な予感がするんだけど……
「そ、そんなことはないよな?誠」
「そ、そうだよな。きっちり言うことは言ってるぜ?」
誠と桐谷君も学習したようだ。
「佐々木、お前は結婚してねーからわかんねーんだよ!」
如月君が言う。
「どういう意味?これから結婚するかもしれないからぜひ教えてもらいたいんだけど」
「言いなりになってるくらいがちょうどいいんだよ。男の器が試されるってもんだ」
「誠の言う通り。少々うるさくてもガミガミ言われてるうちがいいんだよ」
前言撤回。
他の皆は渡辺班で会話を始めた。
「言いたい事も言えないのが果たして本当にいいと言えるの?」
「よくいうだろ!一言言うと3倍になって返ってくるって。所詮男はそう言う生き物なんだよ」
「3倍ならましだぜ!うちなんか100倍くらいになって返ってくるぜ」
「うちも結婚してから伊織の小言が増えた。女は化け物だ。結婚してから本性を現す生き物だ」
如月君まで語りだす。
そろそろスマホ放置した方がいいかな?
だが、気付いた時には時すでに遅し。
愛莉にスマホを取りあげられる。
「翔太は例えが上手いな。女は心まで化粧してる。結婚すると化粧すらしなくなるぜ……げっ!」
「亜依もそう言えば化粧しなくなったな。色気すら失ってしまうのか女は……あっ!」
「どうしたの二人共?なにがあった?……あっ伊織!」
「3人とも渡辺班にきなさい!」
愛莉が入力する。
愛莉にスマホを返してもらうと渡辺班を見る、悲惨なことになってた。
「お前ら……最近大人しいと思っていたらそう言う事か」
「ちょっと油断してたらすぐこれだから……男共は」
「ちょっと翔ちゃんどういうつもり!?」
カンナと亜依さんと伊織さんが言ってる。
他の男性陣は俺は無実だと主張している。
僕も愛莉に僕は関係ないと今必死に主張している。
「分かってますよ」と愛莉は微笑む。
でも「私小言多いですか?」と悩んでる。
僕はスマホをテーブルに置くとベッドに入って愛莉に「おいで」と言う。
愛莉はベッドに入ってくる。
照明を落とす。
それから愛莉にそんなことは無いって事を説明していく。
ずっと長く道は続いていく。
虹色の雨降り注げば空は高鳴る。
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