殲殲滅剥

ミライ164

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 翌日・・・

 俺は、重い足取りで学校へと向かうのだった。

 昨日あんなに書を読ませてもらったのに、何もお返しが出来なかったなんて・・・。面目ない。

 教室に入り、席に着く。

 亜多美は、まだ来てないのか。

 とりあえず、一安心。これが、いつまで続くのやら・・・。

 気にしていくうちに、時間は淡々と過ぎていく。

 もう、6時間目が終わった。俺は、部活に入ってないし、このあと帰りか・・・。

 結局、亜多美は何も言ってこなかったな・・・。

 「そろそろ、7限目を始めますよ。皆さん、席に着いてください。」

 そういえば、今日は誰かが来るとか言っていたな・・・。

 「今日は、特別に殲剥隊せんばくたい嘉呶廻 智寿かどえ ともひささんに、来てもらいました。」

 殲剥隊。それは、吸血鬼を狩るために作られた組織で、ランクA以上の聖器を扱えないと入隊すら出来ない。

 「君たちには、我々についてもっと詳しく知ってほしい。」
 
 俺は、殲剥隊について知らないことが多すぎる。これは、いい機会だ。

 「まず初めに、入隊方法だ。これは、至って簡単。ランクA以上の聖器を扱う。これだけだ。まぁ、これをすることが1番難しいのだがな。そして、我々の根城。陽光楼。日の光を1番浴びる場所にあるため、吸血鬼は近づくことすらできない。」

 陽光楼か。1番日が当たるって、山の上なのか?

 「次に、吸血鬼の根城だ。これは、昔の書物に書いてあったのだが月光楼と言う場所らしい。何でも、そこへ行くまで7つの門を通らなければ行けないらしい。ただ、1つの門を突破しないと、次の門が現れず、時間が経てばまた1つ目の門が出来上がる。今までに到達できたのは、最高で2まで。これ以上は、わからない。そして、門番の吸血鬼がいる。彼らを『七門月塊しちもんげっかい』と、言う。」
 
 七門月塊・・・。恐ろしい、門番にであることが1番の危険なのか。

 吸血鬼は、月光を浴びるほど力を増す。つまり、月に近いほど力が強くなると言うこと。

 7番目の門番は、どれほど強いのだろうか・・・。

 このあとは、吸血鬼の倒し方やどうして生まれたのかの説明だった。

 そして帰り際に、こちらを指差し

 「君のその聖剣。どこかで、見たことがある。まぁ、君がそれを扱えるのならばもう殲剥隊には入隊出来るだろう。」

 !?

 この聖剣を知っている?もしかして、俺の失った記憶の何かが分かるかもしれない。

 「だったら、一時的に俺を入隊させることはできないのか?」

 皆驚いていた。俺自身も、そうだった。

 「ふははははは、面白いやつだ。いいだろう。期間は、1ヶ月。仮入隊ということにしておく。いいか、入隊するには吸血鬼を殺さないといけない。お前にできるかな?」

 「勿論!」

 咄嗟に声が、出てしまった。

 「いいだろう。ついてこい。案内してやる。」

 「い、今から!?」

 「勿論そうだ!行くぞ!」

 はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。

 速い・・・。何でこんなに、足が速いんだ?これが、殲剥隊・・・。どれだけ訓練を、積めばいいんだ?

 今は、見失わないようにするのが精一杯だった。

 「よし!これから、第一の試験だ。この山を登れ!それも、夜明けまでにだ。安心しろ、ここに吸血鬼は出ない。ここら辺は、殲剥隊の縄張り。入れば即死だ。奴らも、それは理解している。さぁ、行け!」

 そう言われたけど・・・。何だ、この山は!!

 道もろくに、整備されてないし!しかも、さっき走ったばっかでめっちゃ辛いし。夜明けまでに、間に合うのか?一体どうしたら・・・。

 『お前はすでに、答えを手にしている』

 !?

 何処からか、声が聞こえた。幻聴か?そうなってくるとまずいな。いや?俺はすでに、答えを持っている?

 ・・・。

 そうか!いつもしていたじゃないか。心拍数を上げる、特訓。あれは、技を出すためにしているが身体強化も出来るかもしれない。

 足に、血をおくれ!もっとだ!もっと。

 速い!しかも、疲れない。

 これならいける。夜明けに間に合う!

 うおおおおおぉぉぉぉぉ!!

 「よくやった。」

 はぁはぁはぁはぁはぁはぁ。

 もう限界だ。何とか間に合ったものの、結局これをした後では一気に疲れが襲ってくる。これも、何のかできるようにしなければ。

 「ここが、陽光楼だ。ついてこい。」

 長い階段だった。しかも、ここは山頂。空気が薄い。ていうか、何でこの人は俺より速くついてるの?一山登ったのに・・・。でも、よく考えればよく俺に出来たな。多分、1日あっても無理だぞ普通。俺も、この道を歩み始めたと言うのか・・・。

 そう思っているうちに、階段は登り切った。

 「それじゃぁ、行儀をよくしていろ。」

 一体、どんな人なんだろう?

 「お連れしました、陽陰様みょういんさま。」

 「ありがとう、智寿。初めまして、大神。私が、殲剥隊当主の陽陰 光周みょういん こうしゅうだ。よろしくね。」

 「よろしくお願いします。」

 この人が、殲剥隊の現当主様。

 俺を認めて、下さるのだろうか?

 不安を抱きつつも、その回答を待つ俺だった。

 
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