殲殲滅剥

ミライ164

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 今俺は、亜多美の家に来ている。

 くっ、やはり亜多美家の家は何から何まで広すぎる。俺の家とは、大違いだ。

 「何ボサッとしてんのよ!ほら、行くわよ。」

 まぁ、この敷地の一角を使わせてもらうだけだし、多分書を置いてある場所も、そんなに大きくないだろう。

 この考えは、甘かった。この後俺は、地獄を見ることになる・・・。

 「ついたわよ。」

 !?

 「ちょ、ちょっと待て。これだけあるのか?」

 目の前には、ざっと10000冊以上の書が並んでいた。

 「そうよ。日本中から、お父様が集めたの。剣術の書は、あそこ。」

 見ただけでも、やる気が削がれそうだ。

 「術には、型がないから我流の技を編み出せるのよ。それを、書にまとめるとこれぐらいの厚さ。」

 その大きさは大体、国語辞典くらいだった。

 「中には、技のコツとか動作だけをまとめる人もいるんだけど、こうやってどうしてこの技を作ったのかっていう、秘話を書く人もいるのよ。」

 「てことは、その技のことが書いてある場所だけを読めばいいのか。」

 「そうよ。それじゃぁ、頑張って。」

 とりあえず、下の方から手をつけてみるか。

 ん?ちょっと待てよ?

 この技、読んだことがある。いや?一体どこで・・・。

 こっちも、こっちも、どれも読んだことがある。

 案外、1冊に載っている技は少ないのですぐには読めるが、どれもどこかで読んだことのあった技だった。

 この調子だと、全部ありそうだな・・・。ん?なんだこれ?鍵がかかってる・・・。ちょっと、聞いてみるか。

 「お~い、亜多美。」

 ダッダッダッダッダッダッダッダッ。

 廊下を走ってくる、足音がする。

 「どうかした?」

 「おっ、おう。これなは、何かと思って。」

 そう言って、この本を見せた。

 「ああ、これは禁書よ。これを読むと、その技ができるまで出られない空間に転移・・・、って!なんで鍵が外れてるの?」

 「いや、なんか・・・勝手にあいてって、うお!」

 本の中に吸い込まれていく。亜多美がなにか言っているようだが、聞こえない。まぁ、ぼちぼち行きますか。

 この技は、見たことないな?やっと、手応えのありそうなものがきたな。

 俺は、まず禁書を読んでみた。そして実際にやってみる。

 できない。やはり、何かが違う。これは、時間がかかりそうな予感がするな。

 6時間後・・・。

 一向に兆しが、見えない。何が違う?何がおかしい?もう一度、見直してみるか?

 ん?最後のページに、何か書いてある。

 『己を見直せ・・・』

 自分を見直す?俺は何かを、していない?

 ・・・そうか、俺はまだ読んだ技を一回も試していない。

 よーし・・・、できない。

 ちょっと待て?

 もう一度。今度は、一度出したことのある技を・・・、出ない。まさか、『刹那一閃』もできないとは・・・。

 考えろ。あの時と何が違う?聖剣は扱えてる。あとは・・・、怒ってない?そういえばあの時先生が、俺はもう少しで暴走すると言っていた。つまり、心拍数がまだ足りない?

 血の巡りを、速くしろ。心拍数を上げろ!

 「刹那一閃!」

 出せた!!

 やはり、この説は正しかった。

 これで!!

 まだダメなのか・・・。

 もしかしたら、暴走状態並みの心拍数でいないと、扱えない代物なのか?

 それだと、一生出られなくなるな・・・。

 待てよ?もしこの空間に、暴走という概念が無ければいける。

 これは一か八かの賭けだ。頼む。行けてくれ!

 勿論そんなことはなく・・・、

 不味い、暴走した。意識はあるのに、コントロールできない。これ、いつ終わるんだ?死ぬまでか?永遠に続くのか?そろそろ、飽きてきたな・・・。

 操れたり、できないかな?

 その後、色々試してみると・・・。

 あれ?暴走状態じゃなくなった。ちょっと、心拍数を下げただけなのに。

 もしかして、一気にやるからダメなだけで、ゆっくりだったらいけるのか?

 早速試してみることにした。

 ゆっくりだ。ゆっくり、息を整えろ。

 そして、

 「空羅双極撃」

 できた・・・あれ、めまいが・・・。

 時は少し遡り、大神が書に飲み込まれた直後。

 「あー!もうどうして、人の話聞いてないのよ。この書に飲み込まれた人は、誰も戻ってこないって、お父様が言ってたのに。」

 気づけば、目から涙が溢れていた。

 「折角、お父様に紹介して見合いまで頼もうと思って他のに・・・。」

 その直後、書が光り出した。

 思わず私は、目を瞑った。

 目を開くと、そこには大神がいた。だが、気を失っている。酸欠だ!

 どうしよう、どうしよう。

 「どうされましたか?お嬢様。」

 「榎本!どうしよう、友達が倒れちゃって。」

 「そうですね、ひとまず客間にお連れして、少し寝かせておきましょう。」

 2時間後・・・。

 「う~ん、あれ?ここは・・・。」

 バサッ!

 !?

 急に、亜多美が抱きついてきた。

 「もう!心配したのよ!大丈夫?怪我とかない?」

 「おっおう、もう大丈夫だ。おっと、もうこんな時間だ。そろそろ帰らないと怒られちまう。それじゃぁ。」

 そう言って、咄嗟にその場を離れた。あぶねー、あのままだと何しでかされるか分かったもんじゃない。

 明日、謝るか~。

 そう、祈念するのだった。
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