コネクティッド・ストーリーズ

ミライ164

文字の大きさ
1 / 1

遅刻

しおりを挟む
 小鳥の囀りが聞こえる。気温も低くなく、気持ちの良い朝だ。現在時刻が、朝の八時でなければなぁ!
「あぁぁぁぁぁぁ、遅刻だぁぁぁぁぁ!!」
 あたり一面に俺の声が鳴り響く。俺は、海堂かいどうしげる同楼どうろう中学二年生だ。始業の時間は、八時十分。登校にかかる時間は、十五分。「うん、終わた」などと思っている余裕もないほどピンチなのだ。俺の目指す北条ほうじょう高校に推薦で行くためには、遅刻は厳禁。今まで一回も遅刻してこなかったのに、ここで終わってたまるか。
 俺は着替えて、急いでリビングへ向かった。
「母ちゃん、朝食は?」
「あら、おはよう。早いじゃない。何かあったの?」
 食卓を見るが、朝食がない。近くのテレビでは、ニュースをやっていた。なんでも捕ノ湾ほのわんに強盗が潜伏しているとのことだった。まぁ、そんなことはどうでも良い。朝食がないから、俺は食パン一枚取り出して家を飛び出た。
「ちょっと、その格好どうしたの?」
「何言ってんの!もうこんな時間なのに.....行ってきます」
 俺は自転車に乗って力強く漕いだ。
「茂、今日は.....」
 母ちゃんが何か言ったようだったが、俺の耳には届かなかった。
 俺の家から同楼中学校へ行くには、一度海道まで降りる必要がある。そしてそのまま道なりに行けばつけるんだが、少し遠回りだ。だから直線距離で行く。なぜいつもそうしないかというと、俺の家と学校の間には山があるからだ。だから遠回りでも、楽な道を選んでいた。だが、今は違う。幸い道はあるため凸凹道を、頑張る必要はないようだ。
 数分で山の麓まで来ることができた。ここから山を登っていたら時間がかかる。だから、異軸いじくトンネルを通ることにした。「頼む頼む頼む頼む」心の中で叫びながら、自転車を漕ぐ。近道とはいえ、不安は募ってしまう。
 そうこうしているうちに、光が見えてきた。出口だ。トンネルを抜けると、目の前に学校が見えてきた。「あと少し」時間的にもまだ大丈夫なので少しスピードを緩めることにしたのだが.....
「え!?校門がしまってる!?」
 校門が閉まり、中に入ることができなかった。「あぁ、終わった。俺の高校生ライフ.....」などと思っていると、警備員の人がやってきた。
「君、何やってるの?今日は祝日なんだから学校はないでしょ。あ、部活?熱心だねぇ。でもごめんね、八時半までは開けられないからもう少し待っててね」
 その言葉を聞いた瞬間に力が抜けた。自転車が倒れる。鞄がカゴから転げ落ちた。
「そん.....な.....そんなことってあるかよぉぉぉぉぉぉぉ」
 俺の声は、波の音にかき消されて多くは響かなかったが、警備員の「クスッ」という笑い声だけは聞き取ることができたのだった。

ー終わりー
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

処理中です...