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2.ラノベ少年的カタリスト

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諸君らは、ラノベ、すなわちライトノベルを読んだことがあるだろうか。
私自身ほとんどないが、文筆家としての認識は「主観が異常に強い、没頭もの」という印象である。

「主観が異常に強い」。これは小説だけにある特徴ではなく、どうやら人間にもそんな特徴を持ったものがいるようである。それが今回の「主人公」、
「ラノベ的カタリスト」である。

うーむ、どうやら、残念なことに、私は彼を好めることはおそらく過去も現在もこの先もないだろう。むしろ、見れば見るほど、好意からは程遠くなる。そんな気がしてならない。

「第一印象が良い。」。
これが「ラノベ人」の第一特徴である。
挨拶をしっかりとして、様々な人と
最初のうちから積極的に仲を交え、
段々と周りに一目置かれていく。
おそらく、常勝ルートに入れば、こういう人間はこのような歩みをするのだろう。

しかし、「第一印象の良さ」はその肯定的側面と裏腹にそれが転落しやすいものであることも示している。(その暗示は現状が表象している。)残念ながら、彼の場合、どうやらその好印象は空回りしてしまったようである。

なぜか?

ここで第二の特徴が出てくる。

第二に「ラノベ人」は「自己陶酔が激しい」ということである。
ここがおそらく、究極的に嫌悪を買ってしまった、と私は見ている。(私も含めて)

自身の考えが正しいというある種の先入観がいつも彼には付随する。
それはおそらく、彼がミスをしたことが少ないことから来る。経験の浅さからだろうが、彼は自分に酔いしれているから「常に自分が正しい」と見てしまう。
だからなのか、どこかオーラが鼻にく つく気がしてならない。(いや、これは筆者のこじつけ的な部分が大きいかもしれないが)

その先入観は自己陶酔から自己中心的世界観へと昇華され、ついに晴れて彼は
「ラノベ人」すなわちラノベの主人公気取りの青年となった!

講義の最中、彼は自分が中心であるから
漫画の一コマのような、感情表現を惜しまない。
「んー。」とか、「なるほど!」とか
とにかく深く深く頷き、深く深く考える。(それが自己陶酔という浅く浅すぎる思考が原因だとしても。)

反応するのはいいことである、本来。
だがしかし、そこには程度の限界があって然るべきで、それは他の生徒の授業妨害になるべきではない。
正直なところ、私は慣れてしまったが、
それでもやはり講義中、一度は彼の方に視線をやりたくなる。
大変、遺憾なことである。

彼の容姿は中背で華奢、髪は硬く、
目は細い。メガネは四角で特段美形でもない。女子衆にはもしかしたら、
美形であったら許せたなんて人が多いかもしれないが、彼はそのような「美形」のうちには恐らく入らないのだろう。
皮肉なことである。

さて、自分が正しいと考える、彼の
「ラノベ人」的思考はもうひとつ、彼の特徴を炙り出す。

それは「カタリスト」だと言うことだ。
カタリスト、すなわち「語り」ばかりしている人のことだが、筆者も相当なカタリストだから人のことなど本来言えるはずもない。
それでも、彼のことについてだけは、
物申したいところがある。
これもまた、講義中の話だが、
せっかくの講師の説明の最中なのに、
自分の「正しい覚え」を周りに語るのに集中してしまって少々騒音くさい。

語る人間は僕は本当は好きな人間だけれども、(自分がそうであるように)
彼のようになりふり、場所構わず語る者は話が変わってくる。
またこれも大変遺憾な話である。



この世の中に主人公など一人も存在しない。
全ての人間はモブでしかない。
せいぜい、歯車として精一杯生きるべきなのである。
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