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5.小ちゃいOL

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彼女について、どこか聖母のような安定感を感ずるのである。しかしながら、
それが安心しきったものかというと、そこに独特なスパイシーさがあって良いのである。

私はよく、彼女のことを「小ちゃいOL」と揶揄するのだが、彼女はその戯名の通り小人のような背丈である。
正直言って、彼女を小学生だと言ってしまえば、確かにちょっとませた小学生として納得してしまいそうである。
それで灰色のキリッとした外套を着るものだからなんだか齟齬があって少々面白いように見えるのである。だから、私は彼女を「小ちゃいOL」と呼ぶのだ。

ただし、この面白さは別にそんなに大げさなものではなく、彼女の品と雰囲気を
考慮すればまったく不自然には感じないのである。


彼女は思慮分別のある常識人である。
いや、これは至って普通のことなのかもしれないが、私の周囲を垣間見るとなかなか稀有な人物なのである。
常に冷静であり、必要なことをキチッとこなし、思考が必要な時は一生懸命に考える。こういう姿が私に彼女を「OL」と喩ええさせているのである。


そして、彼女は明朗に周囲がみえている。よく周りを見て、行動し発言するからそこに品格が伴うのである。
現に私は彼女から人を不快にさせるような戯言をほとんど聞いたことはない。
いや、ほとんどというか皆無である。
こんなに純朴で英明な人物は何人にも変えがたいものがある。


では、彼女が英明であるも、堅物のつまらない人物かというと、そうではなく、
その品格の中でしっかりとユーモアを持っているのである。
品があってツンツンしている人かといえばどちらかというと、品はあるけれどもくだらないことにもゲラゲラしているタイプの人である。

そしてまた、調子がいい、リズミカルな
生態を持った面白い人である。
まあ簡単に言ってしまえば、「ノリ」が
いいということだが、
そのノリが、彼女の聖母的安定感に
しっかりとスパイシーさを発揮して、
彼女の奥深さを表するとともに、
その安定感を一層強調するのだ。



彼女は一見、視界に入らないくらいの
小人かもしれないが、
その実情は誰よりも寛容で、英明な、
ユーモアのある巨人なのである。



容姿は大切な要因かもしれないが、
そこに人という社会的生物としての
評価に関わるファクトはひとつもないのである。





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