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9.完璧青年

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彼について、心底尊敬の念を表する。
だが、憧れを抱く相手ではないのは確かである。

「完璧青年」。
こんな少々大きく出過ぎた表現を
使うのは性に合わないが、否応なしに私にこんな表現を使わせるほどの秀才である、彼は。

容姿端麗、学問優秀、運動も上々、
さらには誰も憎めないお人好しときた。
多くの諸君に勝ち目はない。
脱帽したまえ、彼は「完璧青年」である。


第一に容姿の端麗さはいうまでもない。
綺麗な二重まぶたのアーモンド型の整った、今にも吸い込まれそうな眼。
年相応で、爽やかな、マッシュカットの
髪型。痩せすぎず、厚すぎずの理想的な肉体構成。

誰が文句を言えるだろうか!
もっと文句を言えなくなるのは学問分野である。


彼はとことん努力家である。
指図されたものを120%のクオリティで
やり遂げる気概の持ち主で、
まさしくこの部分は最も尊敬に値する。
その気概も相まって、彼はとにかく勉学が優秀である。

人はそんな彼の気概を「純粋」とか
「真面目」なんかと表現する。
しかしこの表現ではいささか不適というか不十分なのではないか?

というのも、多くの秀才というのはある一定のプライドというか、それこそ知ったかぶりと共通するような自分をわざと誇張するような思惑も普通持っているものである。だが、彼にはそんな不埒な思惑など1ミリもないのだ。

いつでも、彼は初学者のように自分を周りに小さく見せている。高慢な昂りなど一切せず、むしろ完璧ともはたからは言えるその勉強水準をまだまだ不十分かのように常に高みへと志向する。

だから、このただの「真面目」という表現は不十分である。言うなれば、俗世を罷った「修行僧」である。いや、彼ほどならもう現世を解脱した「仙人」かもしれない。



また彼の人柄についてもこれは好まざる方がおかしいという具合のものだと私は思う。

あまり自己を前面に出すというよりかは一歩引く感じだが、話のノリは上々。
よく笑うのもまたチャーミングなのかもしれない。

さて、これで彼には容姿、学問、人柄の三拍子が見事に揃っていることが存分にご理解できたと思う。



私は心底、この三拍子揃った彼を尊敬するし、否定など1ミリもできない。

優等、というところを究極まで突き詰めるときっと彼のように誰からも文句を言われない人になれるのだろう。












優等生的な完璧人間というものに
私は深い尊敬を抱く。

だが、果たして君はそんな目で見られたいだろうか?
はたまたこの彼自身もこういった眼差しで周りから見られることを真の意味で光悦しているのだろうか?

私はそんな目で見られたくない。
だからこそ、憧れには至らないのである。










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