現代文の模試に出そうな評論たち

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世界に羽ばたく前に…

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「世界に羽ばたく人材に。」、「世界で通用する人間を。」こんな文句を高校や大学、
果ては中学校や小学校のパンフレットなんかで見たことある人が多いと思う。そして近年大学の学部でやたらと多い「国際」なんとか学部。そして、教育機関や地方都市なんかが、やたらと力をいれる「国際交流」。この文章を読んでいる君たちもこのようなパンフレットや本等々の情報を得て、「世界に羽ばたく人」になろう!と思っているかもしれない。だが、君らが「世界に羽ばたく」前に考えるべきことがあるのではないだろうか。君たちが、世界で輝かしく活躍する前にもっと考えるべきことがあるのではないか。私は最近の国際主義的な、なんでもかんでも世界と結びつけたら素晴らしいことをやっているように見せかける思想が大嫌いだ。というか、危険でさえあると感じている。では、君たちは「世界に羽ばたく」前になにを考えるべきなのか。

さて、君たちは「世界で羽ばたこう」とするのにどのように考えるか。まあ大抵は海外への留学やら就職やらを考えるだろう。「世界へ羽ばたく」ことは海外で活動することだと、多くの人が共通した価値観を持っている。裏を返せば、「世界で羽ばたく」ことは「日本脱出」だと多くの人に捉えられているように思うのだ。これこそ、私が今日諸君に声を大にして言いたいことの源泉である。すなわち、諸君や教育機関が賛美し、崇拝する国際主義なるものは単なる日本脱出志向に他ならない、というか日本脱出ということがある種その目的となっているのだ。果たしてそれでいいのだろうか。いや、まったく良くない。目的の形骸化と、風化が及ぼすものの最たるものは日本の人材の流出である。
これこそが、日本の国際主義の問題点だと私は思う。人材が次々に水がコップから溢れ出すように海外に漏れていく点である。

そもそも君たちの思考は私から言わせれば狂っている。君たちはアフリカの飢餓状態の子供の写真には心の底から慈悲するのに、
日本人がストレスの中で次々と自殺していく状況にはまったく危機感や慈悲を抱かないではないか。発展途上国の不衛生には支援を差し伸べようとするのに、日本国の年金問題や、労働問題について考えることはすっかり放棄してしまっている。しまいには、自国産業を疎かにして発展途上国にお慈悲の技術提供などをし始める。ちゃんちゃらおかしい話ではないか!
多くの国際協力人や、国際人と言われる人は「世界的な不平等や不衛生を解決したいと思った。」などとほざくが、彼らの言動は方向性を見失っていると心底思う。我々が世界にいかにして利益を寄与しようかを考える前に、
我々は「自国にいかにして利益を寄与するか。」を考えなくてはならない。



そもそも、君たちはいま日本国で国民の税金から成り立つ国家財政によって大幅な優遇を受けながらここまで育ってきている。社会保険制度はその最たるものだし、義務教育や私立を含む高等教育だって国のお金が少なからず入っている。
国は育てることが義務だが、少なからずとも我々は国に「育てられている」のである。これを義理と言わずしてなんと言おうか。
極論、君たちは国家に借りがあるのだから、しっかりとその分だけ借りを返しなさい、と私は言いたいのである。

1960年代の高度経済成長はまさしくこの考え方の結実だと思う。敗戦からいかにして復帰するかを国民が無意識的に実践した結果があの経済成長であり、そしてまた戦前の「お国のために」的な考え方もそれに大きく影響していたのであろう。
今現在、日本国の人口がどんどん減り、衰退していく中で、日本を立て直すと意気込んだときに君たちなくしては日本は立て直せないのである。そして、また君たちの国のために尽くそうという精神がなければこれは達成されないのである。


もちろん世界に羽ばたく職は国内にもあると私は思う。総合商社や航空会社、多種多様にあるはずだ。しかしながら、今日私が君たちに問いたいのは、
「あなたの世界への羽ばたき方は、
 論理に整合性がとれてますか?」
と言える。

すなわち、相応の義理もないのに発展途上国や最悪な場合支那、朝鮮なんかに君たちが貢献するのはまったく論理の筋が通ってないと言いたいのである。

君たちは日本人である。
アフリカの貧困国の人間ではない。
もっと国民としての自覚をもって
未来に活路を見出してほしい、と
真摯に思う。
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