結婚とは案外悪いもんじゃない

あまんちゅ

文字の大きさ
11 / 37

第4話 夢中説夢-1

しおりを挟む
ーーーーー
ーーーーーーー
ーーーーーーーーー


ジリリリリリリリリリ!!!!

「うわっ!」

けたたましい音で目が覚めた。寝ぼけながらも、音の原因である目覚めし時計を止めた。部屋には、外で降っているらしい雨音が響いていた。


「……今日、雨かよ」

ただでさえ目覚めの悪い夢を見たというのに、雨とは泣きっ面に蜂だ。しかも、昨日遅くまで飲んでいたので二日酔いによる頭痛が襲ってきた。幸い、そこまで酷くはないので、今日の仕事に影響はなさそうだ。

昨日、仕事が終わってから三嶋とその友人達と遊びに行った。全部で7.8人ほどいたと思う。人生で初めてダーツバーというとこに行った。ダーツは、てんでダメだったが面白かった。いい憂さ晴らしになったと思う。

だが、そのあとが最悪だった。三嶋による「こいつ彼女募集してます」攻撃が始まったのだ。何を勘違いしたのか、俺が美幸に振られたと思ったらしい三嶋は、俺のことを励まそうとしたらしい。

その場にいた3.4人の女性に興味を持たれてしまい、質問攻めに合った。ちょくちょく三嶋が話しに入りながら、その時間は延々と続いた。家に着いたのは、2時を回っていたと思う。


今の時刻は9時32分。俺は朝のコーヒーとご飯を準備するため、ベッドから起き上がりキッチンへと向かった。

お湯を沸かしながら、俺は今朝の夢のことを思い返していた。普通の夢なら、目覚めてすぐに内容なんて忘れてしまうが、今朝の夢はやはり鮮明に覚えていた。

やっぱり、キスをしようとすると目が覚めるのだろうか。俺は、無理矢理夢を終わらせようとして、美幸にキスをしようとした。そのあたりで目が覚めたように思う。

いや、そんなことよりもだ。もっと衝撃的なことがあっただろう。

「……夢では生きてんのか、母さん」

誰にでもなく、そう呟いた。
忘れた日なんてなかった。母さんが死んでから、俺は毎日後悔していた。母さんが死んだのは、俺が原因だから。


ふと、自分の頬を冷たいものがつたった。涙だ。昨日の夜といい、最近涙もろいな、俺。


「墓参りでも行くか」

直接ではないが、こうやって夢に出てきたってことは、何か意味があるのかもしれない。生憎の天気だが、出勤までまだ時間がある。朝食を食べたら墓参りにでもいこう。歩いて10分もかからないし。

そういえば、もうひとつ気になることがあった。美幸は、俺の母さんが死んだことを知っているのかということだ。

葬式には来なかった。美幸のご両親は参列してくれたが、そこに美幸の姿はなかった。俺は母さんの葬式の時、あまりの喪失感に、誰ともまともに会話ができなかった。美幸のお母さんが俺に何か話しかけてくれたような記憶があるが、ほとんど覚えていない。


その後、美幸のご両親とも連絡を取っていない。同じ街に住んでいるのだから、二人を見かけるときはある。だが、なぜか声をかける気にはなれなかった。

美幸のことを聞こうと思えば、いつでも聞けたというのに。そうしなかったのは、俺にはそんな資格がないと思っていたから。

でも。



覚えていてくれた。それが唯一の救いだった。楽しく会話をしたわけでも、連絡先を交換したわけでもない。ただ、俺のことを覚えていてくれただけ。

それだけで、俺は美幸と関わることを許された気がした。ただの勘違いかもしれないことだが。

そして、俺は昨日自分の気持ちに気づいてしまった。俺は、美幸と話したい。昔のように、仲のいい幼なじみに戻りたいのだと。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

冷徹公爵の誤解された花嫁

柴田はつみ
恋愛
片思いしていた冷徹公爵から求婚された令嬢。幸せの絶頂にあった彼女を打ち砕いたのは、舞踏会で耳にした「地味女…」という言葉だった。望まれぬ花嫁としての結婚に、彼女は一年だけ妻を務めた後、離縁する決意を固める。 冷たくも美しい公爵。誤解とすれ違いを繰り返す日々の中、令嬢は揺れる心を抑え込もうとするが――。 一年後、彼女が選ぶのは別れか、それとも永遠の契約か。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

幼馴染の許嫁

山見月 あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。 彼は、私の許嫁だ。 ___あの日までは その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった 連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった 連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった 女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース 誰が見ても、愛らしいと思う子だった。 それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡 どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服 どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう 「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」 可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる 「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」 例のってことは、前から私のことを話していたのか。 それだけでも、ショックだった。 その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした 「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」 頭を殴られた感覚だった。 いや、それ以上だったかもしれない。 「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」 受け入れたくない。 けど、これが連の本心なんだ。 受け入れるしかない 一つだけ、わかったことがある 私は、連に 「許嫁、やめますっ」 選ばれなかったんだ… 八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

友達婚~5年もあいつに片想い~

日下奈緒
恋愛
求人サイトの作成の仕事をしている梨衣は 同僚の大樹に5年も片想いしている 5年前にした 「お互い30歳になっても独身だったら結婚するか」 梨衣は今30歳 その約束を大樹は覚えているのか

処理中です...