DEAD or ALIVE

あまんちゅ

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第二章 ブラッド・レーベル

第25話 街の掃除屋⑦

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「う、うわあああああ!!」

 彼女が大声を出しながら死猿に向かって突進していった。おいおい嘘だろ!? 銃を持っている相手に丸腰で向かっていくなんて自殺行為だ。極限の緊張状態の中で、正気を保てなくなったのか? それとも、奴らに捕まったら、自分は殺されるという恐怖心が心を支配してしまったのかもしれない。

 案の定、彼女は軽く足払いをされ地面に倒れこんだ。死猿は彼女の背中に足を乗せ、銃口を背中に向けている。そして、その引き金に手をかけた。

「思っていたより、愚かだな」

「っ!」

 俺の体は、考えるより先に動いていた。死猿に向かって一気に距離を詰める。もう少しで届く、というところで死猿はくるりとこちらを向いた。

「やはり、そう来たか」

 そう言うと同時に、死猿が構えていた銃から、けたたましい銃声と共に銃弾が放たれた。それは、予想通り俺の右足を襲った。俺は一切歩みを止めることなく、死猿との距離をさらに詰めた。射程圏内だ。

「なっ……?!」

 渾身の力で、銃を持っていた死猿の右手に右ストレートをお見舞いした。咄嗟のことに反応できず、死猿の手から銃が離れた。銃は地面を転がり、遠くまで飛んでいく。死猿は彼女から足を離し、俺と距離を取った。

「君は……」

 死猿は恐らく困惑しているのだろう。それはそうだ。普通の人間は足を撃たれてこんなに動くことはできない。でも、俺はこんな状態でも全く痛みを感じていない。いつも通り動くことができる。

 あいつらは俺から話を聞き出そうとしていた。つまり、すぐに殺すつもりはないということ。だから、撃ってくるなら動きを止めるために足を撃ってくると思った。その予想は合っていたというわけだ。


 さて、こうなってしまった以上、何とかしてここから脱出するしかない。死猿に踏み倒されていた彼女は、素早い動きで立ち上がり、銃が落ちている場所を目指して走り始めた。

 よし、いいぞ。死猿の様子からして、所持しているのはさっきの銃だけみたいだし、あれさえ奪えば状況を逆転できる。死猿はすぐに彼女を追おうとしていたが、俺は咄嗟に彼女と死猿と間に立ち塞がった。

「行かせない」

「……」

 少しでも足止めできればそれでいい。そう思って対峙したけど、その考えは甘かった。死猿は人間とは思えない素早い動きで俺の背後に回り、首に打撃を与えてきた。俺は足元がふらついてしまい、地面に倒れこんでしまう。その隙に死猿は彼女との距離をかなり詰めていた。

「ま、待て……!」

 すぐに立ち上がろうとしたけど、できなかった。足が言うことを聞かない。自分の足に目を向けると、撃たれたところからかなり出血している。無茶をしすぎたか?

「は、離して!」

「まだ演技を続けるのか?」

 ダメだ。彼女が追いつかれてしまった。銃も取り上げられてしまったうえに、彼女は死猿に拘束され、頭に銃口を突き付けられている。

 彼女は、殺されてしまうのか? 敵か味方かもわからないまま、こんなあっけなく……。また、人が死ぬ?


「あっ……ぐっ!」

 突然、死猿が彼女から手を放し、その場に蹲った。頭を抱え、何かに苦しんでいる。何だ? どうしたんだ?

 それを見ていた彼女は、死猿の手から銃を奪い取り、その銃口を死猿に向けた。死猿は、それでも頭を抱え蹲ったままだ。

「成瀬! 行くぞ!」

 後方から、八崎の声がした。そうだ、他の連中はどうなった。死猿のことに夢中で、他に意識がいっていなかった。確か、もう一人銃を持った奴がいたはずだけど。

 そう思い、間宮が来た方向を見ると、聞こえ猿や青鬼たちが地面に伏しているのが見えた。八崎が、倒してくれたのか? 相手は武装してた上に複数人いたっていうのに、やっぱりコイツ化けもん並みに強いな……。


「お前、足を撃たれたのか?」

「ああ。でも大丈夫だ」

「大丈夫なわけねえだろ! ほら、肩貸してやるから、行くぞ!」

 八崎はそう言うと、俺が立ち上がるのを手伝ってくれた。八崎の肩を借り、出口のあるほうへ歩き出す。彼女にも声をかけ、出口まで先行してもらう。


「……! 後ろ!」

「あ?」

 前を歩いていた彼女が、こちらを振り返りながら叫んだ。それに釣られて俺と八崎も背後に目をやった。いつの間にか、すぐ後ろに言え猿が迫っていた。

「ちっ!」

「あーーー!!」

 言え猿は鋭く研がれたナイフを振りかざしてきた。八崎は咄嗟に俺から手を放し、それに対抗する。俺も何とか踏ん張り、八崎に加勢した。

「「邪魔だ!!」」

 偶然、八崎と俺の攻撃が同時に言え猿の腹を直撃し、言え猿は宙を舞った。そのまま地面に背中から着地するかと思ったが、空中でくるりと身を翻し、態勢を立て直す。

 そして立て続けに、言え猿は自身のコートの内側から新たなナイフを取り出し投擲してきた。それはとんでもない速さで、俺の頬を掠めた。危なかった、そう思うと同時に、俺は足元がグラつき、膝から崩れ落ちてしまった。

 なんだ、体の自由が利かない。血を流しすぎたか? いや、これは……。

「成瀬!」

 俺の体は痙攣を始め、完全に自由が利かなくなった。痛みは感じない。でも、全身が痙攣し、上手く呼吸ができない。


「どいて」

 と、彼女の声が聞こえた。それは、先ほどまでの怯えたものではなく、凄然としたよく通る声だった。その直後に放たれた銃声を聞きながら、俺の意識はそこで途絶えてしまった。


「…瀬! …………しろ!」

「…………」

意識が闇に落ちていく中で、必死に俺の体を揺さぶりながら話しかけてくる八崎の声が聞こえた。ああ、俺はここで死ぬのか……。


叔母さんの仇も取れないまま、ここで。でもこれで、姉さんたちに会える。ずっと会いたかった。これで、2人に会えるのだろうか。

ごめん。叔母さんを襲ったやつ、捕まえられそうにないや。いやでも、八崎たちならきっと俺の代わりにあいつを捕まえてくれるはずだ。後は頼んだよ、八崎……。


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