Rabbit bride 2085 第3話 血の代償

まろうど

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第3話 血の代償

プロローグ

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夜になればネオンが煌めく繁華街の裏手に、その現場はあった。

人の数よりも、人の出したゴミを漁る動物の数の方が多いと思われる場所だった。

昨夜の雨で濡れた路面を男たちが歩いていた。

「これで3件目ですね。
上から圧力が掛かったってことは、単なる臓器売買じゃないってことですか?」

黄色いバリケードテープをくぐりながら、30代の男が聞いた。

「お前もよく分かるようになったじゃないか」

50代の男が答えた。

このひと月の間に、男性器を切り取られる事件が連続して発生している。

男性器を根本から切り取っている訳ではなく、もっと奥にある精嚢から切除している。

移植が目的であろうと思われるが、この時代は人工性器も多くあることから、移植だけが目的ではないと予想されていた。

2人は、不意に足を止めた。

規制線の中には誰も入っていないはずなのに、遺体の傍にひとりの若い女性が立っていたからだ。

2人は、声を掛けるのを躊躇った。

なぜなら、そこにいるのはウエディングドレスを着た少女だったからだ。

細くくびれたウエスト。

少し内股の立ち姿。

綺麗に反った背中。

思っていたより小さな身体。

「まさか......?」

「ブライド.....さん?」

男たちが恐る恐る聞くと、少女は背を向けたまま、

「はい」

と答えた。

噂でしか聞いた事がない、特務エージェントが目の前にいた。

普段は、人前に姿を見せることはないはずなのに。

「また、何故ここにいらしたのですか?」

離れた場所から、50代の男が尋ねた。

「4人目の被害者のご遺体を、ご家族の元に返してあげて欲しいからです」

「4人目?」

男たちは驚きを隠せずにいた。

ブライドは、4人目の被害者の遺体のある場所を伝えた。

「わたしが、犯人を捕まえます」

ブライドの言葉は、被害者に向けたものだろうか。

「こういう事件があった時、いつも感じる風があります。

それは、ブライドさんだったのですね」

30代の男が尋ねた。

「そうかもしれませんね❣️」

そう答えて、ブライドは振り向きながら街の景色に溶け込んでいった。

「これが.....光学迷彩」

「ブライドさんの頬に、涙が光っていたのは見えたか?」

「ええ、ちゃんと見えましたよ」

「そうか。
なら、この件は口外するなよ」

「もちろんです」

男たちは、足速に規制線の外に出て行った。

「俺たちは俺たちの役割を果たすぞ」

「はい」

優しい風が、街の中を通り抜けて行った。
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