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第3話 血の代償
プロローグ
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夜になればネオンが煌めく繁華街の裏手に、その現場はあった。
人の数よりも、人の出したゴミを漁る動物の数の方が多いと思われる場所だった。
昨夜の雨で濡れた路面を男たちが歩いていた。
「これで3件目ですね。
上から圧力が掛かったってことは、単なる臓器売買じゃないってことですか?」
黄色いバリケードテープをくぐりながら、30代の男が聞いた。
「お前もよく分かるようになったじゃないか」
50代の男が答えた。
このひと月の間に、男性器を切り取られる事件が連続して発生している。
男性器を根本から切り取っている訳ではなく、もっと奥にある精嚢から切除している。
移植が目的であろうと思われるが、この時代は人工性器も多くあることから、移植だけが目的ではないと予想されていた。
2人は、不意に足を止めた。
規制線の中には誰も入っていないはずなのに、遺体の傍にひとりの若い女性が立っていたからだ。
2人は、声を掛けるのを躊躇った。
なぜなら、そこにいるのはウエディングドレスを着た少女だったからだ。
細くくびれたウエスト。
少し内股の立ち姿。
綺麗に反った背中。
思っていたより小さな身体。
「まさか......?」
「ブライド.....さん?」
男たちが恐る恐る聞くと、少女は背を向けたまま、
「はい」
と答えた。
噂でしか聞いた事がない、特務エージェントが目の前にいた。
普段は、人前に姿を見せることはないはずなのに。
「また、何故ここにいらしたのですか?」
離れた場所から、50代の男が尋ねた。
「4人目の被害者のご遺体を、ご家族の元に返してあげて欲しいからです」
「4人目?」
男たちは驚きを隠せずにいた。
ブライドは、4人目の被害者の遺体のある場所を伝えた。
「わたしが、犯人を捕まえます」
ブライドの言葉は、被害者に向けたものだろうか。
「こういう事件があった時、いつも感じる風があります。
それは、ブライドさんだったのですね」
30代の男が尋ねた。
「そうかもしれませんね❣️」
そう答えて、ブライドは振り向きながら街の景色に溶け込んでいった。
「これが.....光学迷彩」
「ブライドさんの頬に、涙が光っていたのは見えたか?」
「ええ、ちゃんと見えましたよ」
「そうか。
なら、この件は口外するなよ」
「もちろんです」
男たちは、足速に規制線の外に出て行った。
「俺たちは俺たちの役割を果たすぞ」
「はい」
優しい風が、街の中を通り抜けて行った。
人の数よりも、人の出したゴミを漁る動物の数の方が多いと思われる場所だった。
昨夜の雨で濡れた路面を男たちが歩いていた。
「これで3件目ですね。
上から圧力が掛かったってことは、単なる臓器売買じゃないってことですか?」
黄色いバリケードテープをくぐりながら、30代の男が聞いた。
「お前もよく分かるようになったじゃないか」
50代の男が答えた。
このひと月の間に、男性器を切り取られる事件が連続して発生している。
男性器を根本から切り取っている訳ではなく、もっと奥にある精嚢から切除している。
移植が目的であろうと思われるが、この時代は人工性器も多くあることから、移植だけが目的ではないと予想されていた。
2人は、不意に足を止めた。
規制線の中には誰も入っていないはずなのに、遺体の傍にひとりの若い女性が立っていたからだ。
2人は、声を掛けるのを躊躇った。
なぜなら、そこにいるのはウエディングドレスを着た少女だったからだ。
細くくびれたウエスト。
少し内股の立ち姿。
綺麗に反った背中。
思っていたより小さな身体。
「まさか......?」
「ブライド.....さん?」
男たちが恐る恐る聞くと、少女は背を向けたまま、
「はい」
と答えた。
噂でしか聞いた事がない、特務エージェントが目の前にいた。
普段は、人前に姿を見せることはないはずなのに。
「また、何故ここにいらしたのですか?」
離れた場所から、50代の男が尋ねた。
「4人目の被害者のご遺体を、ご家族の元に返してあげて欲しいからです」
「4人目?」
男たちは驚きを隠せずにいた。
ブライドは、4人目の被害者の遺体のある場所を伝えた。
「わたしが、犯人を捕まえます」
ブライドの言葉は、被害者に向けたものだろうか。
「こういう事件があった時、いつも感じる風があります。
それは、ブライドさんだったのですね」
30代の男が尋ねた。
「そうかもしれませんね❣️」
そう答えて、ブライドは振り向きながら街の景色に溶け込んでいった。
「これが.....光学迷彩」
「ブライドさんの頬に、涙が光っていたのは見えたか?」
「ええ、ちゃんと見えましたよ」
「そうか。
なら、この件は口外するなよ」
「もちろんです」
男たちは、足速に規制線の外に出て行った。
「俺たちは俺たちの役割を果たすぞ」
「はい」
優しい風が、街の中を通り抜けて行った。
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