《アルディラの風》ep2 ヤマトノクニの日の巫女

まろうど

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2-3 ヤマトノクニの日の巫女

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人間の男女3人が歩いている。
服装や風貌の違いから、異国からの客人と認識される。

ドワーフの男性が歩いている。
珍しい異人種に興味はあるが距離感もある。

エルフの女性が歩いている。
美しさに感嘆の声を上げて憧れの眼差しを向ける。

オークの男性が歩いている。
女性は悲鳴をあげ、男性は迎撃態勢を取る。

「あ“ん💢」
応戦しようとするオークのバキバキを宥めたのはエルフのトリィだった。
「ねえバキバキ。
私をあなたの腕に乗せてよ」
トリィの意図を理解したのか、バキバキは膝をつき、左の肘を曲げた。
その腕にトリィがお尻を乗せて背をあずける。
バキバキが立ち上がると、トリィの頭はバキバキより少し上に位置する。
エルフを腕に乗せて歩くオークに、ヤマトノクニの人々は戸惑いはしたが、敵意がないことは理解できたようだ。
ヤマトノクニの住人のほとんどが人間のため、異種族を見たことがなかったのだ。

役人が案内したのは大きな食堂だった。
とりあえず腹ごしらえしてから日の巫女に謁見する段取りらしい。
バイキング形式の食堂には、いろいろな料理が並んでいた。
皆が思い思いに料理をプレートに乗せている。
小隊長を務めている人間のチャードと玉響は肉食中心だった。
何種類もある肉料理を、全種類コンプリートするつもりらしい。
女性のルーコラは魚が好きなようだ。
マリネと煮魚をチョイスした。
ドワーフのガングルジオンは木の実を集めている。
リスも顔負けの集めっぷりが微笑ましい。
エルフのトリィは果物が好きなようだ。
みかんにりんご、大粒のぶどうに感動している。
役人がバキバキの事も説明してくれたので、落ち着いて食事ができそうだ。
「その肉の塊をもらおう」
会場がどよめく。
厨房のスタッフが肉を切り分けようとした時、オークのバキバキがそれを止めたのだ。
「やるな、バキバキ」
特大の肉を持って、バキバキがテーブルについた。
嬉しそうに肉の塊にかぶりつく。
「これは旨い」
バキバキの見事な食べっぷりにヤマトノクニの人々が喝采を送る。
すぐに追加の肉が運ばれた。
更にもう一度、追加の肉が運ばれて、バキバキはやっと満腹になった。
「本当にここの肉は旨いなぁ」
大きなジョッキで水をゴキュゴキュ飲んだバキバキから特大の笑顔が溢れた。
「喜んでいただいて嬉しいです。
すっごくたくさん食べるんですね。
美味しく食べていただくのが、料理人には1番嬉しいんです」
食堂で調理を手伝っている人だろうか。
そこには、若い女性が立っていた。
「お隣失礼します」
その女性は玉響の隣の椅子に座った。
「初めまして。
日の巫女の沙茶(さちゃ)です」
ヤマトノクニの人々と変わらない服装をしていたことから、傭兵団の誰もが気が付いていなかった。
「えっ!」
「あ、大丈夫です。
正式な挨拶の前にお声掛けしただけですから、格式ばった対応はいりませんよ。
だって私は、さっきまで厨房でお料理の手伝いをしていたんですから」
そう言って、沙茶は明るく笑った。
千年以上続く国のトップが、厨房に入って料理を作るなんて聞いたことがない。
「.....これは一本取られたな」
玉響の言葉に、沙茶も食堂のみんなも笑っていた。

「ところで、あなたが玉響さん?」
「そうですが」
玉響の手を、沙茶が握ってきた。
「ありがとうございました」
ヘイズルを倒したお礼だろう。
「上手くいってよかったと思う」
直接戦ったのは玉響だが、村人総出の作戦だった。
「お礼がしたいのですが、ご希望はありますか?」
玉響は小さな声で伝えた。
「もし不都合が無ければ、この国の周囲の島々の位置や方角がわかる地図が見たい」
沙茶は小声の意味を理解して、にっこり頷いた。
「他にはないの?」
もう一つ.....
「お汁粉が、食べたい」
恥ずかしそうに言う玉響に、沙茶は大きな声で元気に答えた。
「じゃあ、それは今日の晩餐会まで待っててね。
では私は後片付けがあるので、一旦失礼します」
沙茶は元気に厨房に戻って行った。

ヘイズルが隣村の住人を殺害した日に、ヤマトノクニからクリムゾン傭兵団にヘイズル討伐の依頼があった。
しかし、その時の返答は「すでに先遣隊を送っている」だった。
玉響が女神の全権代理人として世界中にテレポートさせられることを団長のエルミタージュ•クレオには教えているが、彼女はそれを感知できる能力があるようだ。
エルミタージュ•クレオ.....底が見えない女性だ。
彼女は真っ赤なドレスを着た美しい女性だが、玉響は彼女が苦手なようだ。

「おれは美人が苦手なんだ」

2-4につづく






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