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冬・バレンタインデー
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「E先生ー。はあはあはぁ、今年もチョコ貰って下さい!」
息きらして走ってきたSは、小ぶりながらも、それなりに値の張った小箱を差し出した。
「ありがと。」
いつもと変わらないクールな態度でE先生は受け取る。
と、その時、紙袋いっぱいのチョコがいくつも落ちた。
「あ~あ~。」とSが拾い集めて紙袋に戻す。
「先生、ちゃんと入れないと、どんどん落としちゃいますよ。せっかく、みんなの想いなのに。」とブツブツ呟きながら詰め替えて、3つあった袋を2つにまとめた。
「ハイ、先生。これで大丈夫ですよ。」
「ん。じゃお疲れ。」
と車で帰っていった。
(無口だなぁ、でもカッコいい。子供にはメチャ優しいんだよなぁ)、Sは2年前から想い続けていた。
ルックスと言い、職業と言い、モテないわけがない。Sも、もれなく一目惚れしていた。
E先生の方は、Sの行動を不思議に感じていた。
(なぜ人のチョコまで大事にするんだ?一つでも減った方が自分のプラスになるはずなのに、なぜ。)
ジェラシーという感情をほぼ持たないSにとって、人のチョコも自分のチョコも同じくらい大切に思えるのだった。
そのE先生のホワイトデーは全員同じ、それなりに良いとこのお菓子が返される。誰も本命はいない、と院内では噂されている。
息きらして走ってきたSは、小ぶりながらも、それなりに値の張った小箱を差し出した。
「ありがと。」
いつもと変わらないクールな態度でE先生は受け取る。
と、その時、紙袋いっぱいのチョコがいくつも落ちた。
「あ~あ~。」とSが拾い集めて紙袋に戻す。
「先生、ちゃんと入れないと、どんどん落としちゃいますよ。せっかく、みんなの想いなのに。」とブツブツ呟きながら詰め替えて、3つあった袋を2つにまとめた。
「ハイ、先生。これで大丈夫ですよ。」
「ん。じゃお疲れ。」
と車で帰っていった。
(無口だなぁ、でもカッコいい。子供にはメチャ優しいんだよなぁ)、Sは2年前から想い続けていた。
ルックスと言い、職業と言い、モテないわけがない。Sも、もれなく一目惚れしていた。
E先生の方は、Sの行動を不思議に感じていた。
(なぜ人のチョコまで大事にするんだ?一つでも減った方が自分のプラスになるはずなのに、なぜ。)
ジェラシーという感情をほぼ持たないSにとって、人のチョコも自分のチョコも同じくらい大切に思えるのだった。
そのE先生のホワイトデーは全員同じ、それなりに良いとこのお菓子が返される。誰も本命はいない、と院内では噂されている。
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