君との間

さくらぎ ひさ

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近づく二人の距離

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Rを見舞うために、Lは病院を訪ねた。
助けてもらったのに、酷いケガとなったRには申し訳ない気持ちでいっぱだった。
丁度、院内は夕食時。Rは完全に起き上がれない上に、利き手が使えず、食事を諦めたところだった。
病室に入る瞬間にその場を見たLは見舞いの花を置いて、器とスプーンを持ち、Rの口まで食事を助けた。Rは驚きと気恥ずかしさで躊躇したものの、親切を断れず、空腹もあり、口を開けた。朝も昼も同様で充分に食べられてなかったのだ。同じ病室の面々ニヤリ顔で見ていたが、Lに迷いはなかった。少しは助けられる機会がきたのだから。Lの食事の食べさせ方は上手かった。
R「傷ガアル。」悲しい表情で、Lの額のガーゼを見つめた。Lには言ってる意味が分からなかったが、様子を察し、
L「So small!」とニッコリ答えた。
それから毎日、Lは病室を訪ね、食事を助けた。ケガ人の多い院内ではスタッフも忙しく、食事の介助まで手が回らないようだった。

Lの気持ちは既に変わり始めていた。
現地語の勉強を始めた。生活に必要なくらいは読めるようになったけど、日常には足りない。参考書を開くLに、
M「なにぃ急に、どうして勉強してんのよ。」
L「んん、この前の事故で救急車すら呼べなかったのが情けなくて。とりあえず、緊急時に使う言葉を教えてよ。後、お見舞いに行った時って、決まり文句とかあるの?」通勤中も帰宅後も、参考書やスマホで勉強を続けた。
Rを訪ねる度に、Lは覚えたての言葉で少しずつ話しかけた。
「今日ハ、暑イ日デシタヨ。」
「今日ノオカズハ、美味シイデスカ?」
そして、いつしかRもLの母国語・日本語で返事をするようになった。
「今日は雨で、大変でしたね。」
「朝ごはんは、パンです。」
Rもまた、語学勉強を始めていた。決して得意ではない分野だったが、1日中ベッドで時間はあったし、Lに興味を持つようになっていた。難しい点は元・上司のOに教えてもらった。参考書も揃えてもらった。
OはLの上司で、以前はRの上司だった。そんな関係で見舞い行く機会があったのだ。それぞれ熱心に勉強する二人をOは温かく見守っていた。

数週間後、Rは食事も、歩行も一人で出来るようにもなった。ある日、早くに食事を済ませ、病室前でLを待ち受けていた。Lが驚きながらも喜んで駆けてくる姿をRは嬉しく可愛いと思った。そして、二人はカフェスペースで話した。
L「食事ハ終ワリマシタカ?」
R「ええ、歩けるようにもなりました。」
L「良カッタデス。本当二、ヨカッタデス。」
R「何か飲みましょう。何が良いですか?毎日来てくれたお礼したいです。」
L「イエ、私ガ助ケテモライマシタ。」
R「コーヒーで大丈夫ですか?」
L「アッ、ハイ。」
つたないながらも、それぞれ相手の母国語で話す、傍目では不思議な光景だが、二人は楽しそうだった。
30分程して、Lは席を立った。
L「明日、歩ケルヨウニナッタ【オ祝イ】二、何カ持ッテキマス。何ガ良イデスカ?」
食事の手伝いもいらなくなったが、Lは明日も来れる理由を作りたかった。
R「無くて良いですよ!食事も一人で食べられます。でも、、、もし良ければ、顔を見せに来てくれたら嬉しいです。毎日、退屈です。」普段、無口なRがこんなこと言うなんて自分でも驚いていたが、本音だった。
翌日、Lは会社近くに出来たばかりのお店でカップスイーツを2個買い、病院に向かった。Rはカフェスペース近くの廊下で待っていた。
R「今日も来てくれましたね。ありがとうございます。」
L「イイエ。新シイ店ノ ケーキデス。一緒二、食ベマショ。」

毎日30分程を一緒に過ごすようになっていった。
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