君との間

さくらぎ ひさ

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再び

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数時間だけ再会してから、もうすぐ一年。
Lにも気持ちを寄せる男性は現れたが、Lの気持ちは変わらず、仕事だけの日々を過ごした。

Mからの連絡で、Rが早くに徴兵から戻ると情報が入った。職場復帰の調整してるらしい。
Lはもう、いても立ってもいられない。そう、この日を待ってた。二年前、何も話すこともできずに、そのまま会えなくなって。あれから会えたのはあの数時間だけ。会いたい、ずっと会いたかった。でも、私の気持ちは変わらないけど、彼はどうだろう。2年もあった、変わってても仕方ない。これで決着が着くのかも。着けに行こう。
すぐに飛行機チケットを予約した。

数日後、LはRの一人暮しをするはずだった部屋の建物の前に立っていた。
もし戻ってるなら、ここにいるはず。あの頃、ここでの新しい生活を私も夢みていた。心置きなく一緒に過ごせるはずだった場所。ただ、今は私のいる場所は無いのかも知れない、誰か良い女性がいるかも。それを受け止める覚悟は出来てるのか、自問自答してインターフォンが押せないでいた。
そこへ買い物袋を片手にRが帰ってきた。見覚えある後ろ姿に一瞬、足が止まる。まさか、と息を飲んで、少しずつ近づいた。
Lの後ろから誰か来る。いつまでもインターフォン前を占領するわけにもいかない、と振り返り、唖然とした。本当に、そこに、Rがいる。私服で、短髪で、知ってるあの優しい眼がLを見つめていた。
L「・・・」言葉が出てこない。
R「どうして?」Rもまた、言葉がうまく出てこない。
L「ア、アノ。早クニ帰ッテルト聞イタノデ。ソノ、オ話シタクテ。(ごくり)オ、オ時間頂ケマスカ?」
R「どうぞ。」軽く頷き、中へと案内した。
1年前と変わらない彼女、あの時は待つと言ったが、自分は断った。あれから彼女は誰かと幸せになってるかも知れない。期待してはいけない。今日が決着なのかも知れない。決意の面持ちで静かに深呼吸した。
R「あぁ、家で二人はまずいようなら、カフェでも行きましょうか。」Lの立場を考えて提案した。内心、傷付くことを覚悟しきれないままに。
L「イエ、私ハ大丈夫デス。モシ私ガ伺ウノガ不都合デシタラ、カフェ、デモ構イマセン。」もしかしたら本当は不都合なのかも。優しさで入れてくれてるのかも、不安が続くままRの後を付いて行った。
R「それなら、どうぞ。」
お互い、そう言われてRは少しほっとしていた。

部屋に入り、Lは奥のソファを勧められた。Rはキッチンに買い物袋を置き、コーヒーを入れた。
まだ荷物も少ない、シンプルな部屋は以前に一度だけ来た時と変わらない。この部屋に移る前に、Lは強制帰国、Rは徴兵になったからだ。
棚の上に写真立てが幾つか飾ってある。近づいてみると、LとR、二人の笑顔の写真が並んでる。
L「私?」写真を前に立ち、Lの目に涙が溜まっていく。私を忘れずにいてくれた?私と同じだった?それとも片付け忘れてる?
Rがやって来て、Lの様子を見て、慌てて後ろ手に写真たちを倒しながら言葉を探す。
R「あ~、え~と、、、」
Lにとって決着の時がきた。意を決して口を開いた。
L「私ヲ、私ノコト忘レズニイテクレタノ?」
R「・・・」
LはRを見つめるが、Rはうつむいたまま。
R「今、君が幸せなら、それで良いんだ。」
L「私ハ、ズット貴方ヲ待ッテタ。ソレヲ伝エタクテ来タノ。」
R「2年もあったのに?どうして。」
L「ドウシテモ、待チタカッタ。」
R「はぁ~。ごめん、長い間、待たせた。」
L「ウウン、私ガ待ッテタダケ。」

Rは手を伸ばし、Lを抱き寄せた。
2年間止まっていた二人の時間が再び動き始めた。
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