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再会
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半年後、国際情勢は落ち着いたものの、Lは日本の事務所に勤めていた。上司Oも一緒、先輩は近くのフロアにいた。営業の男性はあちこちへ出張続き、帰国の度にささやかなお土産をLに届けてくれた。
「今度、食事に行こうよ。」軽い誘いもあったりした。
1年が過ぎた頃、LはMに会いに久しぶりに飛行機に乗った。懐かしいと空港の匂いがした。
M「やっと会えたぁ。」
L「ほんと。ごめんね、色々と。」
街中も落ち着き、見慣れた道を二人で歩く。話は尽きない。と、前から軍服の男性二人がやってきた。他にも同じような人はいるのに、その二人にLは釘付けになった。Rだ。Rも一瞬立ち止まったが、歩みを進めた。お互いを目の前にしても言葉が出て来なかった。
M「こっこんな所で会うなんて、すごい偶然!せっかくだからお茶でも行きましょうよ!」
Mが必死に話を繋げ、隣りの軍服Pにも時間を貰えるよう頼んだ。
店に入り4人が席に着いても、二人は向い合わせに座り、見つめ合うだけで言葉がないままだった。
R(少し痩せたのかな、キレイになってる。)
L(身体つきが大きくなった気がする。鍛えてるんだ。)お互い思うだけで口にはしなかった。
M「注文はどうする?えーっと、ここのお勧めは、このティーセットだよ。」
L「Mト同ジモノデ。」メニューも見ないで言った。
R「僕も。」
1年以上ぶりに声を聞いて、Lの目から涙がこぼれた。
Rはそっと真っ白なハンカチを差し出した。そのハンカチを見て、自分が泣いていることにLは気付いた。ハンカチを受け取ると同時にLはRの手も一緒に握りしめた。Rはスッと手を引いたので、Lは少し悲しかった。変わらない優しさなのに冷静な対応、Rの気持ちを図りかねた。
R「お元気でしたか?」
L「ハイ。ソチラハ?」連れて丁寧な口調になる。
R「ええ、毎日鍛えてますから。」と微笑んだ。
R「あぁ、彼はPです。同じチームにいます。」と友達を紹介した。
P「コンニチハ」と外国語で挨拶するが、彼は日本育ちでRに教えるほどの日本語達者だった。様子を見て、あえて言わなかった。Rが熱心に日本語を勉強する理由がここで分かった。
L「初メマシテ。オ仕事ハ大変デスカ?」二人に訊ねた。
P「エエ、毎日、筋肉痛ト怪我ノ日々デスヨ。今日ハ一日ダケノ休ミナンデス。明日カラハ、モット厳シイ練習ガ始マルンデス。」朗らかに笑いながら答えた。隣りでRも笑みを浮かべていた。
R「お仕事はどうですか?」と聞き返してきた。
L「私?エ~、日本ノ事務所二移リマシタ。Oサンハ今モ上司デス。」
R「あぁそうですか。宜しくお伝え下さい。」懐かしそうにLは頷いた。
L「アノ、一年前ハ本当二、ゴメンナサイ!黙ッテ帰国シテシマッテ。」涙が溜まっていく。
R「解ってます。だから泣かないで下さい。充分、伝わってましたから。」と少し身を乗りだして、小さめの声で答えた。
少しは緊張感は消えたが、言葉は少なかった。お互いの語学レベルが上がってることは気付いてた。その横では、MとPは二人で話をしていた。
R達が戻る時間が迫り、店を出た。みんなで写真を撮った。戻る道の途中でMは突然、寄り道した。写真をプリントして、R達に渡したのだ。徴兵中は電子機器も禁止で、手元に残せる方法は他になかったからだ。
R達のバス停まで来た。
R「ここまでです。今日はありがとうございました。あの、ハンカチ、返してもらって良いですか?」
L「アッ、洗ッテ、オ返シシタイデス。」
R「お気遣いありがとう。でも備品の一つなので、持ち帰らないといけません。お気持ちだけ頂きます。」
Lは仕方なく握り続けてたハンカチを差し出した。Rが手を伸ばした時、Lは再びRの手を両手で握りしめた。祈るように、伝わるように。
L「後、後一年、オ待チシテモ良イデスカ。」
Rは少し驚きながらも顔には出さず
「お幸せになることを祈ってます。」と答えた。
橫でその様子を見ていたPは先にバスへ歩き始めた。Lはうつむいたまま、バスを見送った。Mは肩を抱いて支えた。
軍寮ではRが4人で撮った写真を眺めていた。冷たくし過ぎたかな、でも気持ちを残してはいけない、と色々と考えを巡らせていた。そこへPが新しい白いハンカチを差し出してきた。
P「新しいの売店で買ってきてやったよ。今日のハンカチは大事にしまっとけよ。」
R「うん、ありがと。」
P「1年後、迎えに行ってやれば?」
R「いやぁ・・・。」
P「どうして。あの様子じゃ待ってるぞ。」
R「ん~。」
待っててほしい、心置きなく会いたい、そう願うしか出来なかった。
「今度、食事に行こうよ。」軽い誘いもあったりした。
1年が過ぎた頃、LはMに会いに久しぶりに飛行機に乗った。懐かしいと空港の匂いがした。
M「やっと会えたぁ。」
L「ほんと。ごめんね、色々と。」
街中も落ち着き、見慣れた道を二人で歩く。話は尽きない。と、前から軍服の男性二人がやってきた。他にも同じような人はいるのに、その二人にLは釘付けになった。Rだ。Rも一瞬立ち止まったが、歩みを進めた。お互いを目の前にしても言葉が出て来なかった。
M「こっこんな所で会うなんて、すごい偶然!せっかくだからお茶でも行きましょうよ!」
Mが必死に話を繋げ、隣りの軍服Pにも時間を貰えるよう頼んだ。
店に入り4人が席に着いても、二人は向い合わせに座り、見つめ合うだけで言葉がないままだった。
R(少し痩せたのかな、キレイになってる。)
L(身体つきが大きくなった気がする。鍛えてるんだ。)お互い思うだけで口にはしなかった。
M「注文はどうする?えーっと、ここのお勧めは、このティーセットだよ。」
L「Mト同ジモノデ。」メニューも見ないで言った。
R「僕も。」
1年以上ぶりに声を聞いて、Lの目から涙がこぼれた。
Rはそっと真っ白なハンカチを差し出した。そのハンカチを見て、自分が泣いていることにLは気付いた。ハンカチを受け取ると同時にLはRの手も一緒に握りしめた。Rはスッと手を引いたので、Lは少し悲しかった。変わらない優しさなのに冷静な対応、Rの気持ちを図りかねた。
R「お元気でしたか?」
L「ハイ。ソチラハ?」連れて丁寧な口調になる。
R「ええ、毎日鍛えてますから。」と微笑んだ。
R「あぁ、彼はPです。同じチームにいます。」と友達を紹介した。
P「コンニチハ」と外国語で挨拶するが、彼は日本育ちでRに教えるほどの日本語達者だった。様子を見て、あえて言わなかった。Rが熱心に日本語を勉強する理由がここで分かった。
L「初メマシテ。オ仕事ハ大変デスカ?」二人に訊ねた。
P「エエ、毎日、筋肉痛ト怪我ノ日々デスヨ。今日ハ一日ダケノ休ミナンデス。明日カラハ、モット厳シイ練習ガ始マルンデス。」朗らかに笑いながら答えた。隣りでRも笑みを浮かべていた。
R「お仕事はどうですか?」と聞き返してきた。
L「私?エ~、日本ノ事務所二移リマシタ。Oサンハ今モ上司デス。」
R「あぁそうですか。宜しくお伝え下さい。」懐かしそうにLは頷いた。
L「アノ、一年前ハ本当二、ゴメンナサイ!黙ッテ帰国シテシマッテ。」涙が溜まっていく。
R「解ってます。だから泣かないで下さい。充分、伝わってましたから。」と少し身を乗りだして、小さめの声で答えた。
少しは緊張感は消えたが、言葉は少なかった。お互いの語学レベルが上がってることは気付いてた。その横では、MとPは二人で話をしていた。
R達が戻る時間が迫り、店を出た。みんなで写真を撮った。戻る道の途中でMは突然、寄り道した。写真をプリントして、R達に渡したのだ。徴兵中は電子機器も禁止で、手元に残せる方法は他になかったからだ。
R達のバス停まで来た。
R「ここまでです。今日はありがとうございました。あの、ハンカチ、返してもらって良いですか?」
L「アッ、洗ッテ、オ返シシタイデス。」
R「お気遣いありがとう。でも備品の一つなので、持ち帰らないといけません。お気持ちだけ頂きます。」
Lは仕方なく握り続けてたハンカチを差し出した。Rが手を伸ばした時、Lは再びRの手を両手で握りしめた。祈るように、伝わるように。
L「後、後一年、オ待チシテモ良イデスカ。」
Rは少し驚きながらも顔には出さず
「お幸せになることを祈ってます。」と答えた。
橫でその様子を見ていたPは先にバスへ歩き始めた。Lはうつむいたまま、バスを見送った。Mは肩を抱いて支えた。
軍寮ではRが4人で撮った写真を眺めていた。冷たくし過ぎたかな、でも気持ちを残してはいけない、と色々と考えを巡らせていた。そこへPが新しい白いハンカチを差し出してきた。
P「新しいの売店で買ってきてやったよ。今日のハンカチは大事にしまっとけよ。」
R「うん、ありがと。」
P「1年後、迎えに行ってやれば?」
R「いやぁ・・・。」
P「どうして。あの様子じゃ待ってるぞ。」
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待っててほしい、心置きなく会いたい、そう願うしか出来なかった。
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