今川義元から無慈悲な要求をされた戸田康光。よくよく聞いてみると悪い話では無い。ならばこれを活かし、少しだけ歴史を動かして見せます。

俣彦

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新兵器

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 翌日。刈谷城近郊の朝比奈泰能本陣に敗報が届く。織田方に降伏した村木砦の兵は、刈谷城の包囲を解く事を条件に解放。安祥へと戻ったのでありました。安祥城。

朝比奈泰能「勝負は時の運であります。気にする事はありません。」
「申し訳御座いません。」
朝比奈泰能「しかし信長がやって来るとは思いもよらなかった。想定する事が出来なかったのは私の分析に不備があったが故。申し訳ない。」
「とんでも御座いません。」
朝比奈泰能「1つお尋ねします。村木の砦に不備はありましたか?」
「いえ。ありません。」
朝比奈泰能「では何故1日持たなかったのか?これは其方を攻めているわけではありません。今後の対策のため聞いているのであります。」
「はい。信長は我が砦の狭間を狙って来ました。」
朝比奈泰能「弓矢でありますか?」
「いえ違います。敵はこれを撃ち込んで来ました。」
朝比奈泰能「……これは種子島では無いか!?」
「はい。敵は大量の種子島をこちらの狭間目掛け撃ち込んで来ました。」
朝比奈泰能「あの狭い狭間の中をか?」
「はい。敵方には種子島に習熟している者が多数いると見て間違いありません。」
朝比奈泰能「種子島はただでさえ高価な代物。しかし弱点もある。」
「はい。種子島を機能させるのに不可欠な玉薬は南蛮から買わなければなりませんので、いづれ無くなる物。それまでの辛抱と叱咤激励したのでありましたが……。」

 織田信長率いる種子島隊に、その気配は見られない。

「種子島が止んだ隙を見て、堀を登ろうとする敵兵に弓矢を射掛け追い払い続けたのでありましたが……。」
朝比奈泰能「人の体力には限界と言うものがある。」
「申し訳御座いません。」
朝比奈泰能「いや困難な状況の中、多くの兵を無事帰還させる事が出来たのは其方の決断があっての事。感謝します。」
「有難う御座います。」

 別の部屋。

岡部元信「あの悪天候の中、船で知多半島を押し渡り。高価な種子島と玉薬を惜しげもなく投入する。信長は我らの常識が通用しない相手と考えなければなりませんね。」
朝比奈泰能「そうだな。奴はうつけなのでは無い。蝮の道三が認めるだけの事はある。」
岡部元信「確かに。」
朝比奈泰能「しかしどうだったのであろうか?」
岡部元信「何か気になる事でも?」
朝比奈泰能「恐らく信長は、村木の砦が大混乱に陥っている事を知っていた可能性がある。居るはずの無い信長が現れ、運用する事が困難な種子島を使いこなしたのであるから。それにも関わらず、何故信長は砦の降伏を受け入れたのか?」
岡部元信「……もしかしますと。」
朝比奈泰能「信長も困難な状況にあった可能性があったな……。まぁ過ぎた事は仕方が無い。此度は負けいくさ。無事戻る事が出来、善しとしよう。」
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