無料転生案内所『歴史分室』

俣彦

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石田三成になった40代男性

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案内人:「今、石田三成に転生し、歴史を塗り替えようと、損を承知で逃げ回っている彼。そんな彼の現世は?と言いますと……。」

40代男性:「日頃の憂さを晴らすことの出来る場所があると聞いてお伺いしました。」
案内人:「……否定は出来ませんが、必ずしもそのような施設ではありません。ところでお客様はどのような仕事に就かれているのでありますか?」
40代男性:「とある学校法人の職員をしておりまして。その学校。私が言うのもなんですが、結構名の知れた学校でありまして。受験生の総数よりも全ての大学の定員数のほうが多いと言われている現在におきましてもなかなか入ることの出来ない。人気のある学校であります。」
案内人:「それだけ聞きますと、別に浮世を忘れて転生しようなどと思わなくても……。」
40代男性:「海外からの留学生と称して不法入国させるビジネスに手を染めなくても済んでいる点につきましては良いのではありますが、人気があればあったでまた別の苦労がありまして……。」
案内人:「有力者のどうしようもない子息を裏口から……。ですか?」
40代男性:「……そう言うこともありますね。ただ私どもの大学は専門分野。それも相当の知識を必要とする学部でありますので、仮に裏口から入ったとしましても、それだけで生涯安泰と言うことは無く、学校のカリキュラムについて行くことも簡単ではありませんし、資格を取るのも容易ではありません。そのため例え裏口であったとしましても、それ相応の偏差値があって初めて……。そうでないと学生さんを不幸にすることになってしまいますので。逆に勉強が出来ているから。で選んでしまったがため、普通のサラリーマンのような生活が出来ない職人仕事にあたりますので。それを知らずに免許を取得してしまい、現場を困らせたり。本人も『こんなハズじゃなかった。』となってしまうことも……。そうなるぐらいなら、小さい頃から身近なところに生業としてその仕事を見ている子供さんのほうが。……結果的に戦力なるのが実情でありますので。裏口から入って来る云々がストレスとなることはありません。」
案内人:「それではなぜ今日。ここを訪ねられたのでありますか?」
40代男性:「世間で大きな事案になってしまいまして……。その切っ掛けとなりましたのが、うちとは全く持って関係の無い別の学校法人の許認可に関する事案でありまして……。その相手が相手でありますので。どこか矛先を別のところに向けさせようとした場所が。」
案内人:「勤められている学校であった。と……。」
40代男性:「はい。でもその段階ではまだ、うちのトップと裏口を依頼して来たモノ同士の。であったのでありましたが、その依頼してきたモノも有力者。でありましたので。」
案内人:「この中で最も立場の弱い勤められています学校に……。」
40代男性:「はい。私どもの業界は、正直24時間フル稼働を余儀なくされる厳しい労働環境に加え、特殊技能が必要とされる仕事であります。学費も正直一般のご家庭で払うことの出来るモノではありません。そのため慢性的な人手不足が続いております。だからと言いまして簡単に要請できるわけでは無く、限られた定員の中から長期間。家庭の事情に振り回されることが無く。それでいて有能な人材を受験の際。選ばなければならなくなります。そのような学校の求める人材の試験結果が良ければ問題無いのでありますが……。」
案内人:「純粋に試験だけで見てしまいますと……。でありますか。」
40代男性:「世間ではそのことも含め人員を確保するべき。と簡単に言うのでありますが……。働く側からしますと、条件の良いところに当然行くことになりますので……。そう言う事情がわからない連中が騒ぎ始めてしまいまして。」
案内人:「彼らは彼らで最低賃金×7時間半の給料で実質24時間拘束される。ザ・ブラック企業に勤められているかたがたでありますからね……。ただ当初の問題を消すための摩り替えにされた側は堪ったものではありませんね……。ほかの問題が出るまで静かにするに越したことはありませんね……。」
40代男性:「……はい。」
案内人:「……となりますと転生先は、パワハラを全開することの出来る立場の人物になりますでしょうか?」
40代男性:「される側の痛みがわかっていますので。むしろされているところを打開することが出来るほうがやり甲斐がありますかね。」
案内人:「……そうなりますと……齢を重ね衰えを隠すことが出来なくなったところに孫のような嫡男が生まれ、息子の邪魔となる身内を全て粛清。その後、海外へ討って出たわいいがうまく行かず。散々子飼いに当たり散らした結果。直の上司に文句を言うことが出来ない部下たちが矛先を向けた石田三成は如何でしょうか?」
40代男性:「時期にもよりますが……。」
案内人:「前田利家と言う後ろ盾を失った直後の。になりますが……。」
40代男性:「大ピンチですね。正直、そこから逆転することは難しいと思いますが……。ただあの状況で打開することの出来る位置にいたのも三成でありますので。それでお願いします。」
案内人:「わかりました。」
40代男性:「ところで転生する方法は?」
案内人:「今からお客様にはバンパーが外れた車に乗って頂きます。そんなあなたのところにポリスマンのかたが心配で近づいて来ますので、思う存分逃げて下さい。ルートはお客様にお任せ致します。見事ポリスマンが追跡を諦めたところであなたは1599年の石田三成に転生することが出来ます。」
40代男性:「途中で捕まった場合は?」
案内人:「『疑惑が追及されている学校に勤める職員が逮捕される』と言うマスコミが最も好む題材として世間を更に賑わせることになります。」
40代男性:「おたくが責任をとって頂くわけには?」

クルマに付いている『転生案内所』と記されたステッカーを静かに剥がす案内人

40代男性:「……大丈夫なんですよね……これ?」
案内人:「交通ルールは順守でお願いします。」
40代男性:「それでは捕まってしまうでしょう……。」

半ば強引に乗せられた彼は無事1599年当時の石田三成になるのでありました。
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