旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。

アンチを通り越して

私（村上義清）「……幸隆。」

真田幸隆「はい。」

私（村上義清）「ちょっと……。あっ。春日殿はしばしここで……。」



　別室。



真田幸隆「如何なされましたか。」

私（村上義清）「いやそれはこっちの台詞なんだけど。」

真田幸隆「接収の仕方に何か問題ありましたか。」

私（村上義清）「いや。接収の仕方に問題はない。揉め事にしなかった。無事山内上杉に引き渡した。帰る場所がなくなった春日をこちらへ連れて来た。」

真田幸隆「勿論、飯富の了承を得てであります。」

私（村上義清）「うん。そこまでは良いんだ。有難いと思っている。」

真田幸隆「有難うございます。」

私（村上義清）「で。気になることが１つあるんだけどさ。」

真田幸隆「なんでしょうか。」

私（村上義清）「お前の口説き文句。あれ何？」

真田幸隆「『晴信の弔い合戦をしようとしない。腰抜けの武田よりも、身近な場所に仇が居る我が村上家で働いてみませんか。』と言っただけでありますけれども。」

私（村上義清）「その仇って言うのは。」

真田幸隆「言うまでもなく。」



　村上義清を指差す真田幸隆。



私（村上義清）「本気！？」

真田幸隆「ほかに行くところがなくなってしまいましたから。」

私（村上義清）「それは奴が飯富の指示を無視したからだろ。」

真田幸隆「亡き主君。武田晴信の無念を晴らすためならば、どんな不遇な境遇をも甘受する。戦国の世には珍しい忠義の心を忘れない彼の気持ちを殿は汲み取ることが出来ないのでありますか。」

私（村上義清）「常に狙おうとしている奴に金を払えってことだぞ。」

真田幸隆「彼にも生活がありますから。」

私（村上義清）「正気？」

真田幸隆「殿の命を狙っているのはここ（真田幸隆）にも居ますよ。」

私（村上義清）「でもお前の場合は、お前の権益を尊重している内は。」

真田幸隆「勿論殿に全てを捧げる覚悟であります。」

私（村上義清）「でも今のあいつを突き動かしているのは。」

真田幸隆「亡き武田晴信の仇を討つことであります。」

私（村上義清）「どうやって制御するのよ。俺は。」

真田幸隆「『従う。』と言って来ているのでありますから。」

私（村上義清）「それが一番危険なことだと思うのだけど……。えぇ……。雇うの……！？とりあえず岩村田近くの小諸に入ってもらおうか……。」



　少しでも自分の居場所から遠ざけたい。東の端に仕事場を与えようと考える村上義清。それに対し……。



真田幸隆「いえ。虎綱は殿の側につけたほうが宜しいかと。」

私（村上義清）「……だから常に命を狙われているの。俺は……。」

真田幸隆「まあまあ。客をこれ以上待たせるわけには行きませぬ。戻りましょう……。」