旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。

俣彦

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 真田幸隆の本拠地尼ヶ淵から沼田に通じる吾妻西部を気前よく引き渡す事に不審感を抱く村上義清。それに対し幸隆は……。



真田幸隆「これを聞いて受け入れを拒否しませんか?」

私(村上義清)「もし断ったら?」

真田幸隆「私が管理します。ただそうなりましたら間違いなく沼田はいくさになります。その時は殿。責任持って対処されますか?」

私(村上義清)「俺が持ったらいくさにならない?」

真田幸隆「確実ではありませんが、その危険性は限りなく零に近付くことになります。」

私(村上義清)「……わかった。こちらで引き受ける。」

真田幸隆「ありがとうございます。」

私(村上義清)「で。何なんだ?申してみよ。」

真田幸隆「はい。当地を流れる吾妻川でありますが、あそこは……魚も住むことが出来ない死の川であります。」

私(村上義清)「ん!?」

真田幸隆「尤も支流につきましては生息しているところもあります。ただそれは雪解け水が関係しまして、本来の水は本流と同じであります。」

私(村上義清)「もしかして?」

真田幸隆「はい。川の水は豊かでありますが、飲むことをお勧めする事は出来ません。現地では雪解け水や雨水を生活に使っています。」

私(村上義清)「雨量は?」

真田幸隆「深志よりは降ります。ただ川の水を使う事は出来ません。これが1つの家単位でありましたらそれ程問題にはならないのでありますが、今回は武田北条による沼田侵攻の抑止が目的でありますので、それなりの規模の兵を駐屯させなければなりません。水を溜める術を考えなければなりません。」

私(村上義清)「(吾妻)渓谷の向こう側は?」

真田幸隆「川は同じですので。」

私(村上義清)「愚問だったな。」

真田幸隆「沼田まで行く事が出来れば川が変わりますのでこの問題は解決するのでありますが、うちが沼田を抑えなければならなくなる。と言う事は、上杉が関東を諦めた事を意味しますので……。」

私(村上義清)「信濃がいくさになっていると言う事にもなるか……。」

真田幸隆「御意。」

私(村上義清)「川を止める術はあるんだけどな……。」

真田幸隆「その水飲みます?」

私(村上義清)「すぐ効果がわかるならお前に飲ませるけど。」

真田幸隆「現地の方々が『やめておけ。』と言っていることは避けましょう。」

私(村上義清)「そうなるとため池か……。結構な規模になるぞ……。」

真田幸隆「殿の腕の見せ所では無いですか。」

私(村上義清)「……もしかしてだけどさ?」

真田幸隆「如何されました?」

私(村上義清)「一通り設備が整ったら自分の物にしようと考えていない?」

真田幸隆「いや、改善していただきたいことが、ほかにもありますので。」

私(村上義清)「(自分の物にすることは否定しないのね……。)」
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