旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。

ですよね

真田幸隆「ですよね。」

私（村上義清）「『ですよね。』ってお前？」

真田幸隆「殿。」

私（村上義清）「ん！？」



　翌朝。



「放て！！」



の大音声と共に一斉射撃が。場所は滝山城北東。多摩川を挟んだ先にある拝島。そこに陣取っていたのは北条氏邦。銃撃したのは勿論……真田幸隆。



　前日。



真田幸隆「殿がどのような意図で仰ったかわかりませんが、此度の氏照からの和議は偽りと見て間違いありません。」

私（村上義清）「それを承知で受け入れたのか？」

真田幸隆「河越の事を思い出してください。氏照の父氏康は、関東におけるほぼ全ての反北条陣営に包囲された河越城を前に偽りの降伏と、降伏を拒絶された後負ける事により足利上杉陣営を油断させる事に成功。彼らが宴に酔いしれたのを確認した氏康は夜戦を仕掛け、敵を壊滅させる事に成功したあのいくさであります。

　今回、氏照は力攻めに失敗しました。多くの将と兵を失う事態に陥っています。苦境に立たされているのは紛れもない事実であります。しかし地の利は彼らにあります。滝山だけを見ればこちらが有利であります。ありますが、その周囲は皆北条領であります。我々は鉢形からここへの補給線を確実な物には出来ていません。しかも滝山の北東には多摩川が流れています。その川を越えなければ鉢形には行く事は出来ません。

　夜戦を仕掛けて来る恐れは少ないかと思われます。思われますが、こちらの補給路断つ事は容易であります。彼らには伊豆相模に武蔵の何処からでも物資を送り込む事が可能でありますので。何年でも包囲する事が出来ます。そうなってしまった場合、我らに待ち受ける運命は『自落』の二文字であります。

　故に氏照。正しくは氏照の戦闘部隊をいくさに巻き込む仕掛けを施し、ここまではうまく行ったのでありましたが……。」

私（村上義清）「氏照自身は冷静だった？」

真田幸隆「はい。」

私（村上義清）「もし和議を突っぱねていたら？」

真田幸隆「玉薬を使わせるよう仕向けたと思われます。」

私（村上義清）「城門前の氏照の兵達は？」

真田幸隆「恐らく当初から持久戦を考えていたと思われます。その指示を無視して突っ込んだ時点で『軍律違反』となります。うまく行って当たり前。苦境に陥ったら自己責任であります。その時は……。」



　滝山城内の兵力と玉薬を減らすために尽力せよ。



真田幸隆「死を賭して突っ込んで来る事になります。それだけは絶対に避けなければなりませんでした。」

私（村上義清）「それで氏照の提案を受け入れる事にした？」

真田幸隆「はい。ただ我らも黙って包囲されるのを待つつもりはありません。」