旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。

親子

　松井田城近郊村上義清本陣。



真田昌幸「父は安中をそのまま活用したいと考えています。安中は安中で自主自立でやっていく事が出来ない事を知っています。ただうちを信用する事が出来ないから降るわけにはいかない。理由は我らよりも強大であった山内上杉が没落し、また我らよりも強大な北条も上野を治める事が出来ず。こちらも我らよりも強大で。かつ将軍様のお墨付きを持って入った上杉輝虎もまた上野を鎮める事は出来ませんでした。

　彼らよりも弱小な。それも信濃東部の一部しか領していない。しかも殿の一家臣に過ぎない父幸隆など頼みにならない。たとえ輝虎の後ろ盾があったとしましても。」

私（村上義清）「一戦交えて追い払おうと考えている？」

真田昌幸「一度や二度であれば可能かもしれません。しれませんが安中はうちが北条の中核を担う氏照並びに氏邦を破り、鉢形から秩父を奪い取った事は当然知っています。国峰を労せずして獲得した事も目の前で見ています。加えて我らは越後を味方にしています。沼田や信濃から大量の物資が我が方に送り込まれて来ます。一方、殿に反発した安中には一切供給されません。

　供給されないのは物資だけではありません。越後からの援軍も期待する事は出来ませんし、今北条方に再鞍替えしたとしましても北条が安中に辿り着くのは困難であります。同じ箕輪衆で。我らの傘下に収まる事を拒絶した業盛にしましても自分を支えるのに手一杯であります。安中が殿の手中に収まるのは時間の問題であります。」

私（村上義清）「武名を残すために籠城を選択している？」

真田昌幸「それもあります。ありますが、もしそれだけでありましたら安中は親子で同じ城に入ったと思われます。その方が資源を集中する事が出来ますし、城の守り方の選択肢を拡げる事も出来ますので。

　しかし彼らはそれをしなかった。我らから見て前線となる松井田に父・重繁が入り、安中に景繁が入りました。おそらくでありますが景繁は父重繁に我らの攻撃をもろに受ける事になる松井田では無く、安中に入るよう頼んだと思います。しかし重繁は拒絶したものと思われます。理由は１つ。時間稼ぎであります。松井田を攻略するのは容易ではありません。ありませんし、重繁に降伏の意思が無いのでありますからこちらも力攻めに出なければなりません。こちらの被害も甚大なものになります。その後の行軍に支障を来す事間違いありません。

　その結果、たとえ自分は討ち死にしたとしても息子景繁と安中が残る。輝虎の調停や業盛の挙兵などの可能性が生じる事になります。重繁はそれを狙っての松井田入りであったと考えられますし、こちらとしては絶対に阻止しなければならない事態であります。」