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10歳なのに

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婚約前、容姿端麗であった兄姉たちは、各国の王族関係者や貴族からの縁談話が多数あり、様々な問題や紆余曲折があって、本当に結婚するまで大変な状態だった。

 特に軍事に重きをおいた国からの縁談話は特に強く使者による、軍事力をチラつかせての、周辺国を巻き込んでの、すわっ戦争かとまでの緊迫状態になった。

 一触即発の中、訪問団の中にいた、軍事国家の第3王子であるドウゴ王子が、国王に、ある提案をしてきた。

 第3王女オリビアの成人の暁には、ドウゴ王子との婚姻を行うこと。

 年端もいかない少女との婚姻を望む美丈夫な王子の申し出に、年頃の姉王女たちとの縁談を持ってきていた周辺各国の代表者達は呆れたが、国王の傍に立つ王女を見て彼の要求が理解できた。

まだ10歳。
 社交会へのデビューもまだ資格がない。
 容姿端麗な兄妹達があまりに有名で、少し年の離れた、オリビアの存在は薄く、況してやその容貌は、諸国にも知られていなかった。


トウゴが王に謁見を求めることにした前夜。

あまりに見事な月夜で、つい、いつものように庭園で月を観ようと侍女に隠れて部屋を抜け出した所を、宴に嫌気をさして、涼みにぶらついていたドウゴ王子と出会ってしまう。

 逃げようとかけだしても、さすが酔っていても軍事国家の王子というべきか、腕を掴まれ、簡単に捉えられてしまった。

その時にしっかり顔を見られてしまったのだ。

 結果、子供とは言え、姉たちにも勝るとも劣らぬ。
あと、なん年かすれば姉以上の美貌をもつであろうオリビアに心奪われたドウゴ王子。
 自分の国が望んでいた姉王女との縁談をあっさり放棄し、自分との縁談をゴリ推したである。


セレス王国も周辺各国と同様に結婚できる成人年齢は、16才。

10才のオリビアからすればとんでもない話であったが…。

 当時、平和に慣れきり軍事力どころかなんの力もないセレス王国には、諾と言うしか選択が残されていなかった。


 彼女の姿を知り、いち早く所有権を主張したドウゴ王子に対して悔しそうな各国代表者の見守る中。
 満足そうな王子の傍らのオリビアは、無表情で、忽然と顔をあげて立っていた。

 元はといえば自分の失態。
とはいえ、 腕を掴まれた恐怖に加えこの場に見世物のように連れ出され。
 自分の意思を無視して宣言された婚約の悔しさでオリビアは静かに。
 怒っていた。


こんな婚姻、絶対に回避してやる…。

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