異世界に転生したら狼に拾われました。

チャン

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第1章 ~転生しました。~

オコジョの正体は。

 ユキは急に発光したかと思えば、目を開けた時には目の前から消えていた。実はユキの中ではもう遊びが始まっていて、どこかに隠れているのではないかと思い、辺りを探してみたけどどこにも姿はなかった。
 まるで狐につままれたようだった。けど、確かに会話してこの手でユキに触れたんだ。幻なんかじゃなかったと思うんだけど。

 「どうした。また呆けたような顔で立ち尽くして。今日の練習はもう終わりか?」

 いつの間にか帰って来ていたアシナに声を掛けられた。

 「おかえりアシナ。ねぇ、今の今までアシナの知り合いみたいなオコジョがいたんだけど知ってる?」
 「オコジョ?」

 オコジョじゃ通じないのか。

 「えっと、毛並みはすごくきれいな真っ白で、顔はネズミみたいなんだけど体は細長くて、大きさはこのくらいなんだ。白いイタチみたいな。」

 両手でユキの大きさを示すと、何だかアシナは一瞬難しそうな顔をした。

 「本当にジローはその者の姿を見たのか?」
 「見たっていうかさっきまでここにいたんだ。一緒に喋ってアシナの代わりに遊ぶ約束までしたのに。
 名前がないって言うから付けてあげたら急に光ったかと思ったら、その間にどこかに行ってしまったんだ。」
 「名前を!?名前を付けてしまったのか!?」

 アシナが今まで見たことないくらい驚愕してる。そんなにいけないことをしただろうか。

 「はぁ、ジローよ。そのお前が見たという者は精霊の幼体、子供だ。」
 「え!?精霊さんだったの?」
 「そうだ。今までも近くにまで来ていたことはあったが、特に私に害がある訳ではないから好きに遊ばせていたのだ。遊んでいたと言ってもあっちが勝手に周りをウロウロしているだけだったがな。」
 「そうなの?あっちはアシナのこと知ってる風だったよ。そういえばおれからアシナの匂いがするって言ってたな。」

 あれはアシナを知っているからの発言だと思っていたけど。

 「それは匂いという言葉そのままの意味ではないだろう。精霊はこの世界で、最も世界の理に近い存在だ。ということは魔素や魔力に関しても私達よりも、より敏感なのだ。おそらくだがジローは一度私の魔力を浴びているからな。そこから私の存在を感じ取ったのだろう。」

 そんな何十日と前の魔力を感じとることができるものなのだろうか。

 「精霊というのは、本来人間のような存在の前には姿を見せぬものだ。それは人間の中には自分たちを縛り付けようとする者もいるということを長きに渡る経験の末に学んだからだ。だがその精霊は子供だったことと、お前から私の存在を感じたために姿を現してしまったのだろうな。」
 「縛り付ける?おれは精霊を嫌がることなんてしないよ。」
 「ジローがそうでも他の人間も、皆そうとは限らんのだ。精霊は世界に近い存在ゆえに使役できれば莫大な力を手にできる。人間には自分のためだけに精霊を手にいれようとする者は多くいる。だかそういう者が一生を懸けても見つけられないほど、それほどに精霊というのは稀有で希少な存在なのだ。」

 確かに精霊を捕まえることで力が手にはいるなら躍起になって捕まえようとする人は多いかもしれない。それにそれほどに稀有な存在なら捕まえて手にはいるのは力だけとは限らないし。

 「でもおれは別に縛り付けようと思った訳じゃないよ。ただ遊ぼうと、友達になろうとしただけなんだ。」
 「それだけならよかったのだがな。ただお前はその精霊に名前を付けたと言っていたな。」
 「うん。やっぱり一緒に遊ぶんなら名前がないと呼びにくいと思ったから。」
 「それが問題なのだ。精霊に名前をつけるということ、それは精霊との契約を意味する。お前は自分でも知らず知らずの内にその精霊を使役したのだ。」

 そんなつもりはなかったのに。 おれはいつの間にかユキの自由を奪ってしまっていたのだろうか。

 「名前を付けるだけだなんて、そんな簡単に契約できてしまうものなの?」
 「そんな簡単にと言うがな。普段は姿を見ることすらできぬ、どこにおるかもわからぬのだ。それは契約する機会すらないのと同じだろう。」
 「じゃあなんとか契約を無しにすることはできないの?」

 契約してしまったなら契約を切ればいい。

 「人間と契約をした精霊は、名前を付けられたことにより少しだけ人間に近き者となる。それは世界の理から遠ざかるということだ。契約を切ったからとてそれが元に戻ることはない。」
 「戻せないの?おれはあいつの嫌がることなんてするつもりはなかったのに。」

 ただ、ユキが寂しそうに見えたから。一緒に遊んでその寂しさを少しでも紛らせたらと思ったから。

 「では、嫌がっているかはその者に直接聞いてみたらどうだ?」

 ん?
 直接聞く?ユキに?

 「それはどういうこと?」
 「先程言ったであろう。お前はその精霊を使役したと。だからその精霊はお前の存在が感じられるところにいるはずだ。ジローが付けた名前を呼んでみれば、精霊は姿を現すはずだ。」

 そう言われて辺りを見回すけどユキの姿は見当たらない。でもアシナの言うとおり近くに居てくれているのなら声を掛ければ出て来てくれるかもしれない。
 おれはどこに居るともしれないユキに声を掛けた。

 「ユキ!お願い!居るなら出て来てよ!」
 
 すると肩に少しの重さを感じたと思ったら、頭の中にあの声が響いた。

 【呼ンダ?】
 「ユキ!」

 思わず肩に乗るユキを撫でた。ユキは気持ち良さそうに目を細めてる。

 「ごめんな、ユキ。おれはユキを縛り付けるつもりなんてなかったんだ。でもおれが何にも知らないせいでユキに嫌な思いをさせちゃったかな。」
 【ソンナコトナイヨ】
 「本当に?」
 【ウン。ダッテズット一人ダカラ寂シカッタ。デモコレカラハジローガ居テクレルデショ?名前モ付ケテクレテ本当ニ嬉シカッタヨ!】

 よかった。ユキが嫌じゃないみたいで本当に安心した。

 「じゃあユキ、これからよろしくね。」
 【ウン!狼サンモヨロシクネ!】
 「ふふ。ユキ、あの狼はアシナって名前なんだよ。」
 【ソウナノ?アシナ!ヨロシクネ!】
 「うむ。」

 うむってアシナはこんな時でも素っ気ないな。

 どうなるかと思ったけど、おれにまた不思議な友達ができたんだ。ユキはさっきからずっと、おれの頬に頬擦りしてる。

 
 本当にユキはかわいいな!

 

 
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