50 / 52
い、いや。あるぞ国王!
しおりを挟む
······私は意識を失っていた。暗闇の中から覚醒が始まり意識が戻った時、私は塔の最上部にいた。両手は縄で縛られ、ターバンを被った男達に囲まれていた。
私は周囲を見回した。私は塔の外縁部にいた。囲いは腰の高さまでしかなく、軽く押されれば、簡単に下に落ちてしまう。
眼下の風景を一目見ただけで、背筋が凍りつくような高さだった。そして私から離れた位置でタイラント。ザンカル。リケイ。シースンがこちらを見ている。
······タイラントだけじゃないわ。ネフィトさん。サーンズ大臣までいる。どうして皆が? どうして私はここに居るの?
······空は明るい。間違いない。一晩過ぎたんだ。昨夜私はお祭りが終わった後、ささやかな荷物をまとめて城をひっそりと出た。
私の記憶はそこで途切れている。城を出て歩いている時、私は急に意識を失った。そして目を覚ますと何者かに拘束されていた。
な、何なのこの状況は!?
「娘!!」
タイラントの大声が聞こえた。タ、タイラント!きっと貴方も私を心配していたわよね?
「この愚か者!! 何故一人で抱え込んだ! 何故私に一言も相談しなかったのだ!!」
はい? いやいや。ちょい寝癖金髪さん。ここは無事だとか、大丈夫とか言う所じゃないですか?
私を急に腹立たしくなってきた。誰の為を思って城を出たと思っているのよ!
「うるさいわね! この鈍感男! 最初に心配の声を相手にかけるのが先でしょう!」
私達は強風が吹く塔の最上部で怒鳴りあった。タイラントのこの様子。ネフィトさんから事情を聞いたのだろう。
「······下弦の月一族。お前達には依頼の取り消しを伝えた筈よ」
サーンズ大臣が前に歩み出た。下弦の月一族? 私を取り囲んでいるターバンの人達の事かしら?
「サーンズ大臣。我々はこの娘の暗殺の依頼を受けた。そして取り消しも間違いなく受けた。前金は貴方の言う通り有り難く頂いてな」
六人のターバンの男達の中から一人の男が口を開いた。顔は目以外包帯で巻かれ表情は伺えない。着ている衣服は黒ずくめだ。
手の甲に月をかたどった入墨みたいな物が見えた。
「リリーカ! 用心しろよ。こいつ等下弦の月一族は最悪の暗殺集団だ! 鍛錬所で襲って来た奴等とは桁違いの連中だぞ!」
既に大剣を腰から抜き放っていたザンカルが叫ぶ。あ、暗殺集団!? そ、それも最悪の!? 気をつけるってどうやって?
私が激しく困惑していると、下弦の月一族の男がまた口を開く。
「サーンズ大臣。俺達が用があるのは貴方だ。城内は思いの外、警備が厳重でな。この娘を利用して貴方にご足労頂いた」
······間違いな無い。私は昨晩この連中に昏倒させられたんだ。でも、私じゃなくサーンズ大臣に用ってどう言う事?
「サーンズ大臣。貴方はそこの国王の政略結婚を度々ご破算にしているな。その行いのせいで、各国から随分恨まれているのは承知しているだろう?」
タ、タイラントの政略結婚を!? 男の言葉にサーンズ大臣が冷笑した。
「······なる程。お前達はどこかの国に雇われたのね。目障りな私を消せと」
「俺達は依頼人に決して背信行為は働かない。だが、依頼取り消しを通告してきた貴方はもう依頼人では無い。言っている意味がわかるな? サーンズ大臣」
「依頼人で無くなった私を心置きなく暗殺出来る。と言う事ね」
再びサーンズ大臣は冷たく笑う。その瞬間、六人の男達が手に短剣を構えた。タイラント達と暗殺集団が睨み合う。
「······おいタイラント。この機会に言っておくぞ」
「この状況で何を言っているザンカル」
タイラントとザンカルが何やら会話を交わしていると思いきや、突然ザンカルがタイラントを殴り倒した。
はああぁぁっ!? な、何やっているのザンカル!!
「ふう。スッキリしたぜ。おいタイラント。
お前への恨みは、この一発でチャラにしてやるぞ」
意味不明のザンカルの言葉を聞きながら、
口から血を流したながらタイラントは立ち上がる。
「······私に手を上げた理由を聞こうかザンカル。今は火急故に簡潔にな」
「想い人泥棒の罪だ。万死に値する所だが、古い付き合いに免じてそれで······」
ザンカルが言い終える前に、タイラントの右拳がザンカルの鼻を直撃した。途端にザンカルの鼻は出血し、数歩後ろによろめいた。
「鼻を負傷すると呼吸も苦しく辛いぞザンカル。国王に手を上げる大罪をこれで済ましてやる」
出血した鼻を手の甲で拭い、ザンカルは不敵に笑う。
「······上等だ。じゃあ済ませなくなる程の顔にしてやるぜ! この寝癖野郎!!」
ザンカルの痛烈な容姿批判に金髪国王は毅然と断言する。
「私にそんな恥ずべき物は無い!」
い、いや。あるぞ国王! じゃ、じゃなくて。タイラントとザンカルは取っ組み合いを始めた。な、何をやってんのよあんた達は!
殴り合うタイラントとザンカルに、二人の暗殺者が信じられないを速さで近づく。あ、危ない二人共!!
「仲間割れとは見苦しいな。サーンズ大臣以外は眠って貰う!」
二人の暗殺者がそう叫び短剣を振り上げる。
「うるせぇっ!! 今取り込み中だ!」
「無粋な連中め。順番を守れ!」
ザンカルとタイラントがそれぞれ剣を振り抜いた。二人の暗殺者は宙返りして後方に回避する。
暗殺者は無傷では無かった。一人は胸に。一人は腕に剣傷を負っていた。
「どうだタイラント? 敵を油断させる俺の演技はなかなかの物だろう?」
「演技にしては頬が痛むのは気のせいかザンカル?お前に役者の才能は皆無のようだな」
お馬鹿たちのお喋りの時間は終わり、塔の最上部ではいよいよ殺気に満ちた空気が流れ始めた。
私は周囲を見回した。私は塔の外縁部にいた。囲いは腰の高さまでしかなく、軽く押されれば、簡単に下に落ちてしまう。
眼下の風景を一目見ただけで、背筋が凍りつくような高さだった。そして私から離れた位置でタイラント。ザンカル。リケイ。シースンがこちらを見ている。
······タイラントだけじゃないわ。ネフィトさん。サーンズ大臣までいる。どうして皆が? どうして私はここに居るの?
······空は明るい。間違いない。一晩過ぎたんだ。昨夜私はお祭りが終わった後、ささやかな荷物をまとめて城をひっそりと出た。
私の記憶はそこで途切れている。城を出て歩いている時、私は急に意識を失った。そして目を覚ますと何者かに拘束されていた。
な、何なのこの状況は!?
「娘!!」
タイラントの大声が聞こえた。タ、タイラント!きっと貴方も私を心配していたわよね?
「この愚か者!! 何故一人で抱え込んだ! 何故私に一言も相談しなかったのだ!!」
はい? いやいや。ちょい寝癖金髪さん。ここは無事だとか、大丈夫とか言う所じゃないですか?
私を急に腹立たしくなってきた。誰の為を思って城を出たと思っているのよ!
「うるさいわね! この鈍感男! 最初に心配の声を相手にかけるのが先でしょう!」
私達は強風が吹く塔の最上部で怒鳴りあった。タイラントのこの様子。ネフィトさんから事情を聞いたのだろう。
「······下弦の月一族。お前達には依頼の取り消しを伝えた筈よ」
サーンズ大臣が前に歩み出た。下弦の月一族? 私を取り囲んでいるターバンの人達の事かしら?
「サーンズ大臣。我々はこの娘の暗殺の依頼を受けた。そして取り消しも間違いなく受けた。前金は貴方の言う通り有り難く頂いてな」
六人のターバンの男達の中から一人の男が口を開いた。顔は目以外包帯で巻かれ表情は伺えない。着ている衣服は黒ずくめだ。
手の甲に月をかたどった入墨みたいな物が見えた。
「リリーカ! 用心しろよ。こいつ等下弦の月一族は最悪の暗殺集団だ! 鍛錬所で襲って来た奴等とは桁違いの連中だぞ!」
既に大剣を腰から抜き放っていたザンカルが叫ぶ。あ、暗殺集団!? そ、それも最悪の!? 気をつけるってどうやって?
私が激しく困惑していると、下弦の月一族の男がまた口を開く。
「サーンズ大臣。俺達が用があるのは貴方だ。城内は思いの外、警備が厳重でな。この娘を利用して貴方にご足労頂いた」
······間違いな無い。私は昨晩この連中に昏倒させられたんだ。でも、私じゃなくサーンズ大臣に用ってどう言う事?
「サーンズ大臣。貴方はそこの国王の政略結婚を度々ご破算にしているな。その行いのせいで、各国から随分恨まれているのは承知しているだろう?」
タ、タイラントの政略結婚を!? 男の言葉にサーンズ大臣が冷笑した。
「······なる程。お前達はどこかの国に雇われたのね。目障りな私を消せと」
「俺達は依頼人に決して背信行為は働かない。だが、依頼取り消しを通告してきた貴方はもう依頼人では無い。言っている意味がわかるな? サーンズ大臣」
「依頼人で無くなった私を心置きなく暗殺出来る。と言う事ね」
再びサーンズ大臣は冷たく笑う。その瞬間、六人の男達が手に短剣を構えた。タイラント達と暗殺集団が睨み合う。
「······おいタイラント。この機会に言っておくぞ」
「この状況で何を言っているザンカル」
タイラントとザンカルが何やら会話を交わしていると思いきや、突然ザンカルがタイラントを殴り倒した。
はああぁぁっ!? な、何やっているのザンカル!!
「ふう。スッキリしたぜ。おいタイラント。
お前への恨みは、この一発でチャラにしてやるぞ」
意味不明のザンカルの言葉を聞きながら、
口から血を流したながらタイラントは立ち上がる。
「······私に手を上げた理由を聞こうかザンカル。今は火急故に簡潔にな」
「想い人泥棒の罪だ。万死に値する所だが、古い付き合いに免じてそれで······」
ザンカルが言い終える前に、タイラントの右拳がザンカルの鼻を直撃した。途端にザンカルの鼻は出血し、数歩後ろによろめいた。
「鼻を負傷すると呼吸も苦しく辛いぞザンカル。国王に手を上げる大罪をこれで済ましてやる」
出血した鼻を手の甲で拭い、ザンカルは不敵に笑う。
「······上等だ。じゃあ済ませなくなる程の顔にしてやるぜ! この寝癖野郎!!」
ザンカルの痛烈な容姿批判に金髪国王は毅然と断言する。
「私にそんな恥ずべき物は無い!」
い、いや。あるぞ国王! じゃ、じゃなくて。タイラントとザンカルは取っ組み合いを始めた。な、何をやってんのよあんた達は!
殴り合うタイラントとザンカルに、二人の暗殺者が信じられないを速さで近づく。あ、危ない二人共!!
「仲間割れとは見苦しいな。サーンズ大臣以外は眠って貰う!」
二人の暗殺者がそう叫び短剣を振り上げる。
「うるせぇっ!! 今取り込み中だ!」
「無粋な連中め。順番を守れ!」
ザンカルとタイラントがそれぞれ剣を振り抜いた。二人の暗殺者は宙返りして後方に回避する。
暗殺者は無傷では無かった。一人は胸に。一人は腕に剣傷を負っていた。
「どうだタイラント? 敵を油断させる俺の演技はなかなかの物だろう?」
「演技にしては頬が痛むのは気のせいかザンカル?お前に役者の才能は皆無のようだな」
お馬鹿たちのお喋りの時間は終わり、塔の最上部ではいよいよ殺気に満ちた空気が流れ始めた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
婚姻契約には愛情は含まれていません。 旦那様には愛人がいるのですから十分でしょう?
すもも
恋愛
伯爵令嬢エーファの最も嫌いなものは善人……そう思っていた。
人を救う事に生き甲斐を感じていた両親が、陥った罠によって借金まみれとなった我が家。
これでは領民が冬を越せない!!
善良で善人で、人に尽くすのが好きな両親は何の迷いもなくこう言った。
『エーファ、君の結婚が決まったんだよ!! 君が嫁ぐなら、お金をくれるそうだ!! 領民のために尽くすのは領主として当然の事。 多くの命が救えるなんて最高の幸福だろう。 それに公爵家に嫁げばお前も幸福になるに違いない。 これは全員が幸福になれる機会なんだ、当然嫁いでくれるよな?』
と……。
そして、夫となる男の屋敷にいたのは……三人の愛人だった。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
見捨ててくれてありがとうございます。あとはご勝手に。
有賀冬馬
恋愛
「君のような女は俺の格を下げる」――そう言って、侯爵家嫡男の婚約者は、わたしを社交界で公然と捨てた。
選んだのは、華やかで高慢な伯爵令嬢。
涙に暮れるわたしを慰めてくれたのは、王国最強の騎士団副団長だった。
彼に守られ、真実の愛を知ったとき、地味で陰気だったわたしは、もういなかった。
やがて、彼は新妻の悪行によって失脚。復縁を求めて縋りつく元婚約者に、わたしは冷たく告げる。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる