悪役令嬢を誘拐したら身代金を断られたので大喧嘩しながら同棲中

ガイア

文字の大きさ
2 / 29

気持ち悪いおっさんとの出会いそして別れ

しおりを挟む
「いらっしゃい、いらっしゃい」

暴れているコイツに頭を殴られ、顔をひっかかれ、すねを蹴られたオレは、ぼろぼろのまま市場に立っていた。
お嬢は、首に犬のように縄をつけて、目と口をふさぎ、椅子に縛り付けている。

「んーーーー!!!んーーーんーーーーーー!!」

のにまだ暴れている。
がたがた暴れるコイツと、傷だらけのオレを見て道行く人たちは、自分には手に負えない猛犬を売る男を見る目で見ていく。

「綺麗な髪と、綺麗な眼をしていますよー」

ぼさぼさに乱れた髪に、目にはぼろ布が巻かれている。
が、コイツを誉めていかないと売れないわけで。

「あとは、えーっと、顔がいいです、それから・・・声も可愛いです!それから・・・」

全部封じ込められているわけだが。
クソッ、いつもガキを誘拐してバイヤーに渡せばよかったから、どうしたらいいのかさっぱりだ。

「おい」

しばらくして、おひげが立派でプライドの高そうな小太りの男が現れ、声をかけてきた。

「はい!!」

「彼女の美しいという目と声を聞かせてほしいのだが」

「あ、え・・・は、はい!!」

男は、下卑た目で令嬢を上から下まで査定するように眺めていた。

男の後ろには、強そうなボディガードが控えており、オレの風貌を見て明らかに怪しんでいた。お嬢も髪は乱れ、ボロボロである。
でも、整えようとすると暴れるのだから無理だった。

「アンドル様」

「はは、大丈夫だ、なぁに、調教甲斐のありそうな娘じゃあないか」

舌なめずりをしながら期待に満ちた目で見ている男に寒気を覚えながらオレはお嬢にゆっくり近づいた。
暴れつかれて肩を落としてぐったりしている令嬢の様子を見て、これなら大丈夫だろうとオレは判断した。

「ちょ~っと待っててくださいね」

オレは、極力お嬢を刺激しないようにそっと目と口の布を外した。
お嬢は、ぐったりと俯いていた。オレは、ライオンを起こさないようにそーっと離れた。

「ほうら、顔を上げて」

オレは、できるだけ優しく彼女に声をかけた。
小太りの男は、悠々とお嬢に近づき、その端正な顔を眺めようとした。

「プッ」

「いやああああああああああああああああああああああ!!」

オレは、思わず叫んだ。
このアマ、お客様に唾を吐きかけたのだ。

「なに、この気持ち悪いおっさん。それより早くあたしを離しなさい」

ヤッチャッタ。
オワッタ。

気持ち悪いおっさんは、俯いて震えていた。
頼む、おっさん調教甲斐というのは「ドS」に調教甲斐がありそうって意味であってくれ。今のもご褒美だっていってくれ。
オレは、心底神に願った。

「ワシは、Sじゃ・・・」

Sだった・・・もうやだ何でSなんだよ、豚みたいな見た目してるくせによオ!!
男は、ぷるぷると震えながら俯いていた。

「おい」

「はい」

ボディガードらしき男がぽきぽき指を鳴らしながら近づいてきた。

「いやあああああああああああああああああ助けて!!」

オレは、お嬢の後ろに隠れた。

「こっちのセリフよ!ふざけんじゃないわよ!!」

「お前みたいなヤツを買ってくれるだけありがたいと思えよ!!」

「なんですって!!」

「覚悟はいいだろうな」

ボディガードはすぐそこまで来ていた。
オレは、咄嗟にお嬢を縛り付けている椅子を持ち上げて盾にした。

「きゃあああああああああああああああ!!な、なにすんのよ。ねえ!!なにすんのよ!!」

令嬢は、椅子に乗ったままだから普通に重いし迷惑だった。でも、これしか今オレが身を守るものはなかった。

「おらあああああああああ!!」

「いやあああああああああああああああああああ!!」

オレは、力を振り絞り精一杯椅子を振り上げた。

「ちょ、ちょちょちょっと!!ちょっと待ちなさいよ!!あんた頭おかしいんじゃないの!?」

オレは、お嬢の乗っかった椅子を威嚇するように振り上げ、2度振り回した。男を庇おうとボデイガードは、前に立つ。
そのままボデイガードと男の横を突っ切ろうとした。ボデイガードがオレを止めようと立ちふさがったが、拳を振り上げるのを躊躇した。

女を殴れないタイプのヤツか。

オレは、椅子の右前足をボデイガードの股間に突き上げそのまま逃走した。

「あんた、最低ね」

路地裏を椅子と共にお嬢を抱えながら走るオレに、酷く冷たい声が返ってきた。

「おいおい、オレはお前を助けてやった命の恩人だっつの」

「人を変態に売り払おうとしていたくせに、何が恩人よ」
目立つので途中お嬢の縄を解いて椅子から解放した。
空はすっかり暗くなっていた。

「いいの?こんなことして、逃げるわよあたし」

「逃げろ逃げろ、だが、こんな夜に逃げてみろ。それこそさっきの男に・・・そうだ!」

今は夜、コイツを売りさえすればいいんだ。
もうオレはコイツを既に手放したくなっていた。コイツといるとろくなことがない。オレは、素早くお嬢を拘束し、また椅子に縛り付けた。

「ねえ!?なんで!?」

「しっ、騒ぐな」

オレは、またお嬢の目と口に布を巻きつけ闇へと落とし込むと、人目につかない裏ルートを使ってまた歩き始めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

【完結】溺愛?執着?転生悪役令嬢は皇太子から逃げ出したい~絶世の美女の悪役令嬢はオカメを被るが、独占しやすくて皇太子にとって好都合な模様~

うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
 平安のお姫様が悪役令嬢イザベルへと転生した。平安の記憶を思い出したとき、彼女は絶望することになる。  絶世の美女と言われた切れ長の細い目、ふっくらとした頬、豊かな黒髪……いわゆるオカメ顔ではなくなり、目鼻立ちがハッキリとし、ふくよかな頬はなくなり、金の髪がうねるというオニのような見た目(西洋美女)になっていたからだ。  今世での絶世の美女でも、美意識は平安。どうにか、この顔を見られない方法をイザベルは考え……、それは『オカメ』を装備することだった。  オカメ狂の悪役令嬢イザベルと、  婚約解消をしたくない溺愛・執着・イザベル至上主義の皇太子ルイスのオカメラブコメディー。 ※執着溺愛皇太子と平安乙女のオカメな悪役令嬢とのラブコメです。 ※主人公のイザベルの思考と話す言葉の口調が違います。分かりにくかったら、すみません。 ※途中からダブルヒロインになります。 イラストはMasquer様に描いて頂きました。

婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた

夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。 そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。 婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。

悪役令嬢が睨んでくるので、理由を聞いてみた

ちくわ食べます
恋愛
転生したのは馴染みのない乙女ゲームの世界だった。  シナリオは分からず、登場人物もうろ覚え、タイトルなんて覚えてすらいない。 そんな世界でモブ男『トリスタン』として暮らす主人公。 恋愛至上主義な学園で大人しく、モブらしく、学園生活を送っていたはずなのに、なぜか悪役令嬢から睨まれていて。 気になったトリスタンは、悪役令嬢のセリスに理由を聞いてみることにした。

困りました。縦ロールにさよならしたら、逆ハーになりそうです。

新 星緒
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢アニエス(悪質ストーカー)に転生したと気づいたけれど、心配ないよね。だってフラグ折りまくってハピエンが定番だもの。 趣味の悪い縦ロールはやめて性格改善して、ストーカーしなければ楽勝楽勝! ……って、あれ? 楽勝ではあるけれど、なんだか思っていたのとは違うような。 想定外の逆ハーレムを解消するため、イケメンモブの大公令息リュシアンと協力関係を結んでみた。だけどリュシアンは、「惚れた」と言ったり「からかっただけ」と言ったり、意地悪ばかり。嫌なヤツ! でも実はリュシアンは訳ありらしく…… (第18回恋愛大賞で奨励賞をいただきました。応援してくださった皆様、ありがとうございました!)

死亡予定の脇役令嬢に転生したら、断罪前に裏ルートで皇帝陛下に溺愛されました!?

六角
恋愛
「え、私が…断罪?処刑?――冗談じゃないわよっ!」 前世の記憶が蘇った瞬間、私、公爵令嬢スカーレットは理解した。 ここが乙女ゲームの世界で、自分がヒロインをいじめる典型的な悪役令嬢であり、婚約者のアルフォンス王太子に断罪される未来しかないことを! その元凶であるアルフォンス王太子と聖女セレスティアは、今日も今日とて私の目の前で愛の劇場を繰り広げている。 「まあアルフォンス様! スカーレット様も本当は心優しい方のはずですわ。わたくしたちの真実の愛の力で彼女を正しい道に導いて差し上げましょう…!」 「ああセレスティア!君はなんて清らかなんだ!よし、我々の愛でスカーレットを更生させよう!」 (…………はぁ。茶番は他所でやってくれる?) 自分たちの恋路に酔いしれ、私を「救済すべき悪」と見なすめでたい頭の二人組。 あなたたちの自己満足のために私の首が飛んでたまるものですか! 絶望の淵でゲームの知識を総動員して見つけ出した唯一の活路。 それは血も涙もない「漆黒の皇帝」と万人に恐れられる若き皇帝ゼノン陛下に接触するという、あまりに危険な【裏ルート】だった。 「命惜しさにこの私に魂でも売りに来たか。愚かで滑稽で…そして実に唆る女だ、スカーレット」 氷の視線に射抜かれ覚悟を決めたその時。 冷酷非情なはずの皇帝陛下はなぜか私の悪あがきを心底面白そうに眺め、その美しい唇を歪めた。 「良いだろう。お前を私の『籠の中の真紅の鳥』として、この手ずから愛でてやろう」 その日から私の運命は激変! 「他の男にその瞳を向けるな。お前のすべては私のものだ」 皇帝陛下からの凄まじい独占欲と息もできないほどの甘い溺愛に、スカーレットの心臓は鳴りっぱなし!? その頃、王宮では――。 「今頃スカーレットも一人寂しく己の罪を反省しているだろう」 「ええアルフォンス様。わたくしたちが彼女を温かく迎え入れてあげましょうね」 などと最高にズレた会話が繰り広げられていることを、彼らはまだ知らない。 悪役(笑)たちが壮大な勘違いをしている間に、最強の庇護者(皇帝陛下)からの溺愛ルート、確定です!

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

目指せ、婚約破棄!〜庭師モブ子は推しの悪役令嬢のためハーブで援護します〜

森 湖春
恋愛
島国ヴィヴァルディには存在しないはずのサクラを見た瞬間、ペリーウィンクルは気付いてしまった。 この世界は、前世の自分がどハマりしていた箱庭系乙女ゲームで、自分がただのモブ子だということに。 しかし、前世は社畜、今世は望み通りのまったりライフをエンジョイしていた彼女は、ただ神に感謝しただけだった。 ところが、ひょんなことから同じく前世社畜の転生者である悪役令嬢と知り合ってしまう。 転生して尚、まったりできないでいる彼女がかわいそうで、つい手を貸すことにしたけれど──。 保護者みたいな妖精に甘やかされつつ、庭師モブ子はハーブを駆使してお嬢様の婚約破棄を目指します! ※感想を頂けるとすごく喜びます。執筆の励みになりますので、気楽にどうぞ。 ※『小説家になろう』様にて先行して公開しています。

処理中です...