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深夜のコンビニバイト五日目 勇者来店
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深夜のコンビニバイト五日目。
俺の財布がすっからかんになった代わりに、魔王がコンビニに来ないというしばらくの安息を手に入れた。
ただ、食べ物に困ったらいつでも来いよって思ってしまっている俺がいる。
待って俺さ、コンビニで商品を売るはずのコンビニ店員なのにコンビニで商品を魔王に提供する手下みたいになっちゃってない?
「へいへい、魔王様こちらカツサンドですぜ(手もみもみ」
いや、はは、何も考えないようにしよう。何も考えない無の境地。
そして、今日から始まった700円以上のお買い物で一回くじが引けて、当たるとコンビニ内の商品が当たったり、割引券がもらえたりするキャンペーン。
今日からだからな。昨日だったら箱中のくじを引きまくってそこでまた食料を二人に確保できたのに。
違う、俺は手下じゃない。やめろ。無の境地。
ピロリロピロリロ
「いらっしゃ」
「ここがコンビニかー!皆さん、俺は今コンビニに来ています!」
自らスマホを構え、自分を写し、一人でスマホに話しかけながら来店してきた一人の男。
何だこいつやばい。
俺は一瞬で察した。
青いマントに、銀色の鎧、金髪の髪をかきあげ、青い目のイケメンが入ってきた。明らかに"あっち側"の奴だこいつ。
「まぁまぁですね、人間界のコンビニって。まぁ勇者の俺からすると、ヒルガ街にあったアイテム屋の品揃えの方がもっと豊富だったと思いますよ?勇者の剣、これもそこで買いましたし?」
そう言いながら腰に下げている自称勇者の剣(笑)を掲げながら格好良くポーズをとりだした史上最悪に迷惑な客に、極力関わりたくないし、話しかけたくもないが俺はここの店員だ。
小さく深呼吸して声をかけた。
「あの、すいません。店内でそういう撮影は禁止してますので」
「えー、何で?別によくない?店員さんになんか迷惑かけた?」
「いえ.....その、かけてないですけど」
魔王よりたち悪いなこいつ。
こんな奴なら、正直今までにきた魔王や河童の方が可愛いものだ。
「皆が俺の配信楽しみにしてんだってー!あっ、店員さんも俺の配信見にきてよ!勇者系ユーチューバー、マックのチャンネル登録よろしく☆」
潰れてしまえそんなチャンネル。
真っ黒な感情がズブズブと溢れてくる。
あぁ、これが接客業か。
でも、相手は一応お客様だ。笑顔でいなくちゃ、笑顔でいなくちゃ。
「他のお客様のご迷惑になりますし」
「見る限り、他のお客さんいないけど?」
「このコンビニは動画撮影禁止ですので」
「そんな張り紙なかったよ?」
「少々お待ちください」
俺は精一杯笑顔を作って店長を呼びに行った。
もうだめだ我慢できない。
正直異世界のスラム街に追放して二度と帰って来れないようにしてやりたいぐらいムカつくけど、もうこのコンビニのラスボス(店長)に頼るしかない。
休憩室をそうっと開けると、両手を可愛く頰に乗せて、すやすや寝息を立てている店長がいた。
「店長、すいません」
「......何か、あったのか?」
一声で低い返事が返ってくるあたり、流石店長だ。
「めちゃくちゃ迷惑な客がいるんです。なんとかしてください」
「ほう.....?」
よっこいせと重い腰をあげた店長は、首をぼきぼきと鳴らし、肩をぐりんと回す。
低いぼきぼきという音が、休憩室に響く。
「ふしゅううううう」
ロボットが起動を開始したように、大きく息を吐いた店長(28)歳の見た目を一言で表すなら、"3秒でゴリラをを仕留めそうなおっさん"だ。
正直28歳には全く見えない。
10万400歳くらいに見える幾多の死戦をくぐり抜けてきましたみたいなオーラ。
500年くらいの年月今まで戦闘しかして来ませんでしたみたいなムキムキの体に、おでこから左頬に向かって大きな傷が、強キャラ感を醸し出している。
正直面接の時捕食されるかと思った。
おしっこ漏らしそうだった。
あれ待って、この人もある意味人間からかけ離れてないですか大丈夫ですかこのコンビニは。
いや、気のせいだ無の境地。
制服をこれから返り血を浴びないように着ておくかみたいな雰囲気で着た店長の制服は、筋肉のせいでピッチピチだった。
休憩室から表に出た店長は、迷惑な客を視界に捉えると、まっすぐ向かって行った。
「このボールペン一本あれば、俺ならゴブリン100匹くらい討伐するのはまぁ余裕かな?いやいや皆平気だよ?ボールペンが使い物にならなかったら俺にはこの足があるし。剣を使うまでもない的な?俺の蹴りは光より早いからさ?疾風の舞(ウィンドウダンス)って二つ名が」
「お客様」
がっしりとイキリ倒す勇者の肩を掴んで低い声で呼びかける店長。
ゆっくりと振り返った勇者は、店長の風貌を見て動きが止まる。
しばらく見つめあった後
「殺さないで.......」
勇者が絞り出した一言。
やめろ。このシリアスな場面で吹き出しそうになったわ。
「動画撮影は他のお客様のご迷惑になります。コンビニでは動画撮影はご遠慮ください」
「.......あぃ」
今にも泣き出しそうな真っ赤な顔でスマホを下げる姿に俺はスッキリしていた。
やっぱり店長は只者じゃない。
僕が今まであまり店長を呼ばなかったのは店長がこんな感じだからだ。
本当に、なんていうかその"本当に困った時にしか呼んじゃいけない存在"っていうか、うまく言えないけど店長のようなお方を気安く呼んではいけない気がする。
本当なんでこの人コンビニの店長なんてやってるんだろ。
店長は、音も立てずレジ台の前で立ち尽くす僕の方に歩いてくると、僕の肩にポンと手を添えた。
「いつも深夜バイトよく頑張ってくれているね。また何かあればすぐ呼んでくれ」
「は、はい!
フッとゴツゴツした顔を柔らかく微笑ませ、僕の肩をポンポンと肩を二回叩いた店長に、精一杯の返事を返した。
ちょっと感動して泣きそうだった。
店長が、休憩室の扉の向こうに消えていくまで、俺はずっと頭を下げ続けていた。
振り返ると、音もなく勇者はいなくなっていた。
店からでたピロリロピロリロも聞こえないくらい、俺は感極まっていたんだ。
二度と店長のコンビニの敷居を跨がないでほしい。
魔王より勇者の方がタチが悪いとか、この世界のバランスはどうやら俺がラノベやアニメで見て来た世界とは大分違うらしい。
俺の財布がすっからかんになった代わりに、魔王がコンビニに来ないというしばらくの安息を手に入れた。
ただ、食べ物に困ったらいつでも来いよって思ってしまっている俺がいる。
待って俺さ、コンビニで商品を売るはずのコンビニ店員なのにコンビニで商品を魔王に提供する手下みたいになっちゃってない?
「へいへい、魔王様こちらカツサンドですぜ(手もみもみ」
いや、はは、何も考えないようにしよう。何も考えない無の境地。
そして、今日から始まった700円以上のお買い物で一回くじが引けて、当たるとコンビニ内の商品が当たったり、割引券がもらえたりするキャンペーン。
今日からだからな。昨日だったら箱中のくじを引きまくってそこでまた食料を二人に確保できたのに。
違う、俺は手下じゃない。やめろ。無の境地。
ピロリロピロリロ
「いらっしゃ」
「ここがコンビニかー!皆さん、俺は今コンビニに来ています!」
自らスマホを構え、自分を写し、一人でスマホに話しかけながら来店してきた一人の男。
何だこいつやばい。
俺は一瞬で察した。
青いマントに、銀色の鎧、金髪の髪をかきあげ、青い目のイケメンが入ってきた。明らかに"あっち側"の奴だこいつ。
「まぁまぁですね、人間界のコンビニって。まぁ勇者の俺からすると、ヒルガ街にあったアイテム屋の品揃えの方がもっと豊富だったと思いますよ?勇者の剣、これもそこで買いましたし?」
そう言いながら腰に下げている自称勇者の剣(笑)を掲げながら格好良くポーズをとりだした史上最悪に迷惑な客に、極力関わりたくないし、話しかけたくもないが俺はここの店員だ。
小さく深呼吸して声をかけた。
「あの、すいません。店内でそういう撮影は禁止してますので」
「えー、何で?別によくない?店員さんになんか迷惑かけた?」
「いえ.....その、かけてないですけど」
魔王よりたち悪いなこいつ。
こんな奴なら、正直今までにきた魔王や河童の方が可愛いものだ。
「皆が俺の配信楽しみにしてんだってー!あっ、店員さんも俺の配信見にきてよ!勇者系ユーチューバー、マックのチャンネル登録よろしく☆」
潰れてしまえそんなチャンネル。
真っ黒な感情がズブズブと溢れてくる。
あぁ、これが接客業か。
でも、相手は一応お客様だ。笑顔でいなくちゃ、笑顔でいなくちゃ。
「他のお客様のご迷惑になりますし」
「見る限り、他のお客さんいないけど?」
「このコンビニは動画撮影禁止ですので」
「そんな張り紙なかったよ?」
「少々お待ちください」
俺は精一杯笑顔を作って店長を呼びに行った。
もうだめだ我慢できない。
正直異世界のスラム街に追放して二度と帰って来れないようにしてやりたいぐらいムカつくけど、もうこのコンビニのラスボス(店長)に頼るしかない。
休憩室をそうっと開けると、両手を可愛く頰に乗せて、すやすや寝息を立てている店長がいた。
「店長、すいません」
「......何か、あったのか?」
一声で低い返事が返ってくるあたり、流石店長だ。
「めちゃくちゃ迷惑な客がいるんです。なんとかしてください」
「ほう.....?」
よっこいせと重い腰をあげた店長は、首をぼきぼきと鳴らし、肩をぐりんと回す。
低いぼきぼきという音が、休憩室に響く。
「ふしゅううううう」
ロボットが起動を開始したように、大きく息を吐いた店長(28)歳の見た目を一言で表すなら、"3秒でゴリラをを仕留めそうなおっさん"だ。
正直28歳には全く見えない。
10万400歳くらいに見える幾多の死戦をくぐり抜けてきましたみたいなオーラ。
500年くらいの年月今まで戦闘しかして来ませんでしたみたいなムキムキの体に、おでこから左頬に向かって大きな傷が、強キャラ感を醸し出している。
正直面接の時捕食されるかと思った。
おしっこ漏らしそうだった。
あれ待って、この人もある意味人間からかけ離れてないですか大丈夫ですかこのコンビニは。
いや、気のせいだ無の境地。
制服をこれから返り血を浴びないように着ておくかみたいな雰囲気で着た店長の制服は、筋肉のせいでピッチピチだった。
休憩室から表に出た店長は、迷惑な客を視界に捉えると、まっすぐ向かって行った。
「このボールペン一本あれば、俺ならゴブリン100匹くらい討伐するのはまぁ余裕かな?いやいや皆平気だよ?ボールペンが使い物にならなかったら俺にはこの足があるし。剣を使うまでもない的な?俺の蹴りは光より早いからさ?疾風の舞(ウィンドウダンス)って二つ名が」
「お客様」
がっしりとイキリ倒す勇者の肩を掴んで低い声で呼びかける店長。
ゆっくりと振り返った勇者は、店長の風貌を見て動きが止まる。
しばらく見つめあった後
「殺さないで.......」
勇者が絞り出した一言。
やめろ。このシリアスな場面で吹き出しそうになったわ。
「動画撮影は他のお客様のご迷惑になります。コンビニでは動画撮影はご遠慮ください」
「.......あぃ」
今にも泣き出しそうな真っ赤な顔でスマホを下げる姿に俺はスッキリしていた。
やっぱり店長は只者じゃない。
僕が今まであまり店長を呼ばなかったのは店長がこんな感じだからだ。
本当に、なんていうかその"本当に困った時にしか呼んじゃいけない存在"っていうか、うまく言えないけど店長のようなお方を気安く呼んではいけない気がする。
本当なんでこの人コンビニの店長なんてやってるんだろ。
店長は、音も立てずレジ台の前で立ち尽くす僕の方に歩いてくると、僕の肩にポンと手を添えた。
「いつも深夜バイトよく頑張ってくれているね。また何かあればすぐ呼んでくれ」
「は、はい!
フッとゴツゴツした顔を柔らかく微笑ませ、僕の肩をポンポンと肩を二回叩いた店長に、精一杯の返事を返した。
ちょっと感動して泣きそうだった。
店長が、休憩室の扉の向こうに消えていくまで、俺はずっと頭を下げ続けていた。
振り返ると、音もなく勇者はいなくなっていた。
店からでたピロリロピロリロも聞こえないくらい、俺は感極まっていたんだ。
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